まだ私がひろみちゃんと仲良くなってすぐの頃にひろみちゃんの家に遊びに行った時の事です。

ひろみちゃんと、岡田家の台所で、おしゃべりしていたら、ザリガニ採りに行こうという話になりました。

彼女のお家は用水のすぐそばにあって、そこにザリガニがいっぱいいるという話です。

それで、タモとバケツがいるよね、という話になり、ひろみちゃんが得意そうに言い出し始めました。

岡田「そこでウチのママンはウチらのために、タモを用意してくれてんやで?すごいやろ?」


私「あぁ、うん。
そっか、買ってくれたんだね、ありがと。」


岡田「やっぱり一本のタモで二人で使うには不自由やん?
そこで、ママンは豪気にもタモとしかもバケツまで購入してくれたんやで!?」


私「あ、バケツまで買ってくれたんだ。
そりゃ、別々に移動できて、便利だね。」


岡田「そや!これが新作のバケツやで!」


ひろみちゃんは、いったん台所の奥に引っ込んだかと思ったら、ポリ容器でできた、ごく普通のポリバケツを取り出しました。


私「へぇ。新品だ。」


岡田「そやで!ウチらのレジャーの為に!
そして、お掃除にも利用できるように、新品のバケツを買うてくれたん。
なんと、お値段1500円!」


私「え…。
そのバケツ、ウチの店で売ってる奴で、たしか値段はごひゃ」


ひ母「しんじゅちゃ~ん?ちょっと、こっちおいでぇ?
ひろみちゃんは、ザリガニ採りの準備しときぃ?」


岡田「はぁ~い!ママン!
もう一個のバケツ、どこやったかな…。」


ひろみちゃんは、お風呂場へとバケツを探しに行ったようです。

私は廊下からちょいちょいと手を出して、手招きしているおばさんの元へと移動しました。


私「おばさん、なに」


スパーン!!

私「え。」


私は最後まで発言することなく、私の目の前を白い何かがひらめいて、私の脳天を叩いてきたのでした。


ひ母「よぉよぉ、しんじゅ商会のお嬢様。
ウチの娘に余計なこと言わんといてんか?」


私「え、なに、今の。」


私が目をぱちくりとさせていると、ひろみちゃんのお母さんは、私の前でニヤニヤと笑いながら、両手を後ろに隠しています。


ひ母「今のか?
今のは、ウチお手製、教育的指導の用具。
名づけて、ハリセンや。」


ひろみちゃんのお母さんは自慢げに私の前に白い紙でできた大ぶりのハリセンを見せてきました。


私「…これが、ハリセン…。
実物初めて見た…。」


ひろみちゃんのお母さんは、シュッとハリセンを引っ込めて、自分の体の後ろに隠しました。


岡田「ママン、もう一個のバケツ、どこにあった?」


ひ母「あぁあぁ、そうやった、そうやった、さっき子供部屋の窓掃除に使っとったから、そこらへんに置きっぱなしやわ!ごめんな!」


岡田「うん、分かった。そっち行って取ってくるわ!」


ひろみちゃんは、軽快な音を立てて、階段を登っていきます。

私は脳天を押さえながら、おばさんの背後に回り込みました。
おばさんは、すかさず、私に対して体を正面に向けます。
二人してくるくる回ることになりました。


ひ母「ちょ、ナニ!?」


私「いや、ハリセン。
もっと見たい。」


ひ母「ちょ、そんな事言うとって、ワイに襲いかかる算段しとるんやろ!?」


私「いや、ハリセン、見たい。
見せて。」


ひ母「ワイを叩かんか?
約束できるか?」


私「うん、そんなんどうでもいい。
ハリセン見たい。」


ひろみちゃんのお母さんはちょっと警戒しながら、私に白いハリセンを見せてくれました。

私はそれをしげしげと眺めて、言いました。


私「おばさん、これ、手に取りたい、もっと見せて?」


ひ母「そんなん言うたかて、ワイをだましうちする気やないか?」


私「うぅん、そんなん興味ない。
もっとハリセンの構造を見たい。」


ひろみちゃんのお母さんは私にハリセンを怖々と渡してくれました。

私はハリセンを手に取って、しげしげと眺め始めました。


私「…ほんとに、紙でできているんだ…。
あんな、スゴイ音したのに、ただの和紙だ…。
あ、でも、二重構造になっているな。」


ひ母「そや。
一枚では強度が足りんかったから、二枚重ねて折り込んだる。」


私「ほんとに紙だけだ。
それでひだひだに折り曲げて、あの音、あの強度。
ただの紙が棒みたいに強度を増す…。

これ、机と机の間に隙間作って、山谷が上下になるように横に置いて、その上に水を入れたビーカーを置いても、大丈夫なんじゃないかな。
実験したい。」


ひ母「さ、はよ返して!」


私「あぁ、うん。」


私がハリセンをひろみちゃんのお母さんへと返すと、ものすごく素早く引き抜いて、体の後ろに隠しました。


ひ母「ふぅ。
ホンマに殴らんかったね、アンタ。
ワイ、小鳥のハートがどちどちしたわ。」


私「いや、私も胸がドキドキした。
こんなやわな素材から、これだけの強度がでるとは、思いもよらなかった。
やりようによっては武器として使えそうな気がする…。
いろいろ応用が効きそうな気がする、実験したい…。」


ひ母「ふぅ。
ハリセンは、お笑いを取るための武器や。
大阪では神器として讃えられてる伝統工芸品なんやで?」


私「神器?初耳だな。」


ひ母「ホンマおまはんは、ちょっと一風変わった子やな。
頭叩かれて怒り出すどころか、ハリセンに興味持つとは、ワイ、思いもよらんかったわ。」


私「ん?そういえば、なんで頭叩かれたんだろう?」


ひ母「そやった、そやった、それそれ。
あれな、教育的指導!」


岡田「ママン、お風呂場にも二階にもなかったよ?」


ひ母「ひろみちゃ~ん、ごめんごめん、表で道路に水まいとったわ!
タモだけ用意したら、えぇんちゃうかな?」


岡田「あ、そう?
それじゃ、表ちょっと見てくるわ。」


ひ母「ごめんごめん。」


ひろみちゃんが、靴をひっかけて、台所の勝手口から表へと出て行きました。


二人してそれを見送ってから会話を続けます。


私「で?」


ひ母「つまり、ウチのドーターにもしものことがあったらいかんっちゅう、監修の元、作り出された秘密兵器ってわけや。」


私「ん?さっき、大阪の伝統工芸品って言ってなかった?
それに、どーたー?
あ、娘の英語か。
おばさん、発音悪いよ。」

スパーン!

またしても、白いハリセンが私の頭に炸裂します。


ひ母「ふ。
それはそれ!これはこれ!
臨機応変が大阪人のスピリットなんやっ!
滑舌悪くて、悪かったな!
さすがしんじゅ商会の次期社長!言うことが違うな!
英語分かるんか。」


私「アタタ、また叩かれた。
英語はちょっとだけ。」


ひろみちゃんのお母さんは私に向かってファイティングポーズをとりましたが、私はまたハリセンに釘付けになっています。


私「うわぁ、ハリセンってほんとにすごいな。
吉本新喜劇でテレビで見たことあったけど、実物はこんなんなんやなぁ。
で、なんで、叩かれた?私。」


ひ母「がくっ!
拍子抜けするわ、ほんまおまはん育ちがいいんやな。
頭どつかれた事より、なんで自分が暴力振るわれたかの理由を知りたがるんやな。」


私「あ、暴力ふるったって事は認めるんだ。」

スパーン!

またしても、ハリセンが炸裂します。


私「え?今、なんか、まずった?」


ひ母「えぇか?ウチがこれを使うんは、おまはんのカッチコチの心を溶かすためと、もう一つは大人に気に入られる愛される子供にするためなんや。
大阪人のスピリット。
それは愛と平和とラブ&ピースの精神を叩き込んでやるためにワイが致し方なくやっていることなんや。」


私「愛と平和とラブ&ピース…。
繰り返してるだけじゃ…。
え、ビートルズ?」


ひ母「雰囲気や!
大阪人のピースフルでラブに溢れたスピリットを表現したら、こうなるんや!」


私「さっき、娘のなんかの監修の為とか言ってなかった?」


ひ母「それはそれ!」


私「これは、これ、ですね。」


ひ母「はい!正解!」


私「で、話を戻すけど、なんで、アタシ頭を叩かれたの?」


ひ母「それは、バケツの値段を言おうとしたからです。
あ、おまはんにつられて、標準語になってしもた。」


私「それが?
なにか問題でも?
それに、大分違ってるよ。
あれは600円もしないのに、1500円は言い過ぎでしょ。」


スパーン!


私「あれ?なにかマズった?」


ひ母「あれは、母の愛の値段です!」


私「は?」


ひ母「ひろみちゃんが1500円やと思っとったらよろしいっていう話です!」


私「値段にいつわりあり。
ジャロに訴えじゃろ。」


スパーン!


ひ母「無駄に面白いわ!」


私「え?なにかマズった?」


ひ母「ここんち着た日にも言うたはずやで?
郷に入れば郷に従え。
ここは局地的に関西方面なんや。
大阪人の気持ちになって、考えてみぃ!
おまはん、頭えぇんやろ?
そんなら、く・う・き・よ・め!」


私「はい、分かりました。
元の値段はこの際さておき。
ひろみちゃんは、おばさんに、1500円もの大金をつぎ込んで私たちのレジャー用品を購入してくれた、という認識を持つことで、より深い母の愛情を感じさせるための、情操教育、ということでよろしいでしょうか?」


ひ母「ふふ。
筋がえぇで?
母の愛はプライスレス!」


私「プライスレスなら、タダじゃ」


スパーン!


私「ワタクシの思い違いでございます。
値段のつけようもない、山より高い、そして、海より深い愛情の価値を表す言葉がプライスレスだと思いますっ!」


私は警察官が敬礼するみたいなポーズをとって、ひろみちゃんのお母さんへと言います。

ひろみちゃんのお母さんはハリセンを手に持ったまま、腕組みをして、うんうんとうなづいています。


ひ母「そこで、もう一つ。
もう一山ありやな。」


私「は!なんでございましょうか!?
ご指摘いただけたら、恐縮でございますっ!」


ひ母「次の課題、ミッションはこうやっ!
この教育的指導をおもいっきり詩的に表現してみせよ!」

スパーン!と、ハリセンを柱に叩きつけながらひろみちゃんのお母さんは言いました。


私「はっ!
この白いハリセンは、ひろみちゃんのお母さんのひろみちゃんに対する愛情を正確に表現するための、私への指摘棒の役割を果たしていると思われますっ!」」


ひろみちゃんのお母さんは、首をひねってます。


ひ母「ん~、それでは及第点をやれんな。
もうちょっと、もうひとひねり、ふたひねり!
そして、もっと格調高く、美しくっ!」


私「はっ!
ひろみちゃんのお母さんの使うハリセン。
それは愛を表現し、私が愛される大人になるためのステップとして使われる、まさに天使の羽っ!
そよかぜに似た優しさにつつまれた教育的指導。
ほおを羽で撫でられているかのような感覚で、ふわっと優しくなにも感じません。
それはまるで朝露にきらめく、えっと、太陽の光の反射のごとき神々しさでございますっ!
眩しくてなんにも見えない!
あぁっ!感動!感謝!感激でございますっ!」


ひ母「よっしゃ、よっしゃ。
どこにも暴力の片鱗を感じさせん、麗しい表現や。」


私「お気に召していただけて、ありがとうございます!
今後も引き続き、愛情に満ちあふれたご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願いいたします。」


ひ母「ふふ。
よろしい。
ほな、アンさんがNGワードを言いそうになるたびに、指導、いや、愛のムチ、いやいや天使の羽を使わせてもらうから、気ィ引き締めときな!(笑)」


私「はっ!なるべく、おばさんの手をわずらわせること無き様、努めてまいりますっ!」


ガチャ。

勝手口が開いて、満面の笑みでひろみちゃんが声をかけてきました。


岡田「あったよ~!しんじゅ。
タモも用意したった、外であそぼっ!」


ひろみちゃんのお母さんは高速で、ハリセンを体の背後に隠し、満面の笑みで首をかしげながら言葉を紡ぎます。


ひ母「ほな、ウチのひろみちゃんと、あんじょう、仲よぉ、したってぇな?
しんじゅ?」


私「はい、よろしくお願いします。」


岡田「ほな、表で二人で遊んでくるね!」


ひ母「はは、いってらっしゃーい(笑)」


私はペコリと頭を下げると、靴をはいて、ひろみちゃんとザリガニ採りに興じたのでした。


二人して用水を道路の上から眺めながら、長い竿を持つタモを水の中につけて、ザリガニを捕まえようとしています。


岡田「なぁ、ウチのママン、最高やろ!(笑)
こんな高級品をウチラの為に買ってくれたんやで!」


私「うん、まぁ、なんちゅーか、すごい個性的だけど、ひろみちゃんが愛されとるっていうのは、よく分かった。」


岡田「そやろ~!
ウチのママン、世界一や!(笑)」



その後も、ひろみちゃんが、私がおばさんからハリセンにて教育的指導を受けているシーンを見ることはなかったのでございます…。

あぁ、平和だね…。



ハリセン









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ひろみちゃんのお家で、夕ご飯をご馳走になって、私は自分の家へと帰宅した。

ひろみちゃんのおばさんは、私たちが仲良さそうにしていたのを見て、満足そうだった。


なんだか、いろんなことがうまくいきそうな、そんな期待感を持って自宅へと帰った私は、勢いよくランドセルを廊下へと投げ入れた。



ガシャン…。




薄暗い上り口の奥のあたりでストップした、ランドセルに、何かが当たった音がした。



私は廊下へとあがると、ランドセルをどかして、物音の正体を確かめた。


それは、見たことのない瓶詰めで、手に取ると、ジャラジャラと音がした。



私「…クロレラ…。


えっ!1万2千800円っ!
高っ!
なにこれ、薬?」


黒い瓶詰めのラベルを見ると、商品名と価格が印字されている。


当時の物価はあんぱんが一個50円ぐらい。

一万円を超える薬品なんて、とても高級品に思えたのだった。



私「なにこれ、お母さんが買ったのかな…。


具合が悪いなら、病院に行って、薬を出してもらったほうが安いんじゃないのかな…。」


台所の入口にもあたる、直角に曲がる廊下で、私は瓶詰めを持って、一人でブツブツとつぶやいていた。


天井からぶら下がっている照明は30ワット。
電気代を節約するため、薄暗い明かりの下で、私は、不安な気持ちになってきていた。

ふ、と、昨年の秋に、用務員のおじさんに軒下から助け出されて、それから校門の前に停車していた車に乗り込んだときの気持ちが蘇ってきた。



三角に尖った黒い屋根の上には暗雲が垂れこめて、なにかの災厄を暗示しているように思えて、背筋がゾッとした、あの感覚だった。



私は手のひらの中の瓶を転がすと、瓶の中で薬品がジャラジャラと小さな音を立てた。


なんだか、嫌な予感がして、台所の窓際へと寄ると、似たような瓶詰めがいくつもある。

ビタミンE、ビタミンA、イチョウ葉エキス、チョウザメのなんとか、なんとか油、なんとか粉末…。


お母さんは、健康食品に手を染めるようになっていた。




私はそれらを見て、値段を確認し、また驚いた。



そろばん塾の月謝代で500円足りないということで、お父さんに滅茶苦茶殴られていたのが信じられないほどの高額商品ばかりだったのだった。



私はうすらぼんやりした頭で、なにか、不吉な予感が自分の体の中をめぐるような、そんな気持ちに襲われていた。




私は手に持った瓶詰めをまた元の位置に戻し、頭を勢いよく左右にふって、その不安な気持ちをふりはらおうとした。




私にはひろみちゃんや、ひろみちゃんのお母さんという心強い、確かな味方ができた。



今の私には、向かうところ、敵などいないのだ。



そんな風に思い込んで、自分の部屋へともどっていった。







それからは、かなり平穏な小学校生活が続いていくことになった。






4月末に私に熱湯をかけてきた、お隣の家の女の子、自称天使のアイちゃんは、秋には毎日学校に出てくるようになっていた。


そして、ある秋の日、教室で、私に話しかけてきた。



アイ「自分でも、よく分からないの…。


どうして、しんじゅちゃんを殺してもいいと思っていたのか、それが不思議なぐらい。
本気でしんじゅちゃんを死なせてもいいと思い込んでいたのよ…。
お医者様に、何度説明をされても、しんじゅちゃんを殺すのがいいことだと、私、信じ込んでいたの。

あんなに、仲がよかったのに、自分でも自分が信じられない…。


ごめん、ごめんなさい、しんじゅちゃん…。」



うす茶色の瞳をした、アイちゃんは、私を正面からじっと見つめて、つぅっと涙を流した。


その瞳には、自分の保身とか、体裁を守るための打算とか、そういうやましいものはみじんも感じられなかった。

これで、アイちゃんは大丈夫、アイちゃんのお母さんも安心するだろうと、私は思った。




姑息女子からの嫌がらせも収束し、なんどか小宮先生はひろみちゃんに接触してきたが、絶妙な加減でひろみちゃんは演技をかまして、何事もなく、不穏な日常とはおさらばしたかのように思えていた。




私はテストで毎回49点を取るように加減をしていたが、小森先生は次第になにも言わなくなっていた。




冬になり、吐く息が白くなるころ、私は突然ひらめいた。



猫が車の下から飛び出して、物音に驚いて逃げ出す様を見て、気づいたのだった。


小宮雅子という人物が、どうやって、モモ先生や木嶋先生の車に細工をしたのか、その方法が分かったのだった。



思わず、ひろみちゃんにその方法を興奮して伝えたが、警察にタレコミするわけではないのなら、内緒にしておいた方がいいだろうと、そっけない返事だった。



その頃には、交通事故に遭った木嶋先生は、学校に復帰していたが、児童虐待、もっといえば、児童への性的虐待を疑われるとか、そういう噂が流されて、人が変わったように大人しい人物へと変わっていた。



そして、あの保健室の新しい代理の先生、太田先生にモーションをかけられたようだったが、モモ先生を知っている木嶋先生にしてみたら、自分の仕事に誇りも誠意もない対応をしている彼女にまったく魅力を感じないと、手厳しく振ったようだった。


その時、知ったのだが、モモ先生はスクールカウンセラーの招致が認められず、それならばといじめの実態を把握するために、児童へのアンケートを実施しようとしていたが、まわりの先生の反対にあっていたのを押し切るために、勤務時間内には、アンケート用紙の集計作業は行わない、すべてプライベートの時間で集計するから、県から残業手当などを請求しないと、約束していたのだった。

モモ先生はたった一人で500人もの児童のアンケートを自宅で集計作業を行っていたのだった。

それも、動物の死骸を投げ込まれるという嫌がらせを受けながらも、一人でコツコツと作業をしていたそうだ。

私はそれを知り、いたたまれない気持ちになったが、小宮の犯行を警察へは言わなかった。


その頃には小宮も太田先生に媚びを売ることもしなくなり、太田先生は居心地が悪そうだった。



そうして、年が明けて、お正月を迎えるころになると、お母さんはだいぶ具合が悪そうだった。




普段あまり親戚づきあいをしていない我が家でも、お正月ぐらいは本家へと挨拶へ出向く。

お母さん抜きで親戚へのあいさつをして、お母さんはひとり家で寝込んでいたのだった。


私が小学5年生になっても、たびたび家の商品が大量に盗難にあう、という事件は起こり続けていて。



いつも陽気で、能天気だった父親もなにかとイライラが募りがちだった。


盗難被害を最小限に抑えるため、仕入れの段階で高額商品は姿を消したが、それでもいきなりポテトチップスが50袋とか、お刺身が全消えとか、不思議な盗難は起こり続けていた。



お母さんは時々、おかしな事を言うけれど、家族の中で私とお兄ちゃん以外はお母さんの異変には気づいていないようだった。




春になると、私は小学6年生、兄は中学3年生、姉は高校一年生となった。


弟も小学2年生。

お母さんは、とても体調が悪くて、姉の高校の入学式へは出向けないと、母方のおばに、代わりの出席をお願いしていた。


お正月明けにお母さんは地元の病院で受診をした。


その後、その病院の看護婦さんが、その病院の院長の命令でこっそりとお店にわざわざ買い物に来て、普段の母の様子をうかがっていたらしい。


その時点で、母の全身にガンが転移しており、もう、手の施しようのない状態だったのだった。



お母さんの命の火が消えようとしていた。




事態を悪化させていたのは、お母さんは健康食品だけでなく、ヒマワリ教(仮名)にも手を出していたことだった。




手をかざせば病気が平癒すると謳って、時々白い装束を着た大人が何人も家にあがりこむようになっていた。



家の中には健康食品だけでなく、奇妙な金ピカのシールが張られた、奇跡体現グッズが所狭しとならぶようになっていて、それらがさらに我が家の家計を圧迫していったのだった。






正気を失ったお母さんは、宗教に救いを求めていたのかもしれない。




お母さんのお葬式の様子を思い出すにつけて、お母さんは小宮に強迫されたことを、親族の誰にも相談していなかったようだった。



私は小学6年生になっていたが、お母さんの病魔がそれほど深刻なものだとは、まだ気づいていなかった。



小宮からの嫌がらせを警戒して、勉強ができないフリを続け、そして友達もひろみちゃん一人に絞って気配を消して新しいクラスになった私に、にこやかに声をかけてきた女の子がいた。


その子が後に私の親友となり、そしてとんでもないトラブルメーカーともなる強烈な個性を持った女の子だったが、それはまた別の話。



今回のお話はここまで。


このような奇妙な体験談の長文にお付き合いくださいまして、皆様ありがとうございました。











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とぽとぽとぽっと、湯呑に番茶をそそいで、目の前にずずぃっと押し出します。
額の辺りがズキズキと痛みます。


私「ま、粗茶をどうぞ。」




岡田「そんなんで、ごまかされへんで!?


よくも、ウチの事を馬鹿にしてくれたな!しんじゅ!」


私「いやぁ、バカにするなんて、とんでもない…。」




岡田「なんなん!


いくらウチが美少女やないとしてもやな!
もっと、他に言いようってものがあるやろ!
失礼やんかっ!」


私「ははぁ~、おっしゃるとおりでございます。」




岡田「ふんっ!」




ひろみちゃんは、ぶんむくれた後、私の差し出した湯呑を手にとって、ずずっとお茶を飲みました。



私はへこへこと頭を下げてそれを見守っています。



岡田「ふへぇ。


なんで、最初から正直に言わんかった。」


私「だって、あとでひろみちゃん、お母さんに話すでしょ?


そのまま話したら、私があとでおばさんから教育的指導を受けることになる。」


岡田「教育的指導?なにそれ?」




私「ハリセンで…。


おっと、これは秘密やったな。」


岡田「なに?そりゃ、ウチのママンはウチの悪口を許さへんで!


怒られても当然やわ!」


私「悪口などとは、露ほども思っておりませぬ。」




岡田「悪口やろ!


上品で育ちのいい美少女と真逆やと言われたら、誰かて気分悪なるわ!」


私「いいえぇ、最初からそんな風には言わんかったやない。」




岡田「結果、おんなしやろ!」




私「滅相もございません。


これでも気を使ったつもりでございます。」


岡田「なんなん!アンタ、正直なのが信条、みたいなこと前言うてたやんかっ!」




私「そのとおりでございます。」




岡田「ちゃうやん!


正直ちゃうんやん!失礼やん!」


私「私がこの家に通い始めて学習したことは二つ。



『物は言いよう!』『臨機応変』でございます。

どうぞ、ご容赦ねがいます。」


岡田「…ぷはぁ!


もぉ、ええわ!」


私「お後がよろしいようで…。」




岡田「ウチ、最初のうちは全然気づかへんかったわ…。


ウチも完全に小宮の射程圏内かと思っとったわ…。」


私「ひろみちゃん、自己肯定感強いな、うらやましい。


おばさんの教育の賜物やろうな…。」


岡田「おおきに。


せやけどあんさんの、物は言いよう…。
ウチの事を、美少女ではない、ということを、あんな言い回しできるやなんて、すごいな、逆に経営者タイプやで?」


私「ははぁ~、おほめのお言葉をちょうだいつかまつり、感謝感激でございます。



…しかし、すごいな、そういう観察力。

スッと、そういう感想とか、言葉が出てくる。
ここがひろみちゃんのスゴイところなんだよな…。

とても小学5年生とは思えない…。

しっかりしてる。」


岡田「え?それ、褒めてる?」




私「うん、はめてる…。


いや、お世辞とか、冗談抜きで、ホントに頭いいな、この子…。」


岡田「えへへ。」




私「ん…。


いや、ちょっと、これ、真面目な話なんだけど。
バカのフリするっていうのは、本当に賢くないとできないと思うんだ。

だから、ほんと頭の回転の早いひろみちゃんでないと、小宮を出し抜くことはできない…。

頼りにしてます。」


岡田「おう!まかせとき!」




私「ん…。


それと、これも真面目な話。

小宮が狙うのは基本、キラキラした女の子たちなんだけど、逆にどこか見劣りする子も狙うんだよね…。

勉強が苦手とか、運動がダメとか、人前で話すのが苦手な内気な子とか。
あと、空気読めないタイプ?そういうのも、ダメだろうね。

抹殺したくてしょうがない…。」



岡田「あぁ、典型的な弱いものいじめやね…。


自分より弱いものを狙っていちびり倒すっちゅー性根のひねくれた人間の考えそうなことやわ…。」


私「キラキラ女子と、弱いもの…。


なんか、対照的で…。

そうか、小宮はコンプレックスが強い人間なんだね…。

自分の方が優勢だと感じる相手には強気で押さえつけてくるし、自分にはない魅力を持っている人間、この場合小学生女子だけど、そういうのも踏み潰したくてしょうがなくなっている…。

なんだ?なんか、かなり単純な人間だぞ?

未熟で幼稚でコンプレックスの塊、それが小宮雅子なのか…。

そして、祖父の言動を模倣していて、弱者は抹殺してもいいと考えている。

交通事故の細工も、もしかしたら、祖父のやったことの模倣なのかもな…。」


岡田「あぁ、コンプレックスの塊!


そう考えるとガテンがいくわ!

顔の可愛い子、人から好かれている素直な子、お金持ちで育ちの良さそうな上品な子。

どれも少女漫画の主人公タイプやないけ。
小宮からほど遠いキャラクターやもんな!

自分にはないものを持っている子が憎くたらしくてしょうがない。

だから、子供たちをいじめている。

あきれるほど、幼稚な人間やわ!

よく教師やっとるわ!」


私「あぁ、あと、自分は恵まれているとうぬぼれている人間も嫌いだね。



あの太田っていう保健室の新しい先生!

アイツ、小宮の頭の中で何度切り刻まれたかしれないよ!」


岡田「あぁ!あの軽薄な奴な!


話聞いとっても、腹が立ってきたわ!」


私「だいたい、保健室にやってくる子どもなんて、体調が悪いに決まっているのに、笑顔をふりまかないとか、愛想がないとか、意味わかんねーよ。


なんだ、あの女!
モモ先生の爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいよ!」


岡田「ホンマになぁ!


子供のための先生やのに、子供の世話しとる場合やないって、なにを言っとる!
性悪軽薄女なんて、誰も相手にせえへんで!

学校に男をあさりに来とるんかいなっ!

気色悪っ!」


私「まぁ、あの太田って人間に関しては、小宮でなくても同性からは嫌われるタイプだろうけどね。


あ~あ、お菓子の催促までして、ずぅずぅしい人間だよ、まったく。
ポテチもコーヒーも家の店の盗品だっちゅーの!」


岡田「うわぁ…。


その女、ダメダメだな。」


私「あぁ、本来なら、完全にターゲットにされているタイプだよ、アレ。


自分で若くて可愛いとか言ってて、しかもアホっぽいし。
あれは完全に小宮の射程圏内だけど、あれはあれでよかったんだろうなぁ。

そうでないと、今度はあの先生の車が炎上することになる。」



岡田「なんで、そうならへんかったんやろ。


小宮やったら、ねちこく恨みそうやで?」


私「さすがに二人続けて保健室の先生が交通事故を起こしたら警察に疑われるだろうからね。


それで、したでに出て、取り入る作戦に出たんだと思うよ?

あとはなんだかんだ言いがかりをつけて、カウンセリングとか進めないように妨害するつもりだった。

それが、最初からやる気のない臨時の先生だったのが幸いして、仲良しこよしごっこをしているんだ。

アイツ、いつか牙を向かれるとも知らないで、調子こいてたけどな。

『はは、太田先生は軽やかで可愛い方だ。』とか、小宮歯の浮くセリフはいててさ。

カーテン越しにも、ものすごい殺気が出てたけど、肝心の太田は気づいてないんだ。

褒められてると思ってる。

あぁいうのが、なんだかんだで生き残るタイプなんだろうねぇ。」



岡田「憎まれっ子世にはばかる、やね。


やれやれ。」


私「はぁ…。


だいたい、これで言いたことは言えたかな。
作戦会議は終了となります。」


岡田「はい!隊長、ついていきます!」




私「了解しました!



…でもね、この話はほとんど、私の想像や推測ばかりだから…。

バックに議員がついているっていうのも、憶測で、私が見た光景も本当のことかどうかは分からない。

けれど、木嶋先生や、モモ先生が車の事故を起こして、その直前に理科室の雑巾やアルコールランプが消えている。


本当に恐ろしい女なんだ、小宮は…。」



岡田「ブルブル。」




私「正直、私が生きているのもほとんど偶然なんだ…。


去年のいじめで何度死にかけたか分からない。
そして、私をいじめていた子供たちはみんな、何らかの処分を受けている。

小宮に洗脳された結果だ。

弟の薫の事もある。」


岡田「ほ、ホンマや…。


ウチ、あんさんの話、信じるわ…。
憶測やなんて、そんな控えめに言わんでもえぇ。
ほぼ、小宮が黒やというのは、間違いないで?」


私「うん…。


私も怖くてたまらない。
アイツは人を死なせる事をなんとも思わない人間なんだ。
まともにやりあったら、命がいくつあっても足りない。

これは非常に受身のやり方だけれど、これ以上被害を出さないようにするための作戦なんだ。

消極的な行動に思えるけれど、戦略的に引くことも大事だ。」


岡田「命あっての、モノだねやでぇ?」




私「うん、そしてね…。



私、思うんだ。

私たちは、生まれた時から平和な世の中で…。
戦前に生まれた人とは、同じ日本人でも感性や、精神構造が違うんじゃないかって。

戦争の爪あとは、終戦から40年たってもまだ微かに残っている。

それを引きずっているのが小宮で、その歪みを受けて、今、私は苦しんでいる。

けど、戦争を知らない世代の私が、その歪みを受けて、これ以上歪みを広がらせないようにすることが、大事なんじゃないかって。


私たちは愛と平和を知って育った世代だから。

そんな風に歪まないように生きていくことが大事なんじゃないかなって、思うんだ。

私はひろみちゃんのお母さんの愛情に触れて、とても大事な事を教えてもらったと思うんだ。


ひろみちゃん、これからも、私の友達として、よろしくね。」



岡田「うぅん、ウチとしんじゅは、ただの友達やない。


もう、家族、姉妹なんやで!
一緒に頑張っていこうな!」


私「うん!」







階段の下から、おばさんが夕御飯ができたと大きな声を出していました。






私たちはお盆に急須と湯呑を乗せて、小さな折りたたみのテーブルを片付けて、急いで台所へと向かいました。














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私は机の上に置いてあった急須から、番茶を湯呑にそそいで、一口飲んで、語り始めました。

ちなみに、この机は折りたたみ式の小さな机で、子ども部屋に入った直後には片付けられていました。

床に寝転がって毒づいていた時には机はなかったのでした。



私「ふぅ。
それでね、散々おどかしておいて悪いんだけど、実は今までとまったく変わらないのよね。」


岡田「え?変わらへん?どこらへんが?」


私「ひろみちゃんが、小宮が接近してきた時にする態度。
今までと基本、まったく変わりません。」


岡田「え?アホな子やと思わせとくっちゅーやつ?」


私「そう。油断させておくだけ。」


岡田「なんで?なんで、変わらへんの?」


私「ん…。
さっき、ひろみちゃんにお話していた時に、ふと、私も気づいたんだけれど…。
小宮は尊大な態度に仰々しい言葉づかいをしているけれど、基本、おじいさんの模倣なんだよね…。

自分のおじいさんが偉大な人だと、周りからほめたたえられていたから、人付き合いにおいて、めちゃくちゃな言い回しとかしてても、オッケーだと思い込んでいたようだし…。

だいたい、おかしいでしょ、女の人が、あんな軍隊言葉つかってて…。
先生だよ?それも小学校の。
やたら個人情報保護だとかなんとか、言ってても、なんかの冗談かと思っちゃう。」


岡田「あぁ、妙だよなぁ。なんなん?この人、思たわ。」


私「ん…。
えらい立派そうな言い方をしているけれど、実は中身は幼稚な人なんだよね…。」


岡田「幼稚…。あぁ!そうやね、幼稚なんやわ…。」


私「犯罪者として、捕まらないようにっていうことに気を使っていて、頭良さそうに思えるけれど、精神が幼稚で、未熟な人なんだよ…。

教育者になったのは、未熟な反乱異分子を殲滅(せんめつ)するためとか、そういう事を去年も言ってたんだけど、実はそうじゃないんだよね…。」


岡田「え?」


私「ものすごい自分都合で気に入らない子をいじめて弾き飛ばしたいだけなんだ…。

生きるか死ぬかは関係ない、とにかく不幸にして、おとしめてやりたいだけ…。
だから、ごたいそうなゴタクを並べているけれど、実際はただの八つ当たりとか、逆恨みなだけ…。」


岡田「…は。そうか、そうかも…。」


私「だから、小宮が目をつける必要もないって思わせておけば、ひろみちゃんも安全なんだ。」


岡田「それが、小宮の精神構造から分析した結果、ちゅうわけやな!
そんで、小宮が弾き飛ばしたいっていうのは、どういう人物なんや?」


私「…大丈夫、ひろみちゃんの優れた演技力と、天然の素材によって、完全にカモフラージュできるから。
これからも、万全の備えをして、すぐれたあふぉ~を演出してください。」


岡田「うん!まかせとき!
…でも、気になるなぁ?
おまはん、分かっとるやろ?小宮が狙うタイプっちゅーのを。
それを教えてくれへんの?」


私「ふ…。
安心して、私の見る限り、ひろみちゃんは、射程圏外、まちがいなし!

その、見る人に安心感をあたえるふっくらとした愛くるしいフォルム。
そして、親近感を持たせる、落ち着いた感じの愛くるしい顔立ち。
そして、実は頭の回転が速いとはまったく感じさせない、親しみやすく、一般大衆に愛されるその雰囲気…。
どこをどうとっても、小宮が歯牙にかける要素は無いわ…。」


岡田「うん!そうか!
うちの愛くるしい雰囲気が、ウチを守るっちゅーワケやな!」


私「そう!大丈夫!
アタシが太鼓判を押すよ!」


岡田「そうか、セーフか…。
ウチの天然の愛くるしさが、ウチの身を守るんやね…。
愛は素晴らしい…。

で、さっきの質問やけど、小宮が狙うタイプは?」


私「え、それいる?」


岡田「うん、今後の参考のために。」


私「う~ん、それ要らなくない?」


岡田「いやいや、身の危険から守るためやから、知っといた方がえぇやろ。」


私「う~ん、そうだね~…。
小宮が狙うタイプはぁ。

まず、基本、美少女。」


岡田「ふんふん。」


私「そして、上品な雰囲気を持ったお嬢様。」


岡田「ふんふん。」


私「頭がいいとか、勉強ができるとか、育ちがいいとか。
勉強が得意とか、運動に秀でているとか、まわりの人から好かれているとか、リーダーシップがあるとか。
とにかく、華がある子。」


岡田「なんやて!
それなら、大衆に愛されるタイプのウチなんて、どストライクやないけっ!
危険やわっ!
ウチの身の危険を感じたわっ!?」。(;°皿°)


私「あ、ないない。
それは、安心して。
大丈夫。」


岡田「おまはんも、さっき言っとったやないか!
ウチの事を愛くるしいフォルムに、親しみを覚えやすいタイプやとっ!」(((゜д゜;)))


私「いやいや、大丈夫だから。
ひろみちゃんの醸し出す雰囲気、そして見た目、そして完全な演技力によって培われたあふぉっぽさ。
加えて勉強が得意ではないという完全なる実績。
クラスの誰からも注目も期待もされない、素朴さ。

完璧だわ。

ふぅ…。
天の配剤か…。

これほど、アタシの友達として最適な資質を備えた人物がいるであろうか…。
いや、ない、反語的表現。」


岡田「そんなっ!
ウチの愛くるしい雰囲気に小宮は嫉妬して、なんかしでかすかもしれへんやんっ!
ウチの身が危険やわっ!」(((( ;°Д°))))


私「あ、だから大丈夫。
小宮が付け狙うのは、美少女特別賞の吉田サヨちゃんみたいな、清楚な誰がどうみても好感度の高い美少女だから。
それか、見るからに金持ちの家の子で、育ちのよさそうな吉崎アイちゃんみたいな、シュッとした感じの美少女や。
なんだかんだで、運動神経抜群でスタイルもいい、リーダーシップのある藤井ミオちゃんみたいな美少女たちだから。」


岡田「そんなっ!
そこに好感度の高い天然素朴系のウチが入らんとも、限らんやろっ!」(°д°;)


私「大丈夫。
賢そうなところだけ隠しとけば、なんも心配いらない。」


岡田「せやけど、ウチのクレバーさは、にじみ出てしまうかもしれへんやんっ!
大衆に愛されるキャラクターやとしたら、ウチも狙われるんちゃうん!?」(。>0<。)


私「いや、大衆っていうか、そこも関西・大阪限定だから。
吉本的なボケ役としてのモテ感だから。」


岡田「せやけど、ウチの心の美しさがにじみ出てまうかもしれへんやんっ!
上品なプリンセス感が感じ取られたりしたら、危険やわっ!」((>д<))


私「だから、ひろみちゃんは、吉田サヨちゃんらしさも、吉崎アイちゃんらしさも、藤井ミオちゃんっぽくもないでしょ?
真逆でしょ?
狙われないって!」


岡田「そんな、そうそうたる美少女に名を連ねるなんて、ウチ、なんて名誉な…。
ん?真逆?
今、おまはん、真逆言うた?」( ̄□ ̄;)


私「うん。」


岡田「つまり、あれか?
見た目も中身も華やかなタイプが小宮が狙う奴っちゅーやつか?」


私「端的に言えばそうだね。」


岡田「ほな、ウチはその逆だと。」


私「うん。」



ひろみちゃんの張り手が飛んできました。












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結局ひろみちゃんに一発頭を叩かれて、それでもこりずに菓子パンの袋に手を伸ばす私。

ラスト一本をむしゃむしゃとほおばりながら、ひろみちゃんにこれから説明する内容を頭の中で反芻していたのでした。


岡田「…結局、おまはん一人でほとんど食べたな…。
16本あった、パン、ウチが一個食べとる合間におまはん、10本以上食った。
今、ウチ、2本目やわ…。
おしょろしい食欲魔人やわ…。
悪魔か…。」


私「うぐうぐ。ふぃ~、くったくった。
あとは夕飯まで、待つとして!」


岡田「これ、おやつかいな!
そんで、夕飯まで、食べていくつもりかいな!
もう、夕御飯はパスかと思っとったわ!」


私「さて、そんなささいなことは、ともかく。」


岡田「ささいか!これもささいなことなんかっ!」


私「まぁまぁ、ひろみちゃんも、その手にとってるやつ、やっつけちゃってよ。」


岡田「ん、うぐうぐ…。
むしゃむしゃ…。

ごっくん、ごくごく。

よし、終わったで?」


ひろみちゃんは番茶でスティックパンを流し込んで私に向き合いました。


私「さて、さっき説明しかけた、小宮の思考パターンから学習したことを踏まえて、今後のひろみちゃんの動きについて、考察したことを説明します。」


岡田「お、本題やね!
それで、ウチはどないすればいいんや?」


私「さっきまで、私の説明した話を聞いて、小宮の恐ろしさはひろみちゃんにも十分伝わったと思います。
だから、念のため確認ですが、これからの行動に気を付けないと、本当に足元をすくわれます。
だから、本気の本気で行動してください。」


岡田「分かった!小宮が人の皮をかぶった悪魔やっちゅー気持ちで接しろってことやね!」


私「そうです。
で、そこで、小宮と話をしていて、気づいた小宮の思考パターンがあります。
その前に、なぜ小宮が教育者になったのか?を質問した話から説明します。」


岡田「うん。気になる。」


私「小宮いわく、『お前のような世の中の役に立たない無能を殲滅するためだ』と言われました。」


岡田「ほわぁ~、また、おっとろしいことを、仰々しく言うな。」


私「ここにも、小宮祖父の影響が大きく出ていると思われます。」


岡田「…そや、そいえば、小宮は自分のおじいさんを殺害しとるんやろ?
それを警察に言えばえぇんちゃうか?」


私「残念ながら、それはできません。
時効が成立していて、意味がないからです。」


岡田「なんで?」


私「殺人の時効は15年です。(←現在は25年です)
小宮が祖父を殺害したのは、昭和33年、それから15年で時効が成立して罪に問われなくなります。
ちょうど、それがアタシたちの生まれた年にあたります。」


岡田「そうか…。自白してもアカンのか?」


私「法律で決められているので、そこは無理だと思われます。」


岡田「なんで、警察につかまらんかったんやろぉ。」


私「事件が起きたのは、今から約25年前です。
今では科学捜査なんかも取り入れている警察も捜査や調査は基本的には聞き込みが主流だったと思われます。

転落死した遺体を見て、事故か事件か特定できないという時点で、目撃者がいなかったら、ほぼ迷宮入りしていた可能性があります。
ただ、特定できない時点で事件性が高いと警察も見ていたと思われますが、結局事実は藪の中…。

自分に捜査の目が向かないように、小宮自身も細工をしていたと思われます。
あ、結婚前だから、小宮じゃないか、キトウ雅子、15才、女子中学生の犯行だとは当時の警察も見逃したと思われます。」


岡田「キトウ?小宮の結婚前の苗字をなんでおまはんが知っとるの?」


私「去年の4月末に家庭訪問で家のお母さんを話していたのを聞いてました。
二人共カミヤマ小学校だね、家はどこどこで、距離は50mくらいしか離れていない…。

旧姓は?という風に母親と盛り上がっていたのを聞いていました。
それで、二人は同じ小学校の学区で、中学も一緒。

学年も一年ウチの母親が年下だと聞いていたので、小宮の生まれた年を知っていた、というわけで、逆算して、いつ犯行に及んだのかを私が知っている、という次第です。」


岡田「…去年の4月末の家庭訪問で…。
今7月頭で、去年の4月末ってことは14ヶ月以上前の事を言っとるわけで、たった、一回聞いただけで、それも覚えてまうんやな…。
ウチ、そんな世間話聞いとったかて、三日覚えている自信もないわ…。」


私「ん、ありがと。
ついでの話だけど、太平洋戦争が終結したのが昭和20年。
小宮雅子が生まれたのが昭和18年、そして、祖父を殺害したのが昭和33年。
つまり、小宮祖父は、終戦後13年間平和な生活を送っていたことになります。

その間、彼が犯罪に手を染めていなかったのかどうか…。
私には疑問が残ります。

そして、おそらく幼いキトウ雅子に戦時中の自慢話をくり返ししていたと想像されます。
寝物語に、中国人の大量殺戮の話を聞いて育った雅子の精神が、健全なものであったかどうか…。

また、一応一社会人として、社会に適応するべく努力したであろう小宮祖父の鬱屈したものは相当であったと思われ、おそらくその鬱憤は身内、特に幼い子供へ向かったのではないかと思われます。」


岡田「はぁ…。
ほんなら、小宮の祖父っちゅーやつは、やっぱりこっそり犯罪を犯しとった可能性があるって言いたいんか?」


私「おそらく。
どこかに、泣き寝入りを余儀なくされた被害者がいると思われます。
そして、それを、小宮が模倣していた…。

こうして殺しはいいことだ、死ぬ奴が悪い、それを殺して何が悪い?という精神構造を持つ人間のできあがり。

もしかしたら、自分の祖父を殺めたことによる罪悪感から、自分を正当化するための理論武装の可能性もありますが…。」


岡田「身内の真似した、いうことやね。」


私「そもそも、キトウ雅子は裕福な家庭で生まれ育ち、苦労知らずの人間のハズです。
家事もあまりせずに、勉強だけを頑張り大学まで進学し、大学卒業と同時に見合い結婚して、二人の子供も設けている。

完全なる親の敷いたレールの上を走っている順風満帆な人生のはずが、裏では理性のタガが外れて殺人をくりかえす野蛮な精神の持ち主になっています。

それもこれも、元を正せば、小宮祖父が自分の配下を皆殺しにして、その手柄をぶん取り、周りの人間を騙して確固たる地位を築いて、A級戦犯のとがを問われずに、ぬくぬくした生活を送っていた、ということを国が見逃したことにあります。

終戦から40年経とうとしていますが、戦争の傷跡がこんな形で、平和な世の中を歪めています…。

ひろみちゃんが以前言っていたように、アウシュビッツの大量殺戮を連想させるような事件が起きた背景には、戦争という人間の尊厳を犯す、国家同士の対立から生まれた狂気がこのような悲惨な事件を招いたのです…。

仮定法過去は好きではありませんが、もし、小宮の祖父が普通に戦争に参加して、普通に戦っていたらこれほどの狂気、狂人は発生しなかったかもしれません。

ある意味、小宮雅子も被害者です。

これはどこかの国に所属している以上、避けられない運命なのかもしれません…。」


岡田「…なんや、小難しぅて、細かいところはよく分からんけど…。
おまはん、悪人の小宮も被害者やと言うとるんやな…

おまはん、どんだけ度量がでかいの…。」


私「亡くなった人の幽霊がとりついて、なにか悪い影響を与えているのでは…。
そんな考え方は基本的に好きません。

生きている人は、自己責任で自分の行動を選択するべきだと、私は考えます。

それでも、なんで、さっきは、そんな事を言ったのかというと…。

やはり、悲惨で無念な亡くなり方をした中国人の人がたくさんいるとするならば…。
自分たちをないがしろにした、張本人にとり憑くのではないかと考えたからです。

無念を晴らしたい…そんな気持ちが魂を引っ張って、自分たちを追い詰めた人間にとり憑く…。
そんなことがありえるのではないかと、私は思ったからです。

そんな人を、責めることは私には出来ません。
どれだけ悔しくて無念だったか…。

そんな悪人に亡くなってからも妄執することに、なんの意味があるのか…。
その人たちの魂の安寧を考えると、私は涙が出てきます。」


岡田「亡くなった中国の人の気持ちまで考えたるんか、おまはん…。」


私「霊が人間をそそのかす、そういうことができるかどうかは、分かりません。

そして同胞を皆殺しにして、生き延びた小宮祖父の精神がまともであるとは思えません。

おそらく尊大で、被害妄想も強く、高圧的な物言いの共感能力の低い、冷酷で、扱いづらい人物だったと思われます。
その言動により、実の祖父を殺害する、という行為まで追い詰められた小宮雅子も不憫な生い立ちだったのかもしれません。

でも、生きている人間には選択の自由があります。
どれほど、殺したく憎い相手でも、殺さない、という選択だって、あったはずです。

百歩譲って、祖父を殺害したとしても、そこでやめればよかったんです。
孫が血の繋がった祖父を殺害するなんて、よほどの事情があったと推察されるからです。

なんで、無辜の人間を殺そうとするかなぁ…。
殺していいと思うかなぁ…と、そこが私には許せません。」


岡田「…ウチには、無理やわ…。
小宮がかわいそうな人間だっただろうなんて、事情を汲む気持ちには、到底なれへん…。
ホンマ、あんた、何者なんや…?
ホンマにウチと同じ小学5年生なんか…。
大人と話しとる気分やわ…。」


私「さて、そんな背景も踏まえつつ、今度は小宮雅子の精神構造から分析した、私たちの取るべき対処方法や、行動を考えていきましょう。」


岡田「はっ!
ついていきます、大将!」











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私「ふぅ、やっと人心地ついたな…。」



私はひろみちゃんが持ってきたスナックパンのスティックを12本平らげて、机の上に置いてあった番茶をすすりました。


その様子をひろみちゃんは、少し青ざめた表情で、まるで私の事を怪物かなにかのように恐ろしげに眺めていたのでした。


彼女の手にも、小ぶりなスティックパンが握られていて、ひと袋8本入の菓子パンをふた袋、ほぼ一人で私が食べた計算になります。



岡田「…あんさん、よぉ食べるな…。」



私「あぁ、やっと脳に糖分が回ってきたようだ。

よし、復活したな!」



岡田「…なんなん?いきなり甘いものよこせとか、なんとか言って急に倒れるし。

ウチの小鳥のハートがどちどちして、参ってまうわ…。」



私「あぁ、そうか。

説明していなかったな、うん。

さっきのは、頭をフル回転させた結果、血液中の糖分が使い尽くされて、低血糖を起こしたんだよ。」



岡田「いや、腹減って目を回すとかは、わかるけど、急すぎやろ…。」



私「あぁ、空腹で倒れたのとはちょっと違う。

腹が減ったように思われても仕方ないけれど、脳の活動に大量の糖分が消費された結果なんだ。」



岡田「なんなん?急に腹減ったとかとちゃうの?」



私「う~ん、結果的には同じなんだけれど。

お兄ちゃんが以前言っていたんだ。


私たちの脳はちょっと普通とは違う。

高機能にできている代わりに活動量を増やしすぎると突然、ガス欠を起こす危険性がある。


つまり、適度に糖分、まぁ、ブドウ糖とかね、すぐにエネルギー変換できるご飯とか、食パンとか甘いものを食べておかないと、貧血を起こしたみたいになっちゃうんだってさ。」



岡田「貧血起こしたんか?」



私「貧血は血圧の関係や、鉄分欠乏とかが原因だからね、ちょっと違う。


極度の頭脳労働をすると、それだけエネルギーが消費されるんだ。

だから、普段からしょっちゅう食べ物を口にしておかないと、低血糖を起こしてぶっ倒れることになる。

高知能に生まれたものの宿命だって、お兄ちゃんは言ってた。」



岡田「どうちがうん?」



私「見た目にはわかりづらいけれど、頭を使うだけで、かなりのエネルギーを消費していることになるんだ。

それで、普通の量では足りなくて、たくさん食べておかないと頭が働かなくなる感じ。

頭の中だけで、考え事をするのが、そのまま運動をしているのと同じってことかな?」



岡田「…ウチ、以前から常々疑問に思っとったことがあったんやわ…。

しんじゅは、ウチに遊びに来ると、ウチと同じだけ食べよる…。


ウチと同じで、しんじゅも運動は苦手や。

そやのに、なんで、こいつ太らんのや?と思っとったら、そんなカラクリがあったんか…。


おかしい、おかしいと思とったんやわ…。

つまり、たくさん食べても太らん、いうわけやな?」



私「あぁ、そうなるかな?」



岡田「なんちゅー、羨ましい体質なんや…。

憎い…ちょっと殺意沸くわ…。」



私「え?不便だよ?いつも食べ物の事を考えとかないといけないし?」



岡田「そういう問題やない…。

女子羨望の体質やわ…。


神様は不公平や…。

なんで、コイツに二物を与えたもうた…。


こいつ、天才で、食べても太らん体質で、顔もまぁまぁと来た…。

殺意沸くわ…。

あ、二物やない、三物か…。くそ。」(-""-;)



私「なんの話や?

まぁ、そんなことは置いといて。むぐむぐ。」



岡田「置いとかれるんか。

そして、もう一本食べるんか…。

この食欲魔人め…。


ママンがこれから夕飯だから、ご飯はやめとけって言っといて、それで菓子パンにしたのに一袋じゃ足りないって、これだけ食べるんか。

憎い…この体欲しい…。

ふ、プリティプリンセスの名にかけて、そんなことはおくびにも出せんけどな…。」



私「うん、ひろみちゃん、心の声がもれとるけどな?」



岡田「ふ、ネタや…。

軽くスルーするのが、大人のスマートな対応やで?」( ̄へ  ̄ 凸



私「あ、ごめんなさい。」



岡田「そこで謝られると余計に傷つくわ…。

スマートやないで?」(◎`ε´◎ )



私「あ、ごめんなさい。」












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私はしょんぼりとして、うつむいて、そんな言葉を口にしていた。


軽蔑されても仕方ない…。



顔色も青ざめていたと思う。


しかし、ひろみちゃんが口にしたのは、意外な言葉だった。



岡田「いや…。

軽蔑なんて、せぇへん。

ウチこそ、勝手におまはんの事を責めて、申し訳なかったわ…。」



私「え?」



ひろみちゃんは、ぺこりと私に頭を下げた。

そして、再び顔を上げると、すこし青ざめた表情を見せて、言葉をつないでいった。



岡田「怖いわ…。

そりゃそうやわ、家族を盾にとられたら、誰かって身動きできへん…。


いくら小宮が悪い事をしでかしとっても、こずるいから尻尾もつかませへん。


邪魔者は皆殺ししたるって気持ちで動いとるし、警察につかまったら、やぶれかぶれでアンタん家に火をつけるんは、確かに予想できるわ…。


それを、モモ先生重体なのに、ほっとくんかって、ウチが責める権利はなんもない。

誰かって、自分や自分の家族の方が大事や。


しかも、ホンマはおまはん、めちゃくちゃ怒っとる。

大事なモモ先生をキズモノにされて、ウチより、よっぽど悔しいハズや…。


それなのに、ウチを守ろうって気持ちを切り替えて、いろいろ考えてくれとる…。


おまはんは、立派や。

とても、小学五年生の女の子が直面するような問題やないのに、しっかりと向き合って考え抜いとる…。


ウチはおまはんの事を尊敬しとるわ…。


せやけど、悔しいな、警察に捕まらんかな、小宮。」



私「ひろみちゃん…。

ありがとう。


なんか、そう言ってもらえて、なんか、アタシ…。

感激してきた。」



岡田「うぅん!そんなんは、ウチの方や!

おまはん、頭いいとは思っとったけど、想像以上や!

これがたった、10才の女の子の考えなんかって驚かされっぱなしやわ!

まるで、火星人やな!」



私「アハハ、プリンプリン物語かっ!」



岡田「ホンマや!

さっき、おまはん床に転がりながら、天才少女を怒らせたなぁ~って怒鳴っとったけど、冗談ちゃう。

マジにおまはん、天才やったんやな!」



私「あはは、つい!

なんか、調子こいてそう言っちゃった。」



岡田「えぇよ、えぇよ、マジで天才少女やわ。

せやけど、どうにもならんかな、小宮の事。」



私「私自身の保身もあって、確たる証拠がないと動けないと言ったけれど、もう一つ事情がある。

アイツは政治家一家と関係があって、簡単な事件なら、もみ消されてしまう可能性があるからだ。」



岡田「せやけど、それは推測やろ?

そこまで神経質にならんでも、えぇんちゃう?」



私「いや、小学四年の時、吉田サヨちゃんと小宮がトラぶったことがあったんだ。」



岡田「お、美少女特別賞の子な!」



私「そう、美少女ランキング上位の吉田サヨちゃん。

彼女はおじいさんに誕生日のプレゼントでとてもステキなワンピースをプレゼントされた。

去年の11月のできごとだ。

それをおろしたてで学校に着てきたのを小宮がスカート丈が短すぎるからちょん切れと言い出した。」



岡田「は?ワンピースのスカートをちょんぎってどうすんの?

長すぎるならともかく、短すぎるやて?意味が分からんけど?」



私「スカート丈が短いのは発情して男を誘うためだと因縁をつけてきた。

それで、ハサミでスカートを輪切りにして、切断した部分にガムテープで補修して、授業を受けろと命令してきた。」



岡田「そんな無茶な!それでサヨちゃんはどないしたん?」



私「彼女は泣いてできないと断った。

そして、土下座を強要されて、それに従った。

その上、クラスメイトから、彼女の悪口を順々に言うようにと小宮は命令して、彼女は友達だと思っていた同級生から罵声を浴びせられる格好になって、吐き気を催して早退して、その後1週間不登校になった。」



岡田「そんな!なんで、そんな無体が許されるんやっ!

そん時、おまはんはどないしたったんや!?」



私「私は彼女の悪口を言わなかった。

それに続いて残りの児童もサヨちゃんの悪口をいわなかったので、小宮の怒りを買った。」



岡田「…そやな、おまはんは、そういう奴や…。

それが、きっとサヨちゃんの救いになったんやろうな…。」


ひろみちゃんは、涙ぐみながらそんな言葉を言っていた。

私は少し照れてしまった。



私「…それで、結局サヨちゃんの両親が学校に苦情を申し入れたが、小宮はまったく受け付けなかった。

それで、愛知県の教育委員会にさらにサヨちゃんのおじいさんが苦情を申し立てした。

サヨちゃんのおじいさんはこの市の消防署の副署長で公務員だった。

それで、しぶしぶ小宮は形だけの謝罪をしたが、なにもお咎めがなかった。」



岡田「へ…?なんで?」



私「小宮のしたことは、完全なる言いがかり。

スカート丈が短いとか、発情しているとか気分悪いことを言ってきて、服の切断を迫り、授業の妨害をしたと因縁をつけて土下座を強要して、同級生からの悪口を聞かされて、サヨちゃんは体調を悪くして学校を去っていった。


つまり、個人の財産の器物破損未遂に、精神的、肉体的な暴行だ。


どっからどうみても、犯罪行為なのに、県でもまったくサヨちゃんの身内の意見は相手にされなかった。

おそらく背後の政治家が圧力をかけてきていたんだ。

きっと、今までも何度かそういう事を繰り返している。」



岡田「へ…?」



私「そこまで明確な被害者が出ていても、隠蔽されてしまう。

小宮は公務員である、教育委員会に属している、政治家の庇護下にある。

何重にも、アイツは守られているということなんだ。


うかつな事を言いだしたら、こっちの身に危険が及ぶ。

私ではアイツを討ち取るだけの力がないんだ。」



岡田「なんやの、それ…。

なんで、そんな気持ち悪い奴が教育者をやってんのや…。

世も末やないか…。」



私「私もそれを小宮に聞いてみたことがある。

なんのために、教育者になったんだと。


その時に小宮の思考パターンを学習した。

それについて、詳しく説明をしたい、と、思う…。」



私は軽いめまいを覚えました。



岡田「え?それは…?」



私「…ひろみちゃん、残念な、お知らせが、あります。」



岡田「はい?」



私「しんじゅ、ガス欠です。

もう少ししたら、おしゃべりできなくなります。」



岡田「はい?え、なに、どないしたん!?」



私「頭使いすぎました…。

もうすこしで、思考停止します。」



岡田「はい?え、なに!?」



私「はうぅ~、目が回りますぅ~。

ぎぶみーちょこれいとぉ~!」



岡田「はっ!?なに?なにをいきなり言い出すん?

チョコなんて、ないで?」



私はどしゃっと、机の上に自分のあごを乗せました。



岡田「なになに!どしたんっ!

やっぱ、さっき、頭打ったんが響いたんかっ!」



私「急いで白いご飯か食パンをもってきてくらはい…。

もしくは、おばあちゃんの部屋にいって、うまいこと言って甘納豆か黄金糖をせしめてきてくらはい…。

おせんべいも可。

しんじゅ、エネルギーぎれで、もう、目が見えなくなってきました…。」




視界がモノクロに変化しています。

砂嵐のように、モザイクがかかってみえて、キィーン…と澄んだ金属音が微かに聞こえていました。




岡田「はっ!?白いご飯?え?食パン?

お腹すいとるんか?もしかして、腹減って、目を回しとるんか?」



私「エネルギー切れですぅ。

ウルトラマンのタイマーみたいなものですぅ。


ピコンピコンなってますぅ。

もう少ししたら、ちょっとねましゅ。


そしたら、起こして食べ物もってきてくらはい。

甘いものは頭の栄養れすぅ。


よろしく。」



岡田「えっ!ちょ!なに、いきなり気絶したっ!

えぇ~!?」










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ひろみちゃんは、ふたたび腕組みをして、うなずきました。



岡田「ほぁ~ん、ほぉ~、なんか、難しいような、分かったような話になってきたな…。

とにかく、目に見えへんお仲間がおまはんにはおるっちゅーことやな?」



私「ん、そんな感じ。」



岡田「そんで、お仲間の言いたいことはなんなんや?

おまはんにおっとろしい映像を見せたった目的はなんなん?」



私「それは、つまり、小宮の過去。

背景や事情を詳しく教えてくれたわけなんだ。」



岡田「それで?」



私「通常ではない方法で、私に情報を渡してくれた。

それは、私の認識を変えろ、と、言いたんだと思う。」



岡田「へ?認識?なにをどう変えるっちゅ~んや?」



私「私は小宮の事を異常性格者だと、ミオちゃんに怒鳴っていた。

それは、ウチの兄貴が言っていたからで、どこかでそれほど本気で思っていなかったんだ。


いろいろ気持ち悪い事を私に言ってたけど、きっとただの脅しだと思っていた。

…いや、恐ろしくて、そう、思い込みたかったんだ。」



ひろみちゃんは、私の正面に座っていて、うんうんとうなづいていた。



私「けど、違う。

私はモモ先生の事故を知って、確信した。


アイツは自分が不利な立場になったと思ったから、モモ先生の車に細工をした。

モモ先生は助かったけれど、大事故だ。


車が完全に爆発していたら、大惨事になっていた。

アイツはモモ先生を殺すつもりだった。


でも、証拠がない。

それだと私の中で、あれはただの脅しで殺すつもりがなかったのでは?という疑念だけを残す可能性がある。

私を護りたい存在は、それでは認識が浅いと警告したかった。


だから、私にあの情報を渡してきたんだと思う。」



岡田「つまり?」



私「小宮は連続殺人未遂犯だ。

それも、凶悪な快楽殺人犯。


モモ先生だけじゃない、木嶋先生の事故も小宮の仕業だったと考えれば話がつながる。」




岡田「あっ!木嶋先生も学校帰りに事故起こした言っとったな!」



私「木嶋先生は、弟の薫が小宮に押されて転んだのを助けたことがあった。



その時、名札を見て、こんなことは初めてじゃないんじゃないかと薫に聞いていた。

木嶋先生は玲治兄さんの担任をしていたことがある。

きっと、薫の顔を見て、名札を見て、ピンと来た。


元々木嶋先生は小宮に強い不信感を抱いていた。

あの時、小宮を訴えると言っていた。」



岡田「そりゃ、めちゃ怪しいわ!

それで、小宮に狙われたんやね!」



私「それだけじゃない、理科室の新品の雑巾が消えていたのが、その根拠だ。」



岡田「そうやね、なんかそんな事もおまはん、言っとった。」



私「これは、私の推測だけど、アルコールランプの中身はガラスを割ると液体となる。

それを雑巾に染みこませた。

自分の手で触って細工するために、使い古した雑巾ではなく、新品のタオル地の雑巾を使用したんだ。」



岡田「それで、どやって車に仕込むん?」



私「それは、私もよく分からない…。

車のことに詳しくないから、小宮がどうやったかは謎なんだ。


でも、どうにかして、揮発性の高いエタノールなんかを染みこませた雑巾をエンジンのそばに仕込んだ。

車が発車して、エンジンが回りだすと、その熱でアルコールランプの中身が熱せられて引火した。

そういう仕組みなんじゃないかと思う。」



岡田「時間差での時限爆弾みたいなもんやね!」



私「警察の発表では、マッチかライターなどの、可燃性ものが混入された形跡があると言っていた。

しかけられたものは特定できなかったんだ。

きっと、雑巾なんて、跡形もなく燃えてしまう。

僅かに残っていたとしても、焼け焦げたタオル地なんて、元々トランクにあったかなんかだろうと思われて見過ごされたんだ。」



岡田「なんで、警察はそんな犯罪を見逃すんやろか?」



私「マフラーに小石が詰め込んでいたからだ。

小宮は子供のいたずらだと思わせるためにそんな細工をした。

子供が犯人なら、犯人を特定してはいけないという先入観を大人に持たせるために、そんな工作をしたんだ。」



岡田「はぁ…。」



私「今思い返すと、数年前からアルコールランプの数が減っていってた。

あの戸棚は二段使いをしていたのが、今では一段ですんでいる。

少しずつ減っていったからだろうと思っていたけれど、減りが早い。


うろ覚えだけれど、3年生の終わりがけの2月と3月に二人の先生が交通事故で退職と休職している。」



岡田「え?そやった?」



私「うん、私も自分の学年と違うから、どんな先生なのか気にしていなかった。

確か一人はおじいちゃん先生で、あと一ヶ月ちょっとで定年退職なのに、事故で学校に戻れなくなるなんて、残念だろうな…って思った覚えがある。


それから2週間ぐらいして、もう一人、3月に事故で学校をやめた先生がいたはずだ。

連続して、麻小学校の先生が二人も交通事故を起こすなんて、珍しいなとクラスの子と話をした覚えがある。」



岡田「…あぁ、あったな。

確か、学年変わる少し前にどっかの先生がお休みするとか、校長先生言っとった。」



私「私も愛知県は交通事故が多いから、そんな偶然もあるんだろうってその時は思ってた。

全然面識のない先生方だったし、どういう人かよくわからなかったから無関心だったんだ。


でも、体育館で上級生たちが、二人共教育熱心ないい先生だったのに…と、残念そうにつぶやいていたのを覚えている。


小宮がこの麻小学校に赴任してきたのは、私たちが小学3年生の時だ。

この二年強で、同僚4人が交通事故で体を壊している。


そしてアルコールランプは5個数が合わない。」



岡田「え!それじゃ、ホントはもうひとり犠牲者がおるって事か?」



私「分からない…。

試験的に実験で使って、車に使っていないのか、たまたま台帳に記入し忘れたものが一個だけあった可能性もあるし。

もしかしたら、学校の先生ではなく、小宮のプライベートで殺害したい人物がいて、そこに使用したのかもしれない。

または、アルコールの量が少なくて、大事に至らなかった人がいたのかもしれないしな…。」



岡田「それじゃ、常習犯じゃん!

アカンやん、そいつ、めちゃくちゃアカンやつやん!

警察に言ったらな!」



私「証拠がないんだ…。」



岡田「せやけど、アンさんの話を聞いとったら、どう考えても小宮犯人やで!

いくらおまはんが子供いうても、そこまでいろいろあっとったら、警察も動くやろ!」



私「…できないんだ…。

それは、できない。」



岡田「どゆこと!

アカンやん!そんな奴野放しにしとったら!」



私「証拠がないんだ。

どれも、状況証拠ばかり、警察も動けない。」



岡田「証拠がなくても、怪しいなら警察も調べるんちゃう!?」



私「まずいんだ…。

確かに、わずか数年でなんども同じ学校の先生が交通事故を起こして、そして理科室からアルコールランプが消えている。

状況証拠的に、小宮が疑われるのは確実なんだけれど、そのタレコミをしたら、真っ先に小宮が疑うのは、私なんだ。」



岡田「え?」



私「それで、警察がなんとかして、小宮が逮捕されたとする。

逮捕後、釈放されたら、今度は私の家に火をつけに来る。

それが予想されるから、私も怖くてタレコミができないんだ…。」



岡田「そんなん!

そんな、アイツ何人も人を殺めようとしとんのやで!


それをほかっとく言うんか!?

モモ先生、瀕死の重傷なんやで!?」



私「くっ!

モモ先生の事を思うと、苦しい…。

けど、校長が警察も不問にする、と言っていた。

モモ先生のことは確実に事故じゃない、殺人未遂事件だ。


けど、モモ先生は、学校を退職扱いにされてしまった。

もう、県の職員ではない、だから、小宮を訴える事も出来ない立場になった。


だから、小宮も、もう、モモ先生を狙わない。

それが、モモ先生の安全を保証することになる。」



岡田「せやけど!

おまはん、それ、おかしな話やで!

モモ先生は、まっとうに仕事をしとっただけやろ?

そこに頭のおかしい同僚がおって、車に細工して大事故を起こして大怪我をさせられた。

それは、警察に調べてもらわなアカンやつやん!」



私「…小宮とモモ先生は同僚だ。

職員名簿かなにかで、モモ先生の自宅の住所も電話番号も知っているハズなんだ。

だから、自宅に動物の死骸が投げ込まれるなんていう嫌がらせもされていた。


モモ先生がなにか動きを見せれば、今度はモモ先生の実家を放火をしにいく。


小宮の考えそうなことだ。

これ以上被害を拡大させないためにも、そっとしておくのがベターなんだよ…。」



岡田「せやから、それを防ぐためにも警察に捕まえてもらわんと!」



私「そうしたら、今度は私の家が放火される。

実は以前から、テストで50点以下をとれと脅されていたんだ。

でないと、裏の家の吉崎の家に火をつけるぞと。

貧乏人のお前に家に放火してもあやしまれるけれど、裕福な吉崎の家なら人から恨みを買っていそうだから、怪しまれないだろうと。


ついでに、小森先生の車に細工をすると匂わされている。

薫の事も、殺すと脅されている。

身動きできない。」



岡田「そんな!そんなめちゃくちゃな奴をほっといていいんかい!

アカンやん!」



私「それに小宮を警察に突き出すには、確たる証拠がないと無理だ。

今のところ、それができるのは、私のお母さんだけ。

家の商品を脅して、盗みを繰り返している。

けど、お母さんの心は壊れてしまった。

きっと家に放火すると、脅されていたんだ。


お母さんの証言には証拠能力がないことになる。

どこまでも、小宮の思い通りになってしまっているんだ。」



岡田「そんな…。

そんな無体な話ってあるんかいな…。」




私「モモ先生は、結婚が決まっている。

小学校の教師をやめて、専業主婦になる予定だったんだ。


麻小学校から離れた生活をすることが、モモ先生の将来を守ることになる。

苗字も変わって、住所も変わって、生活も変わるんだ。


元気になったら、今の立場ががらっと変わることになる。

警察沙汰に巻き込まないことの方が安全なんだ。」



岡田「せやけど…。

せやけど、それは殺人未遂を見逃すことになるんやで…?

そんなおかしな話ないんちゃうか?」



私「見逃したくはない。

けど、相手は一筋縄ではいかない相手なんだ。


もし、小宮を警察に突き出すとなると、確たる証拠があって、私とは関係ない大人にやってもらいたいんだ。」



岡田「そんなん、次々潰しにかかるだけやろ…。

それか、今までも、ずっと、そうやっとったんやないか…。

おまはん、犯罪に目をつぶるつもりか…。」



私「すまない…。

軽蔑されても、仕方ない。

怖くてたまらないんだ。


アイツは人殺しをなんとも思わない。

喜々として殺人を繰り返す、マジのキチガイなんだ。


まともにやりあっては、こっちの命がいくつあっても足りない。


それを警告するために、あのビジョンが見えたんだと思う。


アタシができるのは、これ以上被害が拡大しないために、ひろみちゃんを守ることだけ。

それを考えるために、この作戦会議を行っているんだ…。










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