顔に吐息を感じた。


ふと、目を覚ますと、深いエメラルドグリーンの瞳が私を覗き込んでいた。


金色のまつげに縁どられた緑色の瞳。

いつもより濃い色合いに思えたし、その瞳はどこか遠くを見ているような…。

何かに耳を澄ませているような表情をしていた。



私「何…?」


ミカエルは、ふっと微笑んで、私の頬を撫でた。


ミ「よかった、今は私の奥さんだ…。」


私「?」



そのままそっと唇を重ねて、また顔を引いて、私の顔を愛おしそうに眺めていた。


私たちは白い天蓋付きのベッドに横になっていて、二人して大きなシーツにくるまれるようにしている。


外は白んでいる。

夜は明けているらしい。


私は少し眠っていたようで、いつの間にか彼に寝顔を眺められていたらしい。


寝起き一発目に美形に眺められては、照れてしまう。

彼の陶器のような滑らかな白い肌に、触れて、うっとりしていると、ミカエルは私に覆いかぶさるようにしてくちづけをしてきた。


最初はそっと唇をなぞるように軽く重ねて。

次第に情熱的にくちづけをしてくる。


彼のキスは甘くて激しくて。

少し逃げるような仕草をすると、容赦なく、後頭部に手を差し入れて、ホールドされてしまう。


私は顔を真っ赤にして、困ってしまう。



(…ミ、ミカエルさん、キスうまっ!!

すごい、上手。

なんか、もう、キスだけでにんしんしちゃうっ!!)



ミ「プーッ!!」



気づけば、彼は片腕を突っ張って、顔を横に背けて、口を手にあてて、体を震わせている。


私は顔を真っ赤にしながら、逃げ出そうとする。



(こ、これだからっ!

これだから、高次の存在っちゅーやつは厄介なのよっ!!

考えていること、筒抜けなんだからっ!!

きぃーっ!くやちぃ!

ミカエルさんってば、大天使らしいから、ちょっとでもそれにふさわしい感じにしたいと思ってんのにっ!

全部筒抜けなんだからっ!

もうヤダっ!恥ずかしいっ!)



私がシーツの中から抜け出そうともがいていると、速攻、彼の腕に絡め取られる。



私「離してっ!イヤっ!恥かしいっ!」


ミ「アハハ、ごめんごめん。

あんまり可愛いこと言うもんだからっ!」


私「言ってないもんっ!

ちょっと、そう思っただけだもんっ!!

ヒキョーよっ!」


ミ「アハハ、ごめんごめん。

おかしくて、つい。」


私「くぅ~っ!この悔しさ、ミカエルさんには、分からないわっ!!」


ミ「こらこら、暴れない。」



私がジタバタ足掻くも、ミカエルさんにがっしりと後ろから掴まれて、逃げられない。


そのまま、私のつむじに、唇を当てて、うふふと笑っている。



ミ「可愛いなぁ~。

なんで、君って、こう、ピュアなんだろう。」


私「バカにしてーっ!」


ミ「クスクス、ご機嫌直して、奥さん。」


私「きぃ~!くやしぃ~!!

ミカエルさんばっかり、私の心を読まれて、私は全然読めないのよ~っ!

不公平だわ~っ!!」


ミ「クスクス、君の場合、相手が誰だろうと、大差ないと思うけれどね?」


私「そーゆー問題じゃないっ!

論点をすり替えるなっ!ひきょーものっ!」


ミ「何を言ってるの?

私のことが好きだって心の声がもれ聞こえちゃっただけでしょ?

どこに問題があるの?」


私「そーゆー問題じゃないっ!

私ばっかり、ミカエルさんが好きだなんて、不公平だっ!」


ミ「ほんとに、この子はもう。

私の気も知らないで、可愛いことを言う。

食べちゃいたいね。

ね、こういうのは、どう?」


私「あ…。」



ミカエルは声をひそめて、ささやきかけてきた。

手の動きも怪しい。

私はまた顔を真っ赤にさせていた。



ミ「ね、君、後ろからのが好きだよね。

私としては可愛い君の顔を見ていられる前の方が好きだけれど。


ホントは君、前なりだから、そっちのほうがいいんだけどね。

今日は君の好みに合わせてあげるよ?」


私「?」


ミ「ね、君の好きなようにしてあげるよ?」










                   


















私は顔を手のひらでおおって、泣いていた。


ミカエルさんは、私を抱き寄せて、よしよしと背中を撫でていた。



私「ミカエル、私のことを嫌いにならないで…。」


ミ「何を言っているの。そんなことなるわけないでしょ。」


私「グスグス。うまくできなくて、ごめんなさい。」


ミ「それ、言われちゃ、男としてカタナシでしょ?

ホラ、泣き止んで。

君はなにも悪くないからね?」


私「うぅ、ごめんなさい。

…怖くて。」


ミ「ごめんね?ちょっと刺激強かった?」


私「うぅん、気持ちよかった。

でも、怖くなっちゃって。」


ミ「ふぅーっ。

ほら、こわくない、こわくない。」


私は小さく震えながら、ぐすんぐすん言っていた。



ミ「ホラ、大丈夫大丈夫。

私のこと、怖くないでしょ?」


私「うん、ミカエルのこと、怖くない。」


ミ「ん、よろしい。」



ミカエルは私をギューッと抱きしめた。


私はちょっと落ち着きを取り戻してきた。



それで、またミカエルにくちづけをしようとしたけれど、彼に制止された。



ミ「いいよ、気を使わなくて。

今日は、これでおしまい。


もう少ししたら、仕事に行くでしょ?

それまで、休んでいなさい。」


私「うん…。

仕事、休めたらいいのにな…。」


ミ「働く君が好きだよ。」


私「うん。ありがと。」



ミカエルは私の絹糸のような漆黒の髪の毛を撫でながら、私を見つめていた。



ミ「君がセックスを怖がるのはね。

男性が怖いからなんだよ。」


私「…うん…。」


ミ「君はね、男性が怖いものじゃないって知れば、もっと楽になる。

これから、君はたくさんの男性と知り合う。

誰も、君を傷つけない。

私が選んだ男たちと出会って、仲良くなりなさい。」


私「え?」


ミ「男友達を作るんだ。

そうすれば、男性は恐れるものでもないと知ることができる。」


私「男友達…。

そういえば、いないかも…。」


ミ「そう、よく分からないから不安になるんだよ。

ふぅー。


君はそこで失望するかもしれないけれどね。」


私「え?どういう事?」


ミ「君が考えるほど、男は強くもなければ、賢くもない。」


私「は?ミカエルさんも?」


ミ「クス。痛いところをつくね。

そう、男はたいして賢くもない。


強いのは腕力だけ。

君が男性を怖がるのは、君が子供だったから、相手の男は図に乗っていただけで君はなにも悪くない。


大人の君に太刀打ちできる男は、そうはいない。」


私「は?」


ミ「君は、これから出会う男達にたくさん嫌な思いをさせられるだろう。」


私「え、そんな人と出会っても…。」


ミ「君の方が賢いからだ。

そうと知らず、君のことを過小評価した人間が君のそばに来る。

君は不愉快な思いをすることになる。」


私「出会う意味ないんじゃ。」


ミ「違う。

男は弱い存在だと知るいい機会になる。

男は基本、馬鹿だと思っておいて間違いない。」


私「アハハ、ミカエルさんおかしい。

高次の存在がそんな事言っちゃっていいの!?」


ミ「ふぅ。

まったく、世の理不尽な思いをする女性陣の苦労はみな、男の脳の足りなさが原因なんだよ。」


私「アレ?ミカエルさん、女性寄りの意見なの?」


ミ「どっちというわけでもないが。

まったく、もったいない話だ。

こんなに綺麗な蕾を誰も育てようとしないのだから。」


ミカエルは私の頬を愛おしそうに撫でた。


私「私の事?」


ミ「そう。

君に限らずだが。

世の男性の頭の足らなさには歯がゆい思いがするよ。


なぜ、女性をいつくしまない。

尊ばない。

敬わないんだ。

そうすれば、匂い立つように女性は気品高く花開くのに。


その香りに包まれて、男はどこまでも強くなれるのに。

男性には、女性を守ろう、育てようという気概がない。


男性は女性に愛されて守ってもらわなければ、強くいられないのに。

女性の若さや美しさだけを求めて、貪るような真似をする。


少しでも自分の利になる点ばかりを追い求めて、大切なものを見失っている。

結局女性の価値を低く見積もって、花開かせない。


双方にとって、非常に痛ましい結果になっているのだよ。

そこが歯がゆいと思っているのだ。」


私「ふぅ~ん…。

そんな考え方していなかったな。

そうか、そうかも。

男性が女性を敬ってくれたら、女性も淑女になれるわよね。

紳士、淑女、素敵よね…。


文化的なものかな、女性が低く見られるのって…。」


ミ「それもあるが、男性の弱さ故だよ。


頭ではかなわないから、力で押さえ込むんだ。」


私「え。それじゃいつまでたっても女性は辛いままになっちゃうんじゃないの?」


ミ「何事もパワーバランスだよ。

先を見通せる能力に長けたものは物事に慎重にあたるようになる。

深く考えないものは余計な事に気を取られずに目的のために動くことができる。

どれだけ協調できるかが、重要になってくるんだ。」


私「でも、土台で女性を低く見積もっているのなら、引っくり返せないんじゃ?」


ミ「君の言うとおりだ。

しかし、今では力仕事は機械にとって替れるようになってきている。

男女のパワーバランスは変わりつつある。

それで男はより弱い者を狙うようになる。

そこに尊厳はない。」


私「…きりがないわ。」


ミ「そう。

でも、それを変えようとしているのは君だ。

男性が女性を慈しめれないのは、母親が父親に慈しまれていないのを見て育ったからだ。

愛する男女が結ばれれば、お互いを慈しむのが当然だと思う子供が育つ。


それが君の願い。

私はそれに協力している。


君が自分が何者かを思い出せば、すべて理解できる。」


私「え…。」


ミ「まずは、君の課題の一つ。

男性を怖がらないようになること。


この会話は課題をクリアできた時に、思い出すことが出来るだろう。

今は、おやすみ。

私の奥さん。」



ミカエルは私のまぶたにキスをした。







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補足的な。

うまいキュウリとナスを食べて

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