私「?」



木「?」



担「念のため、聞いておく。

本当に私が犯人ではないという認識でいいんだな?」



私「大声を出すから、何事かと思えば。

何を冗談言っているんですか。」



担「そうか、やはり冗談だったんだな。」



私「合理的に考えて、どこをどうとっても小宮先生が犯人です。」



担「くっ!心臓が…。」



私「大丈夫ですか?だから早く切り上げたほうがいいって何度も言ったのに…。」



担「それより、お前、今の発言の意味はなんだ!」



私「先生が犯人説ですか?

それが、どうかしました?」



担「どっちなんだっ!」



私「だから、最初から小宮先生が怪しいと考えていました。

でも、先生が犯罪者のハズないじゃないですか!

常識から考えれば分かることです。

だから、必死で先生が犯人でない場合を想像してお話していたんです。」



担「…。」



私「だから、自分の考えがまとまっていないから、先生に迷惑かけるかもって前置きしました。」



担「…ふぅ。とりあえず、それはいい。

では、もう一つ問うが。」



私「先生、もう終わりにしましょうよ…。」



担「お前は私がお前の実家から大量に買い物をしている、というのは認めるな?」



私「え?あ、はい。」



担「ならば、私は上得意客ということになる。

私を敬って、最大限の礼を払ってもいいわけだ。」



私「はぁ…。」



担「私に礼を言え。」



私「あ、はい。

お買い上げありがとうございました。」



担「お辞儀が浅いんだよっ!

最敬礼になれっ!」



木「待てっ!しんじゅ、頭を下げる必要はない!」



担「何?お前、邪魔をするのか?」



木「さっきから聞いていればなんなんです!?

この子の家がたまたま商売をしていたというだけです。

そこで買い物をしているからって、なぜ、子供に学校で礼を言わせる必要があるんです。

だいたい、児童の父兄とそんな密接な関係になるのは不適切だと教育委員会の方針が出ているでしょう!」



担「何を言っているんだ!

私がルールだ!

しんじゅ、私に最敬礼だっ!」



私「先生…。」



木「小宮先生、いい加減にしてくださいよ。

まるで、大人と子供、あべこべだ。

この子が手加減してくれているんですよ?

気づいていないんですか?

あなたはさっきから耳を疑うような暴言ばかりを繰り返している。

それに対して、この子はきちんと目上の人を立てて丁寧に言葉を返しています。

いい加減認めたらどうなんです?

この子は礼儀正しい生徒なんですよ?」



担「何がだ!

こいつは低脳のクズだと言ったハズだ!

しんじゅ、私が教師どもにお歳暮を贈った事をどう思ったか尋ねたが、まるで見当違いのとんちんかんだ!

なにか、まともなことの一つでも言ってみろ!」



私「先生…。

小宮先生は、同じ職場で働く先生方にお歳暮を贈りました。

同僚の先生方は、先生と対等な立場のハズです。」



担「あぁ、こいつらに私の人徳のおこぼれをちょうだいさせてやったんだよ!

もっと、私を敬うべきだと分からせるためになっ!

恵んでやったんだから、もっと私に感謝しろ。」



木「!」



私「先生、今の発言は不適切です。

同じ立場の人間を、自分より下に見ているからそんな言葉が出てくるんです。

せっかくの感謝の気持ちを伝える儀式の意味をはき違えていると思います。」



担「それがどうしたっ!

お前などに、礼節など教えられたくもないわっ!

常識の欠片もない、低脳のクズがっ!

成績だって、たいしたことない!

お前の母親同様に、非常識で精神性の低い人間だなっ!」



木「小宮先生!

僕はこの子の兄の担任をしていたことがあります。

実に優秀な生徒でした。」



担「ただ、単に勉強ができただけだろうが!」



木「いいえ、学業が優秀なだけではありません!

精神性が非常に高く、礼儀正しく、しつけられた子です。


この子には姉もいて、二人共とても目立って優秀な生徒でした。

この子は上の子達に比べて、特に目立たず、おとなしく見えるかもしれませんが、僕には分かります。

同じ父母を持つ、この子もとても礼儀正しいいい子です」




担「お前の耳の穴は腐っているのか!

こいつのどこが地味でおとなしい子供だと言えるんだ!

憎たらしいほど、口が達者な小僧だぞっ!」



私「先生、小僧というのは、私のことでしょうか?」



担「あぁ!?お前以外誰がいるって言うんだ!

文句があるなら言ってみろ!!」



私「小僧…そんな風に呼ばれた事がなかったので新鮮です。」



担「なにが新鮮だっ!

もっとまともな事を言え!」



私「でも、先生。

小僧って男の子以外にも使えたんですね…。

知らなかったです。」



担「くっ!このへらず口がっ!」


木「小宮先生。


そんな子供達を持つ、母親が精神性が低いだなんて、言いがかりも甚だしいです!

保護者会でもお話させてもらったことがありますが、とても上品な女性でした。

訂正してください!」



担「はっ!ただ猫をかぶっていただけだろう!」



木「先生はこの学校に来て日が浅いから知らないかもしれません。

この子の叔父は、この町有数の名士です。」



担「あぁ、知っている。

前PTA会長だろ?」



木「それだけじゃありません、この子のいとこ達も非常に優秀でとてもよくしつけられている。

ただの名家だけじゃない、旧家なんです。」



担「何?初耳だぞ?

しんじゅ、お前の母親は旧家に嫁いだという意味か?

お前の家は素封家だという事か?」



私「…そのようですね。

ただ、素封家というのは、ウチではなく、本家のことだと思います。」



担「父親の在所が旧家ということだろう。

ならば、旧家に嫁いだという事になる。

あの女、そんな事一言も言っていなかったぞ…?」



木「小宮先生、児童の母親をそんな言い方しないでください!

品性を疑います!」



担「何が品性だ!

あれはただのメス犬なんだよ!」



木「小宮先生!あなたという人は、本当に!」



担「ただ、子供を産むだけが取り柄のメス豚だ。

この児童も同様だ!」



木「先生!この子の兄は本当に優秀だったんです。

僕はあれほど精神性の高い児童にあたったことがない!

彼は、ただ優秀なだけじゃない天才だ!麒麟児だ!

この学校の誇りです!」



担「ほぉ、そのきりんじというのは、今は中学生か。」



木「えぇ、現在中学一年です。」



担「くくく。いいことを聞いたぞ?

そして、この町には小学校も中学校も一つしかないんだったな?」



木「えぇ?」



担「くくく。

これは面白い事を聞いた…。」



木「そんなことより、謝罪をしてください!

以前から先生のこの児童に対する態度には腹を据えかねていたんですよ!

同じクラスの児童から教科書やノートにイタズラされて困っているから注意してほしいと言ってきたにも関わらず、あなたは関知しないと、放置した。

いじめを看過し、訴えてきた児童に対して人間性を否定するような発言を返しただけ。

完全なる筋違いに職務放棄。

あなたは教師失格なんですよ!」



担「何を偉そうに口出しをしているんだ!

お前たち、善良な市民をかたった、ただのでくのぼうの脳無しどもめがっ!

私からモノをもらって、こびへつらっているぐらいがちょうどいいんだよっ!

私からのおこぼれに感謝しろっ!」




その時、小宮先生と同じ島にいた若い女性教師が席を立って声を上げました。




女性教諭「先生!もう黙って見ていられません!

私、この子の姉を担任していたことがあります。

とても、可愛らしくて、素直で頭のいい子でした。

礼儀正しくて、下級生にも優しい。

思いやりがあって、きちんとしつけをされた子です!」



担「なんだ?お前は。

外野は引っ込んでいろ!」



女性教諭「先生!この子の母親とも面識があります!

とても知的で落ち着いた上品な女性でしたわ!

先生のおっしゃっていることはヒガミにしか聞こえません。

聞くに耐えませんわ!

私も、お歳暮をお返しします!」





すると、木嶋先生と同じ島にいた、他の教員も声を上げてきました。

それ以外にも、職員室内にいた遠くの島からも、着席していた先生たちが立ち上がって声を上げてきたのでした。





「小宮先生、私も同感です!

今までいただいたもの、すべて弁償してお返しします!」



「先生、私もです。

先生とプライベートでおつきあいするつもりは金輪際ありません!

二度と勝手にモノを贈ってよこさないでください!」



「先生、先日教育委員会でも注意されたばかりでしょう?

児童に無理難題を言って、一週間も学校を休ませた。

あなたの人間性に幻滅しています。

もらったものは必ずお返しします。」



保健室の先生「先生、いただいたものは、なるべく早く復元してお返しします。

お気持ちはありがたいのですけど、個人的なつきあいは辞退させていただきます。」



担「な…。

なんだ、お前たち。

私の好意を無下にするというのか!

この礼儀知らずの無礼者どもめ!」



木「それは、こっちのセリフです。

相手の迷惑を顧みず、バカにした態度をとるから、みんなから反感を買うんですよ!」



担「勝手にしろ!

後で後悔しても遅いからなっ!」



「先生、私もお返しします。」



「小宮先生、僕もお返しします。」



「先生、私もいただいた品物、すべてお返しします!」




保健室の先生が、私の側に来て、そのまま職員室のドアの外へと連れ出しました。



保「しんじゅちゃん、ごめんなさいね?

大人の見苦しいところを見せちゃって、恥ずかしいわ?

他の子供達に、妙な影響が出るといけないから、この事は内緒にしていて欲しいの?

お願いできるかしら?」



私「はい。」



保「助けるのが遅くなってごめんなさいね?

私もしんじゅちゃんのお兄さんとお姉さんは知っているわ?

とても礼儀正しくて、とてもいいお母さんだと思っていたの。

今日はつかれたでしょ?

気をつけて帰ってね?」



私「はい。」





ドアの向こう側、職員室の中では、怒号が飛び交っていました。



私は帰り道、傘をさして、水たまりをスキップして飛び越えていました。



お母さんを認められて嬉しかったのです。

姉や兄の存在が援護射撃につながったのも心が温まる思いでした。


家に帰ったら、先生たちがお母さんの事を褒めていたよ?と伝えようと考えていました。


これで、最近落ち込んでいたお母さんの気持ちもきっと休まるにちがいない、そんな期待に胸をふくらませて…。




結局、小宮先生のお歳暮を受け取る先生はほとんどいなかったそうです。








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