兄「何やってんだ、しんじゅ。」

私「ん~、空飛べるの待ってる。」

兄「は?」


兄は一階の部屋の扉を開けたとたん、畳の上に座っている私を見て、声をかけてきた。


兄「今、なんと?」

私「だから、もうすぐ空飛べるの。」

兄「何がどうして、そうなるんだ?」

私「ん~、風が吹けばいいのかな…。」

兄「いや、だから、なぜ人間のお前が空を飛べるんだ?
そして、そもそも、なぜお前は室内でビニール袋の中に入っているんだ、という意味で質問をしている。」


私は買い物に使われている白いビニール袋の中にお尻を突っ込み、そしてはみ出した足を、もう一つのビニール袋の中に収めて、おとなしく体操座りをしていたのだった。


私「お兄ちゃん、知らないの?ビニール袋は、空を飛べるんだよ?」


兄「あぁ、ビニール袋が風を受けて、空を舞う、ということはあるな。

しかし、人間のお前がビニール袋の中に入ったところで空を飛ぶわけがないだろう。」


私「人間なら無理でも、ビニールの中に入れば、空飛べるんじゃない?」


兄「…馬鹿か、お前は。

鳥でもない限り、空を飛ぶ、なんてことは不可能なんだよ。

お前、小学校に上がろうって年で、まだそんなことを考えてるのか?

あきれたな。

そしてな、鳥が持っている翼、そして翼をおおう羽、あれは空気抵抗を生み出すためのものでもあり、おそろしく質量が少ないんだ。

そして、翼を支える骨格、あれは中の骨はスカスカなんだ。

鳥というのは、見た目より、かなり軽量に体が作られている。

哺乳類の人間とは、根本的に体のつくりがちがうんだよ。

つまり、人間に空を飛ぶのは、無理!」


私「ちょっと、待って!今、空を飛ぶからっ!!」


ガサガサガサ。どしんどしん!


私はビニール袋の中に足を突っ込み、手提げの部分を手で持ち、その場で何度もジャンプしてみせた。


兄「それを人はインチキと言う。」


私「ホラ!ちょっとだけ、浮いてたでしょ!」


兄「それは跳躍だ。

空を舞う、というのには、程遠い代物だな。」


ガサガサ、ずべっ!でしん!!

私は畳の上で足を滑らせて転んでしまうが、横に倒れると、ビニールを足にからませてしまって、自分で起き上がることができない。


私「お兄ちゃーん!たすけてぇ~!!」

兄「馬鹿すぎる。つきあってらんない。」


すると、私の悲鳴を聞きつけて、どこからともなく、父親が駆けつけてきた。


父「こらっ!またしんじゅをいじめているのか!?

兄妹仲良くしろっていってるだろうがっ!」


兄「言いがかりだ。こいつが勝手に転んで騒いでいただけだ。」


床に転がっている私を見て、父親は驚いて、笑いだした。


父「なにをやってるんだ、しんじゅ!?(笑)」

兄「こいつ、空を飛びたいんだとよ?」

父「空?」

私「だってぇ~、空を飛べると思ったんだもん…。」

父「なんだそれ?」

兄「ビニール袋が風に飛ばされているのを見て、こいつは、ビニール袋の中に入っていれば空を飛べると勘違いしたんだよ。」

父「子供らしいやないかっ!?(笑)ちょっと待っとれ!」


父は慌てて、奥の方にひっこんでいった。


私「お父ちゃ~ん、たすけてぇ~。」

兄「お前、助けられるの、忘れられたぞ?」

私「おにいちゃ~ん、たすけてぇ。」

兄「アホらし。自分でなんとかしろ。甘えるな。」


とかなんとか、二人して騒いでいたら、父親が大きな大きなビニール袋を持って、現れた。


父「ほら、しんじゅ、どうや、この袋ならいいやろ!」

私「うん!!!」

兄「でかいな…。よくこんなのあったな。」

父「ほら、しんじゅ、この中入ったれ!

タバコの箱を包んどった奴や。ちょうどえぇ。」


私が少し白い曇った半透明のビニール袋の中に入ると、そのまま父は袋の口を縛るようにして掴んで、私ごと振り回した。


父「どうやぁ~、しんじゅ、空飛べたんと変わらんやろぉ!」

兄「ちょ!いきなり!!」

私「きゃぁ~!!!(笑)」

父「よいしょぉ~!!」

兄「ちょ、室内で、アブ!」


ガザガザ、ドシャッ!ザァ~、ドゴッ!!


父の手元が狂って、そのまま私は空を舞って、床に叩き落とされ、それでもなお遠心力でビニール袋から弾き出されてなお滑り 出し、そのまま柱に脳天をぶつけた。


父「しんじゅ~!!」

兄「すげー音したぞ?」

私「キャハハハハハハハッ!!」


私は床の上で転げまわって笑い続けた。

あまりの楽しさに興奮して、痛みを感じるより楽しくてテンションが上がってしまっていたのだった。


父「大丈夫か?」

私「うんっ!お父ちゃん、もう一回っ!」

兄「正気か!?」

父「よぉ~し、今度は、もっとしっかり持ったるでな!」

兄「本気か!?」


私は大きなビニール袋の中に入り込むと、父は袋の上の部分をしっかりと結んで、つかみやすいように工夫していた。


兄「ちょ、密封すると、酸素が…。」

父「よぉ~し、これでちょおどえぇ!」

兄「ちょ、人の話を」

父「よぉ~し、今度はもっと大きく回したるでなぁ~!!」


父が大きく振りかぶって、私が入ったビニール袋を振り回した。



ガサガサ、ズルッ、どしん、ズシャァァァ…。



遠心力の加減だろうか、再び私は宙を舞い、畳の上に打ち付けられ、そして再び袋からはじき出され、今度は板の間の廊下を滑り続けていった。


私「キャハハハハ~!」

父「大丈夫か!?」

私「うん!お父ちゃん、お空飛ぶ遊び、もう一回!」

父「ほうかっ!お前、丈夫やなっ!」

兄「俺にはどうみても、児童虐待にしか思えない。

俺の周りの奴ら、バカばっかり。」








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恥ずかしいから(少女時代67)

私だって、とっとと幸せになりたいのです

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