ここで、私の記憶違いがあります。

この時、母の葬式に参列した人で、誰ひとり、私を気にかけて声をかけてくれる人がいなかったと思っていたのですが、それは間違いでした。





柩を収めた豪華な霊柩車へ乗り込める人数が限られていたので、私はその後ろの車に乗り込むことになりました。



霊柩車へは当然、喪主である兄が乗り込むことになるのですが、夫である父も乗りますし。

なぜか本家のおじも乗ることになって、子供たちの誰を乗せるのかで、ちょっともめてしまいました。



最初から、私ははじき出されていたのですが、要するに姉と弟とどっちを霊柩車に乗せるのか?で話がされて。

結局年長の姉が豪華な霊柩車へと乗り込むことになりました。



ほんの数分の出来事ですが、あぁ、ここでもやっぱり次女は後回しなんだなぁと、ぼんやりと考えていました。

その時に、私に声をかけてきた人物がいたのです。



近所に住む、同じ通学団で、ぽっちゃり男子の乱暴者で、同級生のヨッちゃんのお母さんでした。





ヨ母「しんじゅちゃんっ!」





私は葬式関連の何かを両手で持った状態で、声のした方を、ぼーっとした感じで振り向きました。



すると、よっちゃんのお母さんが泣きそうな顔をして、私めがけて飛び出してきたのです。





ヨ母「しんじゅちゃん!

しんじゅちゃんっ!

こんな、こんな義政と同じ年でお母さんとお別れだなんてっ!

あ、アタシ、悲しいっ!

しんじゅちゃんのお母さんとは仲良くしてもらってたのっ!

いつも、相談にのってもらってたのっ!」





私「ヨッちゃんのお母さん…。」





ヨッちゃんのお母さんは、21才で長男のヨッちゃんを出産していたので、まだとても若いお母さんなのでした。

母とは10才近く年が離れていたようでしたが、仲が良かったのでした。

若くて、ハツラツとしていて、ちょっとお調子者で、私は彼女のことが好きだったのでした。

彼女は目に涙をためていましたが、そのままポロポロと涙をこぼし始めたのでした。





ヨ母「しんじゅちゃんっ!

いつでも、いつでも相談にのるからねっ!

なにか、辛いことがあったら、ウチに来てねっ!

義政と一緒に育ったのに、なんで、しんじゅちゃんが、こんな辛い目に…。

まだ、小学生なのにっ!

いつも、おうちのお手伝いをしている、いい子なのにっ!

ウチに泊まりに来てえっ!」





ヨッちゃんのお母さんは、私の両肩に手を置いて、泣き出してしまいました。



ヨッちゃんとは、保育園も一緒で、ほんのちびっこのころからつるんでいた仲で。

一緒にお風呂入ったり、お泊りしたり、野原や川で遊びまわったりと、兄弟同然に育った仲だったのです。

ヨッちゃんとは、小学4年生の時に、同じクラスになったのを最後に、それ以降、疎遠になっていて。

今更、ヨッちゃんの家に泊まりにいくほど、仲良くはなかったのでした。





私「…うん、行けたらいくよ、おばさん…。」





ヨ母「うん、きっとよ!

ウチで、ご馳走作って待ってるから、遠慮せずに、家に泊まりに来てねっ!」





私の覚めた表情に、ヨッちゃんのお母さんは、私が自分の家に行くこともないだろうということを察している様子でしたが。

それでも、とにかく私に声をかけたかったという熱意は伝わってきたので、私は優しい嘘をつくことしかできなかったのでした。





まわりの大人に促されて、私たち兄弟はそれぞれの車に乗り込むことになりました。





私はとっさに、ヨッちゃんのお母さんに、気の利いた言葉をかけることができなくて、ただ、無言でうなづいただけで。



沿道から、一人飛び出したヨッちゃんのお母さんは、中腰になりながら、車に乗り込んだ私を見つめ続けていて。

スタンドプレーを嫌う閉鎖的な田舎で、その様子を周りの大人たちが冷ややかに眺めていたのですが、ヨッちゃんのお母さんは、そんな事は気に留める風もなく、ハンカチを握って、私に涙を見せ続けてくれて。





私はその様子を、霊柩車の後続の車に乗り込みながら、シートに腰掛けてぼんやりと眺めていただけなのでした。











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小宮にまくし立てられて、圧倒された私は呆然とお金を受け取ったままとなってしまったのでした。





(兄貴が妙な考えを起こすなとか、訴えるなとかって…。

えっと、訴えるっていうと、裁判ってことだよね…。



なんで裁判?

お母さんの死と、小宮先生は関係ないって言いたかったみたいだけど…。

えっと、どっちかというと、私というより、お兄ちゃんに口止めをしたかった、という意味かな…?



なんの話なんだ?)





私はシャッターに押し付けれらる格好で、ポケットから取り出したお金をじっと見つめていたのでした。



万札二枚を手にとって、じっと見つめていると、風が吹いて、カサカサとゆれています。

とりあえず、それが飛ばされないように、ポケットに収めてみました。





(後でお父さんに渡しておこうか…。

香典だって、言ってたし…。



でも、香典って、普通お金を裸で渡したりしないよね?

それって失礼だよね?



これって、香典じゃないってことなのかな?



口止め料って意味なのかな…。

どうして、お兄ちゃんが小宮先生を訴えるって考えるんだろう…。)





私はてっきり、元担任として、受け持ち児童へお悔やみの言葉を受けるものだと思っていただけに、頭のめぐりが悪くなっていたのでした。





(とにかく、お父さんより先に、お兄ちゃんに事情を説明してみよう。

自分で考えても、よく分からないや…。)





私は祭壇前にもどり、兄を探しましたが、どこもかしこも人だかりで、なかなか探し出せません。

どうにか、兄を見つけ出して、ことの顛末を説明したら、兄から怒鳴られてしまいました。







兄「お前はなぜ、そんな金を受け取ったんだ!

俺たち遺族を馬鹿にするのも、ほどがある!

返してこい!」





私「え、だって、香典だって言って、無理やり渡されたし…。」





兄「お前も無神経なんだよっ!

お前はどうして、そこまで鈍感なんだっ!

お前のせいで母ちゃんは死んだも同然なんだぞっ!」





私「え…。」





兄「不愉快だ。

これ以上の会話は断る。

俺は喪主として忙しんだ、邪魔をするな。」





そう言いおくと、兄はそのまま立ち去ってしまいました。

実際、もう、母の出棺の直前で喪主である兄にはいろいろ役割があるらしくて、忙しいのは事実なのでした。





私は兄の剣幕に押される格好で、また気持ちが深く沈んでしまい、それ以上、なにも言えなかったのでした。





そうして、式は粛々と執り行われることになり。

近しい遺族から、母の遺体のそばに、お花をお供えすることとなり。



私はひろみちゃんからもらった、フリージアの小さな花束と、小さなフレンチマリーゴールドを一本、顔のそばに置くと。

次々と少し遠い縁者の人たちも、柩にお花を置いていきます。



私は葬儀を取り仕切っている人から、お盆に乗ったお花を取るようにと言われて、普段、あまりみかけたこともないような美しい花々を、ちょっと自分用に欲しいと思いながらも、柩に収めていくと、他の人が私がいれたフレンチマリーゴールドの花を、雑草が混じっていると言って、柩の外に捨てているのが見えたのでしたが、私はそれを咎めることができませんでした。





そうして、美しい切花で飾られた母は柩に収められ、蓋をされ、男性陣の手によって、霊柩車へと運ばれます。



そうして、喪主である兄は学生服姿で、母の写真を手に持ち、弟である薫が骨壷を、そして、姉が位牌をと、ちょっと近しい者から何かを手に持たされて、霊柩車へと乗り込んでいきます。



そこへ移動する際に、集まってきた人々は子供たちに一言ずつ、声をかけていたのですが。

やはり、喪主である兄や、美しい姉や、幼い弟に皆、一言だけ声をかけていて、私に声をかけてくれる人は一人もいなかったのです。





私の心は黒く沈んでいて、なにも信じられない気持ちになっており。

兄の『お前が母ちゃんを死なせたも同然』というセリフに胸が塞がる思いがしており。



そして、母の、あの極端に短いメッセージに、やはり私は母親に疎まれていたのだ、という気持ちに錨がおろされたようになっていて。





何百人というこれだけの弔問客がいて、この私には誰も、誰ひとりも声をかけてくる人はいない。

四人兄妹がいて、長男でも、次男でも、長女でもない、私にはなにも価値がないのだ…という荒んだ心持ちになっていたのでした。





今、思えば、あまりの弔問客の多さに、子供達に声をかけようと思っても、一人一人の時間はわずかで他の人に遠慮して声をかけれなかっただけなのだと思われます。





それに、どうしても、まだ中学生の兄が葬式の喪主である、というのは涙を誘いますし。

まだ、高校に入学したての姉が不憫でならないと思われるでしょうし。

まだ、小学2年生、7才の薫に至っては、あまりの幼さに涙を禁じえない様子でした。





近所の方々、仕事上のつきあいの人たちは、口々に母の亡くなるのが早すぎる。

まだ、41才になったばかりで、いかほど悔しく、悲しかろうか…。

あんなに優しくて、上品な人が、こんなに早くに亡くなるなんて…。

こんな幼い子供を四人も置いていく母親の気持ちを思ったら、切ない…。

あぁ、こんなに早く死にたくないわ…。怖い…。





そんな女の人たちの声を尻目に、私は黙々と移動をしており。

私は荒んだ目をしていたと思いますが、それは母親が亡くなって、悲しんでいたのだと思われたのだと思います。



兄弟たちの影にかくれて、私に声をかけてくれる人は、誰ひとり、いなかったのでした。











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小宮「しんじゅ!おい!お前だっ!」





背後から怒気を含んだ大声に、ちょっと驚きながら振り返ると、スーツ姿の小宮雅子の姿があった。

私はこの場所にこの人物が来るのを意外に思いながらも、いきなり喧嘩腰で声をかけてきたのも驚いていて、ぼーっとしてしまった。





小宮「おい!お前に声をかけているんだよっ!

うすのろがっ!こっちに来い!」





私「え…。」





そのまま、小宮は私を連れてすぐそばのシャッター前まで私を連れて行って、他の周りの人間に見えないように私をシャッターに押し付けるようにして立ちふさがった。



この時の私は、のんきにもさきほど赤木先生が声をかけてくれたように、かつての教え子の母親の葬式に顔を出してくれたんだ、義理堅いな、などと勘違いをしていたのだった。





すると、小宮は私を隠すようにしてシャッターの前に立ちふさがると、自分のポケットに手を突っ込み今度は私の手に無理やり何かを握らせきた。

それは二万円のお金だった。





私「え…?」





小宮「香典だ!」





私「え?あの、お金は私に渡してもらっても…。

お父さんに渡してください。」





小宮「なぜ、私がお前の父親にあわねばならないのだっ!」





私「え?お葬式ですよ。子供の私がこんな大金を受け取るのも…。」





小宮「つべこべ言うなっ!

この脳無しがっ!」





小宮はお札を持った私の手を上から握り込み、そのまま私のポケットへとねじ込みました。





私「…。」





小宮「お前の母親が死んだのは自業自得だ!

こっちも迷惑しているんだよ!」





私「え…。」





小宮「お前の兄貴に言っとけ。

なにか、妙な考えを起こすんじゃないとな!」





私「妙な考え…。」





小宮「もう、お前たちの母親は死んだんだ。

アタシになにも罪はない!

アタシがお前の兄貴に言ったセリフはすべて忘れたことにしろ。

金は受け取ったんだ。

訴えを起こすとか、妙な考えは捨てろっ!」





私「訴え…。」





小宮「お前たちの母親が死んだのは、お前たちの母親が弱かったからだ。

つべこべ文句を言うなっ!

呪うなら、弱い母親を持った、自分たちの運の悪さを呪うんだなっ!

これで借りは返したっ!

これ以上つきあう義理はないっ!」





私「え、あの、ちょっと…。

言ってる意味がわからないんですけど…。

アタシは子供なんで、こんな大金は大人に渡してください。」





小宮「関係ないっ!

金を払った以上、もう、お前たちとは無関係だっ!



もし、お前の兄貴がなにか騒ぎ出したら、いいな!

その時は、お前の弟の命が無いと思えっ!

また葬式を出すことになるぞっ!



くそっ!エサキを呼ぶなど、生意気なっ!

くそっ!この貧乏民どもめが、生意気に国会議員だとっ!

やりにくいわっ!

しんじゅ、お前の家がそこまでの家だと思わなかったぞ、誤算だっ!」







私「え、ちょっと、先生、困るんですけど…。」





小宮「いらなかったら、ゴミ箱にでも捨てておけっ!

アタシはきちんと金は払った!

アタシはお前の母親の死とは、無関係!

それで、精算だっ!」





私「え…。」







小宮雅子はそのまま小走りに立ち去って行き、私はその剣幕におされて、どうしたものかと途方にくれてしまったのでした。











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それから後は少し変なテンションだった。



弟と一緒に時間を潰すようにして遊んでいたので、大人たちからは、もう小学6年生なのに、母親の死が理解できないのかと白い目で見られたりもしたが、構わず弟と一緒に遊んでいた。



もう、いろいろ煩わしかったのだと思う。



姉にチカン行為を働いたおじやその妻の言動に、かなりの衝撃を受けていた。

性的なことを葬式にもちこむ、その神経がわからないし、悲しみにくれている遺族に誹謗中傷を繰り広げるその無神経さ。



血の繋がった親族だというのに、この大人たちの頭の中は、なにか地すべりが起きているんじゃないかと思えるくらいの幼稚さに、私はかなり怖かったのだと思う。



姉には悪いが、チカンされたのが自分でなくてよかった…とまで思っていた節がある。

私は性的なことに、非常に敏感で、辛く感じてしまう性質だったのだ。



親族間でそんな事が行われたという事実に、かなり打ちのめされてしまっていたし。

まだ、母親の遺書にあった、私への極端に短いメッセージに引っかかりも持っていて、ともすると真っ暗な気持ちになりそうになる。



そういうゴタゴタの最中に、母の弟にあたるおじの励ましの言葉はかなり心が安らいだ気持ちになったのだった。





今、思うと、ちょっと告別式の時間が遅い設定だったんじゃないかと思う。

火葬場の予約も一番遅いものにしたとか、本家のおじさんが言っていたような気がする。



思い返すと、平日の昼間に、同級生のひろみちゃんがお花を持って駆けつけれるということは、小学校が終わった時間帯に私はプラプラしていたわけで、よく会えたものだな、と、不思議に思う。



自宅はほぼ、すべて開放されていて、親族やら弔問客やら、近所のお母さん方が押し寄せて、昔ながらの連座制とでもいうのか、お葬式のお手伝いに大勢の人が詰めかけていて、本当にすごい人出だった。



弟と二階のベランダから、下を見下ろすと、黒山のひとだかりというか、ほんとうにものすごい大勢の人が出入りしていて。

通夜や告別式に参列できない代わりに、ちょっとだけでも焼香を…というお客さんが多かったのかもしれないが、500人以上はおとづれていて、完全に道路が人だかりで埋まってしまっていて、本家のおじが警察に手配したとかで、交通規制までかけられていた。



それをなにか、変な気持ちで眺めながら、頬を吹く風のさわやかさや、遠くにある中学校のチャイムの音が鳴り響いてくるのを聞きながら、いつもとは違って、ものすごく感覚が鋭敏になっていることを再確認するような気持ちだった。



6月だというのに、爽やかな陽気で、日差しが暖かく、やわやわした、透明な、暖かい膜が、自分の身体のまわりを取り囲んでいて、普段、見落としがちな何気ないこともすべて、貴くて美しいもののように感じていたのだった。



ひろみちゃんから、もらったフリージアの小さな花束を母にお供えするのならば、自分たちで育てていた、フレンチマリーゴールドの苗を一緒に柩に収めようと考えて、弟と一緒に畑に見に行ってみた。



畑は、自宅の正面の道路を渡った奥、そこはお店の駐車場になっていて、その奥にお父さんのガレージがあって、その奥に少しだけ畑があって、近所の人に貸し出している。

実家で農作物をつくるほどではないけれど、お礼に近所の人がたまに玉ねぎやら菜っ葉をくれる、ただで土地を貸す代わりに、税金対策で農作業をしてもらっている感じだ。



残念ながら、どれひとつ花は咲いていなかったが、ひとつだけつぼみがほころんで、かすかにオレンジ色がかった黄色の花びらが見えるものがある。



それをひとつちぎって、母の柩におさめようね、と弟と話して、一緒に葬儀の場に戻っていった。



すると、大勢のひとごみの中から、私に声をかけてくる人がいた。

担任の赤木先生だった。



先生はかなり焦りながら、私に声をかけてきた。



自分の受け持ち児童の保護者が亡くなるということ自体が初めてだったようだし、それ以上に葬式の参列者の多さに面食らったようだった。



ちょっと学校を抜けてきただけで、また職場に戻るつもりで来たが、交通規制がかかって、車が寄せれないぐらいの人だかりでかなり驚いたと言っていた。



お前のウチは八百屋だと思っていたがどうしてこんなに立派な葬式になっているんだ。

市議会議員はおろか、県議会、国会議員まで来ている、そうそうたるメンバーで恐縮してしまったと震えていた。



自分ではよく分からないが、本家で葬式をとりしきってくれているので、その関係だろうと私は答えていて。

赤木先生は、そうか、お前の親族はこの町では権力のある家だったんだな…とつぶやいていた。



明日は学校に来るかと尋ねられて、明日もお休みしますと答えると、そうか、忌引きで休みにしておくよ、体に気をつけて頑張れな、とだけ声をかけて、私に時間をとらせるのを遠慮する様子があった。



ふと、沿道を見ると、チラホラと小学生の姿がある。

町内会は違うが、今まで同じクラスになったことがある子供たちで、私の母の葬式に親と一緒に来てくれていたようだった。





それで…。

どうなんだろう、ちょっと段取りはよく覚えていなかったが、まるで、スポッと人がはけた瞬間があって。

まわりに、少しの大人しかいなくて、誰も私に注目していない瞬間があった。



その時、私はたまたま、一人でいたんだった。



周りからほとんど大人の姿が消える瞬間があって、そこを見計らうように、背後から私に大きなどなり声を上げてきた人物がいた。



それは、小学4年生の時の担任教師、小宮雅子、その人だったのだった。












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私たちの姉に罵詈雑言を浴びせて、喪服を着た夫婦が立ち去っていく様子を中学生の兄越しに見守っていた私はつぶやきました。



私「お兄ちゃん、あの人たち、親戚だよね…。」



兄「いいか、お前ら。

あいつらを親戚だなんて、思う必要もない。

低脳で、下品なダメな大人の見本だとでも思っておけばいい。」



弟「でも、あの人たち、本家のお家で見たことある…。」



兄「血が繋がっているなどと、思う必要もない人間だ、いや、低脳の猿だな。」



私「血が繋がっている…。

あの男の人、お父さんが兄様って言ってたから、本家の跡取りになるはずだった人なんだ…。」



弟「え?本家のおじさんって、長男じゃないの?」



私「うぅん、次男らしいよ。

お父さんが三男。」



兄「賢明な選択だな。

俺は本家の叔父は、まともだと思っているが、アイツはクズだ。

母親を亡くして悲しんでいる姪になんてことをしでかすんだ。」



私「チカンって犯罪だよね…。

アタシ、チカンする人って初めて見た…。」



弟「そうだよね、チカンって警察に捕まるんだよね?」



兄「あぁ、立派な犯罪だ。

犯罪に立派もクソもないけどな。


それを親族の葬儀の最中にしでかしやがって、しかも謝れと言ったら逆ギレだ。

どんだけ下品で低脳だって話だ。

いいかお前ら、俺は不愉快だ。

俺にとっても、姉にあたる芙美花をあそこまでコケにしていい理由なんて、どこにもない。

それが、なんだ、あの父ちゃんの態度。

俺はそこにも失望している。

以後、この話題は出さないように、俺の不快指数をあげるだけの不毛な展開が繰り広げられることになるからな。

以上。」



兄はぶすっとした表情のまま、祭壇前から立ち去って行きました。

弟はオロオロした様子でしたが、私はそれにあまり構うこともできなくて、ただただ呆然としていたのでした。



さっきまで、ひろみちゃんと会って、心が勇気づけられた心持ちがしていたのに、すっかり気持ちがしぼんでしまい、この事態に頭がついていかなかったのでした。

まだ、出棺まで時間があるというので、各自待機するように言われてて、私は一人しょんぼりと調理場にパイプの丸椅子を持ち込んで、じっと物思いにふけっていたのでした。


照明をつけなくても、どこかしこから外のあかりが入り込んでいて、うっすらと明るさのある場所で一人しょんぼりしていました。



おじ「よっ!お嬢、どうした?こんなところで?」



私「あ、イシキのおじさん。

こんにちは。」



私に声をかけてきたのは、母の弟にあたる、おじなのでした。

母の兄弟は女ばかりで、男の人は一人だけ。

このおじが母の実家の跡を継いだ人物にあたります。

母の在所はその家系の本家でもあり、ちょっと気難しい人が多い中、このおじはいつも口元に笑みを浮かべ、どこかのほほんとして、ヒョウヒョウとした雰囲気を持つ人物なのでした。

見た目はコメディアンの加藤茶に少し似ています。



おじ「こんにちは。

本日はお日柄もよく、って、葬式の日に、そんなんは不謹慎か。

かかっ!」



私「はは…。」



私が力なく答えていると、おじもすぐそばの家の入口にあたるカマチに腰掛けて、私のそばに座りました。




おじ「しんじゅ、どうした?

つかれたか?

見知らん親戚や大人ばかりやさかい、そりゃ、しんどいわな?」



私「え、あ、うん…。」



おじ「すまんかったな、ウチの母ちゃんが迷惑かけて(母方の祖母にあたる。)

なんでも、午前中、大暴れやったらしいやないか。

まさこがとめんかったら、どこまでも悪口大会になっとったみたいやし?

ま、普段から人の悪口が大好物な奴らやさかい、悪口合戦に火がついとったらしい、ワシの家族が迷惑かけたな?

すまんかった。」



私「うぅん、それはおじさんのせいじゃないし…。」



おじ「そうかぁ?

お前、子供やのに、気ィつかいすぎやで?

しんじゅは、姉ちゃん、おっと、母ちゃんが亡くなったばかりやで、疲れとるやろ?

しかし、今、お前を見かけて、思わず姉ちゃんかと思ってまったわ。」



私「え?」



おじ「ワシな、自分の兄弟の中で、姉ちゃん、いや、しんじゅの母ちゃんが一等好きやったんやわ。

ワシ、どんくさいで、いろいろやらかしてまうけどな?

そんな時、いつも、姉ちゃんがかばってくれたんやわ。


もぉ、ワシの周りの女たち、みんなキツくてかなわんかったわ。

ワガママで、自分の思い通りにならんと、カンシャク起こす奴らばかりやで、ワシ、怒鳴られると頭止まってまう。

そんな時、姉ちゃんが上手にとりなしてくれたもんやわ。


お前、前から姉ちゃんに似とる、思とったけど、やっぱり、ソックリやな。

思わず、姉ちゃんと言いそうになった。

ワシ、自分が子供の頃にタイムスリップしたのかと思ったわ!

かかっ!」



私「私がお母さんに似ている…。

最近、よく言われるようになったな…。

そんな似ているとは思ってなかったけど…。」



おじ「そぉかぁ?

まぁ、ちょっと違うけどな、父方の血が強いかもしれへんけど。

まぁ、亡くなってまったし、まわりのもんが、さみしくなって、余計に懐かしんで、皆、そう言うんやろうなぁ…。

お前はお前、母ちゃんは母ちゃんや、細かいことは、気にせんときぃ。」



私「うん…。」



私は力なく、そんな生返事をしていたら、おじはそのまま立ち去ろうとしましたが。

やはり立ち止まって、振り返りつつ、ちょっと頭をポリポリとかいてから、つぶやきました。





おじ「出直しやな…。」




私「え?」



おじ「ウチらの信仰しとる、宗教では死は別れやない。

生まれ変わる準備期間に入ったっちゅー考え方するんや。

お前の母ちゃんは、今生を去った。

せやけど、それは今まで生きた徳を積んで、次はもっといい人生に巡り会えるように生まれ変わりの準備期間に入ったんや。」




私「生まれ変わりの準備期間…。」




おじ「そぉやぁ?

ワシは生まれた時から、こういうモンやって、教えられて育っとるさかい、それがホンマもんか、どうかはよぉ分からんけどな?

親が信仰しとけって、やかましいさかい、へぇへぇおとなしく言うこと聞いとるだけで、内実はどうかは知らへん。

まぁ、よく分からんのなら、生きとるもんが好きに考えたってもえぇんちゃうか?」




私「生まれ変わりってあるの?」




おじ「あるんとちゃうかぁ?

あったら、えぇなぁって思うわぁ。

なんか、ロマンチックぅ?(笑)」




私「ぷ。おじさんがロマンチックなんて!(笑)」




おじ「はは。笑ったなしんじゅ。

お前はいつも仏頂面して、おとなしくしとるさかい、なにを考えとるか分からんで、ちょっと不安になるわ。

子供は、特に女の子は笑っとるんが、一番えぇんやで?

それが、亡くなった人に対する、一番の供養や。

お前、カリカリに痩せて、飯きちんと食っとるか?」




私「あぁ…適当に…。」




おじ「なんや、心細い回答やな!

腹減ったら、いつでもウチに来い、ご馳走くわせたる。

まさこが腕を振るって、お前を太らせたるわ!

ワシが作るんやないから、まずくても、勘弁したってな?

責任もてへんわ。

なにせ、ワシ、生まれも育ちも長男で、甘やかされて育っとるさかい、女の人に面倒みてもらわんと、飯一つ満足して食われへん。

まさこには、頭があがらんわ!」



私「あはは、まさこおばさん、料理が上手そうだもんね。」



おじ「アイツは食い意地が張ってるから、あんなデブなんやで?

あっ!これは内緒な!

嫁さんの悪口言うた、バレたら、後でどんな目に合わされるか、怖い怖い!」(>_<)



私「ぷ。」



おじ「いいかぁ、しんじゅ。

男のハートを射止めるには、まずは胃袋からやで?

多少のブサイクは気にせんでもええで?

世の中の男の大半は不細工なんや、文句言えへん立場やさかい、もっと堂々としとりゃえぇんやで?」( ̄∇ ̄+)



私「ぷ。

私が不細工前提で話をしてる!」




おじ「そやそや、ぶっちょうずら、言うんが、ブスの略語なんやで?

いくら綺麗な造作しとっても、無愛想やと、魅力あらへん。

ブサイクでもにこにこしとるやつが、男は好きなもんなんやわ。

お前はちょこぉーっと、おれから見ると心配やわ。

愛想よくしとけよ、しんじゅ。

心優しいおじからの、心からのハートウォーミングなアドバイスや!

学校のテストに出るから、心のノートにメモしとけや!」



私「ぷ。クスクス分かったよ、イシキのおじさん(笑)」




おじ「そやそや。

子供は笑っとるのが一番や。

いつでもウチに来いよ、しんじゅ。

ご馳走いうたけど、お肉思ったら、ちくわやはんぺんに、菜っ葉ばっかりの野菜たっぷりヘルシー料理をご馳走したる!

家は貧乏やで、節約料理をぎょうさん用意しといたるで、文句言わんといてぇな?」



私「あはは、分かったよ、おじさん(笑)」




おじ「それと、アレやな、こんな豪勢な葬式になるとは思わんかったけどな。

ウチの母ちゃん連中が納得いかへんらしくて、またウチで葬式出すとか騒いどる。

迷惑かけついでで悪いけど、またウチに来たってや?」



私「え?あ、うん。

お葬式って、何度も出せるものなんだ。」



おじ「いや、普通はやらんけどな?

なんや、葬式のやり方が気に食わんいうてカンカンなんや。

めんどい母親を持つと、エライ迷惑やわぁ。」(T▽T;)



私「ご愁傷様です。」



おじ「こちらこそ。

あ、あべこべや!(笑)

ほな、しんじゅ、また後でな!」




私「うん、ありがとうおじさん。」







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弟「お姉ちゃん、いいの?

こんなところで遊んでて…。」



私「いいの。」



弟「でも、今日はお母さんのお葬式でしょ?

いいのかなぁ、ぼくたち、抜けちゃって。」



私「いいんだよ、ちょっとくらい抜けたって。

アタシがいいって言ってんだから、気にしなくていいよ。」



弟「うん。」



私は母方の祖母になじられていた弟の手を引っ張って、家の裏手側にある野原に来ていました。

本当は、そこは休耕地なのだと思いますが、二人して勝手に入って、野の草を摘んで、風にふかれたりしていました。


母親の告別式ということで、大勢の人が来ると、身構えていたら。

近しい親族の人の乱暴な口のききかたに、がまんができずに、弟と二人、飛び出してしまったのです。


どうして、こうも、母親を死んで失った子供の身になって、考えてくれる大人がいないのでしょうか…。


まさこおばさんが大声で祖母をいさめてくれて、助かったのですが、叔母たちの言いようにも腹が立ってきて。

母が再婚だったのを知ったのも、ショックでしたし、父方の祖母が、私の母の事を難有りだと言っていた、意味がわかる気がしましたが。


どうして、こうも、肩書きやレッテルを張ってくる人たちなのでしょうか。


大人たちの誰もが、ただの一人の人間として、私たち子供を見てくれないことに私は失望していたのです。



天気はとても良くて、快晴です。

爽やかな風が吹き、そっと頬をなでていきます。

地べたに座って、草がサワサワと揺れているのを眺めていると、気持ちが落ち着いてきました。

青空を眺めて、流れる白い雲を見つめていると、ふんわりとした形の雲が綿菓子のように見えてきます。



すると、あぁ、そうか、もう、一人なんだな。

お母さんには会えなくなっちゃうんだなぁとしみじみ思えてきて。



なんて、景色が美しく感じるんだろう。

きっと、気づかない内に、自分の心はひどく悲しみの感情を感じていて。

それは、普段何気なく、気づかずに見過ごしていることに、細かく気づくことができる魔法のような働きをしていて。

普段は身体の奥に、そっとしまわれている、心の柔らかい部分が、ぶわっと身体のまわりを取り囲むように出ていて。



それが、風のさわやかさ。

草のそよぐさまの美しさ。

青空の綺麗さなど、際立って感じさせてくれているんだなぁと思ったのでした。



弟に、草での遊びを教えたり、草で笛を作ってピーピー吹いたりしていたら、そのうちドキドキしてきました。


時間としては小一時間もたっていないか、どうかでしょうが。


イマイチ、葬儀の段取りが分かっていなくて、家を飛び出してきたのを、今更戻るのが怖くなってしまったのです。



もしかして、大事なイベントをすっとばしてしまったかもしれない。

今から戻ると、大目玉をくらうかもしれない。

おっかな、ビックリな気持ちに襲われましたが、ここに座り続けても、事態は好転しないのは明白です。


そして、弟を避難させる意味もあったとはいえ、この子にとっても、大事な母親の葬式です。

自分がいいと言い出して引っ張り出してしまった手前、責任は自分にあるのですから、やはり戻ることにしました。


そよそよと、気持ちの良い、風に後押しされる格好で、道を進み、角を曲がると、自宅の葬儀スペースが見えます。


公道に接する場所まで、青色の布地の床が設置されて、その奥に柩が収められています。


大勢の人がひっきりなしに出入りしていて、どうやらまだ、告別式は始まっていないようで、誰も私たちに関心を向けていません。


親戚の人、特に、本家のおじさんたちに見つからなくて、誰にも注意を受けないことに、ほっと胸をなでおろしたのでした。(;´▽`A``

弟のお尻や、背中に草や土がついていないかを確かめて、パンパンと勢いよく、手のひらで叩くようにして、払ってから弟に、家の中に入るように言うと、おとなしく言うことを聞いて入っていきます。


それを見送って、ほっとしていたら、背後から声がかかったのでした。



ひ「しんじゅ…。」



私「え?」



ひ「しんじゅ…。

よかった、しんじゅ見つけられてよかった。」



私「あ!ひろみちゃん!」



私は親友のひろみちゃんを見つけて、とても嬉しかったのでした。

ここ数日の動転境地の連続に、心がささくれていた自分にとって、既知の友人の出現に、心が浮き立つのを感じたのでした。



ひ「しんじゅ…。

ウチ、うちなぁ。

ごめんなぁ、なかなか勇気だせれなくて、今頃おじゃまさせてもらったわ…。」



いつもは快活に微笑んでいるひろみちゃんが、うつむきながらぼそぼそとしゃべっています。



私「え?そうだった?

こっちこそ、ごめんね、なんかバタバタしてて、ひろみちゃんの事、忘れてたよ。」



ひ「えぇんよ!全然、そんなん、気にせんとって!

ウチはあんたの迷惑になることだけは、避けたかったんやから!

せやから、忘れてもらっててtも、全然構わへんよ!」



私「うん?

うん、ごめんね、ありがと。

こないだも電話くれたけど、あんまりたいしたこと話せずに、ごめんね?」



ひ「えぇんよ、えぇんよ。

そんなん、全然気にせんとってぇ?

おまはん、大変やったんやから…。」



私「うん?なんだった?」



ひろみちゃんは、両手を後ろに回して、もじもじしていました。

心なしか、よく見ると、ひろみちゃんの目元には涙が滲んでいたのです。



私「どうした?ひろみちゃん。」



ひ「なんか、ちょっとしんじゅがいつものしんじゅらしくて、ちょっとほっとしとるところなんやけど…。

せやけど、ちょっと、ここは人の往来が多いから、ちょっと脇にどいてくれへんか?」



私「あ、ごめん、

気になるよね、ちょっとあっちにいこうか?」



二人して、今、弟と一緒に戻ってきた角へ向かい、曲がります。

自宅は角地に建っていたのですが、ほんとに、角を曲がるだけで雰囲気ががらっと変わって感じました。


道路をはさんだ向かい側には、駐車スペースがあって、往来がひっきりなしにあったのです。


それが、角を曲がると、普段通りの田舎道となっており、私はなんだか、いままでの自分はどこか異次元に迷い込んでいたのではないかとの錯覚を覚えるくらい、のんびりした雰囲気を放っていたのでした。



ひろみちゃんが、猫背気味にしているのも、気になって声をかけます。



私「どしたの、ひろみちゃん。

話ってなに?」



ひろみちゃんは、目をキツくつむり。

大きく息を吸うと、えいっと小さな声を出して、両手を私の目の前に差し出してきました。


その手には、黄色のフリージアの小さな花束があったのでした。



ひ「ごめんなぁ。

ウチ、お小遣い使って、花屋さんに行ったけど、いい感じのお花買えるほどお金なかったんやぁ。

おまはんに電話で聞いた時、お母ちゃんの好きな花はなに?って聞いてて、一生懸命探したけど、これくらいしか買えんかったんやわぁ。」



私「わぁ、キレイ。

お母さんに持ってきてくれたんだね、ありがとう(笑)」



ひ「ごめんなぁ。ほんの数本しか買えんかった。」



私「うぅん、いいよ、全然気にしなくて。

ありがとう。フリージア、可愛いね。」



ひ「おまはんのお母ちゃん、黄色のお花が好きや、言う話聞いて、ごっついいもん買うたろ思とったんやけど。

予算オーバーで百合とかバラは、買えんかった。

ごめんなぁ。」



私「うぅん、いいよ。

黄色なら、お母さんなんでも喜んでくれると思うよ。

ありがとう、お母さんにお供えさせてもらうね?(笑)」



ひ「おまはん、大変やったな…。

おまはんのお家の事情、学校に行ってから聞いたわ…。

おまはんのお母ちゃん、ずっと入院しとるとは聞いとったけど、そこまでとは思っとらんかったんやわ…。」



私「私も…。」



ひ「!そうやったんかぁ。

もしかして、ウチに心配かけんように、ウソついとったんかと思っとったけど、ちごたんやね。

せやけど、そしたら、それはそれで、しんじゅにとっても、突然のことやったんやねぇ。

ウチ、しんじゅになんて言うたらいいか、悩んどって、今まで怖くて顔出せれんかったんやわ…。」



私「!そうだったんだ…。

ひろみちゃん、優しいね。

勇気出して、会いに来てくれたんだね。

嬉しいよ、ありがとう。」



ひ「しんじゅ、他の子は来た?」



私「うぅん、ひろみちゃん一人だよ。」



ひ「そうか?そうか…。

他の子も、気がひけてこれんのかもしれへんな…。

あるいは、邪魔したらいかん、おもて、遠慮しとるんかもしれへん…。」



私「うん?きっとそうだね…。」



ひ「ウチ、しんじゅのオカンにお花買うたろ、思とったんやけど。

それ、ウチの考えやないんやわ。

ウチのお母ちゃんの入れ知恵なんやわ…。

ごめんなぁ。」(T_T)



私「え?

謝ることないよ、素敵なアイデアじゃない。

お母さんにもお礼を言っておいて?」



ひ「え?あ、うん。

オカンに伝えとく。

あのな、なんで、ウチしんじゅに謝っとるかっていうとな…。

実は、ウチ、頭働かんくなってしもたんやわ…。

ウチ、しんじゅが不幸にあったというのに、それがウチの一番の友達、もっと言えば姉妹の契りを交わした家族同然やと思っとったのに、ウチ、怖くて頭働かんくなってしもたんやわ…。」o(;△;)o



私「うん?そんな事で謝らなくていいよ?

誰だって、初めてのことなら、何をしたらいいか、分からなくなると思うから。」



ひ「うぅん、違うんや。

ウチな、ウチ…。

もし、自分のオカンが死んでまったらと想像したら、お先真っ暗な気持ちになってしもたんやわ…。

しんじゅが不幸な目にあったというのに、それが自分でなくてよかったと思ってしもたんやわ…。

そんなん、最低や、友達を励ましたらんとアカン、おもても、体がすくんで動けんかった。

家に帰って、タオルケットの中に潜り込んで、ブルブル震えとるだけやった。

涙がこぼれてしかたなかった。

もし、ウチのオカンが死んでしまったら…。

もぉ、それからは、頭が働かんかったんやわぁ。

ごめんなぁ、しんじゅ。

一番辛い思いをしとるの、分かっとって、励ましにこれんかった。

ウチ、最低な人間やわ…。

ごめんなぁ。」(iДi)



ひろみちゃんは、目から涙をこぼして、泣き出してしまったのでした。

拳を握り締めて、ごしごしとまぶたをこすっています。



私は、ひろみちゃんの、その様子を見ていて。

その素直な言葉に触れて、私はなんとも心地よい気持ちになっていたのでした。



私「ひろみちゃん。

ひろみちゃんが、お母さんが好きなのを、私は知っているから。

あんなに、仲の良い親子って、珍しいくらいだよ。

仲が良ければ良いほど、別れが辛くなるのは当然だよ。

ひろみちゃんは、とても素直な女の子だよ。


そんな、自分の弱さを知っていて、それでも、お花を買って、私に会いに来てくれた。

それは、とても辛くて、勇気のいることだったと思うんだ…。


そうして、私に話しかけてくれた。

話しかけなくても、きっと、私は気付かなかったし、それを咎めることもしなかったのに、わざわざ、私に自分の気持ちを話してくれた。


それは、やっぱり、どうしても私を励ましたかったからだと思う。

それは、とても優しくて、美しい行為だと、私は思うんだ。


だから、そんなに自分を責めないで。

これからも、私の友達として付き合ってくれるだけで、十分だよ。

泣かないで…。」



ひ「しんじゅ…。

あかん、ウチ、おまはんを励まそうとおもて、来たはずやのに、ウチが慰められとる…。

あべこべや…。

ウチ、なんて未熟もんなんや…。」



私「うぅん、そんなこと、全然ないよ…。

ひろみちゃんは、私の身になって考えてくれた。

もし、自分がその立場だったら、どう思うか、それを想像して悲しくて身がすくんでしまっただけなんだ。

それは、ひろみちゃんが、想像力が豊かで、感受性の強い女の子だからなんだよ。

それは、とても素敵なことだよ。


だってね、アタシ、ここ数日、とても心がやさぐれていたんだ。

けど、ひろみちゃんと、久しぶり…。

いや、ほんの数日離れていただけか、なんか、長い日数会っていなかったような気持ちがしちゃうな…。

とにかく、ひろみちゃんとお話できて、とても、心が…。


潤った。

優しい気持ちになれた。

子供らしい気持ちに戻れた。

そう、癒された…。


こんな言葉を使うこと自体、驚きなんだけれど、本当に、本当にね、ひろみちゃんの顔を見ただけで嬉しいし、とても心が癒されたんだよ。


泣かないで、アタシたち、友達でしょ?

私のために、泣いてくれて、ありがとう。」



ひ「う…。ヒィーック、う…。

自分でも、よく分からんのや。

ウチは自分のお母ちゃんが死んでしまうかもしれへんってだけで、怯えとっただけかもしれへんで、しんじゅのために泣いたとは、よぉ言えんわ。」



私「くす。

相変わらず、冷静だねぇ。

そんな風に思うことはないよ、人間の心なんて、白黒つけれるものじゃないんだから。

少なくとも、私の身を案じて、不安になって、泣いてしまったところがあるから。

それがほんのすこしでもあるならば、それは私のタメを思って泣いたってことでいいと思う。

それは、友達思いの、優しい女の子だから、そういうことができるんだよ。

今まで、ここに来るまで、気持ちがしんどかっただろうに、わざわざ出向いて、声をかけてくれた。


その勇気に感謝します。

私の親友は最高の女の子だよ。」



ひ「そ、そんな、たいそうなモンやないで?

ウチ、今頃顔出ししてて、ウチ、恥ずかしいくらいなんやわ…。

アンさんがどんな気持ちで過ごしとるかおもたら、胸がずぅ~んと沈んで、よぉ、ご飯もお菓子も食べれんくなってしもた。」



私「それじゃ、これで気が晴れたね?

今からお家に帰ったら、好きなだけお菓子を食べるといいよ。

友達としての義務は果たした、自分はエライって言って、自分を褒めてあげてね?」



ひ「…なんでや?

なんで、しんじゅは、ウチの身になって、考えられるんや?

ウチ、しんじゅが泣き出したら、ヨシヨシしてやろうと、身構えてきたんやで?

それが、なんで、ウチが泣き出しとるんや?

そんで、慰められて、励まされとるんや?

しかも、心配までされとる。

ウチ、立場ないやん?」



私「あはは、ごめん、つい、おせっかい焼いちゃったかな?」



ひ「えぇけど。

しんじゅ、お前、辛い思い、しとらんか?

ウチに話してもえぇんやで?

大人に話づらいことでも、同じ子供同士やったら、遠慮いらんで?」



私「うん、そうだね。

とりあえず、今はいいかな?

また、お葬式が終わって、学校に通うようになったら、お世話になろうかな?」



ひ「いつ、学校に出てくるん?」



私「お父さんたちは明日も学校を休んでも良いって。

それで、土日越した、月曜日から学校に向かうと思う。」



ひ「そうか、それはそうやな。

葬式やら、なんやらで、気が張って、疲れが出る頃やから、週末はゆっくり休んだ方がえぇもんな?

ウチ、ホンマはしんじゅがおらん、教室に行くの、さみしいし、つまらんけど、今はしんじゅが一番大変な時やから、我慢するわ。

おまはん、これから、いろいろあるけど、頑張ってな。

あ!アカン、お母ちゃんに、禁句や言われとったのに、使ってしもた!

がんばっとる人に、がんばってと言ったらアカンと言われとったのに、失策やわ!」



私「あはは、そうなんだ。

ひろみちゃんのお母さんは、ほんとうに素敵なお母さんだね。

いいよ、気にしないで、言葉の綾だから、そういう時、どうしても使っちゃうもんね。

大丈夫、気にしないで、励ましの言葉として受け取っておくから。

もちろん、ひろみちゃんのお母さんには内緒で!(笑)」



ひ「アカン~、ウチ、今日はダメダメやわぁ~。

どんだけしんじゅに迷惑かけとるのぉ。」



私「かけてない、かけてない。

むしろ、癒されてる。」



ひ「ホンマかぁ?むしろ、癒されとるんわ、ウチの方なんやけどぉ!」



私「あはは、それなら、お互い様ってことで!(笑)」



ひ「うぅ、ウチ、さっきから泣いてばっかり。

そやのに、おまはんは笑ってばかりや、かっこわるぃ。」



私「あはは。


あのね、ひろみちゃん。

あのね、アタシ、本当は、ここ数日、台風にあったみたいに、心がかき乱されていてね?

とても、とても、辛かったんだ。

けどね、ひろみちゃんを見て、ほっとした…。

あぁ、この子、本当に子供らしくて、いいなぁって感じたんだ…。」



ひ「え?ちょっと意味がわからんけど、なに?」



私「うぅん、あのね。

ひろみちゃんってね、アタシにとって、一番身近な人間なの。」



ひ「そりゃ、そうやわ。

それが?」



私「うぅん、あのね、ひろみちゃんの素直さや、純粋さや、子供らしい優しさを見てね…。

あぁ、もう、私はここから卒業なんだなぁって感じたのよ。」



ひ「卒業?何から?」



私「私をとりまく、環境は、もう今までどおりにはいかない。

どんなに、泣いても、わめいても、時は巻き戻せない。


死んだ人間は蘇らない。

それはくつがえしようもない、事実なんだ。」



ひ「母ちゃんのことか…。ぐす。」



私「うん、そうだけど。

それだけじゃない気がする。

もう、元には戻れない。

もう、誰かに守ってもらえる子供ではいられない。

ひろみちゃんは、私の少女時代の象徴なんだ…。」



ひ「え?少女時代?」



私「そう、ひろみちゃんは、子供らしい子供の世界の象徴。

アタシは、もう、そこから切り離されてしまった。

懐かしくて、暖かくて、優しい世界。

でも、もう、戻れない。」



ひ「え?何を言うとるん?

おまはんは、ウチと同じ、11歳の子供なんやで?

まだまだ子供やろ?」



私「うん?

うん、そうだけど、そうじゃない気がするんだ…。

もう、子供の心のままではいられない。

アタシは、子供を卒業することになる。

肉体の年齢は関係ない。

きっと、もう、ここには、戻ってこれない。

そんな予感がする。」



ひ「…?よく、意味が分からんけど…。

さっき、これからも友達つきあい、よろしく、言うてたやん?」



私「うん、それはそれ、これはこれって感じかな…。


これからの生活も一変するだろう。

もう、子供だから、とか。

子供には無理、とか言えない状況になる。

もう、無邪気に笑っていられない、そんな世界に身を置くことになる。

いや、もう、置いている。


アタシは、ひろみちゃんとは、属する世界が異なるんだなぁと肌身で感じるんだ。


だから、ひろみちゃんを見ててね、あぁ、懐かしいなって、感じるんだ。

今でも。」



ひ「?やっぱり、意味がよく分からんけど。

母親がおらんくなったから、大人にならんとかんって意味か?」



私「うん?そうかな?そうかも。


でもね、一つ確かなことはね。

アタシはひろみちゃんに会えて、とてもとても嬉しかったんだ。

今、アタシは自分が思う以上に、心が悲しんでいて。

それは、いつも、心の奥底に隠している、柔らかい感情がむき出しになっているような状態でね。

そんな時に、ひろみちゃんの心に触れて、アタシはものすごく癒されたんだよ。


本当に、会いに来てくれてありがとう、ひろみちゃん…。」










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姉「謝ってくださいっ!」



叔父「はぁ?なにをや。

お前、ワシに向かって何を言うとんのや。

頭おかしいんか?」



姉「頭おかしいのは、あなたの方ですっ!

私にしたことを、謝ってください!」



叔父「だから、何をや?

なに、お前、目上のモンに対して、そんな口をききよる?

もっと、おとなしゅうせんとあかんやろが。

ワシはお前の叔父なんやぞ?

姪なら姪らしく、ワシをたてろや。」



姉「目上だというのなら、目上らしく、尊敬されるようなことをしてからそんなこと言ってくださいっ!

なんで、アタシのスカートをめくって、足をなでてくるような真似ができるんですかっ!」



叔父「だから、何を言うとる?

お前の勘違いやろ。

どこに証拠があるっていうんや、この娘、頭おかしいんちゃうか!」



姉「私はやめてくださいって何度も言いましたっ!

それでも構わず、スカートをめくって、撫で回してきたのはあなたの方ですっ!

なんでですかっ!

大勢の人がいる、お葬式の最中に、なんでそんな非常識なことができるんですかっ!」



叔父「だから、何を言うとるんや、ワシに覚えのない以上、そんな事実はなかったんや!

お前、寝ぼけとるんやろ。

ほら、はよ、ワシに謝れや。

このどブスが。」



姉「お父さん!

この人、お母さんのお葬式の最中に痴漢を働いたのっ!

お父さんも見てたでしょ!」



父「…兄様、娘もこう言ってます。

ふざけるにしても、時と場所が悪い、ひどすぎですわ…。

謝たってください。」



叔父「はぁ!?

親子そろって、頭腐っとるんちゃうかっ!

なんで、ワシがこんなどブス相手に、痴漢を働いた、言われなかんのや!

堪忍袋の緒が切れたわ。

さ、はよ謝ってくれ。

そんで、慰謝料よこせや、この貧乏人どもめ。」



姉「…あなた、いったい、なんなんですか。

突然来て、義理の妹の葬式で、お寺さんがお経をあげている最中に、なんで、姪のスカートをめくってくるんですか!

そんな非常識な真似して、どうして、そんな口がきけるんですか!

謝ってくださいっ!」



叔父「だから、ワシ、そんなことしとらんやんけ。

ほら、なぁ。

ワシの隣に座っとった、嫁もなんも知らん、言うとるがな。」



おば「ねぇ!この子、自意識過剰なんじゃないのっ!

ウチの人に色目使って、いやらしい…。

ホントは男を誘ってるんでしょ!」



姉「…はぁ!?

あんた、なに言ってんのよ!

ここは、葬式よっ!

なんで、高校生のアタシが血の繋がった叔父に色目使うとか言えるの。

頭おかしいんじゃないのっ!」



叔父「いい加減にしろっ!

さっきから、おとなしく聞いていれば、言いがかりも甚だしいわ!

お前の足がどんだけの値打ちがあるっちゅうんじゃ!

さ、はよ慰謝料払えや。

お前の家族の前で痴漢の冤罪の疑いをかけられとるんやで!

ワシの心が痛むわ、はよ金はらえや!」



姉「何を言ってるんですかっ!

何度も、何度もやめてくださいって言っても、聞かなかったのはあなたの方じゃないですかっ!

恥ずかしくないんですかっ!

年端もいかない女の子のスカートの中に手を入れて!」



父「兄様…。

そんな大声あげんと、どうか、穏便に…。

芙美花、お前も我慢しときぃ。」



姉「はぁ!?

これは、立派な犯罪、痴漢よっ!

それも、親が死んで悲しんでいる子供に向かって、嫌だと何度も言っても、無理やり大勢の人前でスカートの中に手を入れられてなでまわされたのよっ!

慰謝料もらいたいのは、こっちのほうだわ!

こいつらが謝らなきゃ、気がすまないわっ!」



叔父「このたわけっ!

お前は母親が死んで、不憫に思った、ワシの親切をなんだと思っとるんだっ!

これは、身内のスキンシップや。

おじさま、アタシのことをなでてくれてありがとうございます、ぐらい、笑って言えんのか!

この、出来損ないがっ!」



姉「…!話にならない。

分かりました、警察に言って、相談します。

お父さん、証言してよねっ!

この人、アタシのスカートをめくって、足をなでてたよね!」



おば「何を言い出すの、この色キチガイの娘はっ!

ウチの旦那は清廉潔白よっ!

どこをどうとったら、ウチの旦那が犯罪者になるっていうのよっ!

あんたたちとは、育ちが違うのよっ!

この山猿同然の、野ザルみたいな顔して、ウチの人を犯罪者呼ばわりなのっ!

欲求不満で、ウチの人を誘惑して、無実の罪に陥れる気なんでしょっ!

色キチガイだけじゃない、金を搾り取ろうってこんたんなんでしょ!

このバカ娘がァ!」



叔父「そうだぞ!

名誉毀損で、訴えてやるっ!

お前ら、自分の立場がわかっているのかっ!

ワシは市会議員と知り合いなんだぞっ!

警察がなんぼのもんじゃっ!

お前たちを牢獄に入れるのも、ワシの胸先三寸なんじゃ!

はよ謝れっ!

この出来損ないの娘が、まともに、ワシと口をきけると思っとるんが、そもそも間違いなんじゃっ!」



姉「言うにことかいて、こっちをバカ呼ばわりするなんて、こっちのほうが名誉棄損よっ!

いいです、出るところでましょう!

裁判でも、なんでもします。

私はなにもやっていない、先に痴漢行為を働いた、あなたたちが警察に捕まることになります!」



父「芙美花、どうか、おさまってくれぇ。」



叔父「この、脳無しのクズがっ!

お前んとこの、嫁が死んだ、いうから、香典もってきてやったのに、なんだ、この対応は!

お前の娘が、ワシにサービスするのは、当然じゃろうが。

足の一本、二本、触ったぐらいで、ガタガタ言うなっ!」



私たち、兄弟は、父の一番上の兄夫婦と、姉の喧嘩を遠巻きに見ていました。



姉「お父さん、なんか言ってやって!」



父「芙美花…。

お前の勘違いやないか…。

まさか、そんな、兄様が、自分の弟の嫁の葬式で、姪に痴漢するハズないやろ…。」



姉「何を!

お父さんも見てたのに、何を言い出すのっ!」



父「こらえてや…。

兄様には、なにも言えんて…。」



叔父「けったくそ、悪い、娘じゃ。

ちょっとばかし、造作が綺麗やからって、生意気言いおって。

どうせ、男をくわえこんでおるんやろ!」



姉「はぁ!?

言っていいことと悪いことがありますっ!

バカなんじゃないのっ!

信じられないっ!

この痴漢の変態男がっ!」



叔父「この、出来損ないの娘の分際で、ワシにたてつくんが、間違っとんのや!

お前の父親はウチの一族の落ちこぼれやっ!

その娘のお前が一人前の人間扱いされんのは、当然のことなんやでっ!

おぉ、気分悪いわ、帰るぞ!」



伯母「まったく、まだ高校生の分際で、ウチの旦那を誘惑して…。

被害妄想も甚だしいわ!

この娘、頭悪いんじゃない!」



姉「帰れっ!

お母さんのことを、悲しむでもなく、この頭おかしいのは、お前らの方だっ!

今すぐ、帰れっ!」



父「芙美花…。

こらえてくれ。」



姉「お父さん、なんなの、この人たちっ!

遊びに来ているだけじゃないのっ!

なんで、アタシの味方してくれないのっ!

お母さんのお葬式だと思って、大声ださなかっただけで、どれだけアタシが怖い思いをしたと思っているのっ!

信じられない、こんな非常識な頭のおかしな人を呼んでっ!」



叔父「このアバズレがっ!ぺっ!」



叔父は、姉につばを吐きかけて、帰りました。



姉「きゃっ!汚いっ!」



伯母「汚いのは、あんたの心根の方よっ!

ウチの人を悪く言って、反省の色もない。

土下座して謝りなさいっ!」



姉「それは、こっちのセリフだっ!

二度とウチの敷居をまたぐなっ!

永遠に消えろっ!」



伯母「ぺっ!」



叔母も、姉につばを吐きかけていきました。

それを見守っている私たち兄弟を夫婦はギロリと睨みつけてきます。



叔父「はっ!

能無しの子供らしく、どれもこれも、下品で頭の悪そうな顔しとるわっ!

気分ワルっ!」



叔母「ほんとね!

来るだけ無駄だったわ!

香典返してもらいたいぐらいだわっ!

いくら払ったと思ってるの!

義理の妹が死んだくらいで、たいしたつきあいでもないのに、急な出費で大迷惑だわ!

あんたタチも目上の人間に、せめて挨拶ぐらい、したらどうなのっ!

いったい、この家の人間はそろいもそろって、どういう教育を受けているのかしらっ!」





私はただただ、青ざめて呆然とその様子を見ているだけなのでした。



私「…………。」



弟「…………。」



学ランを着た兄が、私たちの前に立ちふさがって、その大人たちに言いました。



兄「二度とウチに来ないでください。」



叔父「けったくそ悪いガキどもだな。

ニコリともしやがらない!

二度とくるかっ!

こんな家っ!」



兄「その言葉、そっくりそのままお返しします。

市会議員と知り合いだかなんだか知りませんが、それが、常識ある大人のする態度ですか。

妹と弟は、まだ小学生なんです。

あなた方のような人間と関わることは、情操教育においても非常に不適切です。

少しでも人間としての知恵があるのでしたら、付き合いを自粛してください。

おっと、自称育ちの良い、自分の言動がいかに醜いかの自覚のない、頭の弱い人たちでしたね、もっとわかりやすく言いましょうか?

人の形をしていますが、中身は空っぽ、常識や良心といった美徳をどこかに置き忘れた人たちでしたね。

どうやら、人間の言葉が通じないようだ、気の毒に。


猿でもわかるようにお伝えしましょう。

永遠に来ないでください。

いますぐ消えろ。」



叔母「けっ!

どいつもこいつも辛気臭い、下品で、無能そうな顔しくさって。

生意気なんじゃ!

ふんっ!」



私「………。」



弟「………。」



兄「…バカは相手にしないように、お前ら。」



兄が私たちに振り返るようにして、うつむきながら相手に聞こえるように、そう言いました。



私たち兄弟は呆然と、その大人たちを見送っていたのでした。



それは、お母さんへの読経が終わって、少し経ってからのこと。

お店の方へと、姉が父と、その兄夫婦を呼び出して、謝罪を要求していた様を、私たち家族は呆然と見守っていて。



大勢の弔問客からは死角に入っていた場所での出来事でした。




それ以前にも、母方の祖母が泣き喚いて、大暴れをしており。

私たちの母が早くに亡くなったことにより、逆縁の不幸を味あわせた私たち家族へ、呪いの言葉を吐いたりしていたのでした。


母が一度結婚に失敗して、今の父と再婚したことなどを暴露したり。

お前たちの父親はクズだ。

お前たちはゲスな男の血を引いた子供はクズだなどの暴言を繰り返していて。

それに、のっかるように、母の姉と妹にあたるおば二人も泣き叫んで、私たち家族を罵り続けました。


母の前婚の事実を知らなかった、私たちはその事実に呆然としていると。

まさこおばさんが、こんなところで、そんなことを大勢の人に知られるように話すものじゃない。

ご近所のひとや、仕事のつきあいできている人も大勢いる。

なにより、子供たちの心が傷つく、やめなさい!と、普段は温厚なまさこおばさんとは思えないほどの厳しさで祖母や叔母たちを叱りつけて、いさめていたのですが、まさこおばさんの目が届かなくなると、時間をおいて、不満がくすぶりまた私たち家族を詰り始めます。



祖母は、お前たちが母親の代わりに死ねばよかったのだと、まだ幼い弟の腕をつかんでなじり、責め立てたのを見て、私は祖母を突き飛ばし。


弟の手を引っ張って、逃亡をはかったりしていたので、精神的にもかなり参っていたのでした。







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食後のお茶を飲みながら、兄弟でのんきに、台所で卵焼き論に花を咲かせていました。



天気の良い日で、この日も暑くなりそうだとか、お話をしていました。





弟「ねぇ、今日はたくさんお客さんが来るんでしょ?

どれくらい来るのかなぁ?」





私「ん?そうだね、たくさん来るだろうね。」





兄「そうだな、本家が葬儀をしきっているくらいなんだ、それは大勢の人が来るだろうな。」





弟「どれくらい?」





私「え?そうだな、お父さんが7人兄弟で、お母さんが4人兄弟だから、それぞれが夫婦で、来るとして、9組み、18人で。

それぞれに、子供が3人から6人だから、30人から40人とか?」





兄「いとこはまだ子供だろうから、遠慮して連れてこないだろう。」





私「あ、そっか。

それじゃ、大人だけだとして、親戚がえっと、そうだ、おばあちゃんとおじいちゃんで4人追加で、22人か。」





弟「ふぅん?それくらい?」





兄「いや、親戚連中といっても、多少、縁の遠い人間も来るだろうから、もっと多いだろう。」





私「え?そういうもの?」





兄「村八分って言葉、知ってるか?」





弟「知らない。」





私「ん?仲間はずれって意味じゃないの?」





兄「ちがう、人間関係の付き合いにおいて、最低限度のルールとして、どんなに、仲違いをしている人間同士でも、冠婚葬祭、つまり結婚式と、葬式には顔を出すって意味だ。



特に葬式は、その人とのつきあいの最後の瞬間になるから、よほどの事情がない限り、顔を出すっていうのが、常識とされている。

当人が重い病気とか、極端に遠方に住んでいるとか、本人の努力ではどうしようもない場合のみ、参加しないのが許されるんだ。



逆を言えば、この付き合いをしない人間はマナーやエチケットがなっていない、非常識な人間と判断されることになる。



この二つの儀式だけは、人付き合いを絶ってはいけないというのが、社会のルールなんだ。

ムラ社会においての、譲ることのできない二分がこの二つの儀式。



それ以外を村八分という。

お前が言った、仲間はずれというのは、そこをつきあいしないという意味だな。」





私「なるほど。

結婚式と、葬式が村二分ってことなんだね。」





弟「へぇ。それが一番大事なつきあいってことなんだ。」





兄「そう。

だから、さっきお前がカウントしたのは、直系の尊属および、兄妹と、その配偶者のみだ。

それは当然葬式にかけつけてくる人間だが、それ以外の親族も当然来客として現れることになる。



叔父、おばとか、おい、姪とか、従兄弟とかな…。



そして、知人、友人を含めると、もっと数が増えてくる。」





私「あ、そっか。

昨日も、お父さんの従兄弟のカナおばさんが顔を出してくれているくらいだし、そうだよね…。

たくさんの人が来るよね…。」





弟「それじゃ、50人とか?」





私「ん?それくらいにはなるかもね。」





兄「いや、50人では、まだ数が少ない。

おそらく、父ちゃんの仕事のつきあいの人間とか、近所の人もくるだろうから、100人以上は見込まれるな。

昨夜の通夜でも100人近い人が来ていたようだし。」





私「そっか…。

100人以上か、すごい人出になりそうだね…。」





弟「そっか。

大勢の人が来るんだね。」





兄「そうなるだろうな。

まぁ、本家が仕切ってくれるんだ。

俺たち子供はおとなしく、言われた通りに動けばいいと思うぞ。」





私「そうだね。何をどうしたらいいかなんて、分かんないもんね。」





弟「そうかぁ。

でも、ぼく、しんせきの人の顔と名前、よくわかんないんだよねぇ。」





私「私も。」





兄「俺もだ。

ま、相手もそれはわかっているだろうから、そんな無茶なことにはならないと思うぞ。」





私「うん。」





弟「よかったぁ。ぼく、ほんとに誰もよくわかんないんだもん。」





兄「ま、俺たちはまだ経験の浅い子供なんだ。

今日を無事終えれば、また落ち着くことになるよ。

それまでの辛抱だ。」





私「うん。」





私たち兄弟は、少しの不安と、慣れないことに直面するという心細さを抱えながらも、まだまだのんびりした気持ちでいたのでした。



しかし、私たちの予想をはるかに超えて、母の葬儀に参列した弔問客は500人をゆうに超えたのでした。











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