雨がしとしとと降り続けています。

中庭を眺めながら、友人と二人、渡り廊下で雨宿りをする格好で話を続けていました。



私「あとね、山崎豊子の『大地の子』も名作なのよ。」


友人F「知らねーな。」


私「これは、もう、滂沱!

読むのがつらい、ほんと主人公苦労してね~。」


友人F「どんな話だよ。」


私「長いからね、簡単に言うと、中国残留孤児の話かな。」


友人F「なんか、暗そうな話だな。」


私「ん、そうだね。

主人公の陸一心はね、日本人だけど、中国のすごくいい人達に育てられたのよ。

でも、その後、苦労に苦労を重ねてね、ほんと、逃避行とか…。

それで、子供の頃に生き別れた妹をやっと探し当てたと思ったら、妹の葬式の日だったり…。

彼も、すごく才能に恵まれているけど、日本人である、という事が足かせになって、なかなか世に出れない。

中国人は日本人の事を、すごく嫌っていたからね。

でも、それ以上に、妹の方が、悲惨な暮らしをしていて…。

田舎の中国人に嫁としてお金で買われて、幼い頃から辛い思いをして。

小学校も行ってないから、学がなくて、自分の事をどうすることもできなくてね。

周りの人達も、あの人は苦労しているけど、日本人だからって助けてもらえず、若死にする。


もうね、もう、主人公たち、悪くないのよ。

でも、中国の人たちの気持ちも分かるのよ。

誰もが生きるのに必死だから、責められない。


戦争がなかったら、こんなに不幸にならなかったのに、と思うと。

本当に、戦争は無益だなって、強く感じる作品だよ。」


友人F「そっか…。

まぁ、そうだよな、戦争なんて、無益に決まってるよな。」


私「うん、ほんとに、そうなの…。」


友人F「お前さぁ、人の事言ってるけどさぁ。

お前も、もっと幸せになっていいんじゃねーか?

お前の主義っつーか、気持ちは分かってるつもりなんだけどよ。

金があったら、学も積めんじゃん。

お前、もったいないよ。

金好きだろ?

じゃんじゃん稼げよ。」


私「フクちゃん、私はね。

お金が好きだよ、でも、なぜ好きか?って聞かれたら。

私は、こう答える。


『お金があれば、選択肢が増えるから』だと。」


友人F「じゃ、金あれば、あるだけいーじゃん。」


私「でも同時にね、私はお金をそんなに価値があるとは思っていない。

お金は手段だ。

自分に力があるということを示す、ひとつの指標に過ぎない。

はっきり言えば、私はお金を世の中でもっとも価値があるとは考えていない。

私は、世の中で、お金より価値のあるものがあると考えている。」


友人F「どーゆー意味だよ。」


私「何がなんでも、お金が欲しい。

それなら、霊能や、予知能力を使わずとも、いくらでも稼ぐ自信はある。

それこそ、中国ファンドを買うとか、株式投資をするよ。

この頭脳があれば、金を稼ぐことも可能だ。」


友人F「あ、そっか…。」


私「私はね…。

私は、親からひどい扱いを受けて、生きてきた。


口の中にゴミを突っ込まれ、口にガムテープを張られ、両手、両足をビニール紐で縛られる。

そのまま、真っ暗な倉庫で、コンクリートの上に何時間も放置だ。

トイレが我慢できず、おしっこを漏らす。

それが、服を濡らして、体を冷やす。

外は雪が降っている。


どうしようもない、惨めさの中、闇の中泣くこともできない。

涙を流せば、鼻が詰まって、呼吸もできなくなる。


けど、喉の奥をゴミがつかえて、えずく。

手を後ろ手に縛られているから、口を塞ぐものをどかすこともできない。

気が狂いそうな、何時間。


…私はね、よく思ったよ。

自分って、なんなんだろうって。

アレ?私って人間だった?って。


助けられても、しばらく頭が働かない。


私、動物だったっけ?

生き物だったっけ?


お前は犬畜生だと親に殴られて、そんな思いを、何度も、何度も繰り返して、生きてきた。」


友人F「お前、そんなひどい目にあわされて…。」


私「…私、生き物だったっけ?

犬畜生?

人間じゃなかった?

犬より、下じゃない?

近所のポメラニアンの方が、いい生活しているんじゃない?


私、なんのために、生まれてきたの?

なんで、生きてるの?


なぜ、こんな親のもとに、生まれてきたの?

生きてる意味、ある?

って、思いながら、生きてきた。」


友人F「かける言葉もねーよ。」


私「私ね、親からみて、愛玩動物なんだなって思った。

機嫌がいい時は、可愛がる。

機嫌が悪いと、殴る蹴るを繰り返される。

でもね、世間の愛玩動物?ペット?

ペットの方が、まだいい扱い受けてるんじゃないって思ってた。


じゃ、なんで、アタシ、人間やってるのって。

アタシ、気が狂った方が、楽なんじゃないって思った。」


友人F「ん…。」


私「私ね、なんども、このまま死ぬんじゃないかって。

いや死んだほうがマシなんじゃないかって思った。


でもね、身体痛いし、呼吸するし、おしっこちびるし、なんだかんだで、全身で生きたいって思った。

もう、理屈じゃないの、もう、本能なの。


でも、現実はコテンパンなの。

どうしようもないくらい、どうしようもない環境だったの。

するとね、頭の中の暴風雨がフッと凪ぐ時があるの。」


友人F「え?なぐ?」


私「凪ぐ、風がとまって、ピタリとも動かなくなる瞬間。

瞬間なのかなぁ、永遠のようでもあるし、瞬きのようでもあるし。


それは、とてつもなく、大きな、何か。

私は、その空間だけでなく、その土地だけでなく、その国だけでなく、その星だけでなく、全て。

全ての大きな、何者か、その中の一部だと感じる瞬間があるの。


それは、外を走る、自動車にも、草木に宿る、涼しげな音色を立てる虫にも、風に揺れている名もない花にも、路傍に転がる石にも。

すべて通っている、何か、そのなにかと一体となる。


そこには、苦しみも、悲しみも、喜びも、なにもなく。

なにもかもがある、そんな状態になる事があるの。


すると、すーっと苦しみが消えて。

いや、正確には痛みはあるんだけど、精神的な苦痛はなくなるの。


生きている。

それだけに集中するの。


私は、全体の一部だ。

今は苦しいが、これが永遠ではない。

何かをするんだ、何かを為すんだ、そのために生きている。


そう、感じるの。」


友人F「…。」


私「オカシイでしょ?

実際は体を縛られて、自分のおしっこにまみれて、窒息しそうなのに。

苦しくて、死んでしまいそうなのに、なんでもできるって気持ちになってるのよ。


価値観が逆転するの。


今、生きてる。

だから、できる。


惨めさも、ささいなものに感じるの。

余計なものはいらないのよ。

お金とか、評判とか、名声とか、地位とか、そんなの、まったくささいなものなのよ。


私はね、私のやりたいことをする。

それが、私の生まれてきた目的だと、強く感じるの。


自分にはそれができると、強く信じれるのよ。」










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