それは一週間後に展覧会を控えた、とても天気のよい日曜日の午後のことでした。


前日の土曜日は、展覧会の準備で、一人遅くまで残り、そこに憧れのサヨちゃんから声をかけられた日でもあったのでした。

彼女の身に起きたことが、とても気の毒に思えて、今更蒸し返すのも…という遠慮から、なにも声をかけていなかったのですが。


思いかけず、彼女から声をかけてもらえて、有頂天になったのも束の間。

結局、私と親しくなるには覚悟がない、今後この学年にいる間は声もかけないと言われて、しょぼくれて帰宅したのでした。


私は自宅で、一番日当たりがいいと思われる、2階にある、仏間の南側に面した窓際に陣取って、畳の上に寝っ転がっていたのでした。


服は冬物の毛糸のカーディガンを着込んでおり、そこそこ暖かいものの、空気はひんやりとしていて。

かといって、暖房をつけるまでもない、日差しの暖かさのある日中のことなのでした。


窓ガラスに向かって寝転がり、ぼんやりとベランダ越しの外の景色を眺めつつ、片肘をついて、口にはさきいかをくわえて、にっちゃにっちゃと、一人ほおばっていたのでした。


その時、兄が通りかかりました。


兄の部屋は、仏間とは廊下をはさんで反対側の北側に位置しており、たまたま、ふすまが少々空いていた為、私が窓辺で寝転がっている姿が目に入ったようでした。




兄「まぐろ。」



私「…。」



兄「おい、そこのまぐろ。」



私「…。」



兄「おい、そこの遠洋漁業で魚河岸に水揚げされたまぐろ。」



私「…。」



兄「おい、そこに横たわる、まぐろ。」



私「もしかして、私の事か?」



兄「お前以外、誰がいるっていうんだ?」



私「まぐろなんて、呼ばれ方したことなかったからな。

しんじゅという名前がある。

呼ぶならそっちで呼んでくれよ。」



私はガラスを眺めながら、後ろを振り返ることもなく、そう答えていました。

背後にとすとすという軽い足音がして、兄が近づいているようでした。



兄「くす。

あまりに生気のない様子に、市場で転がっているまぐろの死体かと思ったんだ(笑)」



私「笑えねぇな。」



兄「くす。

昨日のことがこたえているのか・・・。

ん!?

ちょっと、待て!

お前、背中に何をつけているっ!?」



私「えっ!?」



私は寝転がったまま、慌てて兄の方を向きました。



私「えっ!?何っ!何がついているのっ!」



兄「危険だっ!

俺が取ってやる!」



私「えぇっ!ちょっ!何っ!取って取ってっ!」



私はむくりと体を起こして、背中をパタパタと手で叩き始めました。



兄「待てっ!

触るなっ!

そのまま、こっちを向けっ!」



私「えっっ!?」


私が兄に向かって、背中を向ける仕草をすると兄が強い口調で言います。



兄「ちがうっ!

寝転べっ!そして、仰向けになるんだっ!!」



私「えぇっ!逆じゃないっ!?」



兄「いいから、俺を信じて早くっ!」



私は慌てて兄の言うとおり、仰向けになりました。



兄「いいかっ!

緊急を要する!

しんじゅ、歯を食いしばれっ!」



私「え?」



めり。



兄の足が私の下腹に乗りました!

さらにツイストかませてきます。



私「みぎゃぁあぁぁあぁぁぁぁあぁああぁ!!!」



兄「よし!」









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