職員室の中に、パラパラと先生たちがたくさん戻ってきつつありました。

人の出入りが多い中、私たち三人は、あれこれと話をし続けていたのでした。


私「先生、育ち盛りの子供さん二人抱えて大変なんだと思います。

その上、周りの人達へ気遣いの買い物をしてお財布がきびしいというのは分かります。

そこで、提案なんですが。

一昨日からウチの店で四日間限りMSサイズの玉子がなんとおひとり様4パックまで78円で特売です。
まだ、明日、明後日と二日もチャンスがあります。

この機会に、ぜひどうぞ!

育ち盛りの子供達に、ぴったりな完全栄養食品。
厚焼き玉子なんて、黄色の色合いがお弁当のお供にピッタリです。

そして、健康を気遣うなら、ビタミンEが強化されたヨード卵光がおすすめです。

中性脂肪が気になるおつかれさまのサラリーマンの方から、小じわが目立ち始めた、アンチエイジングに興味のあるご婦人まで、幅広い年代に需要が有る素晴らしい卵ですよ。

しかも、月末まで、ニッスイの魚肉ソーセージが5本で298円と特売になっています。

また、釜揚げシラスがいつもなら200g198円のところ、なんと158円といつもより40円もお得です。

大根おろしに散らしてもいい、そのまま醤油をかけてノリを散らして、ご飯にのっけても美味しくいただけますよ?」


木「…すごい、セールストークが板についている…。」


担「誰かコイツを黙らせろっ!」


私「あ、はい。
少し、しゃべりすぎました。」


木「…しっかり者だ…。
この子、すごい働き者だ…。」


担「まぁ、いい。
お前の脳みそがデタラメだらけだというのは、分かった。」


木「今ので、どうしてその結論になるんですか?
それに、教育委員会に子供を使って、何をしているんです!?」


担「先生は口出ししないでもらおう!

すべてこいつの妄想だっ!
それより、しんじゅ、それなら、なぜお歳暮がむき出しで配られるような格好になったのかの説明はつくのか?」


私「え…。
それ、答えなきゃいけないんですか?」


担「あぁ、答えてもらおうか。」


木「先生、気持ち悪い追求はもう、やめてくださいよ。
見てて、こっちが気分悪くなる。」


担「あぁそうですか。
それなら、さっさと席を外してください。」


木「そうもいきませんよ。
これだけ児童に乱暴な口をきいて、見逃せません。」


担「ふ、無能が。
さぁ、さっさと答えろ。
でないと、このお人よしが余計に醜態を晒すことになるぞ?」



私「あの…。
先生の言っていることは、よく分かりませんが。

私の想像だと、先生は、きっとお歳暮を買うとき、とても急いでいたんだと思います。」


担「ほぉ。なぜ、そう思う?」


私「ノシや包装が無い。
その手間を惜しむだけ、買い物をするときに急いでいた。
そう、考えられませんか?」


担「なら、なぜ値札がついている?」


私「お店の人が、値札を外す時間がないほど、先生が急いでいたんだと思います。
それと、もしかしたら…。」


担「もしかしたら、なんだ?」


私「先生は40人ぐらいお歳暮を贈っていた。
一個5千円だとすると、20万円になります。
やっぱり、先生の一ヶ月のお給料ではまかないきれません。」


担「ほぉ。」


木「そうだ、言われてみればそうなんだ…。
源泉とか社会保険料とか引かれているから、普通はその金額届かない…。」


担「だとすると、どうする?」


私「先生は、きっと問屋街で買ったんだと思います。

仲卸を通さなければ小売店価格よりずっとお値打ちに買い物できます。

それなら、数が多くても、ぐっと金額が抑えられるし。

包装やノシを断った分、値段も下がるんじゃないかな?

手数料が値引きされたり、現品限りの商品を自分で運んだから、安く手に入ったんだと思います。」


担「はははっ!
傑作だ!

問屋だと?
問屋街で買っただと!?
お前はどこまでお人好しなんだっ!」


私「それでは、先生はどこで買ったんですか?」


担「はははっ!
言っただろ!金の成る木から買ったんだよっ!
このクズがっ!」


私「それで、なんで、私に答えさせるんですか?
意味が分かりません。」


木「先生、いい加減にしてくださいよ。
この子はさっきから、真面目に答えています。

それをあなたは全部悪意で返している。
それが人としてやる振る舞いですか?」


担「くくく。
いい働きをしたぞ、この男。

しかし、すべて通過している。
こいつの脳みそがツルツルしているからなっ!」


私「……先生、もう、帰ってもいいですか?」


担「ダメだ。
肝心の事実がまったく見えていない。

お前の泣き顔を見るまでは帰すつもりもないな。」


木「先生、いい加減にしてください。

さっきから、聞いていればなんですか?

問題発言ばかりどころか、問題行動が多すぎです!」


担「黙っててもらおう!
こいつは虚言癖があるんだ。
だから、こいつの言っていることはすべてデタラメなんだよ!」


木「いいえ、全然そうは思えません。
この子の言っていることは、すべて理屈が通ると思います。

先生の言っていることの方が不審なんですよ。」


担「いいや?こいつの頭がおかしいんだ。
でなければ、そんな何ヶ月も前の事を覚えているはずがない。」


私「私は嘘は言っていません。
すべて事実を言っています。」


担「ほぉ?ではお前は記憶力がいいとでもいいたいのか?」


私「……いい方だと思います。」


担「では昨夜の食事内容を言ってみろ。」


私「コロッケとご飯です。」


担「では、その前日の夕飯だ。」


私「マカロニサラダとお味噌汁とご飯です。」


担「ではその前は?」


私「たらこサラダとご飯と味噌汁です。」


担「ではその前は?」


私「ハムカツとご飯です。」


担「ではその前は?」


私「ナポリタンです。」


担「ではその前は?」


私「冷奴とおつけものとコロッケとご飯です。」


担「ではその前は?」


私「手作りコロッケと、肉じゃがと鳥の唐揚げとお味噌汁です。

あ、食後に豆大福とお茶がありました。」


担「急に豪華になったじゃないか?肉ばかりだ。

なぜ、そんな嘘をつく?」


私「近所に住む、ヨッちゃんの家でご馳走になったからです。

それと食事の前に、ヤキモチを三つ食べています。」


担「食いすぎだろ。だからあいつデブなんだよ。
では、その前は?」


私「ハゴロモのマグロフレークとキャベツの卵とじです。
それとお味噌汁とご飯です。」


担「なぁ、全体的に食事が貧相だぞ?
お前本当は覚えていないんじゃないのか?」


私「お母さんが体の具合が悪くて、お惣菜が続いているからです。」


担「ではその前は?」


私「いわしの唐揚げです。
それと野菜炒めとお味噌汁とご飯です。」


担「ではその前は?」


私「コロッケときゅうりのおつけものとご飯です。」


担「ではその前は?」


私「湯豆腐と厚揚げの炒め物。

それにネギたっぷりのお味噌汁と卵焼きとご飯です。
あ…。」


担「お前、本当は覚えていないんだろう?」


私「その後、羊羹とみかんを食べました。」


担「はっ!お前、どうせ嘘をついているだけだっ!」


私「いいえ、覚えています。」


担「では証拠は?どこに証拠がある?」


私「私、嘘はついていません。」


担「なら、お前の母親に確かめるまでだな!?」


私「は?なんの為に?」


担「お前が嘘をついていないというのなら、母親も同じメニューを答えれるはずだ。

くく。今から電話して学校のファックスに回答をよこすように催促しよう。」


私「やめてください。」


担「ほらほら、何を慌てている?」


私「先生が私のお母さんに聞くのは何のためです?

先生は私たち子供に勉強を教えるのが仕事です。

児童の食事がどうかなんて、勉強には関係ないじゃないですか?」


担「何を言っているんだ?

嘘をつく児童がいるのなら、きちんと見定めて指導する為に必要なことだ。

父兄が教師に協力するのは当たり前の義務だ。

さぁ、お前の母親の慌てる声でも聞いてやろう。」


私「先生、先生がやろうとしていることは、要するに趣味ですよね?」


担「あぁ、趣味と実益を兼ねている。
なにが悪い?」


私「先生のやることは悪趣味なんですよ。
やめてください。」


担「くくく。
自分が嘘をついているのがバレるからそんな事を口走っているだけだ。
私にはすべてお見通しなんだよ!」


私「先生、私のお母さんは調子が悪いんです。
先生の趣味からくる悪ふざけに巻き込まないでください。
意味ないんですよ、そんなことしても。」


担「くくく、今から口裏合わせをしようとしても無駄だ。
まぁ、どうせ、お前の母親もメニューを覚えていないんだろうがな。」


私「先生、私のお母さんは四人も子供を育てていて忙しいんですよ。
家事とお店のきりもりもしている。

先生の趣味に付き合うほどヒマじゃないんです。
遠慮してください。」


担「お前、言うに事欠いて、私をヒマ人よばわりか?」


私「だって、ヒマでしょう?
わざわざ私の母親にファックスで答え合わせさせようとしている。
無駄だと思いますよ。」


担「だから、真実を探るための手段だ。
お前の記憶力が正しいかどうかの検証のためなんだよ。

忙しい私の、気力をつかっての工夫なんだ、付き合ってもらおうか。」


私「先生はどうしても、私の記憶が怪しいといいたいんですね。」


担「あぁ、それが事実だからだ。」


私「なら、私と先生でどちらの記憶が正しいかを実験しましょう。」


担「あぁ?どうやってやる気だ?」


私「二人で昨日まで食べたメニューを言い合いっこするんです。」


担「お前、何を言っているんだ?
お前の方が有利じゃないか(笑)

いつも貧相な料理ばかりだから、こたえやすかろう?
私の家はいつも豪華な食卓だ。

いくつもおかずがあって、答えるのが大変なんだがな?
残念だが、検証不可能だ。」


私「何を言っているんですか?
できますよ。確実に。」


担「どうやって、各自の夕飯のおかずを検証するんだ?」


私「私は夕飯で調べようなんて言っていません。」


担「はぁ?朝食か?パンばっかりとか言うんじゃないだろうな?(笑)」


私「いいえ?給食です。
毎日同じものを食べていますから、順番に答えていけばいいんです。
三日前のメニューぐらい当然覚えていますよね?」


担「……。」











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