兄弟でご飯を食べ続けています。


私「お兄ちゃんと同じ事、主任さんも言ってたな。
新人らしくないって。」


弟「でもさ、とぼけるって、それで通用するのかな?」


兄「通用せざるを得ないだろうな。」


弟「でも、実はもうバレてるんだよ?
それなら、もう無理じゃね?」


私「だから、常識が邪魔をして、頭が受け付けないし。
その事実を認めたら、お互い気まずくなるのは無意識に了承済みなんだよ。

言っただろ、頭のいい人間だからこその予防線的なロジックが働いているんだ。
それはこっちも承知済みって話で。

だから、こっちがとぼけている以上、それ以上の深追いはできない。
だから、問題ないって話。」


兄「そいつに超能力があるかどうかの証明はできないって話だな。
今のところ、もともと科学的に証明できないものだし。

超能力はあるかもしれないし、ないかもしれない。
そのどちらの可能性も秘めているが、確認しようがないってことさ。

しかし、それでいて、そのどちらの可能性もある。
1対1の割合で、両方の可能性が存在している。

それは箱の蓋をあけてみなければ分からない。
しかし、その結果が証明になるかどうかも分からない。」


私「シュレーディンガーの猫か。」


兄「あぁ、観察者の主観が結果を与える。
量子力学の世界において、一石を投じた画期的な考えだと俺は思うね。」


私「私には単に哲学的な概念に思えるけどね。」


弟「なに?そのシュレーなんとかの猫ってやつ?」


私「箱の中身は、蓋を開けてみなけりゃ分からないって話さ。」


弟「え?それって、当たり前じゃない?」


兄「箱の中に毒物が仕込まれているんだ。
その毒物が実際に発生する確率が50%の実験において、一緒に箱の中にいた猫が死ぬ確率は50%と言えるかどうかの実験の話。

蓋をあけてみるまでは、箱の中の猫が死んでいるか、死んでいないかは分からない。
しかし、その両方の可能性がある以上、そのどちらも存在しうる、という考え方だ。
つまり、箱の中で死んでいる猫のいる世界と死んでいない猫の世界と、重なって存在しているという概念だ。

それは蓋を開けてみるまでは分からない。」


弟「なに?なんか変な話だな?
50%の確率で毒物が発生するのなら、猫の死ぬ確率も50%でいいんじゃないの?」


兄「それがそうじゃないんだ。
箱を開けた時点で、それは結果にすぎない。

つまり観察者がいることで、その世界は認識される。
だから、箱を開ける前の段階では、猫は箱の中で死んでいる、または死んでいない、両方の世界が重なりあって存在しているって考え方なんだよ。
画期的な考え方だ。」


私「シュレーディンガーが頭のいい奴だってことは分かるが、私はこいつに一石を投じたい。
一言いっておく。
頭がいいかもしれないが、お前は悪趣味だ。
毒物と猫を同じ箱に入れるんじゃねぇ。」


弟「あ、確かに。」


私「箱を開けてみたら猫は生きてました、死んでましたの結果は二択しかない。
それなら確率は50%と言えるかもしれないがな。

いきなり見知らぬ箱に突っ込まれた猫がおとなしくしていると思うか?
よっぽど寝ぼけた奴じゃねぇ限り箱の中で暴れる。

速攻、ガイガーカウンターガツーンで、毒が回って死ぬ。

箱を開けるまでもねぇ、猫は死んでるよ。

これは、生存率50%を計測する実験でもなんでもねぇ、殺人いや、殺にゃんだ。
猫に謝れ。」


兄「あ、それは気付かなかった…。」


弟「殺にゃんっていうと、なんかかわいいな…。」


兄「いや、でも、これはそういう趣旨のものではなくて、あくまで可能性を論議するものであってな…。」


私「ちょっと想像してみろ。

ウチのキャッツがダンボール箱に突っ込まれたら、どうする?
毒入りグラスと一緒に突然ほおりこまれた、彼らは何をすると思う?」


弟「怒り狂って、鳴き叫ぶな。」


兄「あるいは怯えて泣き叫ぶ、そして、暴れる。」


弟「間違いなく、ダンボールを突き破って出てくる。」


私「毒液まき散らしながらな。
ほら、速攻お亡くなりだ。」


兄「いや、でも、だって、そうだ、他の動物なら…。
犬とか…。」


私「小型犬にしたところで結果は同じだ。
下手すりゃ、猫より落ち着きがない。」


弟「そうだ、モルモットとかラットなら。兎もいいんじゃね?」


私「ちょろちょろ動き回って、ガイガーカウンターかじって、毒物発生させちゃうだろう。」


兄「そうだ!睡眠薬を与えて、眠らせて箱に閉じ込めたのかもしれないぞ?」


私「どちらにせよ、動物虐待だ。
猫のことを実験動物ぐらいにしか思っていないから、そんな実験ができるんだよ。

動物の命を粗末に扱うなって言いたい。」


兄「ぐぅ、思ってもみなかったが、正論だ。
確かに、猫に対して残酷なことをしている。」


私「その動物の特性を気にしていないからそんな残酷な実験ができるんだよ。
そんなに生死両方の可能性を知りたいなら、自分で実験しろ。」


兄「いや、それだと人体実験で倫理的な問題が…。
しかも、自分が死んじゃったら、論文を発表できないじゃないか…。」


私「ガガーリンの前の犬と一緒だな。
ロシアの奴らは恐ろしい真似をしやがる…。」


弟「なに?ガガーリン?」


兄「宇宙飛行士の名前だ。
有人で宇宙飛行をする前に犬で実験が行われていたんだ…。
地球に帰還するだけの燃料を持たずに宇宙に放たれた犬がいたんだよ…。」


弟「うわ~、それ、どうなっちゃうの?」


私「まず、食料と酸素が尽きて餓死したと思われる。
もしかしたら、酸欠による窒息死かもしれない。

どちらにしても、冷たい機械に囲まれた暗闇の中でひとりぽっちで死んでいったのさ…。」


弟「なにそれ~、かわいそすぎる~。」


私「だろ~、だから動物だからって命を粗末にするなっていいたいんだよ。」


兄「いや、でもコスト面を考えたら、ロシアもしかたなかったんじゃないかって…。
犬のために帰還用の燃料と機械を用意するのは…。

え、俺、冷血な人間に思えてきたぞ?」


弟「ふぅ~、おそろしい事が世の中にはあるもんだな。」


私「ん、そうだ、心してかかれよ。
ご飯おかわりいるか?」


弟「ちょうだい。」


兄「俺も。」


三人でもぐもぐ食事が続いている。

ポリポリと漬物を噛む音が響いている。


弟「でさ、姉ちゃんの話。
人の考えていることが読めちゃうってやつ。

なんで言っちゃいけないのかな?」


兄「いろいろまずいだろう。
変な誤解が発生する恐れがある。」


私「うん。」


弟「ねぇ、姉ちゃんみたいに、相手の考えを読めるっていうのはともかくさ。
電話の内容が分かるのは、俺たちには普通じゃん?

それなら、世の中にもお仲間がいるんじゃね?」


兄「あぁ、ここに4~5人固まっているくらいなんだから、実際にはそれくらいの勘が働く人間はそれなりにいるんだろうが、しんじゅと同じ理由で黙秘しているやつらばかりだろうよ。
わざわざ人に話す利点がない。」


弟「じゃ、分からずじまいか?」


兄「今、通信の世界が発達してきているからな。
みんなインターネットをするようになって、匿名でなら自分の特性を発表する奴らがでてくる可能性がある。

そうしたら、意外と大勢いたってことが分かるだろうが、それも何年も先の話だろうし、あくまで個人特定できない状態での告白になるだろうから、実際にはどれだけいるかの実態は掴めないだろうな。」


弟「そっか。
ふぅ~ん、でも、なんか、もったいなくね?
俺なら、人の考えていることが分かるならいろいろしたいと思うけど。」


私「はぁ?」


兄「ふむ、一理あるな。例えば、どんな活用方法だ?」


弟「う~ん、例えば、ギャンブルでさ。
相手のカードが読めちゃうじゃん。
麻雀もいいな、それとかなんかの暗証番号を読んで。
そんで、キャッシュカードをなんとか抜き取って、現金を引き出すとか。」


私「どれも犯罪じゃねーか。」


弟「いいじゃん、相手にはこっちが読めるって気づかれないんだから、うまくすればバレないよ?」


兄「あぁ、確かに証拠がないから足がつきにくい。
誘拐とか、強盗の仲間にいたら、心強いタイプだな。」


私「どれも犯罪だろうが!
私は犯罪に手を出すほど、気の毒な人間じゃないし、気の毒な頭の持ち主でもねーよ!」


弟「なんで?バレないんだよ?
捕まっても証拠がないなら警察にもつかまらなくない?」


私「捕まるかどうかの問題じゃねーよ。
一時の欲得の為に、犯罪に手を染めて、それでその後、心安らかに過ごせるかって、良心の問題だよっ!」


兄「小市民だな。」


弟「小心者だな。」


私「正直者だと言えよ!
誰もが真面目に働いているんだ、バレないからって、そのうわまえをはねるような浅ましい真似ができるかってんだ。
たまたま、そういう事ができるってだけだ。
悪だくみに使う気は一切ねーよ!」


兄「…真理だ。
お前の言っていることは全て正論だな。
賢い。」


弟「え?そうかぁ?
結局、なんの役にも立てれないって話で、損じゃん。」


兄「いや、今のはあくまで可能性の話をしていたんだがな?
しんじゅの能力は犯罪に利用しやすい。
それは、実はかなり恐ろしいことだぞ?

どんな人間でも、弱ったり困ったりする事がある。
その時、絶対にバレないなら、犯罪に手を染めてしまっても…という誘惑に人間は勝てるだろうか?

俺でも、絶対に勝てるという自信がない。
それなら、最初から、この能力は使わない、と決めてかかっておいた方が、人間としてまっとうな人生を送れるんだ。
そう、一時の欲で犯罪に手を染めて、その後、罪悪感に苛まれて過ごすくらいなら、犯罪を犯さない方が絶対にいいんだ。

そして、こいつはそういう奴だ。
一見アホっぽくて気づきにくいが、言ってることは正論で、善良な人間だ。

こういう時、神様は公平だなって感じる。

悪用しようと思えば、いくらでも悪用できるし、それは良心のない人間がするものだ。
搾取される側は、それに気づけない。

けど、こいつはそういうことをしない。
そういう能力はそうゆう奴が持っててくれた方がいい。

俺の妹は、小市民で小心者かもしれないが、正直者でよかったなって心底思うよ。」







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