私はにこにこして、お母さんの近くの丸いパイプ椅子に腰掛けました。

母は微笑んでいます。


私「お母さん、調子、どう?」


母「ちょっと落ち着いたわ、ありがとう。」


私「えへへ、どういたしまして。

ふぅ~、それにしても、お母さんは優しいね!

私、文房具が万引きされて、悔しくて仕方ないのにっ!」


母「…しんじゅは本当に数字に強いわ。

とても計算早いわよね?

それによく、仕入れ値なんて覚えていたわね?」


私「あぁ、お父さんが文房具屋さんに仕入れに行くの、一度ついていった事あったから。

その時に、伝票を見たから覚えていたの。」



母「お前は、本当に物覚えがいいわね?

感心するわ?」



私「う~ん…。

しかし、原価だけで3,200円弱となると、お野菜を32,000円売らないと補填できない計算になる。

くそっ!野菜を何万円も売るのは大変なのにっ!

万引きする奴は気軽に盗むけど、こっちは死活問題なんだっ!

くやちぃ~!!」



母「くすくす、大げさね?」



私「そうでもないわ!

だって市場で仕入れて、車で運んでガソリン代やら、車の維持費。

車検代や車のローン。

それにお店の電気代や水道代や、土地とお店の税金、チラシなんかの広告代やお父さん、お母さんの人件費を引くと、売上の1割しか純益にならないのよっ!


ほうれん草を何万円も売ろうとしても、そんなに売れないわよっ!

食品は生活に直結しているから、お客さんに値段をあげて、そんなに利益を乗せて売るわけにはいかない。


個人の商店なんだから、地域の皆さんに嫌われては商売あがったりなのにっ!

こっちは生活がかかっているんだから、ほんとやめてほしいわっ!

イシャリョーを要求したいくらいよっ!」



母「くすくす、お前はほんとにしっかり者だわ?」



私「むぅ~、子供扱いしてぇ~。

…ん~、画びょうの使い道がイマイチ分からない。

なんか、気持ち悪いな…。

何に使うんだろう…。」



母は顔色が悪くなりました。



私「あっ!ごめんね、お母さん、調子がイマイチなのに、変な心配かけちゃって!」



母「…そうね…。

お店も赤字出しちゃうし、困ったわね…。」



私「お母さん、笑って!」



母「え?」



私「お母さん、悪い事する人は、そうは長く続かないわ!?

きっと、おまわりさんに捕まって、いつか痛い思いをすると思う。


こっちは、なにも悪くないのに、お店に損を出させるだけでもひどいのに、こっちは気持ちまでへこむのよ?

もしかしたら、万引きする人の目的は、それなのかもしれないわ?」



母「!」



私「きっと、お金目当てじゃないのよ。

こっちの気持ちを暗くさせるのが、目的の気持ち悪い人なんだわ!

そんな奴の思うツボにはまってたまるものですかっ!


さ、笑う門には、福来たる!って言うでしょ?


お店の店番している人が、沈んだ表情をしていたら、お客さんも居心地悪く感じちゃうわ?

そしたら、余計に売上が落ちちゃう!

済んでしまったことはしょうがないから、こっから立て直すことを考えましょ!」



母「…しんじゅの言うとおりね…。」



私「そうよ!強気で笑っていなきゃ!

お店に損を受けたのなら、それより多く稼がなきゃ!」



母「でも、どうやって…?

野菜をたくさん売るのは難しいとあなたも言ってたじゃない?」



私「ん…まず、お店の雰囲気を変えるの。

ここに来たら、気持が軽くなるような、友達の家に遊びにきたような気分にさせる、そんなお店づくりをするのがいいと思うの。」



母「どうやって?」



私「ここのお客さんは、専業主婦の人がほとんどだわ?

専業主婦なんて、年中無休の待ったなし!


毎日が同じことの繰り返しみたいに感じて、気持ちがうんでしまいがちの女の人が多いと思うの。

そんな人の気持ちを明るくするようなお店にすれば?」



母「それを具体的にどうすればいいのかが悩みなのよねぇ。」



私「簡単よ!

毎日お母さんをやっている女の人の悩みを解決すればいいのよ?

お母さん前、言ってたでしょ?


『今日なにが食べたいって聞かれて、なんでもいいって答えられるのが一番困る』って。

だから、世のお母さんたちは、みんな、献立を考えるのが面倒だと思うのよ。」



母「それはそうね…。

で?」



私「それで、お母さん、前にこうも言ってたでしょ?


『頑張ってご飯作ったのに、こないだ給食で出たばっかりとか言われるとがっかりしちゃう』って。」



母「えぇえぇ、張り切って作ったのに限って、そう言われちゃうのよ。

がっかりだわ?」



私「だからね?

ここにお買いものに来る女の人たち、いつも献立で悩むの面倒になっていると思うの。

だから、このお店に来たら、献立考えなくてもいいわって気持ちにさせるサービスにすればいいのよ。」



母「どうやって?」



私「たとえば、イカが安かったとする。


そういう日は、『八宝菜フェア』とか銘打って、イカの特売に合わせて、人参とか青梗菜とかたけのことかきくらげとかをセット販売するのよ。

簡単な味付けの仕方をかわいいイラストにするのも手だと思うわ?


片栗粉や調味料も合わせて押し出すのもいいし、なんだったら、永谷園の簡単味付けのやつもカゴに一緒に乗っけて売ってもいいと思う。


そうすれば、魚介だけでなく、野菜も抱き合わせで買ってもらえる。

これなら、売上アップするんじゃないかな?」



母「いいアイデアだわ!

と、言いたいところだけど、そうそう毎日、お母さんもいいメニューを思いつかないと思うの…。」



私「簡単だわ!

さっきも言ったじゃない、給食と同じメニューだったから失敗したと思うでしょ?

なら、逆に給食のメニューを先取りすればいいのよ!」



母「え?」



私「私、学校給食の献立表を見てて、ある法則に気づいたの。

ハンバーグとか唐揚げとかカレーとか、子供が好きそうなメニューは一定の間隔を開けて何度も繰り返し出てくる。

でも、エビフライとか高い食材のは頻度が低いのよね。

きっと、予算が限られているからだと思うわ。」



母「そうね…、きっと予算が決められているからその範囲内でメニューを決めていると思うわ。」



私「でしょ?

それに、子供が好きそうなものばかりじゃなくて、季節の旬の食材を使って料理が考えてあるの。

子供の体のことを考えて、栄養士さんとか、調理師さんが工夫を凝らしてメニューを考えていると思うの。

まぁ、毎年、例年の繰り返しかもしれないけれど、なるべく旬の食材を使っていると思うわ?」



母「それは、そうね…。

でも、結局子供にしてみたら、学校と家とで同じようなメニューの繰り返しにならないかしら?」



私「大丈夫よ、三日前に食べた献立を覚えている子供なんで、そういないと思うわ?

心配なら、学校の献立より1週間から10日前のメニューを真似すればいいのよ。


一から全部自分で考えなきゃって思うから無理だと感じるの。

せっかく、身近にいいものがあるんだから、元からあるものを利用しない手はないでしょ?


それに、その時々の市場でのお値打ち品を混ぜ込んで、アレンジするの。

それなら、小学生がいる家庭の人にも気づかれにくいんじゃないかしら?」



母「…お母さん、今まで子供たちを育ててきたけど、そんな事考えもしなかったわ?

一番上の子は中学二年生、14年間子育てしてて、思いつきもしなかった…。」



私「クスクス、私、食い意地が張っているから。(笑)

献立表を見ているだけでも、学ぶことが多いし、面白いのよ?

すぐに捨てちゃうなんて、もったいないわ?」



母「…しんじゅは勉強ができる子とは、また一味違った頭の良さがあるわね…。」



私「クスクス、基本が横着ものだものね!

私、お料理は全然ダメだけど、絵を描くのと文字を書くのは得意だわ!


このお店に来るお客様がパッと気持が軽くなるような手書きの広告を作るの、手伝うから。

嫌な事はさっさと忘れて!(笑)


お母さん、一緒にがんばりましょ?

献立表、持ってくるね?」











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これも一区切りです

商談(少女時代78ー4)

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