先生は少しうつむいて、メガネが白く光って、その表情はよく見えませんでした。


そのまま無言で自分の椅子に着席して、メガネのフレームに触って、きちんと収まりをよくしていたようだった。



担「…ちなみに念のため、聞いておくが。

お前はどの程度給食の内容を覚えているんだ?」



私「10月からなら、ほぼすべて覚えています。」



担「三ヶ月前の物をだと!」



私「えぇ。

偶然、家庭の事情で特に詳しく注意ぶかくなっていましたから、よく覚えていると思います。」



担「それでも、検証のしようがないではないか?」



私「私たち各自の家庭料理を検証する方が難しいと思います。

自分たちの家族からの証言があっているかどうか、確かめようがないからです。


その点、給食なら、この学校に来ている人全員、同じメニューですから、確かめやすいです。」



担「…確かめやすさはそうだろうが、周りの人間がほぼ覚えているとは限らないぞ?」



私「大丈夫ですよ。

各教室に献立表が貼ってありますから。」



木「なるほど!」



私「私、今から取ってきます!」



担「待て!それをお前が取りに行ったら、その時点でカンニング決定だ。」



私「では、今から始めましょう。

お互い覚えている限り、メニューを言い続けていればいいんですから簡単です。」



担「それでは、私が献立表を取りに行ってこよう。」



私「それには及びません。

あそこに貼ってあります、ホラ。」



私はコピー機のすぐそばの柱に貼ってある献立表を指さしました。



担「なぜ、あそこに貼ってあるとお前が知っている!」



私「昔からあそこに貼ってありましたよ?

先生気付かなかったんですか?」



木「あ…僕も気にしたことなかった…。

そういえば貼ってあったな…。」



担「……。」



私「では、お互い一回交代でメニューを言い合いっこしましょう。」



担「待て!それだと古い日付の方が当たったほうが不利になる!

そこはどうカンシャクするつもりだ!?」



私「大丈夫ですよ?私二週間ぐらい前までなら、だいたい覚えていますから、一日二日古くても大丈夫です。」



担「…じゃぁ、私から。

ほうれん草のおひたしと豚肉のチリソース炒め。」



私「ひじきの炒め煮と、鯨肉のオーロラ煮。」



担「次は不公平だから、お前が先に答えろ。」



私「?いいですよ?

揚げ餃子と春雨と豚肉の中華炒め。」



担「次もお前が答えろ。」



私「魚のフライとカレーうどん。」



木「すげー…。俺、昨日のメニューも覚えていないや…。」



担「はっ!お前の負けだ!」



私「え?なんでですか?」



担「お前、魚のフライと言ったな!」



私「えぇ、小さいおかずがそうでした。」



担「そんなのはアウトなんだよ!

どんな種類の魚で、どこでとれたものか、どんな味付けかまで答えられてやっと正解だ!

つまりデタラメを言っているってことでお前は失格、ウソつき決定なんだよっ!」



木「無茶だ…。」



私「メルルーサです。

チリ産のスズキ科の白身魚のフライで、甘酢あんかけで味付けされていました。」



担「は?」



私「チリで切り身に加工した状態で冷凍保存されて、空輸されたものを揚げ物にして給食に出しているんですよ。月に2回程度出てきています。」



担「なんで、お前がそんな事を知っている!

嘘に決まっている!」



私「なんで先生は知らないんですか?

言っている意味が分かりません。」



担「それじゃなんだ?

お前はこの学校給食の予算がいくらで、どこの市場で仕入れて、どこから流通しているか、それをすべて把握しているとでも言うのか!?」



私「知るわけないじゃないですか。」



担「なら、なぜ担任の私も知らないような事を知ったかの風にこ答えるんだっ!

私は、給食の白身魚のことなんて、教えていないぞっ!」



私「え?私先生からプリントをもらっているんですよ?

当然、先生も知っていると思ったんです。」



担「はっ!

語るに落ちたなっ!

私がそんな資料を配った覚えなど、毛頭ないぞっ!

なにをたわごとを言っているんだっ!」



私「え?献立表の下に書いてあるじゃないですか。」



担「何っ!?

なにを寝ぼけているんだ、献立表のどこになにが書いてあると言うんだ!」



私「え?『給食だより』っていうコラムがありますよ?

先生読んでいなかったんですか?

隔月で栄養士さんと調理師さんがちょっとした小話を書いてくれています。

私、これ楽しみに毎月読んでいたんで覚えていたんですよ。

美味しい白身魚だなぁって、興味覚えていたから、記事読んで得した気分になりました。」



木「あ…。あったね、そういうの…。」



担「……。」



私「栄養士さんとか調理師さんたちの記事を読むと、大勢の大人の人たちの助けがあって、こうやって給食を食べることができているんだなぁって感じて。

自分一人では生きていけない、今はいい世の中だなぁって感謝の気持が湧くんですよ。

コラムには、子供たちの健康を気遣う言葉もあって、給食を残さずに食べようって、いつもそんな気分になります。

素敵な記事なんで、読み飛ばすなんて、もったいないですよ?

献立表一つとっても、とても大事なことが書かれています。

私、献立表、いつも大事にとっておくんですよ。(笑)」



担「……。」








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