父「大丈夫か、しんじゅ…。」


熱でぐったりしている私の枕元に、父が心配げに声をかけてきた。


私「おとうちゃん…。」


父は布団の中に入っている私の額に手をあてて、うなりました。


父「…まだ、熱があるようだな…。

お前は心配だよ、体が弱いから…。」


私「うん…。」


父「どうや?ちょっとはメシ食べれるようになったか?」


私「うぅん。」


父「そうか、そんなら、何か飲むか?」


私「うぅん…。」


父「アカン、メシも食われへんかったら、なにか飲まんと、体が持たん。

さぁ、起こしたるさかい、水飲めや…。」


私「うぅん、エライ…。」


父「しんどいんか、ほんなら、ワシが体起こしたる。

おいで。」


父は私をふとんから引きずりだして、自分の膝の上に座らせて、湯飲み茶わんに注いであった、水を口に含ませました。


私「ふぅ。もぉええ。」


父「アカン、お前一口しか飲んどらんやんけ。

湯飲み半分ぐらいは、飲まんと。」


ぐいぐいと口元に湯飲みをあてられて、水を含まそうとしましたが、一口飲むのが精いっぱいで、ほとんどこぼしてしまいました。


私「ケホケホ!」


父「あぁ~、ほとんどこぼしてまったやないか。

お前、水も飲まれへんと、死んでまうで?

大丈夫か?

かれこれ10日か2週間は寝こんどるやんけ。

お前、どこが悪いんや?」


私「ごめんなぁ…。

しんじゅ、アカン子やなぁ…。」


父「お前が謝ることちゃうで。

なんで、こうもお前は体が弱いんや…。


困ったなぁ、メシもくわれへん、水も飲まれへん。

こんなん、体が弱くなくても、参ってまう…。


ワシ、病気一つしたことないから、お前が苦しんどるん、分からへん。

かわいそうになぁ、こんなちっこいのに。


替われるもんなら、替わってやりたいくらいや。

医者にはいったんやろ?

アイツ(母)はどない言うとるんや?」


私「おかあちゃんは、おとなしくねとけって。」


父「医者にはどこも、悪ないって言われたそうやないか。


せやけど、お前、全然よくならへん。

お父ちゃん、心配やわ。


お前、もとからひょろひょろやのに、さらに細なってまったやないか。

アイツもなんで、こんな弱っとる自分の娘をほっとくんや。


かわいそうやないか。」


私「おとうちゃん、おかあちゃんをわるくいうたらアカン。

おかあちゃん、しんじゅによくしてくれとる。


おかあちゃん、いそがしいんや。

まいにち、しんどいいうて、からだがやすまらんいうとる。


しんじゅ、めいわくかけてゴメンや。」


父「お前、こんなちっこいのに、なんでそんな母親に遠慮しとんのや!

どんな気遣いやねん!


お前ら、ホンマに親子かいな?

ビックリするわ!


どこぞの丁稚奉公の発言やねん!

お前、まだまだちっこいのに、母親に甘えたってえぇやろ!?

病気しとんのやで?


そんで、なんでアイツはしんじゅにだけ冷たいんやろか…。

こんな可愛いのに、気ぃ知れへんわ…。」


私「おとうちゃん、おかあちゃん、かわいそうやわ。

まいにち、エライおもいして、うちらそだててくれとるんや。


おかあちゃん、がんばっとんのやで?


おとうちゃんが、おかあちゃんのみかたになったらんと、おかあちゃん、やっとれへん。

しんじゅより、おかあちゃんのこと、みたって、ほめたってや。」


父「はぁ~!?

お前、何を言うとんねんっ!

どんだけ気遣いの達人やねんっ!

お前、保育園にもかよっとらんのに、言っとる事、いっちょ前やで!?


怖いわ!」


私「ごめんなぁ。

しんじゅ、おとうちゃんにも、めいわくかけとるんやなぁ…。」


私がぽろぽろと涙を流すと、父親は慌てて言葉をつづけました。


父「あわわ!ちゃうちゃう!

今のはワシがバツが悪かっただけや。

お前はなんも、間違った事いっとらん!


ホラ、泣いたらアカン。

せっかく水分とったのに、流れて行ってしまうやないけ。


ほら、もっと水飲んどけや。」


そう言って、さらに湯飲み茶わんに水をそそぐと、私の口元に持ってきて、飲ませました。


なんとか、茶わん半分程度の水を飲むと、父親は私を布団の中に戻しました。


父「ふぅ。

なんやろ、お前と話とると、どっちが大人で、どっちが子供かよぉ分からんくなってくるわ。」


私「ふぅ…。」


父「アカンなぁ。

なんやろ、お前、気ぃ使いすぎなんちゃうんか?


なんか、お前ら親子見とると、どうしても他人行儀にしか見えへん時がある。


なんやろなぁ、アイツは心根の優しい、いい女なんやけど、どうも自分の娘にだけは厳しいような気がするなぁ。

特にしんじゅには、関心がないようなんだよなぁ…。

下の子が小さいから、手ぇかかるし、しゃぁないんかなぁ…。

お前も、まだ十分小さい子供やのに、不憫やなぁ。」


私「ふぅ…。」


父「しんどいんか?

そやな、そりゃしんどいもんなぁ。」


私「…おとうちゃん、おかあちゃんは、あかちゃんそだてとんねん。

しんじゅはおねえちゃんやから、だいじょうぶや。


おかあちゃんのこと、たすけたってや。」


父「ほやから!

お前は気ぃ使いすぎやねん!


お前、今にも死にそうな顔して、人の事、気ぃ使っとる場合やあらへんのやで?

メシもよぉくわん、水もよぉ飲まれへん。


医者にはどこも悪くない言われても、ひょろひょろにやせてく一方や。

どないしたらえぇんやろ?」


私「めいわくかけてゴメンなぁ…。」


父「あぁ~!ホンマにお前はワシの子か!

信じられへん、なんで、こないに気ぃ優しいんや。


子供が調子悪い時ぐらい、親に甘えたっていいんやで?

なんやら、さっきから、ワシが諭されとるやんけ。


利口なんかなぁ…。」


私「おりこうにするで、しんじゅのこと、みすてんといて。」


父「あぁあぁ!ほんまに、お前、何を言うとんねん!

親が子供を見捨てるかいなっ!!


どないしたら、こんな性格になるんやろか?

ホンマのワシの子なんやろか?


もしかして、こいつは繊細なんやろか?

アカン、ワシには想像もつかん世界や。


どないしたらえぇんやろ。」


私「どないしたらえぇんやろ、しんじゅもわからへん。」











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