私がレジ横で腕を組んで考え込んでいると、母が遠慮がちに声をかけてきました。


母「ねぇ、しんじゅ。
今日、万引きがあった事、お父さんに黙っていて欲しいの…。」


私「え?どうして?」


母「お父さん、最近機嫌が悪いし、そんな時に悪い報告するのは、お母さん気が引けるのよ…。」


私「え…だって、お父さんに報告しといたほうが、よくない?

お店を見回りしてくれたり、ドロボウが入りにくくしてくれるんじゃないかな?」


母「お願いよ。
犯人は子供かもしれないし、あまり大事にしたくないのよ。」


私「子供と言っても、けっこうな被害だと思うわ?

画鋲の卸値が、確か1個78円だったと思うから、原価だけ見ても3,120円も損失を出しているわ?

それに仕入れの為のガソリン代やお父さんが文房具の卸屋さんに出向く時間も考えると、1~2時間は余計にかかっている。

繰り返しこんな事されているとなると、子供のイタズラレベルの損失じゃないわ?」


母「お願いよ、しんじゅ。

お母さん、最近具合が悪いのに、怒りっぽいお父さんにうまく説明する根気がでないの。

とにかく、もう少しの間、黙っていてくれない?」


私「!あ、具合悪いのに、万引きの話しなんて、しちゃってごめん。

それじゃ、私からお父さんにお話しておこうか?」


母「その後始末が大変なの。

お父さん、怒ると手に負えないから…。」


私「ん、ごめん、お母さん。

それじゃ、お母さんがいいと言うまで黙っているよ。

ごめんね、余計な心配かけちゃって…。」


母「ありがとう、しんじゅ。」


私「ねぇ、お母さん、顔色が白いわ?

もしかして、貧血じゃない?

ちょっとそこに座っていて?

私、商品が切れているの、倉庫からとってくるから、店番をしててね?」


母「…ありがとう。

そうね、ちょっと貧血ぎみかもしれないわ…。

それじゃ、お言葉に甘えて座らせてもらうわ。」


私「じゃ、倉庫にコーヒー取りに行ってくる。」


母「ちょっと待って!

缶コーヒーなんて、重たいもの、あなたには無理だわ!

お母さんがやるから!」


私「大丈夫よ、缶じゃなくて、インスタントコーヒーの方だから!

中はパサパサだもの、そこまで重くないし。」


母「でも、やっぱり重たいわ?

瓶詰めだもの、箱を引っ張り出すだけでも大変な作業だわ?」



私「大丈夫。

こんなこともあろうかと、お父さんに箱を倉庫の出入り口に置いておいてもらっておいたの。

だから、台車に乗せて、棚の前まで運んでやるから。」


母「なんで先にお父さんに頼んでおけたの?」


私「え?だって、最近、異常にインスタントコーヒーの消費が早いんですもの。

回転が速いなら、私が店番の時に、商品が切れるかもしれないじゃない?

でも、大きな瓶詰めがたくさん入ったダンボールを奥から引っ張り出すのは私には無理だし。

先にお父さんに頼んでおいたの。」


母「…インスタントコーヒーの出がいいって、気づいていたのね…。」


私「そりゃ分かるよ!毎日店番してるんだから。(笑)」


母「それでも、重いわ?」


私「大丈夫!倉庫とお店の段差を取る斜めの板、お父さんに作ってもらったから。

こないだみたいに、台車から荷物おっことさないように今度は後ろ向きでお店に入るから、ガラス割ったりしないよ!

そこで、待ってて!」


私はそう言いおいて、走り出すと、途中で急ブレーキをして、牛乳が入った冷蔵庫のとびらを開けて、ブリックパックのりんごジュースを一つ取り出して戻りました。



私「お母さん、さっき頭痛薬飲む前になにか口にしたらって言ったけど、なにも胃にいれていないでしょ?

元気ない時はりんごジュース飲んで、ビタミンとって、ちょっと一息入れて待っててね!」


母「!ありがとう、しんじゅ…。」


私「うん、じゃ、ちょっと待っててね?」


私はお店の奥に隣接する、倉庫へと走っていったのでした。









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