信号待ちで、片足をついて、自転車にまたがっていた私の目の前を、白地に灰色のキジトラ猫が横切っていった。


(姐さん、赤信号ですよ…)


私の目線を気にするふうでもなく、細身のキジトラ猫は、緊張する様子もなく、やや下がりかけの尻尾のまま、スタスタと横断歩道を斜めに横切っていって、そのままコーヒー屋の裏の駐車場に入りかけて、私の方へ首だけ振り向いた。


金色の瞳の奥に縦に細い黒目が見えている。

ほっそりとした顔立ち、おそらく女の子の猫だ。

通学途中の世の小学生が、猫って怖い、と感じる目元だろうが、猫だって、そういう時間帯なのだから、仕方ない。

いつもどんぐりまなこだったなら、子供たちもむやみに、猫を怖がらないだろう。


ともかく、その目が、(もしかして、今から足をバンって踏み鳴らして、アタシを脅かす気?)と言っているようだった。


(いいえ、そんなこと、しません。

安心してください。)


すると、キジトラ猫は、もう少し歩を進めて、再びこちらに振り返った。


(もしかして、油断させたとこで、やっぱりアタシを脅かす気?)


一人と一匹の間には、数メートルの距離がある。

猫的には、今更脅かされても、十分逃げ切るだけの自信がある距離だと分かりつつ、確認の為に振り返ったようだった。


(いいえ、しません。)


私が静かにうなづくと、ふ、と鼻息を一つ鳴らして、正面を向いて、よこらしょ、と白い柵の隙間を乗り越えて、キジトラ猫の姿が消えていった。


私はそこから視線を戻すと、目の前の信号は相変わらず赤だった。


(人間社会のルールにまったく関係せずに生きている。

もしかして、私も、そうなのかも?

世の中のルールに気づかず、とんちんかんな事をしでかしているかも?

猫と一緒かも?)


とか、そんな妄想が繰り広げられていると、信号が青に変わった。

どのみち、道路には車は走っていない。


猫的には、道路に車がなければ、渡ってもいい=命の危険なし、という判断なのだ。

なにもないところで立ち止まっている私の方が、猫的には奇異に見えてしまっても致し方ない。


どっちが賢いんだろう…と空想を膨らませながら、駅そばの駐輪場に自転車を駐車して、電車に乗り込んだ。


目的地はJR岐阜駅の岐阜バス乗り場。

今度こそ、郡上八幡へと観光へ向かうのだ。


駅でおにぎりを一つ購入し、(えらくお礼を言われてしまった)バス乗り場へと向かう。

昨日は、JRで岐阜入りしつつ、わざわざ名鉄岐阜駅のとなりの高速バス乗り場で乗車していたが。


JR岐阜駅にも停車すると知って、今日は最初からJR駅前でバスを待つことにしたのだ。

駅2階から伸びるコンコース的な木製の通りを渡って表を歩いていたら、エレベーターが見えた。

この下にバス乗り場があるので、使おうとしたら、どうもバス乗り場へはつながっていないらしい。


しかたなく、階段を使って、その下に降りたら小さな公園があって。

バス乗り場の中央に位置するらしく、そこから道路を渡るな、と書いてある。


離れ小島のような小さな公園の中をぐるぐると歩き回って、自分がドツボにはまったことに気づく。


まだ、時間の余裕はあるはずだと思いつつも、焦ってしまう。

再び階段をのぼり、すこし歩いて、今度は階段を降りると、きちんとしたバス乗り場だった。


すると、首からタグをぶら下げたおじいさんがいる。

このバスは郡上八幡へ行けるかと尋ねると、親切にいろいろ教えてくれた。

高速バスは14番乗り場で、赤色のバスだから、大丈夫だよ、と言われる。


まだ、すこし時間があるはずなので、先ほど買った、おにぎりをベンチに腰かけて頬張る。

すると、背後でバスのクラクションが聞こえる。

また、鳴る。また、鳴る。また鳴る。


なんだ?と振り返すと、バスの手前に堂々とカラスが立って、道をふさいでいる。

四回クラクションを鳴らしても、どく気配のないカラスめがけて、バスの運転手はそろそろとバスを近づけた。


すると、カラスがちょんちょんと飛び跳ねて、バスを避ける。


ほぉ~、優しいバスの運転手さんだな、と思っていたら、次のバスが来た。

今度はクラクションなしにカラスに突っ込む。


すると、翼をはためかせて、若いカラスは慌てて移動した。


どのみち、たいして移動はしていないのだが、これもまた性格。


ふぅ~む、なんか暗示的だな、と思ったら、高速バスが来た。


さっきのおじいちゃんは赤いバスだと言っていたから、違うのかな?と思ったが、行き先に白鳥とか書いてある。


緑色のバスだ。

色に惑わされて、危うく乗り過ごすところだった。


これじゃ、猫と変わらないな、と思いつつバスに乗り込んで、郡上八幡へと出かけたのだった。








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郡上八幡に行ってきただ2

そんな時もある。

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