曇り空の下二人の小学生が通学路の途中の小径でランドセルを地面に置いて話し続けていた。

気温は少し低い12月のことだった。



私「あの後、小竹から、つばをはきかけられたけどな。

お前が靴を舐めないからアタシが舐める羽目になったって、怒ってた。」


ヨ「あぁ、アイツムカつくといつも人にツバはきかけるもんな。」


私「で、何があったんだ、あの後。」


ヨ「先生はさ…。

酔っ払ったみたいに、勇者を募る!とか言い出したんだよ。

自分に忠誠を誓う勇者を募る。

忠誠の証に自分の靴に口づけするようにと。」


私「そこは私も聞いた。

その後の事はどうなった。」


ヨ「それで、先生は男子を名指ししてきたんだ。

いつもヘラヘラしている男子達もさすがに靴は舐められないだろ?

で、みんなビビって固まって動けなかった。」


私「…くだらない…。」


ヨ「オレも呼ばれたけど、勘弁してくださいって頼んだ。

他の男子も目に涙浮かべて頼んでいたら、先生は気が済んだようで。

今度は女子達に推薦者を出すようにと言い出し始めた。」


私「…はぁ…。

そりゃ、逃げ出しときゃ、よかったと後悔するだろうね…。

それで?」


ヨ「それで、結局ミオが呼ばれた。

アイツビビってた。

いつもふんぞり返ってたのに、仲間に差し出された格好になってショック受けてたよ…。」


私「ミオちゃんか…。

あの子は詰めが甘いからな…。

それで?」


ヨ「それで、男子の真似して勘弁してくださいって頼んだけど、もう先生は物足りなかったみたいで。

お辞儀するだけで、許されるとでも思ってるのか?って。」


私「分かった、土下座しろって言ったんだろ。」


ヨ「そう、それも、ただ土下座するだけではダメだった。

四つん這いになって、ブゥブゥ鳴き真似して、私はダメなメスブタですって言いながらぐるぐる回って謝らさせられていた。」


私「で、周りの反応は?」


ヨ「みんなビビリまくりだよ。

でも、先生が笑えって言ったから、無理やりクスクス笑わされた。」


私「ミオちゃんに屈辱を与えたかったんだね。」


ヨ「アイツ、泣いてた。

なんで、アタシがこんな目にあわされるんだって。

こんなハズないんだって。

授業が終わって誰もいなくなっても、しばらく動けなかった。

かなり凹んでたよ。」


私「だろうね。」


ヨ「オレ、不思議なんだよ。

女子がミオを差し出すのはまぁ、分かるとして。」


私「そこはいいのか?(笑)

ヒドイ話しだぞ?」


ヨ「なぜ、ミオを先生がそこまで痛めつけるのか?

いつも先生の手先になってんじゃん、アイツ。」


私「先生からみて、調子に乗っているように見えたんだろう。」


ヨ「それだけ?」


私「それだけ。

たいした理由なんていらないよ、いじめに。

単になにかシャクに触ったんだよ。

自分が選ばれるはずがないってタカをくくっている態度が目に付いたのかもしれないし。」


ヨ「アイツ、かなりショック受けていたぜぇ。

いつも仲良くしているやつら、示し合わせてミオを指名したしな。」


私「ミオちゃんは、単純な子なんだよね。

ミオちゃんが仲良くしていると思っているのは、悪いことをする仲間なんだよ。


そんな奴らがいざという時に、身を呈して自分を守ってくれるハズがないのに、勘違いしている。

ミオちゃんとつるむのは、自分がミオちゃんからいじめられたくないからだし。

私をいじめている方が安全だと思っているからつるんでいるだけで、単に大人数でいることで安心したいだけの中身のない仲間なんだよ。


信頼できる仲間に裏切られたのなら、まだ気の毒だと言えるけれど。

それでも、その状況では他人の手助けできるだけの子は普通はいないと思うよ。


だから、ミオちゃんは期待が外れたと思っているけど、最初から期待するだけ無駄なメンバーとつるんでいるって自覚しておいたほうが本人の為だ。」


ヨ「お前、手厳しいな。」


私「ミオちゃんはね、あぁ見えて繊細な子だから、これから大変だと思うよ。」


ヨ「なんで?繊細?どうみてもガサツな乱暴者じゃないか?」


私「そう見えるのか?

口の利き方や乱暴なふるまいをするけど、かなり繊細な性格の子だよ。

なにか家庭で問題があったんだと思うけれど、発散の仕方がわからなくて暴力をふるっているだけに見えるけどな。」


ヨ「お前の考えすぎじゃね?

アイツ、いつもお前に嫌がらせしてんじゃないか。」


私「あぁ、先生に言われてね。

彼女、それで得意になっているけど、とんだ見込み違いなんだけどね…。

見通しが甘いっていうか…。」


ヨ「…オレさ。

オレ、こないだ見たんだよ。

いや、お前に言われて知ってたつもりだったけど、実際に見てビックリしたんだ。


お前が歩道橋から降りようとしていた時、アイツ突然やってきて、お前の膝の裏を蹴飛ばした。

お前、バランス崩して、前の上級生にぶつかって、メチャクチャ怒られていたけど。

振り返ってミオに何か文句を言ってたけど、アイツ「お前が勝手に転んだんだからな!」っつって逆方向に走ってった。

オレとすれ違う時、やった!やってやった!って歯を見せていた。

前にも見かけたけど、そん時は、お前がウソついていると思ってたんだ。


けど、お前の肩を掴んで、完全に動きを止めてから、両膝の裏にキックしていた。

あれじゃ、誰だって階段を落ちるよ。


なんなの?アレ?マジで怖いんだけど。」



私「あぁ…。

私にも理由はよく分からないんだけど、学校でミオちゃんから、よく階段から突き落とされるんだよね。」



ヨ「ナニっ!?

それで、お前無事だったのっ!?」



私「あ、たまにずり落ちて、アザとか擦り傷作るくらいで大事にはなってないんだけど。

時には蝶のように舞って、踊り場まで着地したりとか、結構無事で。」



ヨ「お前、運痴そうに見えて、反射神経はいいもんな…。

そこがまたムカつくというか…。」



ヨ「そう、それで、いつもは階段を使わないようにしたり、手すりに捕まって上り下りしたりしてたんだけど、最近は行動半径を広げて下校途中に狙ってくるようになった。」



ヨ「オイオイ!マジかっ!危険人物じゃねーか!」



私「いくらなんでも、歩道橋はやめてくれって言ったんだけど。

ミオちゃんは、私をなるべく高いところから突き落としたくて、階段を下り始めたところで突き飛ばしてくるんだよ。」



ヨ「突き飛ばしじゃなくて、蹴り入れてるだろ。」



私「いや、問題は歩道橋は子供たちでいっぱいになっているから。

集団下校していると、下の学年の子達を先に歩かせているだろ?

それで、いつもは自分の班以外の上級生に先にぶち当たるけれど、もし勢いが止まらなくてそのままなだれになったら、一年生の子が下敷きになってしまう。


いくら子供でも、何人もの体重が乗って、勢いよく突き飛ばされたら擦り傷ではすまなくて、骨折とかもっとひどことになりかねない。


嫌がらせにしても、洒落にならないからよせ!といくら言っても聞かないんだ。

ミオちゃんは、私に憎しみを抱いて、嫌がらせをすることだけに頭がいっぱいで犯罪だと気づいていない。」



ヨ「それでお前、いつも歩道橋になると一気に駆け下りていたのか。」



私「うん、突き飛ばされる前に逃げようと思って。」



ヨ「分かった、ウチの班、5年6年がいないから、オレが班長なんだから、これからはお前が突き飛ばされないようにミオが来たら守ってやるよ。」



私「助かるよ。

私、体小さいし、腕力ではかなわないから。

ヨシ君なら体格いいし、ミオちゃんを止められる。」



ヨ「謎がとけた。

お前、いきなり班行動を乱すから、いい加減にしろと思ってたけど、周りの子供の事を心配していたんだな。

オレもきちんと話しを聞いてやってなくて、悪かった。」



私「いいよ、そりゃ普通に信じられない話しだろうし。」



ヨ「…オレさ。

ミオが先生になにかこそこそ話ししているのを聞いた事あるんだ。

なんか、お前にこんな事をしてやった、とか報告している感じだった。」



私「あぁ。

ミオちゃんは、多分、先生に私にしたことを報告して。

内申点を上げてもらえると約束されているんだろうな…。」



ヨ「ナニ?それ、ひきょくね?」



私「ミオちゃんは単純な子だって言っただろ?

先生がそんな約束を守るわけがない。


どうせ、内申書には『情緒不安定で行動に落ち着きがない』『突飛な行動をする、協調性のない子』『自分で物事を組み立てられない幼稚な面がある』とか、最低評価さ。

もし、私のいじめが問題になった時のために、彼女に全てひっかぶせる為に、必要以上に悪く書いておくと思うね。

多分、小学3年まではミオちゃんはそんな風に書かれていなかったと思うから、5年生になった時、担任の風当たりが強くなって、驚くと思うよ。

今までは運動神経がいいってことで、小学校では自然とヒーロー扱いだったけれど、いきなり担任に期待されない子供扱いされることになる。

あの子は大人の評価をすごく気にする子だからおとなしくなっちゃうだろうな。


それにね、アタシたち、ここの子は小学校・中学校が町に一個しかない。

あと5年間同じメンバーで通うことになるのに、今、先頭に立っていじめをしていたら、あの時いじめをしていた最低の人間だからいじめられて当然だって口実にされて逆にいじめのターゲットになりやすくなる。

見通しが甘いんだよね。」



ヨ「え…。先生はそこまでやってもミオとの約束を守らないのか?」



私「守らないね。

守るくらいなら、土下座して豚の鳴き真似なんてさせないさ。

先生は子供の事をなんとも思っていない大人だからだ。」









いつも最後まで読んで下さりありがとうございます。
↓応援よろしくお願いいたします↓
  
スポンサーサイト

少女時代74ー3(子供心)

少女時代74ー1(悪い言葉)

comment iconコメント ( 0 )

コメントの投稿