母親に食事を下げられて、しょんぼりして座敷にいた。



昨夜、父親に張り手をくらわされて、口に中が切れてしまって、口の中がズキズキ痛んで、物がうまく食べられない。

飲み物を飲んでも、口の中が痛む。

箸が伸びるのが遅いのを見かねて、母親にもう食事はおしまい、と台所を追い出されていたのだった。

畳の上で、体操座りをして、しょんぼりしていたら、先に食事を終えていた父親がご機嫌で、話しかけてきた。


父「そういえば、しんじゅ。

お前、花屋の松岡さんに、エライ褒められとったで。

『この子は将来、大物になるかもしれない、たいした器量だ!』だとよ!」


私「?」


父「なんや、ドガ?ドアの絵を見て、エライ寸評しとったそうやないか。

ドアの踊り子を一目見て、綺麗で、怖くて、いやらしいなんて言う子供は見たことがない。

光の入り方もこっていて、すごい絵描きだと。

子供やのに、玄人顔負けの批評をしとったそうやないかっ!」


私「あぁ…。」


母「何?人様の家の絵を見て、いやらしいなんて言ってきたの、しんじゅ。
ご近所さんに顔向けできない、お母さん、恥ずかしいわ。」


私「お母さん…。」


ちょうど、廊下を通りかかった母親が、背後に立って、私を睨んでいた。


父「そやそや、そこんちでもな、そんな話しになったそうやで?
せやけど、松岡はん、ホンマに驚いたって話や。

なんでも、ドアの絵っちゅーんは、ほんまはエグいって話や。

せやけど、表面上はキレイキレイな絵に仕上げとるって話でな。
そこ含めて、事情を知っとる大人の隠れた楽しみ方やっちゅーのを、コイツが一目みて、スパッと言いよったと。

こん子の感性はすごいって、絶賛しとったんや。」


母「まぁ…。でも、あそこの奥さん、いい顔しなかったでしょうに。」


父「そんなん、気にせんでもえぇやん。
コイツが褒められたんやで?」


母「それとこれとは、話は別です。
ご近所さんに嫌な思いをさせてきて、反省しなさい、しんじゅ。
親に迷惑かけることになるのよ?」


私「ご、ごめんなさい…。」


父「はは、お母さん、手厳しいな。(笑)
えぇやん、こいつにもえぇトコあるんやで?

たまには褒めたらな、な!しんじゅ。」


母「この子はなにをやっても、ダメね。
勉強も運動もちっともできない。

上の子達は、5ばっかりなのに、この子は1と2ばかりで、お母さん困ったものだわ。」


父「そうか、こいつ勉強ダメか。(笑)
ほんでも、女の子やし、勉強できんでもえぇんやないか?」


母「子供が勉強できなくて、どうするの。」


父「ほうか、女の子やし、器量が良ければ、嫁にいけるやろ。」


母「この子は勉強も、器量もたいしてよくないでしょう?
ほんとに、上の子に比べて見劣りするわ。
体も弱くて、運動もできないんだから、せめて勉強くらいできないと。

すぐに、熱を出す。
お薬代だって、馬鹿にならないし、病院に連れて行く手間ヒマを考えてちょうだい。

親に迷惑ばかりかけて、ほんとに困った子だわ。」


父「…ほうか、この子は出来損ないか。

顔もお父ちゃんに似ず、不器量やからな。

お母ちゃん、もう一度たずねるが、この子は勉強、全部ダメか?」


母「ふぅ。図画工作と音楽くらいね、いいのは。」


父「ほう。
芸術方面にはちぃとは才能あるんやな?」


母「それもたいしたことないわ。
せめて、4、とか5でないと。」


私はうつむいて、震えて、顔を真っ赤にしていた。

涙がポロポロとこぼれる。

歯を食いしばっても、息ができず、知らず、喉の奥を鳴らして、ヒィーと悲鳴をあげていた。


母「まぁ、いやらしい。
聞えよがしに泣き声をあげて。

誰も、人様は欠点を教えてくれないものよ?
あなたの悪いところを教えてあげるのは、お母さんの優しさよ。

親の忠告は黙ってきくものよ?
感謝しなくちゃ。」


私「…うっく、うっく。」


母「お母さんが作った食事もとくにとらないで。
人様の家で、絵をいやらしいなんて言って、大人の気を引く真似をして、お母さん、恥ずかしいわ。

それも、男性にばかり気に入られようとして、女の人には嫌われている。
そういうのは、巡り巡って、人様に一番嫌われる人間のすることで、最低よ。

ほんとうに、性根の悪い子供ね。」


父「…ほぅほぅ、こん子はホンマに出来損ないやなぁ。
かわいそうになぁ、しんじゅ。

お前、お先真っ暗やで?
顔もマズイ、頭もマズイ、芸術の才能もなし、性根も悪いと来た。

ホンマ、救いようもないやっちゃで?(笑)」


私「ひぃ~…。」


私はどうしたらいいのか、分からず、泣き続けていた。


父「なぁ、お母さん、こん子はそんな悪い子かなぁ?」


母「えぇ、当たり前ですよ。
ご近所さんに泥を塗る真似をして、恥ずかしい。

さっきから、黙って聞いていれば、一言も謝りもしない。
自分が悪いと思っていない証拠だわ?」


父「ほうか?
子供が絵を見せられて、どう思うって聞かれて、答えただけやろ?

なにを言ってもえぇんちゃうんか?」


母「言っていいことと、悪いことがあります。

そんな判断もできないで、いつまで甘えているつもりかしら?
この子は、いったいいくつだと思っているの。

いつまでも手のかかる事、迷惑だわ?」


父「そうかぁ。
この子は、どうしようもない、出来損ないやなぁ。
顔はマズイ、頭も出来損ない、性根も腐っていると来た。

ワシらの子やゆうのに、エライもん作ってしまったなぁ。
どうしようもない、餓鬼やないか。
神も仏もないなぁ~(笑)

そや!もしかしたら、絵が上手いかもしれん。

こん子はカタワみたいに、絵かきになったらええで。

愛の絵葉書みたいにな、人様のご厚情によって、おぜぜを恵んでもらうんや。

そうして、コジキみたいに、人様に恵んでもらって、なんとかオマンマ食ってき?

お前は頭も悪くて、器量も悪い、母親にも見捨てられそうな不憫な奴やで、そうやって生きていったらえぇんちゃうか?

お前、将来、コジキやで!決まりや!」


母「嫌だわ。
私の子供が世間様から恵んでもらって生きていくだなんて。

神も仏もないと思えてくるじゃない。」


父「そやそや、お前、信心しとったな。
神様、仏様、いつも言うてたやん。

こん子は今、8歳や。
去年まで、神様の子やったんやないか?

お前の信心しとる、神様は不細工で馬鹿で性根の腐ったモンを救ってはくれんのか?

それとも、我が子でもたった一年で世間の荒波にのまれてしまって、見捨ててしまうんか?

お前の信心しとる、神様っちゅ~やつは、エライ器量が狭いな(笑)」


母「私はそんな事っ!
失礼します。」


母親は怒って、その場を去って行きました。


父「ははぁ~、怒らせたな(笑)

なぁ、しんじゅ。
お母さんは、いつもお前にあんな風なんか?」


私「…いつもは、あんなじゃない。」


父「いつもは、どうなんや?」


私「…いつもは…。

いつもは、もっと、優しい…。」


父「アホやな。
お前、要領悪いわ。」


父親はため息をつきました。


私「…!」(怒られたと思っている。)


父「お前が本当に性悪やったら、今、嘘をつくわ。
お母ちゃんのことを悪くいって、お父ちゃんに甘えてくる。

お前は、正直で優しい子や。
可愛いな。(笑)」


私「???」


父「お前が不器量やと言うてるのは、冗談や。
お父ちゃんと、お母ちゃんの子やったら、ブサイクなはずないやろ?

お母ちゃんの悋気(りんき)に触れてるようやから、わざと言うてたんや。

…お前らは相克の母娘(おやこ)なのかもしれないな。」







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