紫色の布地で包まれた、こたつふとんをめくって、足を入れる。


口八丁で、ヨッちゃんのおばあちゃんに甘辛い焼き餅を焼いて欲しいとねだった私は、首尾よくそれを手に入れようとして、ホクホクしていた。


おばあちゃんが、七輪の上の網に半分にカットした切り餅を並べる。


それをヨッちゃんと一緒に、焼きあがるのを待ちつつ、こたつに入りながらおしゃべりをしていた。


おばあちゃんの部屋の片隅に、私のランドセルが置いてある。

ヨッちゃんが、自分の分と一緒に、私のランドセルを運んでくれていたのだった。



ヨ「なぁ、しんじゅ。

お前のランドセル、なんで、あんな傷だらけなんだ?

どうやったら、あそこまでキズキズにできるんだよ?

お前、オレと違って大人しいのに、親に怒られないのか?」



ゆのみに入った、温かい玄米茶をすすりながら、返事をする。



私「ん~?あ、これ~?

これはね~、アタシのヘルメットなんだよ。」



ヨ「メットじゃねぇだろ、乱暴に扱うと親に怒られないのか?」



私「いやぁ~、乱暴に扱うっていうより、事故にあってさ…。

あ、事故っていうか、災難って感じ?」



ヨ「え、事故…。いつ!」



私「いや、いつだったかなぁ…。

秋口だったと思うけれど、その時も、いつものようにミオちゃんが歩道橋から突き落としにかかってきて。」



ヨ「え。」



私「私、その時、うっかりそのまま突き落とされたんだよねぇ。」



ヨ「えっ!?」



私「いやぁ~、ホントビックリ!」



ヨ「えぇえぇっ!!

いつっ!オレ、見てないっ!

えぇっ!」



私「あ、そうだね、その時、たまたまヨッちゃん、遠くにいて、私よりずっと先を歩いてたんだよ…。」



ヨ「えっ!?

お前、それでブジだったのっ!?

エッ!メットって、ヘルメットって、えぇ?

あ、そうか、落ちたって言っても、二段、三段とか?」



私「いや、歩道橋の真ん中の少し上のあたりから。」



ヨ「えっ!?2mはあるだろっ!」



私「それくらいあったと思う。

地上まで真っ逆さまに落ちた。」



ヨ「えぇっ!?お前、それでブジ…。

あ、ブジだよな、お前とオレ、一緒に毎日通学してんだから…。」



私「うん、完全に無傷だった。」



ヨ「どうやって、どうしたら、その高さから落ちて無傷でいられるんだよっ!」



私「うん、それが、アタシにも、一瞬、わけが分からなくて…。

どうして、助かったのか、よく覚えていないんだけど。

気づいたら地面の上に、仰向けで落ちてて、パタン、と両足の裏を地面につけてた。」



ヨ「は!?

状況がよく分かんねぇ。

もっと詳しく説明しろ。」



私「うん、あのね。

ドンっ!って背後から押されてね。


あっ!?って思ったのね?

完全に油断していたの。


で、つかまるものもなにもなくて、気づいた時には地面も足、ついてなくて、もう、ふわっと体が浮いて、斜め下に落ちていくしかない感じだったの…。」



ヨ「えっ!それ、助かんねぇじゃん。

その状況で、無傷とか、ムリくね!?」



私「うん、でも、アタシね。

押された瞬間、目の前に、一年生の子がいたの。

そっちがぐわっと目にいってね。」



ヨ「あっ!?そうか、巻き添えでそいつが下敷きになったのかっ!?

それで、無傷かっ!?

えっ、でも、それだとソイツが大怪我だろ!?

騒ぎになるはずだし、オレ、そんなの聞いてねぇ??」



私「うん、アタシね、瞬間的にね。

その子を巻き込んじゃいけないっておもって、ぐわっと体をねじったの。

体を右側にそらした。

そしたら、その子をすり抜けて、そのまま地面まで落ちていった感じ…。」



ヨ「あ、お前、小さい子を守ったんだな…。

え、でも、それでもそれじゃ、お前ケガして当然じゃね?

その話、オカシクね!?」



私「あ、う~ん。

そう、ねじるのは成功したと思ったのよ。

その子、すぐ横を落ちていく私に、気づいていなかったし、そのすぐとなりを飛んでった…。


あ、そうね、そうよね?

どうしてケガしなかったのかしら?


うん、あ、そうだ…。

元々、少し右側に飛ぶ角度で押されていたんだけど。

とっさにね、体が右側に吹っ飛んで行って、それで体が回転しててね。

ツイストっていうの?体がねじれる感じになってね、このままだと足を歩道橋の右側ににぶつけるって思ったのよ。


それで、とっさに自分の足を引っ込めたの。

こう、体操座りするみたいにひざをひいて…。」



ヨ「え…。それで?」



私「そしたらね?

なんか、ぶぅんっと引っ張られるように飛んでね?

ザリザリザリザリってすごい音がして、目が回って、気がついたら、仰向けに地面に降りて、ぽてんって両方の靴の裏が地面に当たった音がして。


青空を見上げていたのよ。」



ヨ「は?なに、それってつまり…?」



私「体をそらした加減で、くるっと半回転して、赤ちゃんみたいな格好して、地面に落っこちた。

それで、ランドセルに乗っかる感じで、滑って、くるくるとスピンして、ブジ着地。」



ヨ「はぁ?」



私「キセキ!にゃんこ空中半回転!」



ヨ「にゃんこ先生は空中3回転だろ!

お前、3回もまわってねぇじゃねぇか。」



私「だから、空中半回転。

正面から裏向きにぐるっと回っただけ。」



ヨ「あ、ハンカイテンか、オレがサンカイテンと聞き間違えたのか。」


私「で、前のめりからちょうど仰向けになったところで地面におちて。

しかもランドセルに乗っかって、滑り台?スライダーみたくざりざり回転して、止まった感じ。」



ヨ「はぁ。」




私「私も、あまりにもビックリして、キョトンとしてたら。

上から、ミオちゃんが。

『ふざけるなぁっ!!』


って、大声で叫んでいてね?


あ、ミオちゃんが押したのか…。

って、ぼーっとしてたの。


これを見てたの、小学1年生の子だけだから、誰も知らないんじゃないかな?」



ヨ「イヤイヤイヤイヤ!

それ、事件でしょ!?

それ、まずいでしょ!?

傷害事件でしょ、あ、傷害未遂事件でしょ!?

なんで、お前、そんなふうなの?


え、親に言った!?

それ、親に言ったのっ!?」



私「ん?言ったよ?

これこれ、こういう事情でランドセルこうなりましたって。


そしたら、お母さん、すごいね!

しんじゅちゃん、無傷でよかったね!って。」



ヨ「イヤイヤ、そりゃ、無傷でよかったけど!

お前、それでいいのかよっ!?」



私「だからぁ、ミオちゃんには、歩道橋で押すのだけはやめろって言ってんだけど?

聞いてくれない訳よ。」



ヨ「いや、そりゃ、そうだけど、そうじゃなくて、えっと。」



私「だから、通学団が同じ、ヨッちゃんにも、頼んだのよ。

ミオちゃんが突き飛ばしてくるから気をつけて見て欲しいって。」



ヨ「いやいやいや、そりゃ、聞いたけどよ?

オレ、ウソだと思ったから…。

あ、いや、事実だったけど、ありゃ、その、なんだ、お前が大げさになにか言ってんだと思ってて…。


えぇえぇ?

そりゃ、まずいでしょ!?

えぇえぇ???」



私「だからぁ、ミオちゃんは先生に約束してもらってるのよ。

私を痛い目にあわせたら、内申をあげるっていうご褒美?

それがあるから必死で向かってくるわけ…。」



ヨ「いやいやいやいや!

内申とか、そういうんじゃなくて、えっともっと、えっと、めちゃ怖いんだけどっ!

お前、メチャクチャ危険なんだけどっ!


えっ、お前んとこの親はなんて?」



私「だから、お母さんは、しんじゅちゃんが無事でよかったわ。

ランドセルが傷ついたくらいで怒らないわよって。」



ヨ「いやいやいやいや、問題はそこじゃなくてっ!

そーゆー問題じゃなくて!」



私「で、ランドセルがキズだらけでも、おとがめなし。」



ヨ「いやいやいやいやいや、そりゃ、恐ろしいわ!」



ヨッちゃんのおばあちゃんが声をかけてきました。

そうして、私はノリが巻かれた甘いお餅をはふはふと頬張りはじめたのでした…。









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