友人F「見えないお守り…。」


私「おう!気休めかもしれねーけどな(笑)

フクちゃんの罪は、全部私が引き受けてやるよ!」


友人F「…ヤバい、なんか、こいつ、キラキラして見えてきた…。

アタシ、ユリッ気ないのに、ヤバいぞ…。」


私「ん~?どった?」


友人が両手で自分の頬をパンパンたたき始めました。


友人F「なんなんだ、お前。

修道女かなんかか?

アタシに懺悔させたのか?」


私「はぁ?んなワケねーだろ(笑)

くくっ!私が清らかな人間に見えたってか?

だいじょーぶか?目。」


友人F「だいぶヤバいらしい。

まだキラキラして見える…。」


私「カカッ!とんだ聖女様だなっ(笑)

悪いな、ガラが悪くて、口のききかたもこんなんで!


いろいろ考えた結論が、これだよ。

一年以上待たせたな、これが私にできる精一杯だよ。」


友人F「お前、一年以上前のことを考え続けてくれたのか…。

ホント、お前が男だったらよかったのに…。」


私「はぁ?

ま、とにかくだ。

フクちゃんにはさ、元気になってもらいたいからさ。

そんで、親ともいろいろあっただろ?

人の親を悪く言って、わりぃんだけど、あんまいい親じゃねー。

でだ、子供ってのは生まれてから数十年はどうしたって、親の影響を受ける。

それが宿命ってもんだ。

でもさ、親ってやっぱ超えるためにあると思うしさ。

これからも、進路の事とか口出ししてくると思うけどさ。

まぁ、アイツら、人生の先輩ぐらいに思って、全部いうこときくことないよ。

自分より人生長くやってるだけの奴ぐらいに思ってさ、参考意見にとどめておけって。

普通に考えて、ただの大人なんだから、意見が全部正しいわけない。

そーゆー感じでいいんじゃね?」


友人F「親のいう事でも参考意見か…。

そっか、そんなモンだよな…。」


私「あぁ、赤ん坊の頃からの付き合いだからさ、絶対って思いがちだけど、実際はそーでもねー。

バカなことだってしでかすさ。

だから、気ぃ楽にして、付き合ってやんな。」


友人F「あぁ、そうだよな。

ウチの親だって、バカばっかりやってんよ…。」


私「ん、そんなモン。

やっと大きくなって、目線が変わる頃合いなの!

で、恋愛して、失恋したりして、青春はめまぐるしい(笑)」


友人F「あぁ、失恋っつーか、男に騙されて不倫だったしな。

悲惨だぜ。」


私「あぁ、気の毒っちゃー気の毒だけどよ。

しかたねーじゃん、好きになっちゃったらさ。


それに、これだけ落ち込むこと、そうないだろ?

フクちゃんの家族関係。

友達関係、そういうの考えたらさ。


フクちゃんには、自分以外の人から信頼されるって経験をしてもらいたいと思っていた。

けど、なかなかそんな機会ないだろ。


これだけ落ち込んだ時に、友達から信頼されていたって気づかされるとインパクトある。

倍率、さらに倍で、ドン!だ。

ホラ、なんか得した気がしね~?(笑)」


友人F「お前、どんだけ考えてんだよ…。」


私「ふ。復讐は不毛だし。

かといって、フクちゃんが悔しい思いをするだけなのは、もったいないと思ってね。

とっさになんとか活かせないかと考えたんだよ。

効いた~?(笑)」


友人F「あぁ、効いた効いた!

もう、天国から地獄、あ、いや逆か、地獄から天国だよ!

さっきまで、殺意沸いてたぐらいなのに、なんなんだよ。

ったく、ほんと、お前、メチャクチャだな!」


私「カカッ!転んでもタダでは起きない!

そーでもないとやってられないっしょ!(笑)

細かい事は気にすんな!」


友人F「はぁ~、水商売してっから、あーゆー目にあっちゃったのかな…。

なめられて、遊ばれて当然って感じだったのかな…。」


私「水商売は男女の恋愛感情も商売道具の一つだ。

どうしたって、そういうトラブルはつきまとう。

男の人って、どんな風に考えているか、うちらにはまだまだ見極めができなくても仕方ないよ。

ホステスさんは、高度な接客技術が必要とされるっつったのは、そこら辺の加減も必要になってくるからだ。」


友人F「そういえば、お前さ。

ホステスの話してた時、踊り子がどーのこーの言ってたじゃん。

パトロンがどうって話。

アレ、どういう意味だ?」


私「ん?あぁ、『ドガの踊り子』の事か。」


友人F「あ、そう。ソレの話。

何?ドガの踊り子って。」


私「絵画の事だよ。

中学の美術の教科書にも載ってたから知ってるハズだ。

ほら、真っ白なロマンティックチュチュを着た、女の子がステージに立ってる絵。」


友人F「ん?どんなだっけ?」


私「ほら、白鳥の湖とかさ。

プリマドンナっての?バレリーナの絵。

真っ白の衣装を着た、若い女の子が夢見るような表情でスポットライトを浴びてる絵だよ。」


友人F「あぁ…なんか見たことある。

それであれがどうして、パトロンの話になるんだ?」


私「アレ、よく見ると背景に中年の男が立っている。

他にも劇団員だと思うけど、バックステージ側に何人か関係者っぽいのがいるんだけどさ。

その中に恰幅のいい紳士風の男が立って、中央の女の子を見つめているの。

その絵を見たとき、血の気が引いた。」


友人F「ん?そんなんあったっけ?

あった気がするけど、気にしたことなかったな。

で?」


私「私があの絵を見たのは、小学二年、8才の時。

近所の花屋さんに飾ってあったんだ。


他にも『フルートを吹く少年』とかもあったけど。

私はあの踊り子の絵を見た時、ぞっとした。」


友人F「なんでだ。別にフツーだろ。」


私「私ね、最初花屋さんに、この絵を見てみろって言われた時、真っ白な衣装を着た女の子がお姫様みたいに見えて嬉しかったんだ。

女の子が好きそうな絵だろ、外国のドガって人の絵だよって花屋のおじさんは笑って言ってたけど。

私、絵を見てたら、背景に人がいて、それが気になった。

こんなに綺麗なお姫様みたいな女の子だけで十分なのに、なんで人が描いてあるんだろうって。

邪魔だと思った。

私が絵を描くなら、女の子だけにするのにって。


次に、その場所に不釣り合いな男の人が立ってるのが見えた。

他の人たち、それが当たり前みたいな感じで誰も気にしていない光景。


女の子がスポットライトを浴びてどこかを見て微笑んでいる。

こっち見てない。

この子は、きっとこの劇場の主役を射止めて喜んでいると思った。


なんで、この絵を描いた人は、このおじさんを描いたんだろう。

海外で描かれた絵が、日本で喜ばれているってことは、すごく人気のある絵なんだ。


この絵全体に意味がある。

そしたら、この背後に立っている男の人。

このおじさんがこの女の子をお妾さんにして、主役をやらせているんだって気づいた。」


友人F「え、お前お妾さんなんて、言葉、よく知ってたな。」


私「しっかりした意味は分からなかったけどさ。

道端でおばちゃんたちが、たまに言っていたから。

お金のある男の人が、奥さん以外の若い女の人と、一緒にご飯食べたり、一緒のおふとんで寝ることだと思ってた。

だから、私はこの綺麗なお姉さんが、主役をやるために、後ろのおじさんのお妾さんをやっているんだと気づいた。

それまで、私はこの綺麗なお姉さんが、お姫様みたいであこがれて素敵だと感じていたから、ショックを受けた。


まるで、真っ白な雪の上に、汚い足跡をつけられたような気分で。

自分が所属している世界は汚いんだよ、と突き付けられた様な気がして、真っ青になった。」


友人F「お前、そんな事まで考えていたのか…。」


私「ん、いや、まだ子供だったからさ、そこまでの語彙はないよ。

でも、そんな感じを受けて、思わず、『怖い』と言ってしまった。

花屋さんのおじさんは、驚いた。

私に絵の感想をもっと言ってみて、と言われて。


私は『この絵は綺麗で、いやらしくて、怖い』と言ってしまった。」


友人F「そうか、子供だったから、そういう言い方しかできなかったんだよな。」


私「花屋の奥さんは、私を叱った。

人様の家の絵を見て、いやらしいとか怖いとかいうなんて、そっちの方がいやらしい子だと怒られた。

私なら綺麗な女の子だけを描く。

でも、絵の作者はそうじゃない、汚い部分をわざと描いたんだ。

夢を持った若い女の人を、お金で自由にする大人がいるってことを見せつけていた。

そして、奥さんみたいに、綺麗な絵だとしか思わない人もいるし。

私みたいに、汚い部分に気づく人もいる。

いや、きっと、汚い部分をわざと描くことで、絵の価値を高めている。

それを承知して、絵を売る人、買う人がいて、取引されて、こうして海外にも伝わっている。


どこまでも、絵の作者の方が上手なんだ。

私はそれまで自分がいた世界が、そんな汚いものだとは気づいていなかった。


子供の、純白の世界を汚された気分だった。

綺麗な絵を装って、お前たちがいるのは汚い世界なんだって見せつけられて、私はショックを受けた。


これが世界で人気があるってことは、どの国でも同じような感覚だという事なんだ。

大人はお金で若い女性を好きにすることが、きっと昔からずっと続いていたんだ。

そう、気づかされて、私は気分が悪くなってしまった。」


私は渡り廊下屋根の下から、一歩外へと踏み出して、雨を手のひらで受けるしぐさをした。

雨粒が手のひらにあたって、小さな水滴をまき散らかしていた。


友人F「あぁ…。」


私「花屋の奥さんは、『気分が悪いのはこっちの方だよ。

人の家の絵を見て、怖いとかいやらしいとか大人の気を引くような真似をして、卑しい子供だ。

菓子でもくれてやるから、さっさとお帰り!』とたしなめられた。

私は悲しくてしょうがなかった。」


友人F「お前んちの近所の奴も、どーかしてるぜ。

今の話聞くと、お前の方が正しいじゃん。」


私「私が真っ青な顔をしていたら、花屋のおじさんは、私の頭を撫でてくれた。


『いや、この子の言っていることはいい。

ドガの絵を一目みて、怖いと感じるとはすごい感性だ。

人の気を引くために言っているんじゃない。

この子は将来大物になるかもしれないぞ。』って微笑んでくれた。


それが、また奥さんの機嫌を悪くさせた。

私はどうも、昔から人を不愉快にさせてしまう。

自分が思ったこと、感じたことをそのまま言うと、大抵嫌な顔をされてしまう。

私は勉強はできるかもしれないけれど、人の気持がよく分からない。」


友人F「そんなの、お前のせーじゃねーよ。」


私「あ、でも、女の人には嫌われるけど、男の人はそうでもない。

花屋のおじさんは、私の事を、利口な子供だと、にこにこしていた。

花屋のおばさんには、失礼で嫌味な子供だと言われていた。

なんとなく、男の人には、そんなに嫌われないな。

私の発言は、どうも、他人を不愉快にさせるらしい。

特に女の人に評判が悪い。

そんなつもりないのにな…。」


手のひらから跳ね返った小さな雨粒が、眼鏡にくっついた。


私は眼鏡のフレームをつかんで顔から外し、ポケットからハンカチを取り出して、水滴をぬぐいました。


友人F「8才で、パトロンの意味を理解していたって訳か…。

やっぱ、お前、天才だ。

お前が嫌われるのは、お前のせーじゃねーよ。

お前の周りの奴がお前よりバカだから、お前の言ってることに気づけねーんだよ。

それに、お前が女に嫌われるのは、お前のツラが悪い。

半分はそのせいだ。」


裸眼でいた私には、隣にいたフクちゃんの表情は見て取れませんでしたが、とりあえず眼鏡をかけ直しました。


私「?

そんなわけで、私は自分の気持を表現する手段を得るためにたくさんの本を読んだ。

たくさんの言葉や意味を理解すれば、自分の言いたいことがきちんと伝わると思ったんだ。

本を読めば読むほど、その世界に引き込まれる。

そうすれば、少しは周りの人と、うまくやれるかな、と考えたんだ。」



ドガの踊り子








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