用「ふふ、信じるんか?嘘かもしれへんやろ?
でも、これは絶対内緒やで!?」
私「わかったぁ!クスクス、おもしろ~い!」
そうして、二人してグラウンドを抜けて、体育館を通り過ぎ、木造校舎に併設してある日本家屋の裏手へと歩いていきます。
その先は民家に隣接した柵があり、そこが学校に敷地の一番奥まったところだったのでした。
私「なぁなぁ、なんでオッチャン、工具箱持ってあそこにいたん?」
用「あぁ、嬢ちゃんのなぁ、クラスを見回りして、鍵がかかっとらんかった。
そんで、机の横に黄色い帽子とか残っとるやないけ。
奥にランドセルも一個残っとる。
これは、嬢ちゃん、またどっかに閉じ込められとるんやないかと思って、工具箱も持って歩いとったんや。」
私「うわぁ~!オッチャン、当たっとる!
名推理やっ!」
用「そんでな?嬢ちゃんを見つけたときに、工具箱ほったらかしたんや。
そんで、中身バラバラに散らばったままになっとるで、それを回収しとこうと思ってな?
嬢ちゃんのクラスの鍵はかけといたし、あとは一緒に帰るだけやで?」
私「うん、分かった、手伝う!」
用「はは、おおきに!」
そんな感じで先ほど自分が閉じ込められていたところへと戻ってきました。
二人して地面に散らばった工具を拾い集めて、工具箱へと戻していきます。
用「嬢ちゃん、もうちょっと時間くれへんか?
このブロックと側溝のフタもちょっと片付けとくわ…。
台車がないと全部は運べんけど、散らかったままにしておくんも心配やで。」
私「分かった、手伝うよ?」
用「ほうか?重いからケガすんといかんから嬢ちゃんは触らんでいいから、そこで見とき?」
私「うん、でも、少しくらい…。」
そう言って、軒下近くへと歩み寄ると、腰が抜けてペタンと座り込んでしまいました…。
用「嬢ちゃん、どうしたん!」
私「あれ…アレレ…。
頭フラフラして、体がよう動かん…。」
用「…そうか!そりゃ、あれだけ辛い思いをしたんなら、ショックを受けるわな…。
ごめんなぁ、嬢ちゃん、帰ろか?」
私「うぅん、ごめん。
大丈夫、アッチで座って、待ってる…。」
用「そうかぁ?ごめんなぁ。
連休明けの朝早くに子供が来て、足を取られたらいかんから、ちょっとまとめときたいんや。」
私「うぅん、用務員さんのお仕事だから、アタシ、ここで待ってるよ…。」
用「そうかぁ、少しの時間、待っといてぇな…?」
私「うん…。」
少しの間、用務員さんが、側溝のフタをどかして、建物に寝かせるように立てかけて。
工具箱の中にあった軍手を両手にはめて、そして、20個ほどはあろうかというコンクリートのブロックを片付け始めたのでした。
だいぶ陽が陰ってきて、茜色の空は、もう薄青い薄闇に近づいていました。
用「嬢ちゃん、さみしないか?
何か話しでもしようか?」
私「……うん。
用務員のおじさん、ちょっとアタシから話をしてもいい?
聞きたいことがあるんや…。」
用「おぉ、ええよ?なんでも聞いて?」
私「…おじさん。
私には一つ分からないことがあるんや…。」
用「なに?」
私「おじさんに、疑問がある。
この間、体育倉庫に閉じ込められた時、なんでおじさんは私がそこにいると気づいたの?」
用「は?見回りしとって、気づいただけやで?」
私「不可解な点がある。
あの時の私は暑さと叫びすぎて喉が痛くて、声も出していなかった。」
用「そやったかいな~?」
私「脱水症状を起こしかけて、意識がモウロウとしていた中、私は体育倉庫の壁にもたれかかって座っていただけたった。
その時、おじさんが鍵を開けてくれた。」
用「おぉおぉ!サウナみたいに暑かったなぁ!」
私「私は涼しい空気に触れて、息を吹き返した気分だった。
そして、身動きとれない私をおじさんは抱き抱えて連れ出してくれた。」
用「そうやったかいな?」
私「だから、不思議なんだ。
ドアを叩いているわけでもなく、悲鳴をあげているわけでもない。
物音がしていない、そして、窓ガラスがはめ込まれているわけでもない中が見えない建物の中にいる。
それなのに、なぜ、おじさんが私を見つけてくれたのかが、気になるのよ。」
用「あはは!言うたやろ?
オッチャンはエスパーやって!」
私「いぃえ、質問に答えてちょうだい。
こっちは身分を明かしてまでお礼を言ったのですから。
恩人を疑うような真似をして、申し訳ないのだけれど、どうしても疑問点が残る。
子供だと思って侮らないでもらいたい。
こっちは、ささいなことが命取りになるような危機的状況なんだ。
本音で語ってもらいたい。」
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