私「ごはんだよ~!!!」

お玉を持って、階段上に向かって叫ぶ私。
それから、ガラリとドアが開く音がして、兄がノシノシと階段を降りてきた。
それを見届ける間もなく、私はさっさと台所にもどり、お椀に赤だしを注ぎ、テーブルに並べる。

ちょっと猫背気味に頭をかがめて台所の扉(常に開けっ放し気味)をくぐり、兄が一番奥のテーブルにのそりと座る。

それを見越して、私はほかほかご飯を大きなどんぶりによそい、彼の目の前に置く。
ガス台に近い、自分の定位置にも彼と同じおかずとお味噌汁と、白いご飯がどんぶりによそられている。

二人して、手を合わせて「いただきます!」と言って食事が始まる。

私「今日はアジの開きなんだ~。
ちょっと奮発しちゃって、これ、一枚で200円もする高級な奴なんだよ!?」

兄「む、うまい。
さすが、高いやつは肉厚でうまいな。」

私「でしょ!?
大根おろしもあるからさ、一緒に食べてみてよ。」

とか、そんなたわいない会話をしながら食卓を囲んでいた。
目の前には私の好物が並ぶ。
ほうれん草のおひたしに、冷奴に、大根ときゅうりの漬物。
それに、具だくさんのわかめやきのこ入りのお味噌汁。
作るのは私なんだから、当然自分の好きなものばかりだ。

もしゃもしゃと二人して食べていたら、中学生の弟も帰ってきた。
だしゃ~っ!?と廊下にカバンなどを投げ滑らせて、そのまま台所へと直行してきた。

ご飯とお味噌汁とおかずを並べて、三人で食事が始まった。

兄「今日は猫たちはどうした?こんな魚の日は色めき立ちながら現れるものだが。」

私「ん、今はいないね。
どっかに遊びにいってるらしい。」

弟「今日はご馳走なのにな~。」

私「今日はアジのお頭のみ。」

兄「お頭付きじゃないのか?」

私「身は人間が食べちゃっているから。」

弟「なんか、豪華なんだか、貧乏なんだかな感じだね。」

私「猫缶の上にオンザフィッシュボーン。
豪華な感じじゃん。」

兄「あぁ、お頭のみだと、動物虐待って感じがするけど、なんかふりかけ的な感じでちょっと豪華かもな。」

とか、そんな話をしている。
そして、なんとなく、職場の事を思い出して、ふぅ、とため息をついたのを兄が見逃さなかった。

兄「どうしたしんじゅ。
なんかあったのか?職場とかで。」

私「ん、いやぁ、なんつーか、よく分かんない事があってね。」

兄「慣れもあるだろ。
学生と社会人ではいろいろ勝手が違う。」

私「ん、まぁ、そうなんだけどさ。
職場っていうか、まぁ、同期の女の子のことなんだけど。」

弟「あぁ、Mって奴?個性的な顔をした女の人だよね?」

兄「なに?お前、顔を知っているのか?」

私「あぁ、K町に住んでいるんだよ。
前、車で送ってもらったことがあるから、その時に顔を見たんだよね。」

兄「K町っていったら、ここから500~600m位しか離れていないじゃないか。
結構近くに住んでいるんだな。」

私「ん、市が違うから全然かぶらなかったんだけど、同じ商業高校出身なんだよね。
学科も同じで隣のクラスだったんだけど、なんか住む世界が違って、全然知らない子だったんだ。
けど、高卒の女子、一人しかいないから、仲良くしないとって思っているんだけど…。」

兄「で、それが憂鬱の原因か。
なんでだ?住む世界がちがうからか?」

私「ん…。
なんていうか、あ~ゆうのを女の子らしいっていうのかな…。
それが、よく分かんなくて。」

兄「そりゃ、お前じゃよく分からんだろ。
具体的になにがあったんだ。」

私「ん…。
なんかさ、職場で気になった男性がいるらしいんだけど。」

兄「ほぉ。色恋か。」

弟「そりゃ、姉ちゃんには無理目な話だな。」

私「それで、その子『私がその人の事を好きになったんだから、その人も私の事を好きになってもらわないと困る』って言ってて。」

弟「ん?」

兄「はぁ。」

私「それで、気になる男性がいると、『その人は不倫している』って噂を流すんだよね。」

弟「へ?」

兄「何!?」

私「なんでそんな事をするの?って聞いたら。
『だって、ライバルがいるなら、蹴落とさないと』って。
『これは恋の戦略なんだから、しんじゅちゃん、協力して』とか言うのよ。」

弟「意味が分からん。」

兄「迷惑な話だ。」

私「それで、その男性の事が好きなら、普通に仲良くなればいい話なんじゃないの?
悪い噂を流すと、その人の評判が下がって、困らせることになるからよしたほうがいいんじゃない?って言ったら、『しんじゅちゃん、分かってない』ってため息をつかれるのよ。
『同期なんだから、協力してくれてもいいのに、全然自分の事を理解していない』って責められるの。
私、訳が分からなくて。」

弟「いや、それ、姉ちゃんが正論じゃね?
その同期の方が、意味わかんねーよ。」

兄「俺もK(弟)と同意見だ。
で、それでその男とどうなったんだ。」

私「どうもしないわ。
ただ、その子が言うには、絶対自分に気があるから。
ちょっと背中を押してあげているだけ、私が恋に誘っているだけでなにも悪いことじゃないって言うのよ。」

弟「自信家?だなぁ。
俺、そんなの、怖いけど。」

兄「同じく。」

私「それで、ヒヤヒヤしながら話を聞いていたんだけど。
気づくと、その相手がいつのまにか変わっているのよ。
気が変わるのも早いみたい。」

兄「で、相手の男の方は、勝手に評判を落とされただけか。
迷惑な話だな。」

弟「え、でもいいの?
仕事場とかで、不倫していたとか、それ、マズくない?」

兄「いや、明らかにまずいだろう。
その後の出世に響くかもしれない。」

私「うん、それはさすがにまずいと思ったから。
絶対そういうのは、やめたほうがいいって言ったんだけど。
『だって、噂だよ?本当のことかどうかは誰にも分からない。
その人が信用されている人なら、誰も信じない。
それなら噂を流しても、なにも問題ないじゃない。』
って、言っててやめないのよね。」

兄「分かっててやってるな。
タチの悪い人間だ。」

弟「気持ちわりぃ~、俺、そんな奴、ダメだ。」

私「私も困っちゃってて。
いくら言ってもやめそうにないから、話を聞いているだけなんだけどさ。」

兄「ふむ、迷惑千万な話だな。
それで、その、どうなんだ、その見た目は?」

私「は?」

兄「ホラ、それだけ恋愛に自信があるなら、どんな外見なのかな~って好奇心?
ちょっと知りたい。」

私「クレヨンしんちゃんの飼い犬のシロに似ている。」

弟「たいやきに似ている。」

兄「人間に例えろ。」

弟「道端に立っているお地蔵さんに似ている。」

私「うる星やつらの錯乱坊(チェリー)に似ている。」

弟「うる星やつらにでてくる半魚人に似ている。」

兄「人間から離れているだろうが!
あ、さくらんぼうは一応人間か。
それにしても妖怪みたいな奴じゃないか。」

私「アーチ型の眉をしていて、目が離れてて小さくて、能面みたいな?
ずんぐりむっくりしてて、ムチっと健康的な小柄な子。」

弟「口が大きくて、分厚い唇してて、目が細くて、肉付きがよくて骨が太そうで背がちっこい。」

兄「あ~、まぁ、だいたいの傾向は分かった。
つまり不細工じゃないか。
女子として魅力を感じるのは、背が小さいって一点のみか。
まぁ、どんな美女でも、そんな性格ならお断りだがな。
それじゃ、目を付けられた男は気の毒だな。
たんなるストーカーじゃないか。
ほぼ、犯罪者だぞ?」

私「背がちっこいのが魅力?」

弟「あぁ、背の低い女の子って可愛いよな?」

兄「あぁ、背が低いってだけでポイント高いぞ?」

私「二人とも、背が高いのに?なんで?」

兄「なんでって、小さいってことは、かわいいじゃないか。
小動物みたいで、愛くるしいじゃないか。」

弟「うん、なんか、守ってあげたいっていうか、かまってあげたくなる。」

私「へぇぇ~、そうなんだ!」

兄「そういう点では、お前はポイント低い。」

弟「まぁ、俺は別に身長はどうでもいいけど。
小さい女の子は特に可愛いなって思う。」

私「へぇぇ~、そうなんだ、そういうものなんだ。
たしかに背が小さいと小動物っぽいかも、うん。」

兄「しかし、小柄が取り柄なだけで、それは恋愛の猛者でもなんでもなく、自分勝手な理屈で動いている迷惑な存在なだけだぞ?
お前、あんまり関わらない方がいいんじゃないか?」

私「う~ん、でも、同い年の女子、二人だけだからな~。」

弟「俺もやだ~、なんか、気持ちわるいよ、その女。
見た目も、ぬるっとしてて、ちょっとアレだし、考え方も妙だし。」

兄「モテないな。
そういう女は心ばえとかで勝負しなきゃなのに、もう、心が歪んでいる。
ダメそうだわ。」

私「ふぅ~、私もモテないんだけどね。
いくら言っても、『しんじゅちゃんは、男性とつきあったことないから説得力ない』ってさ。」

兄「そりゃ、そうだけど。
論点が違うだろ。」

弟「姉ちゃんの事、利用することしか考えていないんじゃない?」

私「悪い子じゃないと思うんだけどさ。
こんなこと話すの、しんじゅちゃんだけだから、お願いって言われると、つい…。」

兄「情にほだされる、か。
まぁ、人間的だけどな。」

弟「姉ちゃんの事を、頼りにしているって事かな?」

私「それで、次々と気になる男性が出てくると、その都度噂を流すのよ。」

弟「被害者続出だな。」

私「それで、どうも、どうやら、その噂のでどころが私になっているようなのよね。
彼女、同期の女の子から聞いた話なんだけど…って切り出しながら噂を流しているらしい。」

兄「お前、それ、完全にターゲットにされてるじゃないか!
好きな男のライバルとして排除するために、完全に悪者にされているぞ!」

私「え?あ、はぁ、そ、そうか…。」

兄「あ!気づいていなかったか!
悪かったな。」

弟「何それ。友達ヅラしときながら、裏で悪口広めてたってこと?」

兄「あぁ、好きな男だけでなく、同期の面目までつぶして回っていた。
一粒で二度おいしい作戦だ。
かなりの性悪だな。」

私「そ、そうだったのか…。
気付かなかった…。」

弟「うわぁ~、姉ちゃん、気の毒~。」

兄「まぁ、その、なんだ。
お前はさ、ちょっと見た目がわるだくみとか考えてそうに見えてさ。
基本、善良なんだよな。
人の悪意に鈍感なところあるよな。
俺はさ、いいと思うよ、そういう奴がいて。」

私「うん…。
こうなったら、私にできることは。
被害者がこれ以上続出するように祈ることだけだね。」

弟「なに?普通逆じゃね?」

私「だって、変な噂を流されたのが二人、三人だったら、なんかホントっぽいけど。
10人15人流されたら、あ、そーゆー子なのねって周りも気づくでしょ?
私だって、就職したばっかで、顔も名前も知らない人のプライベートなんて知るわけないじゃん。」

兄「ま、まぁ、現実的にそれぐらいしかできないよな…。
噂の出どころは自分ではないです、と主張して回るのも妙な話だし…。
逆にお前が疑われる…。
なんか、そういうめぐり合わせなんだろうな。








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少女時代71ー2電話にでんわ♪

それでもベストだった

comment iconコメント ( 2 )

こんにちは♪

「たいやきに似ている」に爆笑してしまいました!

名前: うに♪ [Edit] 2017-02-28 17:26

Re: こんにちは♪

うに♪さん、コメントありがとうございます。
アラ♪
笑っていただけて、よかったです(*^_^*)

名前: しんじゅ☆♪ [Edit] 2017-02-28 21:39

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