むっちゃ、むっちゃと餅を頬張るわたし。


対してヨッちゃんは、青ざめてお茶をすすっています。



私「…それで、お父さん、お母さんに大人のすることに口出しするなって言われてて、あんまり学校のことはなしていないの。」



ヨ「えぇ…。そうなのか…。

お前んちのお父ちゃん、お母ちゃん、優しそうな人じゃん。

特にお前んちのお母ちゃん、すげーにこにこしてて優しいんだと思ってた…。」



私「優しいよ?

優しんだけど、冷たいんだよ。

なんでか、そうなんだ、私にも、よく分かんない。」



ヨ「えぇえぇ…。

オレ、お前の言ってる意味が分かんないよ…。

あ、お前に口癖うつった。」



私「さぁ?そういうもんだから、そうなのかなって…。」



ヨ「分かった、これからは、絶対ミオの奴、阻止する!

ぜってー、見逃せねぇ!オレが見つけたらとっちめてやるっ!


って、なんで、アイツ、歩道橋にいんの?

そういえば、あいつん家って、学校の向こう側じゃね?」



私「うん、あの子西町だよね?

ウチラ東町だから、通学路が一緒になるハズないんだよ。」



ヨ「じゃ、わざわざお前を付け狙って、後をつけてきてるのか…。

気持ちわりぃ…。」



私「うん、うんざり。」



ヨ「そりゃ、ユウウツだよな。」



新しいお餅が焼きあがって、もう一つもらいます。

ヨっちゃんももう一つ、手を伸ばしかけます。



ヨ「…だから、ランドセル、擦り傷だらけだったのか…。」



私「お?もう一つミラクルがあってね?

ランドセルがあって、助かったことがあったんだよ。」



ヨ「あぁ?」



私「先月の終わりぐらい。

二学期の終わるちょっと前くらいなんだけど。


ミオちゃんがいないってほっとして、歩道橋を過ぎたらね。

突然、車道に突き飛ばされたんだ。」



ヨ「えっ!?」



私「私、完全に油断していてね?

周りに人もたくさんいるし、歩道橋を過ぎたから今日は大丈夫だと思ってたら、ミオちゃんは歩道橋の下に、先回りして、隠れてて、私が道路を歩いているのを狙っていたんだ。


それで、すぐそばに車が通りかかったところで突進してきて、そのまま跳ねられるかと思った。」



ヨ「えっ!?車道に突き飛ばしたのかっ!?

えっ!?でも、通学路と車道の間に縁石があるじゃん。

20cmくらいの高さあるじゃん。

それ、飛び越えたってことっ!?」



私「うん、体が吹っ飛んだ。

ミオちゃん、すもうとりみたいに、体を低くして、下から突き上げてきたんだ。」



ヨ「えっ!?お前、見てたのかっ!?」



私「うん、人ごみの中歩いてたら、後ろからキャッ!?って、女の子たちの悲鳴が聞こえて。


ん?って思って振り返ったら、ミオちゃんが、すごい形相でこっちに突進してきた。


『死ねぇぇぇええぇ!!』って、叫んでで、目が血走ってた。


怖くて、背中向けて走って逃げようとしたんだけど、遅くて、気がついたら宙に浮いてた。

目の前に車が来ていた。」



ヨ「えっ!?

お前、ブジだったの!?」



私「落ち着いてよ。

ブジじゃなきゃ、ここにいないよ。」



ヨ「や、あ、そうか、そうだよな…。

そうか、それで、どうして大丈夫だったんだ?」



私「私、『あ、もう、助からない』って思ったんだ。


完全に体が宙に浮いてたし、誰もミオちゃんの動きについてきていなかった。

だから、誰の手助けもないって、覚悟した。


そしたら、車道に飛び出した、一瞬あと、ぐいんって引き戻された。」



ヨ「えっ!?誰か助けてくれたのかっ!

大人かっ!」



私「うぅん、誰もだよ。

今度もランドセルだよ。


ミオちゃんが押し出した時、そばに道路標識があったんだ。


悲鳴に気づいて、いったん振り返って、またすぐに向きを変えて走り出そうとした、その動きがよかったんだと思う。

そのあと、背中を強く押されたとき、ランドセルにひっかけていた給食袋が反動で伸びて、標識に絡みついて、一瞬引き戻された。

すぐにブチンって、給食袋のヒモが切れちゃったけど。

それで、はっとなって、とっさに白い棒にしがみついたら、抱っこちゃん人形みたく、くるんと半回転して、歩道に戻ってた。


ちょっと、縁石に足をぶつけてすりむいたけどね。」



ヨ「はぁぁ~、よかった…。

それで、ブジだったんだなぁ。」



私「うん、ほぼ無傷。

ランドセルのおかげで助かった。」



ヨ「こえぇ…。こえぇよ。

それ、マジだよ。


それ、傷害だよ、傷害未遂だよ、いや、殺人未遂。

それ、殺人未遂だよっ!

いじめとか、いやがらせの話じゃね~よっ!

こえぇよ!」



私「え、無事だったよ?」



ヨ「ブジだったから、良かったものの。

お前、それ、殺されかけてんぞっ!」



私「や、多分、それ、ムリ。

さすがに車の前、ジャストに突き飛ばすのは距離もあって無理だとおもうから。

ちょっと前に転ばせて、一部を轢かせようという魂胆だと思う。」



ヨ「いや、それでも、死ぬって。

打ちどころとか、車がのっかる場所によっては、死ぬって。

少なくても、傷害事件だって。

それ、シャレにならねーわ。」



私「いや、ミオちゃんのはかけ声であって、本気で死ねとは思ってないよ。

その後、私を一ヶ月ぐらい学校に来れなくさせなきゃならなかったのにって、悔しがってたから。


殺すとかじゃなくて、入院させたかったんだよ。」



ヨ「なんで、お前、それを知ってんだ?

なんで、ミオがそういうことをお前に話してんだ?

あいつ、相当お前を憎んでんだろ?恨んでいるやつにそんな話するか?

ってか、お前、その後も付け狙われていたハズだろ?

こないだも歩道橋で、ケリ入れられてた。

オレ、全然気づいてなかったけど、道路でなんかされたら、ひとたまりもねぇだろ?」



私「あぁ~。

ミオちゃんが、東町の道路を歩くことはないよ。

彼女が出没するのは、歩道橋まで。

そこが限界なんだ。」



ヨ「なんだ、話が見えない。」



私「ミオちゃん、私を突き飛ばすとき、なりふりかまわない感じだったから。

私のところに来るまでに、何人かの女の子を弾いて、ケガをさせてたんだよ。」



ヨ「あぁ、キャッって悲鳴がって奴か。」



私「それで、強く膝小僧を擦りむいた女の子たちがミオちゃんを取り囲んで、謝れって言ってたんだ。」



ヨ「そりゃ、怒るわな。ソイツらも。で?」



私「ミオちゃん、私が標識に抱きついているのを見て、メチャクチャ怒って。


『ふざけるな、からかってんのか?冗談じゃないっ』てカンカンだった。」



ヨ「そりゃ、テメェの都合だろ。」( ̄へ  ̄ 凸



私「私、キョトンとしてて。


『お前がケガしないと、アタシの内申がヤバイんだよっ!

せめて一ヶ月学校に来れなくなるぐらいにはさせないと、お母さんにひどい目にあわされるんだっ』って怒ってたから、周りの女の子を無視しちゃったんだ。」



ヨ「…それ、もしかして、小宮が指示してたって事か…?

それで、成績落ちて親に怒られるのを怖がってる…。

こえぇ…。お前、相当恨まれてるな…。」



私「あぁ?そうか、そうかも…。

そん時は、ビックリしてて、気づいていなかった。

アレ?助かっちゃった、私?って感じで。」



ヨ「それで?」



私「あ、それで、ミオちゃんは、周りの女の子にも怒鳴り散らしていた。


『お前らがウスノロだから、アタシに弾かれるんだよっ!

このデブ、ブス!邪魔しやがって!

コイツを痛めつけれなかっただろうがっ、糞がっ!』


って、そんな事を言ってて、周りの女子殺気立ってた。」



ヨ「そりゃ、なるわな。

で?」



私「ミオちゃんが、怒鳴っていたのは上級生の子達だったんだ。」



ヨ「あぁ。」



私「そんで、その子達、コイツ何様だ?ってメチャクチャ怒ってて。


『コイツ、タダじゃおかねー!!

見たことない顔だな、こっちの奴じゃねぇだろ、西町の奴だな。

東町を歩けなくさせてやるって。

ウチの姐さんに締めてもらう』


って、ミオちゃんを羽交い締めにして、引っ張っていった。」



ヨ「あぁ。けど、アイツ、大人しくついていくタマじゃねぇだろ。」



私「三人がかりだ。

どれも体格のいい上級生で、しかも相手が悪かった。

私はその子達を知ってる。」



ヨ「あぁ?タチ悪いっつったって、小学生だろ?

口が悪くても、たかが知れてんじゃん。」┐( ̄ヘ ̄)┌



私「去年まで通ってたそろばん塾で一緒だった子達なんだ。

そいつらは、私の塾代を盗んでいた。」



ヨ「は?そろばん塾で盗み?」(゜д゜;)



私「そう、一人は見張り、一人はカバンの運び屋、一人が人目のない場所でお金を抜く。

集団で共謀する、計画的犯行を行うような子達なんだ。」



ヨ「え…。

そいつら、どうしたんだ?

大人に怒られたか?」



私「3ヶ月連続して犯行を重ね、私が気づいたら証拠が無いだろうっとしらばっくれてた。

つまりおとがめなし。反省なんて、してっこない。

非常にタチの悪い人間なんだ。

小学生にして、そんな犯行に及ぶってことは、背後に悪知恵を入れている人間がきっといる。

おそらく、彼女たちのいう『姐さん』は、十中八九、『ヤンキー』だ。」



ヨ「ヤンキー…。」



私「いつも、乱暴な態度に乱暴な言葉遣いで周りを威圧していたミオちゃんも、今回は勝手が違った。

自分より体格のいい上級生、さらには、犯罪を犯しても、なんとも思わない人間たちだ。

初めて、自分の立場が危ういと気づいた時には、もう、三人がかりで路地裏に引っ張り込まれているところだった。」



ヨ「あぁ…。」



私「ミオちゃんは謝っていたけど、もう遅い。

目に涙を浮かべて、抵抗していたが、そのまま路地裏に引きずり込まれていった。」



ヨ「あぁ…。」



私「私は静かに手を振っていた。


彼女は二度と、東町の通学路をひとりで歩くことはない。

私は去年、1500円盗まれたが、あれはヤクザに払う、みかじめ料みたいなものかもしれない。

そう考えれば、理不尽な思いをした私の心も少しはなぐさめられて、いやされる。


おかげで、私は通学路での身の安全を保証されることになったよ。」







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comment iconコメント ( 1 )

Re: タイトルなし

kさん、コメントありがとうございます。
…まだまだ話が続くのですが、書こうと思うと、どんどん詳細を思い出してきます。
すると、書き出してみないと思い出せない出来事もたくさん出てきて、こんなに細かくなってしまいました。
教師からのいやがらせは過酷を極めてきます…。
今頃、思い出してずーんと落ち込んでしまいましたが、そうですね、自分を磨く試練だったと思えたのなら、救われる気がします。
お兄ちゃんがものすごく心優しい男子だったというのも、思い出せてきました。
お母さんの事情も…二人共、私を守るためのしかたのない事情があったようです。
どこまで記事にできるかは、分かりません。
おつきあいくださいまして、ありがとうございました。

名前: しんじゅ☆♪ [Edit] 2017-05-18 23:55

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