私「そうこくのおやこ?」


父「そや、相克の母娘やなぁって話や。」


私「そうこくって何?」


父「お互いが勝ちたい、勝ちたいと思い合っている相性の事やな。」


私「しんじゅが、お母さんに勝ちたいって?

そんなの、無理だよ?考えたこともない。」


父「お前がそう思うのは、そうなんやろうけどな。

お母ちゃんは、お前に勝ちたいって思っとるって話や。」


私「お母さんに勝てるわけないよ。」


父「お前はそう思っとるかもしれんけどな。
子供ってのは、親を超えていくもんなんや。

そういう点では、親は子供にいつか、追い抜かされる宿命を背負っとる。

せやから、子供をライバル視してしまうものなんや。」


私「ライバル?」


父「敵対者っちゅー意味や。」


私「てきたい?私がお母さんと敵、味方になるの?」


父「普通は、そうはならん。

ただ、相性の話や。

お前は、そんなちびっこいのに、もう、母親に勝っとる。」


私「えぇ?お母さんに勝ってる???」


父「いや、正確には、母親が負けとる。

お前と同じ土俵に上がった時点で、もうアイツの負けなんや。」


私「えぇ?お母さんが負けている???」


父「お前は母親に嫉妬されとる。

なんでかわからんけど、もう、お前に女として負けていると感じているんや。

せやから、お前を意味なく責める。」


私「…私、お母さんに嫌われている?」


父「お前はなんも悪くない。

相性の問題なんや。」


私「でも、お母さんに…。

なんで…。」


父「ふぅ。そやな、お前子供やし、分からんやろな。

お前はな、若芽や。」


私「わかめ?」


父「あぁ、新芽。土からひょっこり生えたばっかりの芽の事やな。

分かるか?」


私「うん。」


父「お前は土から芽が出て、ちょっと大きくなってきたところや。

若木と言った方が、分かりやすいかな。


ほんで、親っちゅーのは、その若木に水をあげて、お日様にあたらせて、風通しよくしてやる。

そうして、育てるのは親の役目、役割っちゅーもんや。


そこで、ハサミで、芽をチョキチョキ切ろうとしているのが、お前の母親。

それが、相克っちゅー奴や。」


私「…植物、死んじゃうんじゃない?」


父「人には相性っちゅーもんがある。

その中に、えぇ相性、悪い相性っちゅーのがあって、お互いを殺し合うような諌め合うような相性が、相克っちゅー奴や。

えぇ相性やと、水をやりあったり、おひさまにあてさしたり、風を送ったりして、スクスク育つ。

せやけど、相克やと、葉っぱチョキチョキ切ってまうんやで。

ヘタしたら死ぬ。

そん中で、それが親子関係やったら、それは悲惨な事になる。」


私「それ…。」


父「子供は親を選べん。

そんなかで、どーしよーもない親に当たったら、子供は死ぬかもしれん。

お前はそういう巡り合わせのもとに生まれついたんや。」


私「私、悪くないんでしょ?どうしたらいいの…。」


父「…そうやなぁ。

それは、なってみないと、分からんやろうなぁ。

そんな奴もおるっちゅー話を、つい最近聞いたばっかなんや。


どうしたったら、えぇのかなぁ。


ただなぁ、ワシにそれを教えてくれた坊さんが言うにはなぁ。

そんな不幸な巡り合わせで生まれついた人間には、なにか役割があるものなんだと。


そんな中で生き残った奴は、普通の木よりでっかくなるんだと。

根っこを張って、大きな大きな樹になってなぁ。

大勢の人を憩わせる事ができるようになるんやと。」


私「そのお坊さんにお話聞けないの?」


父「あぁ、その坊さん、エライ徳の高い坊さんらしくてなぁ。

一回こっきりしか会えへんわ。

ホンマ、たまたま聞いた話なんや。」


私「もう、会えないの…。

どうやって、お父さん、そのお坊さんとお話できたの?」


父「あぁ、たまたまやなぁ。

なんか、面白そうな話、聞けんかなぁと思って、知り合いのつてで行ったんや。

なんや徳の高い坊さんで、タダで説法聞かせてくれるとかでな。

その知り合いもたまたま市場で知り合った奴の連れらしくて、お父ちゃん、全然知らん人の群れに飛び込んだんやわ。

もう、連絡とりようがあらへん。」


私「…。」


父「そうや、そうや、その坊さん、こうも言うてたで?


そんな特別な関係のことを縁(えにし)と言うんやって。

それは生まれる前から決まっとることらしいし、親が誰とか、どこに生まれるとか、そういうんも宿命とか言うらしい。


ほんでな、生きたい、生きたいと心底思っとる奴には、必ず救いの手が伸びるそうや。

こうやって、見ず知らずの人間にふと、話が伝わるように。


その坊さんは、その為に、無料で説法しとる、言うてた。

全然関係のないワシにその話を聞かすのも、修行ゆうてた。

他生の縁(たしょうのえん)、言うてな。

他人を生かす生き方しとったら、いつかそれがつながって、全体の為になるんやと。

それがお釈迦様の教えなんやと。

お父ちゃん、袖触れ合うも、他生の縁って、多少の縁やと思っとった。(笑)」


私「たしょうのえん?」


父「多い、少ないの方の多少や!(笑)

学がなくて、スマンな。

ワシは勉強ができんで、お母ちゃんに頼りっきりや。

あいつは、賢いやっちゃで~?

せやけど、理屈っぽくてかなわんわ。

動かへん。


ワシはな、自分が利口やないって事は、十分、分かっとる。

そんで、知らない事だらけや。


せやから、ワシは頭悪いで、教えてチョ~って言うたら、みんな親切に教えてくれるんや。

実際、ワシより賢い奴ばかりやで、ワシも腹も立てへん。


これが、ワシの知恵じゃ。


そんでな、いろんな事を知るんや。

世の中、知らない事だらけで、面白いで~?」


私「お父さん、知らない事だらけなの?

大人って、みんないっぱい色々知っているかと思った。」


父「ちゃうちゃう!

知らんことだらけやし、死ぬまで知らんことの方が多いんやで?

そこがまた、面白いやんけ。


お前、もう、大丈夫や。

お前の母ちゃん、お前の将来乞食やいうても、お前のことかばわんと、自分のメンツ気にしとったで?


お前の母ちゃん、知識だけは立派やけど、そんなたいしたことあらへん。

智に勝ちすぎて、心冷たいわ。

お母ちゃんも、忙しゅう働いとって、気が立っとるんや。

お前も心広くもったり~。

お前、普通にしとるだけで、乞食よりずっと立派な職業につけるで。

簡単に見返してやれるんや。


お母ちゃんに負けんと、いろんな事を知っていき。

そしたら、知恵もつく、いい方策がみつかるかもしれへん。


どんな環境も縁や。

楽しんでいけや。」








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ふいに思い出す。

少女時代69ー1(相克の母娘)

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