私「あの…お返事はいただけないでしょうか?」


用「あ、そうやな、もう遅くなったし、嬢ちゃんを家まで送り届けるわ!
そやから、一緒に帰ろな?」


私「ありがとうございます。
それと、恐縮ですが、喉が渇いております。
お水を頂戴してきて、よろしいでしょうか?」


用「あっ!そうか、この暑い中、ずっと閉じ込められてたんやもんなっ!
そりゃ、喉も渇くわ!早よ水飲みぃ!」


私「ありがとうございます。
それと、催促するようで、恐縮ですが、この言葉遣いを変えせていただいてもよろしいでしょうか?」


用「えぇよ!好きにしぃや!(笑)」


私「ありがと、オッチャン!ちょっと待っててなっ!!」


私はまた先ほど顔を洗った水飲み場へと走って行って、貪るように水を飲んだのでした。

たくさんお水を飲んで、満足した私は、首からぶら下げた、用務員のおじさんからもらったタオルで口元をぬぐいながら用務員さんの元へと戻っていったのでした。


私「ふぃ~、満足、満腹ぅ。
なぁ、オッチャン、アタシの事、持ち上げて腕痛くなぁい?

アタシ、お父さんから重たいからって言われて、持ち上げてもらったこととか全然ないよ?」


用「大丈夫や!嬢ちゃんはミニマムやからな!(笑)」


私「みにまむ?」


用「ちっちゃいってことや。
ちっちゃいってことは便利やな!
軽くて助かるわ(笑)」


私「ふぅ~ん、ちっちゃいはミニマムかぁ。覚えとこ。」


用務員のおじさんはにこにこしながら、私の頭を撫でてくれたのでした。


用「なぁ、嬢ちゃん、いったいいつからあそこに閉じ込められてたん?」


私「ん~、3時すぎかな…。」


用「ほな三時間以上、閉じ込められとったんかいなっ!」( ̄□ ̄;)


私「そんな時間?
あそこは真っ暗で時間まではよく分かんなかったけど、ずっと助けて~って叫び続けて喉が渇いたんや。
狭くて身動き取れへんし、泥の中で泣いとるだけやってん。
途中でちょっと意識失っとったわ。」


用「はぁ~、嬢ちゃん、ようも性悪な子に目ェつけられとんなぁ。

ワシ長いこと、この学校の用務員やっとるけど、ここまでされとる子は珍しいわ…。」(゚Ω゚;)


私「うん…。」


用「どないして、そこまでイケズするんやろなぁ。

ふぅ、ワシが見つけんかったらどうなっとる事か…。

今は9月と言えども、夜は冷える。

一晩過ごしたら、風邪はひくやろうし、寝返りもうてんところで一晩中閉じ込められとったら気ィ狂うわ。

しかも、明日から連休や。

その前日に閉じ込めるんは、いくらなんでも悪質やわ。

学校も休みやと、誰にも気づかれんままになる…。

いや、この三日の間に雨でも降ったら、あそこは窪地や。

そのまま溺死もありうる…。

子供んたらぁが何日も黙っとったら、そのまま行方不明で衰弱死か餓死になるかもしれん…。

アカンアカン、あんまりやわ!

オッチャン、嬢ちゃんの担任の先生に悪ガキどもをとっちめるように伝えとくわ!」


私「えぇっ!?
オッチャンから言ってくれるの?」


用「おぅ、任せとき!
きつぅ~く、伝えとく。
一つ間違えると、犯罪や!
イタズラの度を越しとる、これは見過ごせんわ。」


私「わぁ~!!オッチャン、ありがとう!」


用「これで、今度学校に来たら、嬢ちゃんをいじめる奴ら、先生に叱られるで?
安心してぇな?」


私「うん!オッチャンありがとう!」


用「はは!嬢ちゃん、やっと笑ったな!
女の子は笑顔が一番や(笑)」


私「えへへ。」


用「ここの土地のモンはなぁ、昔から貧しい奴が多いわ…。

生活も苦しい、どうしても、心がすさむもんやし、それを親に持つ子も多い。

親も足るを知るといいんやけどな…。

前から思っとったけど、嬢ちゃんはなぁ、なんとはなしに、上品な子なんやなぁ。

それで、目ぇつけられるんかもしれん。

いじめられるんも、嬢ちゃんが悪いんやないで?

そこは勘違いせんといてな?(笑)」


私「オッチャンは、私が悪いと思わんの!?」∑ヾ( ̄0 ̄;ノ


用「思うかいな!嬢ちゃんは正直な子ぉや。
そういうまっすぐなところが、ひねくれたガキには憎たらしぅ見えるんやろなぁ。

自分の持ってない物を持つモンへのひがみやな…。

子供やというのに、かわいそうな話や…。

あんま、いじめする奴のこと、責めんといてな?」


私「うん。」


用「嬢ちゃんがなんとなしに、品があるのはホンマにおひぃさんやったからなんやなぁ…。」


私「お姫様じゃないよ?八百屋の娘だよ?」


用「そやそや、さっきの口上は見事やったで?
どうやって覚えたん?」(´∀`)


私「お母さんが、教えてくれたんや。
二年前、八歳になった時に、覚えておきなさいって。
もう人の子になったから、人から受けた恩義はしっかり報いなさいって。」


用「は?人の子?」


私「お母さんは、私を七つまでは神の子として育てたんだって。

もう八つになったら、人の子だから、世間の荒波に揉まれることになる。

自分の身を守ることができなかった時に、お礼の言葉を述べれるようにしておきなさいって言われて、一生懸命覚えたの。」o(^-^)o


用「天神信仰か。」


私「てんじんしんこう?」


用「♪この子の七つのお祝いに~♪って歌あるやろ?
それのことや。」


私「あぁ、知ってる。
♪とぉ~りゃんせ、とぉりゃんせ♪っていう奴ね?」


用「嬢ちゃん家は素封家か?」


私「そほうか?」


用「その土地の社会的地位の高いもんの事を言う。
土地も財産もぎょ~さん持っとるモンのことやな。」


私「うぅん?ウチは新家だから。
きっと本家がそうだと思う。」


用「そうか、嬢ちゃんのお父ちゃんの生まれたんが本家やったんやな。
せやから今時天神信仰が生きてるんやな。」


私「うぅん、本家では神様の子とかそういう事は言わないよ?
お母さんの在所がそういうこと言ってる。」


用「ほんなら、嬢ちゃんのお母ちゃんの筋が本家なんか?」


私「うん、お母さんの在所も本家だけど、もともとお父さんとお母さんは遠い親戚なんや。
二人共、血が繋がってるんや。
だから、士族いうんはお父さんの家のことやけど、お母さんの家のことでもあるんや。」


用「ほぅ、縁が濃いんやな。
それで今時天神信仰もやっとる…。
珍しいわ…古い家なんやな…。」


私「うん、本家は旧家らしいね。
いとこの方が、育ちがよくてお姫様っぽいよ。」


用「なに言うとるん?
嬢ちゃんも育ちがいいから、あんな口上を述べられるんやで?
よぉしつけされとる…。
感心するわ…。」


私「お母さんの事を褒めてくれとるの?」


用「そうや、嬢ちゃんのお母ちゃんは、ここらへんでは珍しいくらい品のあるお人や。
そんな人の子は、やっぱり一味違うんやなぁ。」


私「えへへ。
あ、でもオッチャン、さっきのお礼は、隠し玉やで?
本当に命が危なかった時にだけ、口に出してもいい言葉なんや。
そやから、普段は自分の身分を口に出してはいかん約束になっとるんや。」


用「内緒にするのはええけど、なんでや?」


私「なんでも、人様のいらぬ恨みを買うような真似をする必要がないとか。
特に子供のうちは黙っておきなさいって言われとる。

自分の身を自分で守れるような年齢になったなら、まだ話してもいい。

でないと余計な摩擦を生むから、黙っているのが賢明なんだって。

そやから、友達の誰にも話してへんわ。

人に聞かれたら八百屋の社長令嬢やって、言っときなさいって言われてるんや。」


用「ふぅむ、用心深い奥さんやなぁ。
さすが、賢い。」


私「どんなに世の中が変わっても、自分の出自に誇りを持ちなさいって言われとるんや。

世の中をよく眺めて、賢く泳いで行きなさい。

どんなに貧しく思われても、士族としての誇りと矜持を持って、しゃんとしていなさいって。

それで人様の事を、自分より下だと思ってはいけないとも言われとる。

それはとんでもない勘違いで、それこそ士族であるという事を汚す考え方やと。」


用「ほぉ!」


私「誰も彼もが懸命に生きている、全ての人が平等で公平なんやと。

優れたものは、弱いものを助けてやりなさいと。

誰でも欠点や弱点があるものだ、それを批判してはいけない、寛容になりなさいと。

得意不得意をお互いが支え合い、助け合う世の中になるように、まずは勉強を頑張りなさいって言われてるんや。

それが身分を剥奪されたご先祖様の無念を晴らす一番のいい方法なんやと言っとったわ。」


用「自由・平等・博愛やな…。
あの奥さんらしいわ…。
そんな人を親に持つ、嬢ちゃんは幸せものやなぁ。」


私「えへへ。お母さんが褒められた。
お母さんきっと喜ぶ。」


用「ほぅか、自分のことよりお母ちゃんの事で喜んでんのやな…。
母子そろって、よぉ似とるわ…。

さてと、嬢ちゃん、ちょっと待ってぇな?
さっきのとこ戻って、工具箱取ってくるわ。」


私「あ!?私、教室にランドセル置きっぱなし!」


用「アハハ、嬢ちゃん、よっぽどトイレに行きたかったんやな?
ホラ、見てみぃ!正面玄関に赤いランドセルと帽子があるやろ?
嬢ちゃんのクラスから運んどいたわ!」


私「わぁ~!!オッチャンすごい!
なんで、私のクラス知っとんの?」


用「アハハ!実はオッチャン、エスパーなんや!(笑)」







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