弟が運転する車に乗り込んで、私は少し放心していました。


弟「チッ、さっき、父ちゃんが乗ったのか…。

ションベンくせぇ。」


私「え?なに、お父さんおもらししていたって事?」


弟「あぁ、時々、大小、漏らしてんだよ…。

アイツ、ボケてきてるからな…。」


私「あぁ…。」


弟「で、どこ行く?」


私「あ、ごめん、二時半に名古屋に行く予定があるから、1時40分までに○○駅でおろしてほしい。

だから、駅のそばのお店でご飯を食べれるのがいいと思うけど。

回転寿司でいい?」


弟「あぁ…。」


私「そういえば、昨日、携帯、『現在使われておりませんって…』」


弟「あぁ、料金払ってねーから、止められてんだよ。」


私「あぁ…。」



それから、少しして、回転寿司に二人して入りましたが、混雑していて、しばらく順番待ちになりました。

二人して待合席で腰掛けながら、世間話?をしています。


最初に、弟の確定申告の写を渡して、ちょっと弟のご機嫌を取るまねをして。

(数年前の源泉徴収票を2枚預かっており、父親を弟の扶養につける申告書を作成していたので、還付金が発生する。)


後は、弟が興味を持った事を話しているのを聞いているだけで、話の半分も理解できません。

滋賀県の一人旅とか、携帯の買い替えの話とか、政治、文学、歴史、などの話を聞いて、相槌を入れているだけで、ろくにコメントが返せれません。

彼と話していると、頭の出来が違うな、といつもコンプレックスを感じてしまいます。



私「そういえば…自動車保険の請求した?」


弟「まだ。

病院に証明書書いてくれっていったら5千円かかるって言われたんだよ…。」


私「文書料は4千円くらいかかるの、当たり前じゃない。

入院一日千円、通院一日500円なんだから、もらえる分が多いなら、手数料払っても請求してよ。

じゃないと、私も毎月保険料を払ってるのが無駄になるじゃない。

さっさと請求してよ、じゃないと私も解約するよ?」


弟「あぁ…。

ワカッタ、請求しとくよ…。」


弟は気だるそうに返事をします。


(アレ、これ、やる気無いな…。)


私は自分を支払い人にして、契約者は父で、家族までカバーするタイプの掛け捨ての自動車保険に加入していたので、弟にその手続きを早くやれ、と催促していたのでした。


しばらくすると、カウンター席が空いたとの事で、二人してお寿司を食べます。

それまでは、また弟の気の向く話を、内容がよく分からないまま、話を聞いていたのですが。

ちょっと、お腹が落ち着いた頃に、話を持ちかけました。



私「私も詳しいことは分からないけれど…。

警察から事故の罰金が確定したってことは、事故の過失割合が決定したってことなんじゃない?

それなら、今まで立替払いしていた、相手の治療費、自賠責保険の請求をすれば、全額返ってくるんじゃないの?

一年以上支払い続けていたのなら、30万ぐらいにはなるんじゃない?

それを、自賠責保険の担当に人に、訪ねて、手続きしてみたら?」


弟「えっ!全額もどる!?」


私「うん、自賠責保険は、被害者の治療費を補償する保険だから。

理屈だと、今まで支払いしていた分は、全額戻ってくるよね?」


弟「支払った分は!?」


私「うん、多分。

でも、私も素人だから、よく分からないし、それは保険会社の人に尋ねてみるのが一番だと思う。

こういうパターンだって、ありうると思うから、教えてくれると思うんだけど。

それで、警察の罰金も払えるんじゃない?」


弟「…あぁ、うん、ワカッタ、ヤットク。」


私「私も詳しく知らないから、素人判断だし。

ともかく、プロの人に説明を聞くのがいいと思うから、明日にでも担当の○○さんに電話したら?」


弟「…あぁ、うん、ワカッタワカッタ。」


(あれ?シャッター降りた。

やる気ない…。

最後の数ヶ月支払いしていないから、無理だと思ってる…。)


私「ともかく、これは伝えたほうがいいな、と思ったから言ったんだけど…。」


弟「あぁ、ウン、ワカッタ。」


(ダメだ、完璧に遮断された。
響かない…。)


それからも食事をぼちぼち続けていましたが、タイムアップになりそうです。


私「ねぇ、K。

私さ、32才の時、うつ病になった事、あったんだよね。」


弟「あぁ?」


私「私さ、辛くて、周りに助けを求めたんだけどさ…。

まぁ、結局は自分でどうにか自分を助けなきゃならないんだけどさ。


つらくて、何年か病院に通って、薬飲んで、気分落ち込んでって事をやったからさ。

そーゆー人の気持ち、分かる、と思うんだ。」


弟「あぁ。」


私「私さ、お姉ちゃんとか、助けてもらった。

Kもさ、困ってるなら、何か手助け必要なら、言ってもらいたいんだ。

何が必要で、何がいらないか、それを伝えてもらえないと、私も手助けできない。」


弟「ふぅん。」


私「私さ、Kの気持ち、ホントのところは、分からないけどさ。

言ってもらえたら、と思って見ているんだよ。」


弟「ふぅん、アッソ。」


(響かない…。

もう、シャッターが降りて、私の言葉はただの音になってしまっている。)


私「もう、お寿司いい?」


弟「あぁ、もういい。」


私「お店出よっか。すみません、お勘定~!」


弟がトイレに行っている間に支払いを済ませます。

もう、1時30分過ぎ、あまり時間がありません。


弟に、駅まで車を出してもらいながら、話をします。


私「K、あのね。

私は人の事を、偉そうに言える人間じゃないけど。

人は自分の手に負えない、困った事があった時、人に頼ってもいいと思う。

手助けが必要な時に、人に頼るのは恥ずかしいことじゃないと思う。」


弟「あぁ、ワカッタワカッタ。

ソウですね。」


(響かない…。
もう、思考停止している。

何か、姉ちゃんが言ってる、ぐらいの感触しか持っていない。

今は、まだ、無理なのか…。


しまった、お父さんの事で手一杯で、今日はこの子に時間が割けない。

この子からは、自分の事をどうにかしようという気概が感じられない。

今日は、これでもマトモに相手してくれただけ、マシな方か…。


相手をコントロールすることはできない。

今日はここまでか…。)


ほどなくして、駅前に到着します。

私は赤信号の隙間に、道路に出て、慌てて挨拶します。


私「K、昼夜逆転せずに、まずは御飯、きちんと食べなよ?」


弟「あぁ、ワカッタ、ワカッタ。」


私「送ってくれて、ありがと。」


弟「あぁ。」


弟を見送って、名古屋行きの電車に乗ります。

じっと、電車の振動に身を委ねていたら、ジワーっとなにかを感じました。


(…お父さん、謝ってくれたな…。

覚えていないとか、私の頭がおかしいとか、拒絶されると思っていたのに、こんなアッサリ…。

私が淡々と話していたのがよかったのかもしれないな。


…これ、もしかして、以前揉めた人とのやり取りに似ているし。

もしかして、彼で練習していたみたいな感じになっていたのかもしれないな…。

そっか、あの時、苦しんだのも、無駄にならなかったんだな…。


あんなに、恐れていたのは、なんだったんだろう…。

なんだろう…。

何か、私の中の、時計の針が動きだしたような感じ…。

これで、大人になれる…。


ふと、脳裏に、『世界』のタロットカードの映像が浮かびます。


『THE・WORLD』


『そして時は動き出す』



って、アタシ、悪者(DIO)かよっ!


一人苦笑しながら、名古屋のアロマサロンへと向かったのでした。







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comment iconコメント ( 2 )

しんじゅさん、お父さんに昔のことお話出来たんですね。すごく勇気がいることだったと思います。
読んでるほうもハラハラしましたけど、謝ってもらえて良かったです。
全く覚えてないのは不思議だけど、嘘でもないような感じですね。

弟さんも、よくなるといいですね。
私も実家に弟がいますが、やりとりこんな感じで似てます。昔は仲良かったのに、いつの間にか距離が出来ちゃったなあというような…。
なので応援してます!

名前: みつな [Edit] 2016-03-22 23:34

みつなさん、コメントありがとうございます

はい、ありがとうございます。
少しづつですね、夕馬さんとのセッションもすごく背中を押してくれていると思います。
私の中の、こんがらがった部分を少しづつ解いてくれて、気持ちを軽くしていただきました。
(注:今回の事は、夕馬さんから、何か言われてやったわけではありません。)

弟も、よくなるといいですね。
みつなさん、ありがとうございます。
どうぞ、ご家族皆さん、健康で幸せでありますように…。

名前: しんじゅ☆♪ [Edit] 2016-03-23 23:05

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