同級生でもあり、近所に住む少年が帰宅途中に急に声をかけてきた。

普段はまったく声をかけてこない子だ。

私に声をかけるのも、ヒソヒソ声で、ちょっと驚いた。


ヨ「なぁ、しんじゅ、この後、ちょっと時間あるか?

少し話がしたいんだ。」


私「ん?いいよ、なにヨシ君。今聞くよ。」


ヨ「ん、いや…。集合場所まで戻ってから話する…。」


私「ん…?いいけど…。」


元々同じ通学団の二人だ。

ただ、私の家を少し通過した、ヨシ君の家の前の通りにある小径に私たちの集合場所がある。

砂利混じりの舗装されていない簡素な道沿いに、ブロックが3段ほど積み上げられて、となりの畑と敷地が分かれている。

ここらへんではよく見かける、どこにでもある道だ。


もくもくと歩く小学生の群れが徐々に少なくなっていって、私たちはいつも朝集合する場所へと戻り、そこらへんにランドセルを置いて、話をしはじめた。



ヨ「…あのなぁ。

家でさ、オレ、怒られたんだよ。

お前のこと、メス豚だって言ってたら、オカンとおばぁにメチャクチャ怒られた。

お前、保育園から一緒に育った女の子の事を、なんて言い草しているんだって。


…オレさぁ、驚いたんだ。

お前のこと、メス豚だっていうの、オレだけじゃない。

クラスの男子は大抵言うし、女子もお前の事、そう呼んでいる。

先生が言っていたしな、それが普通だと思い込んでいたんだよ。

よく考えたら、普通におかしな話だよ。

それでさ、お前に謝りたくて…。」



私「…汚い言葉は聞いた人に嫌な気持ちを感じさせる。

それを使い続けると、周りから愛されない人になるよ。

身近にすぐ叱ってくれる大人がいるヨシ君は恵まれた子供だと思う。」


ヨ「…かぁ!

やっぱりな、やっぱりお前の言うことのほうが正しかったんだ!

おかしいと思ってたんだよ、そうだよ、やっぱりそうだ。

お前の言うことのほうが、すぅーっと腹に落ちる。

お前の方がまっとうだったんだなぁ…。」


私「どうしたんだ?

でも、謝ってくれてありがとう。

勇気がいっただろう?」


ヨ「いや、なに、スマン…。

オレさ、お前とはマジ子供の頃からのつきあいじゃん?

でも、クラスで担任にさ、豚とか低脳とかいつもお前いわれっぱなしでさ。

なんだか、そういう奴なのかなって気がしてきちゃってて…。

いや、どっかで、やっぱ変だ、と思うんだけど…。

みんながお前を見て嗤うから、つい、さ…。」


私「全体の空気にのまれちゃったんだろう。」


ヨ「いや、実は、そうなんだよ…。

オレはさ、お前とはマジで友達だったからさ。

コイツはオレの仲間なんだから、バカにすんなって、最初は思ってたけど…。

思ってたけど、なんだかすくんじゃって…。」


私「いや、分かるよ。

私がヨシ君の立場だったら、やっぱり声を消しちゃってたと思うし。」


ヨ「いや、でも…。」


私「無理しなくていい。

多分、この気持ちは数日しか続かない。

また、私をいじめる側に回ると思うけれど、それも仕方ないよ。」


ヨ「いや、そんなことは!」


私「無理なんだよ。

多勢に無勢。

先生が率先して生徒をいじめているんだ。

反対すれば、自分がいじめられる側に回る。

だから、誰も逆らえない。

子供なんだから仕方ないよ。」


ヨ「…お前はさ、お前は、なんで、そんな大人なの?」


私「大人じゃないよ、要領の悪い子供だよ。

もう、逃れられない、仕方ないんだよ…。」


ヨ「お前さ…。

オレ、こないだ気づいたんだ。

お前、ちょっと前、数日休んだ事あっただろ。」


私「あぁ、風邪で2、3日休んだっけ。」


ヨ「お前がいない時のクラスさ。

なんかさ、異様なんだよ。

元から変なんだけど、それでも、お前がいる時といない時では、全然違う。

オレ、ゾッとした。

お前がストッパーになっていたんだなって気づいた。

お前がいない時、みんな死んだ魚みたいな目をしている。

次は誰がターゲットになるんだって、ビクビクしている。

あぁ、お前はいつもこのプレッシャーの中で教室にいたんだなって。

背筋がゾッとした。

いつ、オレがクソブタと呼ばれるのか、いつオレがみんなの嗤いものにされるのかって。」


私「……。

その立場になってみないと、わからないさ。

ヨシ君がいじめられる側に回る可能性は今のところ低い。」


ヨ「いや、でも、こないだ吉田、休んだろ、一週間位。」


私「あぁ、アレはひどかったしな。」


ヨ「小竹が先生の靴舐めた時の事、覚えているか?

お前、黙ってカバン持って教室出て行った。」


私「あぁ、あんなのは授業じゃない。」


ヨ「先生あん時、お前の内申を下げてやるって言ってたけど、お前黙って教室出て行った。


教室のドアが閉まる時、あぁ、あっちの方がマトモだとみんな思ったと思う。

俺も教室から出たかったし、周りの奴らも出て行きたかった。

でも、教室を出るやつは内申下げると言われて、誰も逃げ出せなかった。

次に靴を舐めるやつを募ってたからな、先生。

みんなビビってた。

そんな時、お前、気分悪いから帰りますっつって出てった。」



私「サボタージュか?しんじゅって言われたけど。

なぜカバンを持って出ていくと言われたけど、6時限目だったし、保健室の先生も帰りなさいというと思ったからそのまま帰るって行って出てった。」


ヨ「お前、あの後どうなったか知ってるか?」


私「いや、知らない。

教室で私に声をかけてくる奇特な人間なんていないしな。」


ヨ「そうか…。

あの後、悲惨だったんだよ…。」









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