ふと、私の脳裏に、子供の頃の自分の姿が浮かび上がってきました。

私は、それを、とつとつと話始めます。


私「…私、子供の頃…。

えっと、結局なにもなかったんですけど、多分、わいせつ目的の連れ去り事件にあって…。

突然、知らない男の人に殴られて、口から血を流して帰ったことがありました…。」


サマンサさんは、眉を曇らせて真剣な表情で、こくんとうなづいています。



突然の衝撃。

体が吹っ飛び、電柱に肩をぶつけ、下顎をアスファルトに打ち付けます。

一瞬、自分の身に、何が起こったのか、分からず、震えながら四つん這いになって自分の体を起こすと。


昨日、私に唾を吐きかけてきた男が乗っていた白いセダンが、急バックして近づいてきました。

黒い窓ガラスは、中の様子が見えませんでしたが、視線を感じて、私は四つん這いのまま、呆然とそれを見つめ続けていると。

ギュルギュルとタイヤをきしませながら、白い煙を撒き散らかしながら、車は前方に急発進して去って行きました。


うつむくと、むき出しの膝小僧は、アスファルトに擦れて、皮膚が白く毛羽立つようにめくれ上がっており。

無数の赤いビーズのような血がポロポロと溢れ始めて。

手足と口から血を流しながら、空気が抜けたタイヤの自転車を、泣きながら引っ張って自宅に戻ったのを思い出していました。



私「…私、手足と口から血を流しながら、泣いて帰って来て。

『お父さんの友達だと名乗る、知らない男の人に殴られた』と言って…。

近所の人が、それを見て、警察に通報しました。

それで、警察官が家に来て、事情聴取をされたんです…。

でも、お父さんがそばにいて、色々言われて、私頭が混乱しちゃって。

お父さんは、『この子は頭の弱い子供だから、まともに受け取らないでやってください。』と警察官の人に話していて、私は、うまくしゃべれなくて…。

それから、数時間後、私はお父さんに折檻されて…。


『よくも親に恥をかかせやがったな』って言って、ガレージの車にくくりつけられていて。

(たくさん張り飛ばされて、その後、後ろ手に縛られて)座ることもできない、トイレにもいけない。

助けを呼んで、泣き叫んでも、誰も…。

真っ暗なガレージの中で、何時間も泣き叫んでいたら、お母さんが助けに来てくれた…。」


私の脳裏に、私の名前を呼ぶ母の声が聞こえて来ました。

真っ暗なガレージの中で、小さな声で懐中電灯の明かりが見えてほっとしたのも束の間…。



私「でも、お父さんが暗がりに潜んでいて。

助けに来た、お母さんを蹴り飛ばしました。

お母さんが助けに来るのを見越して、お父さんはずっと暗がりで待っていたんです…。」


私の脳裏に、パッと明るくなったガレージに父親が立っているのを見て、総毛立ち。

次の瞬間に、母親の体が吹っ飛び、ガシャーン!と大きな音を立てて、シャッターに倒れこむ母親の姿が見えました。


サ「それで、しんじゅさんは、自分は失敗した、と思ったんですか?」


私「え?」


サ「それとも、自分の言動のせいで、お母さんを傷つけてしまった、と思われたんですか?」


私の脳裏に、恐慌状態になった自分の悲鳴が響き渡りました。

逃げなければ、逃げなければ、次に殺されるのは自分だ…。


サ「ご自分のせいで、自分だけではなく、母親までも巻き込んでしまったと思われたんですか?」


紐でくくりつけられている、私には逃げ場がなく。

父親の、やかましいという怒号とともに、張り飛ばされて、どういうかげんか、ビニール紐が裂けて、私はアスファルトに打ち付けられた。


恐怖で、胃液を吐く。

喉が焼きつくように痛む。

尿を漏らす。

助けを求め続けて叫び続けた、カラカラの口の中に、胃酸のえぐみ広がる。



私「…そこまでは…。

そこまで考えてはいなかったと思います。」



恐慌状態の中、最後に見たのは、父親に髪の毛を鷲掴みにして、引きずられていく母親の姿。

再び、暗闇の中に沈む。

涙が止まらない。


サ「その時、失敗した、と思われたんですね?」


…鈴虫の鳴き声が聞こえる。

喉が痛い。

水が欲しい。

お腹が空いた。

こんなに喉が渇いているのに、涙が止まらない。

『私の言い方が悪かったのだろうか…。』



私「失敗…。」


サ「はたして、その状況、しんじゅさんは、失敗したんでしょうか?」


私「いえ、私はなにも悪くない。

けれど、私はその時、みじめで…。

近所の犬猫の方が、マシなんじゃないかと思いました…。」



深夜、台所で、暖かいお湯を含ませたタオルで私の体を拭ってくれた母。

涙をにじませながら、『お母さんが弱くてごめんね』と、二人して気配を殺すようにして体を温める。

お風呂に入れるとなると、お父さんが起きる。

不機嫌にはさせられないからと、お風呂に入ることもできない。

翌日、私は熱を出して寝込むことになる…。



私「私は、その時、気づきました。

お父さんは、体が大人だけれど、心は私より子供だと。

でも、大人だから、周りの人には気づかれない。


翌日、昨夜のことを誰にも言ってはいけないと。

そうしたら、余計にお前を痛めつけることになると言われた時。

(警察の代わりにお父さんが犯人を痛めつけてやりたいと、私に向かってヘラヘラ笑う父を見て)

お前が死んで詫びろ、と。

(ふとんの中で、拳を握りながら、殺意をこらえて。)


バカのフリをしよう、と思いました。

私が生き延びるには、自分一人の力ではできない。

だから、バカのフリをしようと決めました…。

小学3年生の時のことです。」








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