私は大きなインスタントコーヒーの入った箱を、乱暴に扱わないように、そーっと台車に乗せて、出入り口からは、段差をカバーする板を乗せて、ガラガラと後ろ向きにお店の床に降り立ち。


そこから、ほど近いインスタントコーヒーが陳列してあった棚の前まで行って、ダンボール箱を開封して、陳列をしたのでした。


また、台車を押して、倉庫へと戻り今度は乳製品の瓶詰めを乗せ、同じ要領でお店へと戻り。

コーヒーの隣にきちんと並べて、ダンボール箱を倉庫へと戻し、台車を折りたたみ、ダンボール箱も壊して、平にして、他のものと一緒に置いておいたのでした。


再び、レジ横に戻って、椅子に座ると、母が微笑んでいました。



私「ねぇ、お母さん、そういえば、コーヒーなんだけど。」



母「…なにかしら?」



私「インスタントコーヒーがいきなり棚から全部消えるっていうの、最近多いのよ。

なんか、不思議な気がして…。

詰替用はさっぱり売れていないのによ?

インスタントのコーヒーって一回買ったら、しばらく無くならないじゃない?

追加で買うにしても、一個とか二個なら分かるけど、いきなり24個とか売れてるの。

どういう事かしら?」



母「コーヒー好きな人が最近お客に来たのよ…。」



私「へえ!ご新規さんなんだ。

豪気だねぇ。

でも、あれじゃ、ダンボールひと箱ぐらいになるんだから、配達を頼んでもらってもいいんじゃないかな?」



母「ダメよ!ご新規さんは、配達をしないことになっているから。」



私「あ、そうだったね。

ツケの人と、ご新規さんは配達しないんだった。

明朗会計の常連さんだけのサービスだったね。

でも、こんなにたくさん買ってくれるなら、常連さん扱いしてもいいんじゃない?」



母「それが、ちょっとお家が遠いらしくてね、ガソリン代が勿体ないからお父さんに頼めないわ?」



私「ちょっとくらい遠くても、お父さん喜んで配達に行くと思うけど?

お店サボれるし、遠ければ遠いほど喜ぶ気がする。」



母「それが…。

そのお客さんはお仕事で、この近所の会社に用事があってたまたま寄っただけなんですって。

でも、時々ここに来るから、コーヒーを気に入って買ってくださっているの。」



私「この近所の会社に用があるなら、そこに届けてもいいんじゃない?」



母「そうもいかないわよ、相手の会社に迷惑がかかるでしょ?」



私「そうか…。

でも、一度にたくさん買えるなんて、お金持ちだね!

ありがたい。」



母「そうね、会社の社長さんみたいよ?」



私「え…。

会社の社長さんが、インスタントコーヒーを買うの?」



母「え…なにかおかしいかしら?」



私「ゴールドブレンドは美味しいと思うけれど。

お金持ちの会社の社長さんなら、その都度喫茶店で飲んでもいいんじゃないかなって…。

商売で遠くから来ているなら、雰囲気のいい喫茶店、ここらへんならゴロゴロあるし、ちょっと不思議な感じがして…。」



母「あぁ!そうそう、お仕事の時は喫茶店でお話なさるそうよ?

それで、ちょっと用があって、ついでにこのお店に来てくださったの。

それで、ゴールドブレンドは、自分が飲むのではなくて、ご自分の会社の社員さんたちに配るんですって。

ちょっとした慰労、気遣いのプレゼント用に、たくさん買っていってくださるの!」



私「ゴールドブレンドを社員にプレゼント?

変わった社長さんだなぁ、私なら現金千円の方が張り切っちゃう気がするけどな。

かさばらないし、金一封の方が大人は嬉しいんじゃないかな?」



母「それじゃ、お金に差が出て不公平感を持たせてしまうかもしれないじゃない?

だから、会社ですぐ飲めるようにコーヒーとクリープを買っていってくださっているの。」



私「?それなら、それこそ、たくさん要らなくない?

何人いるか知らないけど、4~5個もあればいい気がするけどなぁ。

社長自ら出先の八百屋で買うものなのかしら?」



母「そうね、会社で飲む用と、各自が自宅で飲む用にとたくさん買っていってくださるの。

お金ではなくて、気持ちを大事にしたい方なんじゃないかしら?」



私「ふぅ~む、それじゃ、きっとアットホームな会社の社長さんなんだね!

自分もインスタントコーヒーを飲んで、社員にも自宅使いのをプレゼントするなんて、親しみやすい感じだね。

きっと社員思いの社長さんなんだ!

私も大人になったら、そういう会社で働きたいな!」









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