友人F「友達だから…。」


私「ん、そんだけ。
なにか他に理由でも?」


友人F「え…。

なんか、なんだろ…。

言葉が出ない…。」


私「そっか、まぁ、つらかったな。」


友人F「うん、なんか、毒気抜かれた…。

さっきまで、アイツの事を殺してやりたいくらい憎かったのに、なんだろ、どーでもよくなった…。」


私「ん、そっか。
い~んじゃね?

雨、やまないな…。」


友人F「ん、そうだな、雨やまないな…。」


二人して雨が降る中庭を眺めていました。


友人F「…友達…。

なんか、お前みたいなの、初めてかも…。

変わってる…。」


私「カカ!
変わりモンか!
よく言われる!」


友人F「あぁ、なんつーか、いや、そうなんだけど、うまく言えね~…。」


私「いろんなタイプの友達いた方が楽しいだろ!?」


友人F「あぁ…。

まぁ、なんつーか、そうなんだけど、ちょっと意味が違う感じ…。」


私「ふぅ~ん?
ま、いっか。」


友人F「あぁ、まぁ、いっか…、うん…。」


私「私が変わったタイプの友達ね…。

…フクちゃん、昔の話だけど。」


友人F「あぁ?」


私「いつだったか、二人きりでさ、教室に残ってさ。

フクちゃん、自分の事話してくれたじゃん。

中学の時の話。

一年の終わりごろ。」


友人F「あぁ…。あの話ね。」


私「私さ、あの話聞いた後、家に帰ってさ。

…泣いちゃったよ。

夜ずっと、布団の中に入って泣けてしょうがなかった。」


友人F「はぁ!?

だって、お前、あん時『ふぅ~ん』って、そんだけだったじゃん!

アレ?これだけ?ってこっちが肩透かし食ったよ。

なんで?」


私「フクちゃんさ、私に告白してくれたじゃん。

あんな辛い経験したってことさ、同年代の女の子に話すのってさ、勇気いったと思うんだ。

話聞いてて、涙が出そうになったけどさ、そんなん、勝手に相手の事、かわいそがるの、しつれーじゃん。

だから、平気なフリしてたの。」


友人F「だって、お前、スゲークールだったぜ。

そっか、って感じで、怒るとか泣くとか引くとか、全然なしでさ。

次の日も、フツーに接してくるしさ、なんにも感じてないかと思った。

気づかなかったゼ。」


私「Sの時、失敗したから、我慢してたの!」


友人F「Sか。

アイツ、バックにヤクザがついてるグループにいたしな。

ここらで、一番ヤバいとこだぜ?

アイツ、何をしでかしたんだ。」


私「それは企業秘密だ。」


友人F「…そんで、Sの話聞いて、お前何したんだ。」


私「何もしてない。

ただ、Sの話を聞いて、目の前で泣いちゃっただけ。

友達が苦しんでいるのに、何もできない自分が悔しいって、目の前でボロボロ泣いちゃったんだよ。

あ~っ!もうっ!!」


友人F「それでアイツ、いつもお前のことをハニーとか言って、つきまとってたのか…。

アイツの時も泣いて、アタシん時も泣いたって事は、どうせ二人とも似たようなことしてたんだろ。

あそこはヤクもウリもやってるって話だ。」


私「チッ。アングラの情報網か。

それは企業秘密だ。」


友人F「それは…。

こいつ、陰で泣いてたのか…。

アタシの為に泣いてくれてたのか…。

そんな奴いるのか…。

Sがこいつにつきまとう理由がわかる気がする…。」


私「相手の事を勝手に自分よりかわいそうな奴と決めてかかるような真似はしたくなかったんだよ。

わかんね~だろ、そいつがどんだけ苦しんでんだか。

心ん中のことだ、どれだけ傷ついているのか、見た目では全然わかんねー。

こっちは気持ちを救う言葉もかけられない。

いつも通り接するぐらいしか、あの時はできなかったんだよ。」


友人F「それで、お前、普段どおりだったのか。

スルーされたのかと思ってたぜ…。」


私「またフクちゃんから相談されたら、何か言おうと考えていたんだ。

それもなくて、ずっとそのまま。

最近顔色がすぐれないし、元気がなかったからさ。

失恋したのか、と話を振ったんだ。」


友人F「…気づいてたのか。」


私「毎日顔をつきあわせてんだ、気づくだろ、フツー。

こっちだって、人の頭ん中のぞいたことを暴露する趣味はねーよ。

少しでも吐き出させて、楽にしてやりたかったんだよ。」


友人F「気づいたの、お前ぐらいだよ。

親だって、気づかない…。」


私「あぁ、関心がねーんだろうな。

自分の事でいっぱいいっぱいなんだろうよ。」


友人F「あぁ、アイツらも毎日顔付き合わせてんだけどな…。」


私「まぁ、家族といっても、違う人間なんだ。
相性もある。
気にすんな。」


友人F「あぁ…。」


私「考えていたんだ。

フクちゃんの気持を救う方法を。」


友人F「ん?あぁ…。」


私「こないだ、未来予知の話しただろ?」


友人F「あ?」


私「眠りの世界に入って、意識を飛ばすと時間や空間は関係ない。

意識の状態でみると現在・過去・未来は同時で並列なんだ。

意識さえすれば、何十年も先の未来をのぞくことができるし、過去に戻ることもできる。

まぁ、過去に戻るってのは、やったことないけどな。

けど、こうして生活していると、時間は過去→現在→未来へと直列に流れている。

これを時の不可逆性という。

つまり、過ぎ去った過去は変えられない。

そんな大原則の中で人間は暮らしている。」


友人F「あぁ。」


私「過去は変えられない。

罪を犯しても、取り戻せない。

変えられることができるのは、これからと未来だけ。

フクちゃんの気持を救う方法を考えた。

けど、完全にフクちゃんの心を救うには過去を書き換えない限りは不可能なんだ。」


友人F「あぁ。」


私「フクちゃんに足りないものは、他人からの信頼だと気づいた。

だから、まず、私はフクちゃんを信じることにした。」


友人F「あぁ。」


私「時の不可逆性とともに言える真理は、他人が他人を変えることは基本的に不可能だ、という事だ。

いくら私がフクちゃんを信じても、フクちゃん自身が自分を信じることができなければ、安らぎを感じられないし、本当の意味では幸せになれない。」


友人F「あぁ…。」


私「フクちゃんが、ヤンキーと付き合うのは、気安いからだろ。

同じような苦労をしているから、なんとなく気持が通じる。

逆に苦労知らずの子と一緒にいると、イラッとする。

こっちの気持ちが伝わらないからだ。」


友人F「あぁ、そうだな、気が楽なんだ…。」


私「さっき、言ったろ。

金持ちに貧乏人の気持ちは分からない。

健康な人間に、病人の気持ちは分からない。

それは、想像で補える場合もあるし、補えない場合もある。

そうすると説明が必要になるから、疲れてしまう。

いちいち、口で説明しなくても、分かれよな、って気持になってやさぐれてしまう。

クラスにいると、そんな気持ちになるんじゃないのか?」


友人F「そうだな、能天気でいいな、とかお気楽でいいよ、コイツラとか思う。」


私「ん、実は私も、そう思うこと、よくあるんだ。

親に殴られたことがない子の方が一般的だし。

同級生に嫌がらせやいじめにあう子の方が少ないものだ。

親がいなかったり、お金で苦労している子もあまり見かけない。

なんか、話していて、疎外感っていうか、置いてきぼりされた気分になって落ち込むことがよくある。」


友人F「あぁ、そうだな。

アタシもそんな感じ。」


私「でもな、屈託のない子と話していると、こいつら気持ちが優しいなって思うんだ。」


友人F「あぁ、そうだな。うらやましいぜ。」


私「その点、似たような境遇の子と話していると、気が楽だろ。

感覚が似てるから説明不要。

落ち着く気がする。」


友人F「あぁ、そうだな。」


私「けどな、厳しいことを言うようだが、そいつらは心がさみしい奴らだ。

さみしい奴は何人群がっても、さみしいままなんだよ。

本当にさみしかったのなら、心の温かい優しい奴と群れたほうがいいんだ。」


友人F「さみしい奴は何人集まっても、さみしいまま…。」


私「そう、さみしいから群がる。

愛情が欲しくて。

でも、愛情がほしいばかりの奴らがいくら集まっても、いつまでたっても、さみしいまま。

刹那的な安心しか手に入らない。

自分がさみしいなら、何気なく相手に愛情を与える、心の温かい奴と付き合ったほうが、幸せになれるんだ。

似たような奴ばかりと群れてちゃ、何も変わらない。

友達を増やすんだ。」


友人F「ヤンキーだから、見捨てろというのかよ!」


私「気持が分かり合えるからくっつくってのは分かる。

当然の心理だよ。

でも、なんで、社会でヤンキーが問題視されているか、分かるか?

行動が拗ねているから、発展的じゃないからなんだよ。

早くそこから抜け出してくれってスタンスなのは、そこに安住しても救いがないからだ。

フクちゃんの交友関係を私が口出しする権利はないよ。

でも、私を足掛かりに、私の友達とも友達になってみろよ。

みんな気のいい優しいやつらばかりだ。

最初はイラつくだろうけど、きっと仲良くなれる。

友達を増やしてみろよ、きっとフクちゃんの気持が変わる。

そしたら、フクちゃんの世界が変わる。

きっとよくなる。」


友人F「…無理だよ、アタシヤンキーだよ?

どうせ、避けられるよ。」


私「フクちゃんは、見た目で圧倒しているけど、礼儀はわきまえているし、大丈夫だ。

少なくとも、私の友達はフクちゃんの事を悪く言わない。

いい奴だって言ってた。

気持ちのいい奴と仲良くなれよ。」


友人F「アタシ、ヤンキーだぜ?

無理だって。

悪いこともしてる。そういうのってなんかバレんだろ?」


私「…フクちゃんが、ハスッパな口のききかたをしたり、態度をとるのは、自分が汚れていると思っているからだ。

自分は罪を犯しているとどこかで自分の事を責めているからだ。

芯から腐った奴は、自分を責めたりはしない。

フクちゃんは、まともだ。

自分を責めるな。」


友人F「無理だよ。

お前が特別なんだよ、普通の子は逃げちゃうんだよ。

アタシ、お前に告白した後、逃げられても仕方ないと思っていたんだ。

けど、普通に接してくれて、それだけでも嬉しかったんだ…。」


私「時の不可逆性だ。

犯した罪はもう取り戻せない。

フクちゃんは、自分を責めている。

だが、過去は変えられない。

考えたんだ。

どうしても不可能だ。

フクちゃんを完全に救うことはできない。

だから、私が許してやる。

フクちゃんの罪は私が許す。

もう、自分を責めるな。」


友人F「…許す?」


私「まぁ、フクちゃんがしたことは、たいしたことない。

罪に問われるかと言われれば、確かに、ちょーっと、えっとぉ、やっぱり抵触するけどぉ。

ま、未成年だし、いいだろ、うん。

間違わない奴なんていない。

これからだ、これからフクちゃんができる範囲でいいことをすれば、巡り巡って誰かの役にたって、それが罪滅ぼしだと思えばいい。

過去は変えられない、けど未来は変えられる。

罪は罪、でももう、自分を罰するな。

私が許す。


私はサイコメトラーだ。

そして、見聞きしたすべての情報を記憶してしまう。

フクちゃんの罪は、私が記憶して預かって固く閉じ込めてしまっとく。


フクちゃんは、もう、そのまま忘れろ。

ってか、フクちゃんが忘れても、私は記憶し続けてしまうだろう。

今はつらいかもしれない。

けど、あと一年したら社会人になる。

仕事をして生活に追われて、今の気持もどこかにいってしまうだろう。

それまでの辛抱だ、と言いたいところだが、さっさと今すぐ幸せになってもらいたい。

勇気いっただろ?私に告白する時だって。

待たせたな。

こんな結論で悪いけど。


私がフクちゃんを許す。

まぁちょっとした見えないお守りみたいなもんだ。

心の胸ポケットの中に、生徒手帳と一緒にしまっとけや。(笑)」











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