むぐむぐ、もぎゅもぎゅと夕飯を口にはこびます。

私「そんな訳でさ、なんか彼女の言ってる事が全然分からなくて。」

弟「いや、普通分からないだろ。
姉ちゃんが普通なんじゃね?」

兄「あぁ、話を聞く限り、かなり悪質な奴だ。
見た目も美しくないとなれば、害獣と言ってもいい。」

弟「あぁ、ハニワみたいな顔した奴だもんな。」

兄「お前、最初個性的な顔した人だって言ってたじゃないか。
気を使ったんだな。」

弟「だって、姉ちゃんの友達だと思ったから、悪く言ったら悪いかなって。」

私「あぁ、私も最初見た時、『あ、こんな顔をした人っているんだ』って驚いたんだよね。」

兄「お前、きっと、それ、本人に伝わっているぞ。
まぁ、話を聞く限り、相当屈折していることは間違いない。
お前はなんだかんだでお人好しだからな、そこを見透かされてつけこまれたんだろう。」

私「ふぅ~、なんか違う星の人と話している気分なんだよね…。
ん?デジャブ?」

弟「なに?デジャブ?」

兄「ん~、どうした~?」

私「ん~、そういえば、職場の主任さんがね、すごくいい人なんだけど。
私の事を、それではモテないって心配してくれてて。」

兄「いい人じゃないか。」

弟「なに?イヤミ?」

私「いや、なんかアニメ好きとかそこらへんは男ウケしないよって心配されて。
あ、そこで首をかしげていると、もうモテないって。」

兄「あ、まぁ、そうだな…。
アニメはすばらしいけれど、それを理解しない大人が大半だからな。
恋愛対象には向かないと判断される傾向にあるんだろう。」

弟「漫画とかアニメって面白いのにね?」

私「ん、まぁ学生がそういうのを好きなのはいいんだろうけれど。
それでさ、主任さんが、私と話していると、違う星から来た人と話している気分になるんだって。
宇宙人か新人類か?って困っちゃうみたい。」

兄「なんでだ?
アニメ好きぐらいで、そこまで上司を困窮させる原因はなんだ?
なにか思い当たる節があるなら言ってみろ。」

弟「突然歌いだすとか、奇声をあげるとかしてるのか?姉ちゃん。」

私「してねーし、できねーよ!
めちゃくちゃ、おとなしく仕事しているよ!
借りてきた猫みたく、一生懸命敬語しゃべってやってんよ!」

弟「姉ちゃん、口悪いもんな。」

兄「じゃ、なんでだ。」

私「上司が困っていた様子だったからさ。
探し物を机の上に持ってきたんだよ。
そしたら、驚かれて。」

弟「普通に親切にしてるだけじゃんか。」

兄「どこに問題があるんだ?
謎だが。」

私「…私さ、社会人になって、初めて気づいた事があるんだけど。
実はさ、会社の人達、電話が鳴ると、出るまでその内容を知らないんだよね…。」

弟「はぁ?なにそれ。
姉ちゃん、ふざけてんの!?」

兄「あぁ…。」

私「いや、ふざけてない。
マジな話。」

弟「電話なんて、出なくても誰でも内容分かるよな?
一番上の姉ちゃんだって分かるのに。」

兄「なんだかんだで父ちゃんも分かるもんな。」

私「驚いたよ、だれも電話が鳴って、どこから誰に電話かかってきたのか気づかないんだよ。
あたし、驚いたね。」

弟「マジで!?じゃ、なに?
受話器とるまで、内容わからないっての!?」

私「そうなんだよ。
誰かまではわからなくても、普通、自分にかかってきた電話かくらいは分かるよね!?」

兄「あぁ、それが普通だな。」

弟「何ソレ!?信じられない。
それじゃ、直接電話で話さないと確認できないってこと!?」

私「あぁ、信じられないが、それが事実なんだ。」

兄「盛り上がっているところ悪いが、お前たちに残念なお知らせがある。
実はお前たちの方が間違っている。
電話とは、会話をする為のツールであって、電報のように打てば内容が分かるものでもないんだ。」

弟「え!?そうなの!?」

私「そうなんだよ…。
これが世間の荒波ってやつなのかってびっくりした。」

弟「マジで!?それじゃ電話の意味ないじゃん!
受話器とったら、電話代もったいなくない?」

私「ねぇ~、電話鳴らすだけで十分じゃんね~!?」

兄「お前達みたいのが一般的だと思ったら、大間違いだ。
我が家の常識は世間では非常識だったりするものなんだよ。

だいたい電話の呼び鈴だけで、内容や用件まで分かる人間ばかりだと電話会社は商売あがったりだろう。
なんの為の電話だと思っているんだ。」

私「呼び鈴?」

弟「呼び鈴。」

兄「俺も社会に出るまでは、そう思っていた。
しかし、一般に合わせろ。
それで、しんじゅ、なにをしくじった。」

私「それでさ~、内線電話間違えてかけてくる人っているじゃん?
そんですぐそばの電話が鳴ったとき、隣の島の係長宛だったから、〇〇課の誰誰さんから電話ですから出てくださいって大声で言ったら、叱られた。
ふざけていないで、新人はどんな電話でも受けて、取り継ぎなさいって。」

弟「シマ?」

私「机がくっついているグループの事。」

兄「叱られて当たり前だ。
それじゃ、お前、さっきの主任さんの話。
声に出していないのを拾って、ものを持っていったのか。
何を持っていった。」

私「穴あけ機。」

兄「不自然だ。
普通無言で探し物をしていて、察して差し出すなら消しゴムかホッチキスどまりだろう。」

私「しかも、二穴じゃなくて、一穴。」

兄「それはいくつあるものなんだ。」

私「課に一つ。
その主任さんは、自前の一穴を持っていたから足元を探していたんだ。
それを私が先に持っていった。」

兄「それはどこの課にもあるものなのか?」

私「無い課の方が多いらしい。」

兄「明らかに不自然で不審な行動だ。
それで、宇宙人か新人類発言につながるのか…。
お前が相手の考えを読んでいるということは、バレているんじゃないのか?」

私「あぁ…勘が働いただけで、主任の誤解だとたたみかけて無理やり納得させておいた。」

兄「あぁ、まぁなぁ…。」

私「けど、実際はバレている。
勘のいい人だし、頭もいい。
本心では気づいていると思うが、常識が邪魔をして頭が受け付けないだけなんだ。」

兄「それで、お前、どうするんだ。」

私「どうもしない。
いくら私の事を疑っても当人がとぼけていたら、証明しようがないからね。
私だって、好きで相手の頭の中を覗いているわけじゃない。
そうは言っても、自分が考えている事が他人に読まれていると思ったら誰だって気分が悪いだろう。
せっかく縁があって一緒の職場で働くようになったんだ。
お互い気持ちよく仕事をするためにも、嘘も方便。
これは私なりの思いやりのつもり。
お互い、知らんぷりをし続けるしかないさ。」

兄「お前の発言は、新人というより、そこに長年働いていた上司みたいだな。
ふぅむ、そうだな…。
俺たち兄弟はやや特殊な人間だが、その中でもお前が一番能力が高い。
お前、社会人一年目にして、いろいろ大変だな。







いつも最後まで読んで下さりありがとうございます。
↓応援よろしくお願いいたします↓
  
スポンサーサイト