顔に吐息を感じた。


ふと、目を覚ますと、深いエメラルドグリーンの瞳が私を覗き込んでいた。


金色のまつげに縁どられた緑色の瞳。

いつもより濃い色合いに思えたし、その瞳はどこか遠くを見ているような…。

何かに耳を澄ませているような表情をしていた。



私「何…?」


ミカエルは、ふっと微笑んで、私の頬を撫でた。


ミ「よかった、今は私の奥さんだ…。」


私「?」



そのままそっと唇を重ねて、また顔を引いて、私の顔を愛おしそうに眺めていた。


私たちは白い天蓋付きのベッドに横になっていて、二人して大きなシーツにくるまれるようにしている。


外は白んでいる。

夜は明けているらしい。


私は少し眠っていたようで、いつの間にか彼に寝顔を眺められていたらしい。


寝起き一発目に美形に眺められては、照れてしまう。

彼の陶器のような滑らかな白い肌に、触れて、うっとりしていると、ミカエルは私に覆いかぶさるようにしてくちづけをしてきた。


最初はそっと唇をなぞるように軽く重ねて。

次第に情熱的にくちづけをしてくる。


彼のキスは甘くて激しくて。

少し逃げるような仕草をすると、容赦なく、後頭部に手を差し入れて、ホールドされてしまう。


私は顔を真っ赤にして、困ってしまう。



(…ミ、ミカエルさん、キスうまっ!!

すごい、上手。

なんか、もう、キスだけでにんしんしちゃうっ!!)



ミ「プーッ!!」



気づけば、彼は片腕を突っ張って、顔を横に背けて、口を手にあてて、体を震わせている。


私は顔を真っ赤にしながら、逃げ出そうとする。



(こ、これだからっ!

これだから、高次の存在っちゅーやつは厄介なのよっ!!

考えていること、筒抜けなんだからっ!!

きぃーっ!くやちぃ!

ミカエルさんってば、大天使らしいから、ちょっとでもそれにふさわしい感じにしたいと思ってんのにっ!

全部筒抜けなんだからっ!

もうヤダっ!恥ずかしいっ!)



私がシーツの中から抜け出そうともがいていると、速攻、彼の腕に絡め取られる。



私「離してっ!イヤっ!恥かしいっ!」


ミ「アハハ、ごめんごめん。

あんまり可愛いこと言うもんだからっ!」


私「言ってないもんっ!

ちょっと、そう思っただけだもんっ!!

ヒキョーよっ!」


ミ「アハハ、ごめんごめん。

おかしくて、つい。」


私「くぅ~っ!この悔しさ、ミカエルさんには、分からないわっ!!」


ミ「こらこら、暴れない。」



私がジタバタ足掻くも、ミカエルさんにがっしりと後ろから掴まれて、逃げられない。


そのまま、私のつむじに、唇を当てて、うふふと笑っている。



ミ「可愛いなぁ~。

なんで、君って、こう、ピュアなんだろう。」


私「バカにしてーっ!」


ミ「クスクス、ご機嫌直して、奥さん。」


私「きぃ~!くやしぃ~!!

ミカエルさんばっかり、私の心を読まれて、私は全然読めないのよ~っ!

不公平だわ~っ!!」


ミ「クスクス、君の場合、相手が誰だろうと、大差ないと思うけれどね?」


私「そーゆー問題じゃないっ!

論点をすり替えるなっ!ひきょーものっ!」


ミ「何を言ってるの?

私のことが好きだって心の声がもれ聞こえちゃっただけでしょ?

どこに問題があるの?」


私「そーゆー問題じゃないっ!

私ばっかり、ミカエルさんが好きだなんて、不公平だっ!」


ミ「ほんとに、この子はもう。

私の気も知らないで、可愛いことを言う。

食べちゃいたいね。

ね、こういうのは、どう?」


私「あ…。」



ミカエルは声をひそめて、ささやきかけてきた。

手の動きも怪しい。

私はまた顔を真っ赤にさせていた。



ミ「ね、君、後ろからのが好きだよね。

私としては可愛い君の顔を見ていられる前の方が好きだけれど。


ホントは君、前なりだから、そっちのほうがいいんだけどね。

今日は君の好みに合わせてあげるよ?」


私「?」


ミ「ね、君の好きなようにしてあげるよ?」










                   


















私は顔を手のひらでおおって、泣いていた。


ミカエルさんは、私を抱き寄せて、よしよしと背中を撫でていた。



私「ミカエル、私のことを嫌いにならないで…。」


ミ「何を言っているの。そんなことなるわけないでしょ。」


私「グスグス。うまくできなくて、ごめんなさい。」


ミ「それ、言われちゃ、男としてカタナシでしょ?

ホラ、泣き止んで。

君はなにも悪くないからね?」


私「うぅ、ごめんなさい。

…怖くて。」


ミ「ごめんね?ちょっと刺激強かった?」


私「うぅん、気持ちよかった。

でも、怖くなっちゃって。」


ミ「ふぅーっ。

ほら、こわくない、こわくない。」


私は小さく震えながら、ぐすんぐすん言っていた。



ミ「ホラ、大丈夫大丈夫。

私のこと、怖くないでしょ?」


私「うん、ミカエルのこと、怖くない。」


ミ「ん、よろしい。」



ミカエルは私をギューッと抱きしめた。


私はちょっと落ち着きを取り戻してきた。



それで、またミカエルにくちづけをしようとしたけれど、彼に制止された。



ミ「いいよ、気を使わなくて。

今日は、これでおしまい。


もう少ししたら、仕事に行くでしょ?

それまで、休んでいなさい。」


私「うん…。

仕事、休めたらいいのにな…。」


ミ「働く君が好きだよ。」


私「うん。ありがと。」



ミカエルは私の絹糸のような漆黒の髪の毛を撫でながら、私を見つめていた。



ミ「君がセックスを怖がるのはね。

男性が怖いからなんだよ。」


私「…うん…。」


ミ「君はね、男性が怖いものじゃないって知れば、もっと楽になる。

これから、君はたくさんの男性と知り合う。

誰も、君を傷つけない。

私が選んだ男たちと出会って、仲良くなりなさい。」


私「え?」


ミ「男友達を作るんだ。

そうすれば、男性は恐れるものでもないと知ることができる。」


私「男友達…。

そういえば、いないかも…。」


ミ「そう、よく分からないから不安になるんだよ。

ふぅー。


君はそこで失望するかもしれないけれどね。」


私「え?どういう事?」


ミ「君が考えるほど、男は強くもなければ、賢くもない。」


私「は?ミカエルさんも?」


ミ「クス。痛いところをつくね。

そう、男はたいして賢くもない。


強いのは腕力だけ。

君が男性を怖がるのは、君が子供だったから、相手の男は図に乗っていただけで君はなにも悪くない。


大人の君に太刀打ちできる男は、そうはいない。」


私「は?」


ミ「君は、これから出会う男達にたくさん嫌な思いをさせられるだろう。」


私「え、そんな人と出会っても…。」


ミ「君の方が賢いからだ。

そうと知らず、君のことを過小評価した人間が君のそばに来る。

君は不愉快な思いをすることになる。」


私「出会う意味ないんじゃ。」


ミ「違う。

男は弱い存在だと知るいい機会になる。

男は基本、馬鹿だと思っておいて間違いない。」


私「アハハ、ミカエルさんおかしい。

高次の存在がそんな事言っちゃっていいの!?」


ミ「ふぅ。

まったく、世の理不尽な思いをする女性陣の苦労はみな、男の脳の足りなさが原因なんだよ。」


私「アレ?ミカエルさん、女性寄りの意見なの?」


ミ「どっちというわけでもないが。

まったく、もったいない話だ。

こんなに綺麗な蕾を誰も育てようとしないのだから。」


ミカエルは私の頬を愛おしそうに撫でた。


私「私の事?」


ミ「そう。

君に限らずだが。

世の男性の頭の足らなさには歯がゆい思いがするよ。


なぜ、女性をいつくしまない。

尊ばない。

敬わないんだ。

そうすれば、匂い立つように女性は気品高く花開くのに。


その香りに包まれて、男はどこまでも強くなれるのに。

男性には、女性を守ろう、育てようという気概がない。


男性は女性に愛されて守ってもらわなければ、強くいられないのに。

女性の若さや美しさだけを求めて、貪るような真似をする。


少しでも自分の利になる点ばかりを追い求めて、大切なものを見失っている。

結局女性の価値を低く見積もって、花開かせない。


双方にとって、非常に痛ましい結果になっているのだよ。

そこが歯がゆいと思っているのだ。」


私「ふぅ~ん…。

そんな考え方していなかったな。

そうか、そうかも。

男性が女性を敬ってくれたら、女性も淑女になれるわよね。

紳士、淑女、素敵よね…。


文化的なものかな、女性が低く見られるのって…。」


ミ「それもあるが、男性の弱さ故だよ。


頭ではかなわないから、力で押さえ込むんだ。」


私「え。それじゃいつまでたっても女性は辛いままになっちゃうんじゃないの?」


ミ「何事もパワーバランスだよ。

先を見通せる能力に長けたものは物事に慎重にあたるようになる。

深く考えないものは余計な事に気を取られずに目的のために動くことができる。

どれだけ協調できるかが、重要になってくるんだ。」


私「でも、土台で女性を低く見積もっているのなら、引っくり返せないんじゃ?」


ミ「君の言うとおりだ。

しかし、今では力仕事は機械にとって替れるようになってきている。

男女のパワーバランスは変わりつつある。

それで男はより弱い者を狙うようになる。

そこに尊厳はない。」


私「…きりがないわ。」


ミ「そう。

でも、それを変えようとしているのは君だ。

男性が女性を慈しめれないのは、母親が父親に慈しまれていないのを見て育ったからだ。

愛する男女が結ばれれば、お互いを慈しむのが当然だと思う子供が育つ。


それが君の願い。

私はそれに協力している。


君が自分が何者かを思い出せば、すべて理解できる。」


私「え…。」


ミ「まずは、君の課題の一つ。

男性を怖がらないようになること。


この会話は課題をクリアできた時に、思い出すことが出来るだろう。

今は、おやすみ。

私の奥さん。」



ミカエルは私のまぶたにキスをした。







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私「…私、なにか、悪いことを言った?」


私は不安になって、彼から体を離します。


すると、彼は苦笑して、もう一度自分の方に、私を抱き寄せます。


ミ「ごめんね、不安にさせた?」


私「不合格って…?」


ミ「ん、いや、こっちの話…。

おいで。」


私「ねぇ、ミカエル…。

私、あなたに嫌われた?」


ミ「いや…。

ちょっと、急すぎたかな…って思ってね。」


私「何が?何が急すぎたの?」


ミ「ん、いや…。」


私「だって、私のことを残念だって…。

もしかして…。

花嫁失格…ってこと?」


ミ「ん、いや、そういう意味じゃないんだ…。

ただ、反動が来るだろうな…と思ってね?」


私「何の反動?」


ミ「いや、今は君が知ることではないよ。」


私「…なんなの?

あなたたち、いつも肝心なところでだんまりだわ。」


ミ「今はまだ、知る時ではないって事だよ。

私の花嫁さん。」


私「…私のことを嫌いになったわけじゃないのね?」


ミ「こんなに愛おしいのに?

おかしなことを言うね。」


ミカエルは緑色の瞳を細めながら、私のほおをなでました。


私「おかしなことを言うのは、あなたの方よ。

睦言(むつごと)にしては、意味深過ぎるわ…。」


ミ「ふふ。

私の奥さんは、賢明だ。」


今度は、私の漆黒の髪の毛の感触を楽しむように、私の頭をなでました。


私「…からかって!」


ミ「ほんとに、この怜悧さに、誰も気づかない…。

もったいないね。」


私「?何の話?」


ミ「君はね、これから変化する。

これから大勢の人間を導くことになるだろうよ。」


私「私が?何をからかっているの?

そんな事、ありえないわ?」


ミ「どうして?

どうして、ありえないって思うの?」


私「だって…。

だって、私は何も取り柄がない人間ですもの。

もし、人を導く事ができる人間なら、とっくの昔にそうしているはずだわ?」


ミ「今まではそうでなかったから、これからもありえない、と言うんだね。」


私「そうよ。」


ミ「それは、『今までどおり』が続いたら、成り立つ話だよね。」


私「?えぇ、そうよ。」


ミ「ではもし、『今までどおり』の生活が続かなかったら?

通常ではありえない事態が発生したら?

その時、君はどうする?」


私「…どうするって…。

そんなの、その時になってみないと、分からないわ?」


ミ「じゃ、どうなるか、分からないじゃないか。

それでは、君が人を導くことになる可能性は否定できないことにはならないかな?」


私「でも、ありえないわ。」


ミ「ありえない、はありえないのではないかな?」


私「言質(げんち)をとるつもり?」


ミ「ふふ。

ねぇ、君は覚えていないだろうけどね。

私はね、君を生き永らえさせるために、たくさんの犠牲を払ったんだよ?」


私「?」


ミ「君はね、私の元に飛び込んできた。

約束どおりに…。」


私「それは一体…。」


ミ「君はね、私を乗り越えていかなきゃならない。

私を踏み台にして、大天使へと成長していく。」


私「ミカエルを踏み台に?

どういう意味?」


ミ「君はね…。

君はね、私よりはるかに強大な魂を持っているんだよ。」


私「意味が分からないわ。

私は…ミカエルと離れるのは嫌だわ。」


ミ「今の君には、ちょっと早すぎたかな…。

こうして、二人でいられるのも、もうちょっとかな…。

おいで、私のかわいい人。」








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(この話は2011年2月末頃のお話です。)






白いシーツにくるまれながら、彼に抱かれていた。



時々怖くなってしまって、彼の胸を押しやる仕草をしたり。

嫌だと言いながらも、彼に怖くないでしょう?と言われて、おとなしくなったり。



そんな蜜月を過ごしていた。






ミ「ねぇ、私の事好き?」


私「…好き。ハァハァ。」


ミ「そう、可愛いね。

どれくらい好き?」


私「とても。ハァハァ。」


ミ「どれくらい?」


私「…愛してる。…ハァハァ。」


ミ「どれくらい愛してる?」


私「すごく…。」


ミ「どれくらい、すごく?」


私「すごく、すごく…ハァハァ。」


ミ「ねぇ、どれくらい?」


私「…ずっと。ずっと一緒にいたい…。」


ミ「ねぇ、それって、どのくらいなの?

どのくらい、私の事を愛してるの?」


私「…ずっと、ずっと…。

一生…。」


ミ「クス。一生ね…。

それだけ?」


私「…ハァハァ。

一生…。

何度も、何度生まれ変わっても…。」


ミ「なに?何度生まれ変わっても?」


私「ミカエルを愛してる…。

何度生まれ変わっても、ミカエルを愛してる…。」


ミ「クス。

失格だ。」


私「?」


ミ「不合格だよ、私のかわいい人。

私は君を愛しているよ。」


私「…ハァハァ、何?」


ミ「君はね、私に愛を誓った。

それでね、私に愛されたくて、何度生まれ変わっても一緒にいたいって言った。

それでは、君は自分を大事にすることができなくなる。」


私「…?」


ミ「私はね、君を愛しているよ。

でも、君はそれと同じくらい、自分の事を愛さなければ、アズライールになる…。」


私「…(告死天使?)」


ミ「君は可愛いね…。

でも、君は大天使にならなければ、生き残れない…。

何のために、君を蘇らせたのか…。」


私「?」


ミ「残念だよ、私の花嫁…。」








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ミカエルは私のお腹にキスをして、私の足首を掴んできました。


私「あっ!」

ミ「ダメ、そのまま。」


一瞬、逃げ出そうとしますが、両手で両足首を掴まれてしまい、身動きとれません。


私「いや、ダメッ!恥ずかしいからやめてっ!」

ミ「おとなしく足を開いて。」

私「イヤイヤッ!」


そう言ってるそばから、舌で刺激してきます。

両手でシーツに爪を立てて、暴れますが、足首を掴まれて身動き取れません。
っていうか快感すぎて、身動きとれませんでした。


ミ「…まだ、こっちの方が刺激が強いんだな…。」

私「ミカエルやめてっ!」

ミ「…ふふ。おとなしくして…。」

私「くぅ…。」


私はシーツにバリバリと爪を立てて、身動きとれません。


ミ「…まだまだだな…。

私と会話ができる時点で、まだ本当の快楽を知っていない…。」


私「ミ、ミカエル…やめて…。」


私が彼の頭を押しのけようとするも、ペシっと手を打ち払われます。


ミ「んん?いい子だから、おとなしくしてなさい。
だいぶ気持ちよくなったでしょ?」


私「ん…。」


私は恥ずかしさと快感で涙がこぼれてしまって顔を真っ赤にさせています。

柔らかく、温かい刺激が与えられて。

今まで感じたことがない快感を繰り返し繰り返し刺激してきます。

少しずつ、変化させつつも、私が敏感に感じたやり方を、しつこく繰り返してきます。

私が感じた快感を感じ取って、彼は刺激を与えているようでした。



私「恥ずかしい…お願い、やめて…。」


ミ「ダーメ。もっと気持ちよくしてあげるから、おとなしくしてなさい。」


私は快感で頭がグルグルになってしまって、なにか理性が吹っ飛びそうになると。

彼は体を重ねてきました。














ミ「ね、どうだった?」

体が離れると、私は両手で自分の顔をふさぎ、泣き出してしまいます。


私「ごめんなさい、ごめんなさい。許して…。」


すると、彼は私を抱き寄せて、ヨシヨシという風情で私の背中をなでます。


ミ「ふぅ。
君はセックスとタナトスが隣り合わせだから、厄介だよね。

大丈夫だよ、嫌いになったりしないよ?」


私「ごめんなさい、許して…。」


ミ「怖がらせて、ごめんね。
乱暴だった?」


私「うぅん、でも、怖いの…。」


ミ「うん、大丈夫。
少しずつ、私との行為も気持ちよくなっているでしょ?

今日は甘いって言ってくれた。
大丈夫だよ。
安心して…。」


私「うん、ごめんなさい…。」


ミ「謝らなくていいよ、かわいい人。
こーゆーことは男の人に任せておけばいいの、心配しないで。」


私「はい。」


ミ「(ローカル1の)朝まで少しあるから、ゆっくり休みなさい。」


私「はい。」











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目が覚めると、真っ白なシーツの中にいました。


夜が明けたらしく、窓から白くて柔かな光が差し込んで、ベッドを照らしていました。

ふと、隣を見ると、男性が眠っています。

まだ、そういう状況に慣れていなくて、一瞬驚いて、ドキドキしてしまいます。

彼は安らかな寝息をたてていて、起こしたくなくて、そーっと、そーっと顔を近づけて、彼の左頬というより、アゴに近い部分にそっとキスをします。

それからまた、そーっと、そーっと体を元の位置に戻して、そっと彼のたくましい胸板の上に自分の左手を置いてみました。


ミカエルさんと親しくなってから、最初のうちは、私の自宅で愛し合っていたので、真っ暗闇の状態で。

まるで、ギリシャ神話のクピトとプシュケの結婚みたいだな、と怖くもあったのでしたが。

ミカエル邸に入り浸るようになってからも、いつも基本的には薄暗い中でのことなので。

明るい日差しを浴びた彼を見る、というのはあまりなくて、ウットリと彼の顔を見つめてしまっていたのでした。

まるでアラバスター(雪花石膏)のように白く、傷もシミひとつない肌は滑らかで美しく。

彫刻家が粘土をヘラでこそぎ落としたかのように、一片のぜい肉もない顔はまさに石膏像のような美しさ。

首から肩にかけて、そして鎖骨がのぞく胸板も、どこもたくましく引き締まっており。

どうしてこうも美しい存在がいるのだろうか…と、陶然と見つめていました。


(綺麗だな…。

ミカエルさんって、こう、女の人が求める男性の美徳を全部持っていて…。

私、ミカエルさんの事、ほとんど知らないけど、頭がいい人だってことは分かる…。

美貌と、知性と教養と、部下がたくさんいるって言ってたし、身分と、これだけの豪邸に住める財力、包容力…。

それに引き換え、私は何も持ってないしな…。

どうして、ミカエルさんは、私を受け入れたんだろう…?)


急にミカエルの手が動いて、私の左手を掴みました。


ミ「また、つまらないことを考えている。」


私「あっ!おはようっ。」


ミ「おはようのキスは?」


私は彼の左頬にチュッと慌ててキスをしました。


ミ「もっと心のこもったキスがいい。」

私「あ、はい。」


私は身を乗り出して、彼の顔の上に覆いかぶさり、唇を重ねました。


(ミカエルさん、好き好き好き好き~っ!)


ミ「クス。」


彼の顔を両手で包む込むようにし、瞳を閉じて、一生懸命彼の顔にキスの雨を降らせ始めました。


そしたら、気分が盛り上がってきてしまって、う~んと彼にキスをして。

彼が私の髪の毛に手を入れて自分の顔に引き寄せるようにして、しばらく唇を重ねます。


ミ「キス、うまくなったね。」

私「えへ。」


ミカエルさんの頬とか首筋にもキスをし始めます。


(ミカエルさん好き~っ!

この気持ちをどうやって伝えればいいのかしらっ!

奥さんだったら、手作りのお料理とか、お掃除とかお裁縫して旦那さんの世話をする…って。

アタシ、家事全般ダメだし、この屋敷お掃除いきとどいているし、コックさんいるし、ミカエルさん、私必要ないんじゃ…。

アレ?アレレ?どうやって愛情表現すればいいのかしら?

えっとぉ、それじゃ、床上手な女の人になればいいのかな?

男の人を悦ばせるって、どうやればいいのかしら?

…とりあえず、キス!)


と、ミカエルさんにキスをしながらそんなことを考えていて。


私「ミカエルさん、男の人を悦ばせる方法、教えてくださいっ!」


ミ「ぷぷ。」


私「私、まだキスしかうまくできません。

どうやったら、男の人が気持ちよくなるか教えてくださいっ!」


ミ「プーッ!!」


ミカエルさんは私の頭をくしゃくしゃと撫でて笑っています。


私「むぅ、真剣に話しているんですよっ!

ミカエルさんが好きなんですっ!」


ミ「アハハ、分かった分かった、かわいいなぁ。」


と、ミカエルさんは私を抱き寄せて笑っています。

私は彼の肩に歯を立てて、カジカジと甘噛みします。


ミ「っと、君はたまに私を噛むからね、ちょっと痛いな。」


私「あ、ごめんなさい、つい。」


ミ「いいよ、加減してくれているのは、分かるから。

歯型がつくほどではないから大丈夫。」



(…もしかして、彼の肩とかじゃなくて、首筋とか目立つところに私の歯型をつけておいたら。

ミカエルさんの女避けになるかしらっ!)


ミカエルさんの大きな片手が私の顔をぐわしと掴みます。


ミ「物騒なことを考えるのはよしてくれ。」


私「あ、や、はい…。」


私がカチカチと歯を鳴らして悔しがっていると、そのまま私を仰向けに押し倒して、イチャイチャし始めました。











ミ「…どう?私をどう感じる?」


私「ハァハァ…、よく、分からない…。」


ミ「そう?言葉にしてみて…。」


私「ハァハァ…、あ、甘い…。」


ミ「甘い?」


私「初めてで…言葉が見つからない…。

お腹の下のほうが…あ、甘い…。」


ミ「私を甘く感じるの?」


私「う…。

そう…、あ、甘いの…。

お腹が…甘い感じ…。

こんなの、知らないから…うまく、言えない…。」


ミ「クス、私を甘く感じるんだね。

素敵だね…。

ねぇ、私の事、どう思ってる?」


私「ハァハァ、好き…。」


ミ「好き?それだけ?」


私「好き…大好き。」


ミ「大好き?それだけ?」


私「好き、で…、大好き…で…。

ハァハァ、あ、愛してる…。」


ミ「もっと言って?」


私「ミカエル、愛してる…。」


ミ「私も愛してるよ…。

私とこうしてるの、甘く感じてるんだね。

気持ちいい?」


私「ハァハァ、気持ち、いい…。」


ミ「私が初めてなんだよね?」


私「そう、ミカエルが初めて…。」


ミ「ほんとに、可愛いね、私の処女。」


私「…。」(恥ずかしいと思っている。)


ミ「ほんとに、可愛いよね、どうやったら男の人を悦ばせれるか聞いてくるなんて。

ねぇ、私の事、どう思ってる?」


私「ハァハァ、愛してる…。」


ミ「どれくらい?」


私「すごく、たくさん…。」


ミ「どのくらい?」


私「…食べてもらいたい…。

ミカエルに食べてもらいたい…。」


ミ「君が最初に言ったんだよね?

私のことを甘いって…。

ふふ、可愛いよね。


ねぇ、私も君が甘くてたまらないよ。

私に食べてもらいたいなんて言っておいて、私のほうが君に食べられちゃってるよ?」


私「…。」(恥ずかしいと思っている。)


ミ「ねぇ、私とこうしているの、好き?」


私「ハァハァ…す、き…。」


ミ「どれくらい、好き?」


私「…どうしようもなく、す、き…。」


ミ「いい子だ。

ご褒美をあげなくてはね?

もっと、こうしていたい?」


私「もっと、こうしていたい…。」


ミ「…ハァハァ…。

ねぇ、君はね、私にどうしたら、男の人を悦ばせることができるかって聞いたけど。

そんな風に考えちゃうことが、もう、私には甘くて甘くて、仕方ないんだよ…。


悪い子だね…。

最近疲れ気味みたいだから、たくさん眠らせてあげようと思ったけど、これじゃやめられない。

もっと、いろんなことをしてあげるよ?」









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眠りにつくと、フワッとミカエルの腕が伸びて私を包み。

あっという間に、フォーカス100へと誘ってくれた。

私「ミカエル…。」

何か、話をしよう、と思って、彼の名前を呼ぶと。

いつも、何も言わずに、彼はキスをしてきた。

私はうっとりとして、彼の口づけを受けている。

ベッドに寝かせられて、彼の下にいる。

シャラシャラと彼の金髪が顔にかかる。

いつも、夢見心地で唇を重ねる。

(キスって、吸うんだ…。知らなかった…。)

私がミカエルさんと付き合い始めて、一番驚いたのは、この事実だった。
自分は、キスとは唇を重ねる事、触れ合わせる事だと思っていたのだが。

彼のキスは違った。

そのまま、舌を入れてくる。

私が恥ずかしくて、逃げそうになると、余計に入れてくる。

相手の肩をグイグイと手で押しのけようとするが、それを楽しむように彼は私の手を外して、頭の後ろに自分の方手を差し入れて、がっちりとホールドしてくる。


ミ(そのまま、受けてごらん。そう。)

唇を重ねたまま、私の頭の中に直接心話を送り込んでくる。

ミ(まずは、私の真似をして。同じ動きをしてごらん。)

私(うん…。)

ミ(次は、回すから。最初は同じ向きに絡ませて…。そう、上手。)

私(うん…。)

ミ(次はね、逆向きに絡めてみて。できるよ。)

私(う…。)

ミ(それじゃ、今度は好きに動かしてみて。)

私(ん…。)

唾液が喉につまり、呼吸が苦しくなると。
そっと、顔を遠ざけてくれる。

私「ケホ、ケホ!」

私が落ち着くのを待って、再び唇を寄せてくる。

どんどん、彼にハマっていく。

なんか、もう、どうしようもなく、彼の事が好きで、涙が出てくると、呼吸が苦しくなる。

すると、そっと、何も言わずに顔を遠ざけて。
私の内心を全て読み取りながら、彼は私を愛してくれていた。


彼の胸に飛び込んで、翌日以降の数日はおかしな状態になったが。
建国記念日を境に仲よくなって。

それ以降は、毎日長時間彼と体を重ねていた。

正直、それほどセックスはいい物だとは思っていなかったが。
彼が一生懸命だったので、それが嬉しくて。

彼の事が大好きだったので、本当はキスだけでも十分だと思っていた位だった。


後から思い返せば、彼との行為に、あまり感覚が入らなかったのも。
無意識に彼の事を憎んでいたからだと気付くのだが。


この時点では、なんか、今まで自分の知らない体の箇所に何かが触れる感触があり。
それが、温かくて、くすぐったい、という感覚でしかなかった。


私が彼を愛しい、という気持ちになると。
それを読み取った彼も、すごく気持ちよさそうだった。

毎日毎日彼に愛されていて。

ミ「愛している、私の処女(ラ・ピュセル)。
  
  君に殺されても構わない位に…。」


彼が私の上で、そんな言葉を言っていたのを、夢見心地で聞きながら。

それは、恋人同士がベッドで言う、睦言(むつごと)の一環で、ただの比喩なのだろう、と思っていた。


こんなやり取りをしたのは、彼と付き合い始めて、すぐの頃の事で。
私自身、すっかり忘れていた。


彼は私の事を、よく『処女』と呼んでいたが。
それは、私の脳内の言語の変換の関係で、そうなっていただけで。

実際には『ラ・ピュセル』と言っていたようだった。

かつて、私がフランスに生きていた頃。
やはり、ミカエルと交信ができる女性の過去生があり。

彼の言葉を信じてか、信じずか。
結局、時代の趨勢に呑まれて、異端審問に遭い、魔女として公開処刑された。

魔女として投獄されてから、処刑されるまでの数年間。
看守達により、性的暴行を受け続けた私の精神は崩壊しており。

現世で、私がヘミシンクを知り、ガイド達と深い交流が可能となった後。

その中で結果的に性的にショッキングな体験を繰り返したのも、私がそのような過去生を思い出しても精神の均衡が保てるようにするための、お膳立てだったのではないか、と、思う。

ミ『愛している、私の処女(ラ・ピュセル)。
  
  君に殺されても構わない位に…。』


事実、私は自分の過去生の記憶を取り戻した途端。

逆上して、彼を血祭りにあげてしまった。


ミ『君が自分の正体を知った時。
  君は私を殺しに来るかも知れない。』

過去記事:少女時代16


かつて、幼い私を抱き上げながら、涙を流していた彼。


最初から、全て分かっていながら。

彼は私を愛している、と言ってくれていた。


私『弁明も無しか!舐められたものだな。
  代償は高くつくぞ、ミカエル。
  その命をもって、贖え!』

私が白刃を投げつけた時、彼は黙ってうつむいて、瞳を閉じて。

無抵抗で自分の体を刃にさらして、血まみれになった。


本当に、殺される気だったんだろう。

彼の愛は深い。


彼と会えなくなってからは、彼の泣き顔ばっかり思い出した。

なぜ、泣いていたんだろう。
なぜ、私になんの説明もなかったんだろう。
なぜ、彼は姿を現さないんだろう。
私が未熟な人間だから?

しばらく経って、彼が泣いていたのは、私がいつか、悲しむのが分かっていたからだ、と気付いた。


…いかんな。なんか涙が止まらない。


今日は、彼にプロポーズしてちょうど2年目だ。
これ、友達に教えてもらわなかったら、気づかなかった。

彼にもらった、エメラルドとダイヤのピアスをつけて、仕事に行った。

ごく普通の、平和な日常。
あれは、幻、妄想だったのか?と疑いたくなるほど、穏やかな日常が続いている。

今日は奮発して、ケーキとプリンを買ってきた。

これから、結婚記念日を祝おう、と思う。






いつも最後まで読んで下さりありがとうございます。
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私はミカエルさんの気配を探り、彼の元へと移行します。
彼は執務室にいたようで、無機質なコンピュータが立ち並ぶ室内で、怒りに目をランランと輝かせながら、私に近づいてきます。
どうやら、ラファエルさんからの思念をキャッチして、事情を全て把握している模様です。

私の二の腕を掴み、強引に抱き寄せ、キスをして来ます。

ミ「君は私の物のはずだ。私以外の男に肌を許す気か!」

私「何をそんなに恐れているの?おかしな人ね。
  あなたの腕の中にいる私の心の内はあなたの事で一杯だと分かるでしょうに。
  ラファエルさんや、ユアンさんにときめく位は大目に見てもいいんじゃない?」

ミ「…。」

私「私は初心に帰る事にしたの。
  自分の肉体も、魂もいらない。
  私は愛する人に愛していると伝えたい一心で、このフォーカス100に来ていた。
  だから、貴方に私の肉体と魂を差し上げます。
  何も持たない私が、あなたにあげられるのはこれだけですから。」

ミ「君は、地上の男との結婚を望んでいると思っていた…。」



ふと、脳裏に昼食を食べながらの友人との会話が蘇ります。

友人「結婚式には呼んでね。」

私「うん。」

(そうか、結婚式か…。私、ウェディングドレス着れないんだ…。)

そう、心の内でつぶやきつつ、寂しくなったのを思い出しました。



コンビニで、クレジットカードの残高不足分を支払った後、コーヒーを買い、それを飲みながら、コンビニの表でふと考えていた事も蘇ります。

(前世か…。そんな生まれる前の事、持ち出されてもな…。
 前世が仏教徒のナニガシかだったとしても。

 ミカエルさんは、やはりはた目には私のバーチャルな恋人な訳で。
 私がCDを聴きながら、布団の中に入っている時にだけ会える恋人…。

 それは、妄想とどれだけ違うんだろう。
 誰にも証明できない。

 私の自己満足の結婚。
 ローカル1では、私は何も変わっていない…。)



同僚にチョコレートクッキーを手渡されて、つい感じた事を思い出します。

(この子、いつも何かと私を気にかけてくれているよな…。
 しんじゅ☆♪さん、早く結婚しなさいって、色々アドバイスくれる。

 私が投薬治療中で、生殖能力を失っていた時も。
 (↑この事は職場の同僚には一言も話していない。)

 『しんじゅ☆♪さん、間違っていたら悪いんですけど。結婚する気ありませんよね?』

 って、心配してくれていたっけ…。

 ミカエルさんも、あの事があってから、強引に私の元に訪れる事もなくなったし。
 これは、このまま、自然消滅もありえるのかな…。

 結婚したとか言っても、ローカル1的には誰も知らないし。
 黙って、このまま、こちらの男性を探して、結婚した方が、賢明なのかも…。)
  


私は瞳を閉じて、ふぅ、と小さなため息をついて、再び瞳を開いて、しっかりと彼を見つめます。 

私「…確かに、ローカル1に戻ると、不安になって、そう考えていました。
  でも私が望むのは愛する人だけ。

  愛する人が、肉体を持っていなくても構わない。
  愛する人が、人間でなくても構わない。
  そう思って、フォーカス100まで来ていたのですから。

  あなたと私が兄弟でも構わない。
  あなたが神でも構わない。
  私が悪魔でも構わない。

  そんな事は、私にとって、瑣末な事です。
  私はあなたを愛している。」

ミ「私に肉体と魂を差し出すというのか…。」

私の二の腕を掴んでいるミカエルさんの両手が、微かに震えています。

私「えぇ。
  あなたが悪魔でも構わない。
  私が神でも構わない。

  あなたがいなければ私は生きていけない。
  そんな女をあなたは好まないと思って、精神的に立て直そうと思っていましたが、無理でした。

  私は弱い、ただの人間です。
  それでもあなたが好きなのです。」

ミ「私の事を…。」

私の二の腕にギュっと強く掴む感触が伝わり、ミカエルさんの両手に力が入っている様子です。

私「合理的なあなたの事です。
  私との関係が壊れても、既に地上での私の役割の算段は整えているんでしょう?
  それならば気持ちよく使われたいじゃないですか。

  私の肉体と魂を差し上げます。
  すべて使って下さっても構いません。
  あなたを愛しているんです。
  その替わりと言ってはなんですが、私を側に置いてください。」

ミ「普通の女性の幸せを手放すと言うのか?」

私「えぇ。結婚はあきらめます。
  世間的には結婚できない、かわいそうなOL確定になってしまいますが、構いませんよ。

  世間体や常識なんて、クソ喰らえだ。
  そんな物は、母が亡くなった11の春に燃えるゴミと一緒に捨てました。
  気にしないでください。 

  第一、誰にも迷惑をかけていないんだから、いいでしょう?
  私は私のルールに従って生きるまでの事ですから。」

ミ「君は…。私は君が結婚を望んでいると思っていたから…。」

ミカエルさんの声がうわずり、体を震わせています。

(あぁ、だから私の為に、自分から身を引かなくてはと考えていたのね。)

私の腕を掴む、ミカエルさんの両手を静かに外し、私は彼の頬を撫でます。

私「私の弱さが、あなたを惑わせてしまいましたね…。
  すみません。

  結局私は「緑の姫君」と呼ばれる前世の記憶もほとんど戻っていません。
  ですが、今の自分にできる最善の選択をしたつもりです。
  あなたの役に立ちたい。

  それに、私があなたの手許にいた方が、ルシフェルさんを説得しやすいでしょう?

  私はあなた方、神々のゲームの駒になりますよ。
  光と闇の勢力争いの盤上の駒の一つに。

  私はあなたの為に、ポーンからビショップへと化けますよ。
  私の肉体と魂を差し上げます。

  明日命を失っても構わない。
  あなたを愛しているんです。

  私と結婚してください。」

ミカエルさんは私を強く抱きしめて、泣き出してしまいます。
彼が落ち着くのを待って、そっと両手で彼の顔を包みます。

私「そんな顔をしないでください。
  まだ何も起こっていません。

  そして何も起こらないかも知れません。
  もうセオリー通りの考え方は辞めませんか?

  私とあなたがくっつけば、きっと流れは変わりますよ。
  なんなら、私がすべてひっくり返して上げます。」

ミ「私といるときっと苦労するよ。」

私「ただの人間が神様と結婚しようって言ってるんですから、苦労するのは百も承知です。

  過去生の師匠譲りのドMですからね。
  私が死ぬ時も、「人生は甘美だった」って言ってやりますよ。

  それに物騒な事を言っていた訳ですから、地上に住む私も他人事ではありませんしね。

  あなたとお茶を飲みながら話していた事は今思えば頭でっかちで腑に落ちていなかった。
  今なら分かりますよ。

  それにこんな人生の一つもあってもいいんじゃないですか?

  あなたが私の事を「脆弱さと強靭さを併せ持つユニークな魂だ」って言ったんじゃないですか。
  宇宙人の過去生もある位なんだし、なんでもありで楽しんじゃえばいいんですよ。」

ミ「君は…。もう私の花嫁だよ。」

ミカエルさんが私にキスをします。
そして、お互いの腰を抱き合ったまま、上体を離して微笑みあいます。

私「…あぁ、もしかして、C1での生活が一変するのかな。
  仕事辞めなくちゃいけないのかしら?

  愛だの恋だの言う前に、衣食住は確立しないと人間ダメになりますから。

  ミカエルさん、神様なんでしょ。
  せめて家賃3万1千円のワンルームマンション住まいはキープしておいてね。」

ミカエルさんが苦笑いしています。

喧嘩の仲直りができました


私「…時にミカエルさん、一つご確認したい事が。」

ミ「何?」

私「実はワタクシ達は異星人だったっていうオチは…。
  あぁっ!!ミカエルさん、頭グリグリは辞めてっ!」

ミ「まったく、この子は!分かってるのか分かってないのか!
  もう!
  敵わないな、君には。」

私「もう。絶世の美男子がこんな庶民的なイヤガラセをするなんて。
  全国のミカエルファンががっかりしますよ。」

ミ「私をがっかりさせているのは君だ。
  これをブログに載せる気か?」

私「うん。当然。こんな面白いネタを放っておく訳にはまいりませんから!」

ミカエルさんが、瞳を閉じて、左手の拳を自分の右脇にくっつけて、その上に右ひじを乗せる格好で自分のこめかみを右手でナデナデしています。

ミ「…ふーっ、とにかく。
  今後の事について、私の家でゆっくりじっくり話し合おうか

瞳を開いた、ミカエルさんは、満面の笑みでそう私に話し始めますが。

私「あ、ミカエルさん、今日は彫金教室なんで、これで失礼します。」

ミ「え。」
  
彼が瞳を閉じている間に、私は彼に背を向けており、振り向きざま、片手をあげて手を振ります。

ミカエルさんの両手がクロスするように空を掴み、先ほどまで私がいた場所のあたりで、手の平をワキワキと動かしています。

私「もうちょっとで、クロスペンダントが仕上がるんですよ。
  来月から土曜も出勤で、しばらく教室に通えなくなるので、今がラストチャンスなんです。
  また、夜になったら、伺いますから。
  そんな訳で、ごきげんよう!」

ミ「え、ちょっと…。」

ミカエルさんのつぶやきに目もくれず、サクサク自分だけローカル1へと帰還しました。

(はぁーっ!なんか色々あったけど。
 うふふ。プロポーズしちゃった!
 これぞ、プロポーズ大作戦!って感じ?
 あ、いけない。もう彫金教室の時間始まっている。
 急いで出かけなくちゃ。)

いそいそと着替えて、自宅から5分ほどの場所にある、彫金教室へと向かいます。

教室で、シルバー素材にシトリンという名前の黄色の天然石で出来た、完成間近のクロスペンダントの細かい仕上げをしていると。

先生「今日は、こんなもんが来ているんスけど。」

そう言って先生が、薄いグレーの宝石箱を生徒さん達に差し出してきました。

最近の不景気の関係で、不要になったジュエリーを手放す方が多く。
業者へと持ち込みをすると、一定価格で引き取りを行う方が、先生の知り合いにいて。

通常、そういった業者の方が必要なのは、金やプラチナなどの地金のみで、宝石の方は処分しているのが現状なのです。

その内の、ダイヤモンドやルビーやサファイヤといった貴石に関しては、かなりお値打ち価格で私達に提供される事がたまにあるのです。

さらに、業者の方のお眼鏡にかなったジュエリーに関しては、地金と宝石をバラさずに、そのまま先生の手を通して、間接的に販売される事が、たまにあるのです。

今日はそういったものが出回っているようです。
普段の私は、そういった中古品には、興味がなく、手を出さないのですが。

ちょっと気になってそれを覗いてみると。

エメラルドカットが施されたエメラルドを中心に、同じく四角くカットされたものと、極小のマーキースカット(アーモンドの形)の大小12個のダイヤモンドがあしらわれたピアスと。

ブリリアントカットのダイヤモンドが、中心の1個を取り囲むように同じ大きさのダイヤが6個あしらわれた、パッと見は大粒の一粒ダイヤに見紛うデザインのピアスがそれぞれ輝いていました。

私「先生…。これは。」

(エメラルドのピアスだと!
 これは、これはミカエルさんからのプレゼントだ!!)

先生「これは、かなり質のいいダイヤを使ったエメラルドのピアスっスよ。
   地金はプラチナ。
   ダイヤの数も多くて、少なく見積もっても20万円はするっス。
   これが2万円。ダイヤだけのピアスは1万円。
   こちらもかなりお値打ちっス。10万円はくだらないと思うっスよ。」

私「先生、買います!取っておいてください!  
  ちょっと、私、タンス預金、降ろしてきますから!
  ぜひ私に譲ってください。」

生徒A「アラアラ、気に入っちゃったのね。
   うん、でも、これはかなーリ、お得よねー。
   これだけの数のダイヤで1万2万ってありえないでしょ。」

先生「それだけじゃないっス。
   地金は両方ともプラチナで、それだけで時価で5千円はするっスから。
   しかも、そのエメラルドはかなり上質な物っスよ。
   お店で購入したなら、35万から40万円位でもおかしくないっスから。  
   本当にいいもので、しんじゅ☆♪さん、いい買い物したっスよ。」

私はジャケットをいそいそと羽織ながら、自宅の鍵を掴み、彫金教室のガラスが嵌め込まれた深緑色の扉を押し開けます。
彫金教室の扉近くにセットしてあるセンサーが作動して、♪リーン・ゴーン♪という鐘の音と、扉に直接かけてあるリース付のベルが♪カラカラカラン♪と音を立てます。

私「先生!すぐ戻ってきますから!
  絶対、とっておいてくださいよ!」

先生「ははは。大丈夫っスよ。」

生徒A「そんなに、焦らなくても、誰も取らないわよ。
    良かったわね、一番乗りで。」

生徒B「タンス預金なんて、大声で言っちゃダメよ~。
    気をつけて行ってらっしゃ~い。」

私「それじゃ、また後で!」

私は自転車のペダルを急いで漕いで、自宅へと向かいます。

(すごい!ミカエルさん、すごい!
 これが、結婚の返事。私へのプレゼントなのね!

 この間は、ビタ一文寄越すなって、ビンタしちゃったけど。
 こんな素敵なプレゼントなら、受け取らないわけにはいかない!

 本当に、ついさっきプロポースしたばかりなのに、このタイミング。
 うわー、やっぱり、彼は大天使だったんだ!
 ありがとう、ミカエルさん。
 大事にするよ!)


キィ、バタン!

私「はぁはぁ。先生!さっきの!」

♪リーン・ゴーン♪♪カラカラカララン

私は息を弾ませて、彫金教室へと戻り、二つの豪華なピアスを手に入れました。


こんな事があったのは、今年の2月19日の事。

これが私とミカエルさんとの結婚記念日です
   



  



    



フォーカスエリアへ足を踏み入れるのをやめて、私は日常に戻りました。

それでも、どうかすると、ラファエルさんが恋しくて苦しくなるのです。

彼が私に口づけをしたのは、ルシフェルさんを呼び出す為に、私に高濃度のエネルギーを注入する為だとは分かっていましたが、どうにもならない感情に囚われてしまっていたのです。

ミカエルさんに「愛している、お嫁さんにして下さい!」と言って、彼の胸に飛び込んだのは2月8日の事です。
それ以来、ずうっと、彼と一緒にいたのに。
途中、色々あったけど、彼に夢中になっていたのに。

ラファエルさんが、愛しくて、恋しくて、どうにかなりそうでした。

ラファエルさんの声が聞きたい。
ラファエルさんの顔がみたい。
ラファエルさんの胸に飛び込みたい。
ラファエルさんのキスが欲しい。
ラファエルさんと一つになりたい。

こんな気持ちに気づきたくなかった。

自分の不実さが許せなかったのです。

それに、心優しい彼らがあんな無体な事をするというのは、やぱり逼迫した事情を抱えていたからでしょう。

それでも私は動く事ができませんでした。

それなら、なぜ、ミカエルさんではなく、ラファエルさんがそれをしたのか。
あの役目はミカエルさんでもよかったんじゃないのか。

毎日、腹立たしさと寂しさに苛まれていました。

そして、もう一つ。
私は、私自身の正体を知るのが恐ろしくなっていました。怖かったのです。

…ちょうどその頃、このブログが注目を集め始めました。

とにかく、自分の経験した事を記事にしよう、と頑張っていました。

あの日は、ただ、一緒にチョコを食べたかっただけなのに。

私は甘い気持ちで、フォーカス100を楽しんでいただけの子供でした。




職場では、業務が一年の中で最も繁忙期を迎えていました。

私の様子がおかしいなどと、誰も気にもとめていませんでしたが。

昨日、職場で、仲のいい既婚男性の後輩が。

「しんじゅ☆♪さん、最近不機嫌ですよね?」

と言ってニコニコしながら、お菓子をくれました。


私「あぁ、そうかな?そうかも。そうだったんだ…。」


はきもなく、呆然と、そうつぶやきながら。

「ありがと。」

と言って、個包装された、チョコレートクッキーを受け取ります。




ミカエルさんとティーブレイクしている記事をアップする事で、私は、ふと気づきました。

ミカエルさんが、私が自分の元を去る不安を抱えている、と自分自身で予感をしていた事に。

あの時の予感が的中していたわけです。

それに気づいた瞬間、彼への愛が蘇ってきました。

悩んでばかりいてもしょうがない、彼に会いに行こう。

木曜の夜、フォーカス100へ行きました。

私が彼になんと声をかけたらいいか悩んで、彼の前にたたずんでいると。

彼は何も言わずに私を抱きしめてくれました。

それでも、以前のように気持ちが通い合いません。

私はラファエルさんを愛してしまっていたからです。

私の思念が読み取れる彼にしてみれば、他の男を思っている女を抱くなど、嫌悪感が激しいに決まっているのに、彼は何も言わず、ただ私を愛してくれました。

私は再びローカル1に戻ります。


ミカエルさんも、ラファエルさんも愛している…。

これは愛なのか、それとも肉欲なのか…。


自分でも判然としません。

私の為に自分の翼を折った、ラファエルさんが愛しくて堪らないのです。

…悩みながら、この記事を休み休み書いていました。

大きなため息をつきながら、PCの電源を落とさず、ディスプレイをカチリ、と閉じます。

ホットカーペットの上に敷かれた、ラグの上にゴロリと横たわり、涙を流しながらうとうとします。

すると、夢うつつの状態で、私の過去の記憶が蘇ります。

姉の誕生日に、母が、私達にケーキを用意して、私の4歳の誕生日祝いをしてくれる、というお話です。
(自分レトリーバル(現世編⑭))

(これは!この記憶は。そうか、この頃から、もう、彼らに会っていたんだな…。)


私は、眠りから覚めます。

「うーん。」と言いながら両手を高く上げ、背筋を伸ばします。

はぁー、一寝入りしたら、スッキリしたわー!(←ブラックしんじゅ☆♪光臨)

うん、しゃあない!ラファエルさんいい男やもん。
それに一線は越えてないんやし、ギリセーフやろ。

「緑の姫君」とか呼ばれても、良く分からんし。
過去生の記憶とか言われても、思い出せんもんはどうしようもないやん。

なんにせよ、情報が少なすぎるわ。
あいつら、肝心なとこ、だんまりやでな~。

よし!ここは攻めの姿勢でチャレンジや!
まずはラファエルさんとこ行ったろ~。


そんな訳で、フォーカス100へと移行し、さらにラファエルさんの気配をサーチして、彼の元へとアクセスします。

焦げ茶を基調とした、クラシカルな佇まいの彼の自宅へと私は突然現れます。
書斎でファイルを手に取り、それを書棚に戻そうとしていた瞬間の彼に出会います。

ラファエルさんは私を見て、ギクッと体を強張らせます。
ルシフェルさんが言っていた、私が彼を嫌っているというくだりを気にしている模様です。
で、いきなり私、彼を押し倒します。

書棚から、青色のファイルがバサリ、と音を立てて落ちるのに構わず、私は彼を床に押し付けます。

ラファエルさんの胸の上に両手をついて、私が彼の耳をかじりながら、こう、ささやきます。

私「ラファエルさん、私をこんなに悩ましい気持ちにさせておいて、自分だけ涼しい顔、なんてさせませんよ。
  ふふっ。あなたが私に手を出さないのは承知してますからね。
  ぎりぎりまで、気持ちよくさせてあげます。
  苦しめばいいわ。八つ裂きにしてやりたいくらいなんですからね。
  愛してるわ。チュ。

と、言って彼に口づけをします。
両手の平から、彼の感情が流れ込んできて、ものすごく彼が喜んでいるのが伝わります。

何度も私に口づけをされながら、ラファエルさんの顔がうっすらと紅く染まり、吐息が甘くなり、私の二の腕を両手で掴みながらも拒絶する事もなく、彼はうっとりとしています。

私「なぜ、ルシフェルさんを呼び出す役割があなただったんです?」

ラ「はぁ。ミカエルと君では兄弟だから、途中で気づかれる可能性がある。」

私「そう。相変わらず、損な役回りですね。
  私の事が好きなくせに。
  嫌われるのを覚悟でしてたんですね。チュ。」

ラ「あぁ。」

私「ふふ。少し思い出しましたよ。
  子供の頃遭っていましたね。
  あなたが大好きでした。
  お嫁さんにしてもらいたいくらいにね。」

ラ「思い出したのか?」

私「いつも、ミカエルさんと一緒に遊んでくれましたよね。
  私のお友達のドラゴンとも。」

ラファエルさんの胸の内が震えているのが分かります。

(ごめんね。私はやっぱりミカエルさんのお嫁さんになったから。)

思念波で彼に答えます。彼は高次の存在ですから、聞こえているはず。

(だから…。でもあなたを愛してる。キスならいいでしょ。)

ラファエルさんは瞳を潤ませながら、震えながら両手を下から伸ばし、私の首に手を回します。
私は肘を曲げて、両手を彼の胸に押し付ける格好で彼の上に覆いかぶさりながら、私達は口づけを交わします。

彼のベニトアイトの瞳がアクアマリンに変化します。
紺色に近い青から、爽やかな水色へと変色し、黒色の瞳孔が縮小して、彼が興奮しているのが分かります。
そのうちに彼が顔を赤くして、モジモジとみじろぎをしだします。

私はわざと、彼の腰の上に座ります。

私「私の体の感触を覚えておいて。
  私を抱いてくれないんですから。
  あなたの想像で私を抱いて。
  その時はどんな激しい要望にも応えるわ。」

ラファエルさんは弾かれるようにして、私から体を離します。
すると、ミカエルさんの怒りのオーラを感じます。

(ここまでか。くす。)

床に後ろ手に両手を付いた状態のラファエルさんをニコニコしながら見下ろしながら。

私は立ち上がり、彼にヒラヒラと片手を振ってジャンプして、今度はミカエルさんの所へアクセスします。