父「しんじゅ、ちょっといいか?

こっちに来てくれ。」



私「?うん。」



父親は唇を真一文に引き結び、目の端にうっすらと涙を溜めていたようでした。

ある平日の昼下がり、父は警察へ連絡をして、お店の中の様子を警察官に検分してもらう事にして、実際におまわりさんがお店の中に入ってきたあとに、店番をしていた私が呼ばれたのでした。



事前説明として、私の住んでいた町は東西にひょろ長い、長方形の地形をしていました。

人口は2万人程度、小学校・中学校は一つづつ。


団塊ジュニアの私が通う小学校は町の西側中央部分に位置し。

中学校はだいたい東西の真ん中あたり。


そして、私の住んでいる家は東側のさらに東側のキワに位置しているため。

毎朝、小学校へと向かうには子供の足で2~30分はかかる距離にいたのでした。



そして、私の両親が営んでいるお店は車通りの多い道に面するように建っていて。

これもまた東西の二箇所に出入り口が設置されていたのでした。


レジがあるのは東側の出入り口のそば。


店内にはいくつもの商品棚が陳列してあります。


レジのそば、または入口から最も遠い場所、店内の一番奥に高額商品を並べるようにしたのですが。


商品が多く消えるという事件を受けて父は名古屋のアメ横街で赤外線センサーを購入し、お客が来たら母屋にチャイムが鳴るような仕掛けをしていましたが、被害は収まらず。


業を煮やした父親が警察に連絡を入れていたのでした。


私はこれで、犯人が捕まるものと安心しており、父親に促されて、お店の状況を詳しく聞きたいからと言われて、店内の一番奥にいる、おまわりさんの所へと連れて行かれたのでした。






父「コイツが犯人です。」


私「え。」


警察官は私を見下ろして、驚いていたようでした。


父「なぁ、しんじゅ。

今なら許してやる、正直に話せ。

お前が商品を盗んでいたんだろ?」


私「え…何を…。」


父は私の目の前にしゃがんで、ひざをつき、私の両肩を強くつかんで言いました。


父「お前が犯人や。それは分かっとる。

今、正直に話せば、ぶた箱行きは免れるわ…。」


警「ちょっと、お父さん…。」


父「なぁ!?しんじゅ、正直に話せや。

お前は金が欲しかったんやろ?」


私「え?オカネ…?」


父「なぁ、優しく言っとる間に白状せんかい!」


私「な、なんのこと…?」



父親は私の両肩を強く握り、揺さぶってきました。


父「お前が犯人や!それ以外無い!

この親不孝の薄情モンがぁぁ!!」


私「痛いっ!お父さん、やめてっ!」


父「なにが痛いやっ!

こっちの懐の方が痛いんやわっ!

お前、店を手伝うフリして、親をアザワラっとったんやろ!」


私「いやっ!離してっ!」


警「ちょっ!お父さん、乱暴は!」


父「お前やっ!お前が犯人やっ!

この餓鬼ワシの子供やと思っとったら、優しくしとったら、つけあがりやがって!

お前、殺したるっ!

親の優しさを踏みにじる、こん犬畜生めがっ!

死ねっ!」


私「痛っ!!」


警「ちょっ!お父さん、落ち着いてっ!

子供が痛がっている、手を離してっ!」


父「あぁあぁ!このまま死ねやぁっ!

こん畜生がっ!それが親孝行っていうもんやぁぁ!!」


私「いやぁ!」


おまわりさんが、必死になって、お父さんを止めてくれました。


警「とにかく、お父さん、落ち着いてください。

私はこのお店の内情に詳しい人物を連れてきてくださいとお願いしたんですよ?」


父「それが犯人の可能性があるからやろ?」


警「あくまで可能性の一つです。」


父「そやから、コイツが犯人です!」


警「ちょっと待ってください。

この子はまだ小学生、それも低学年ですよね?」


父「コイツがただのガキやと思っとったら、大間違いやで?

こいつはもう、金勘定もできる!

大人顔負けの算段がとれる、クワセモンやっ!」


警「君は二年生?」


私「違います。」


警「じゃ、三年生?」


私「違います。」


警「え?4年生?2年生か、3年生かと…。

4年生なら誕生日来てて、ちょうど10才。

随分幼いな…。

いや、そういう問題じゃない、お父さん、ちょっと小学生を疑うのはやめてください。」


父「いいや?コイツが犯人で間違いないですわ!

こいつはチャイムの電源の事も知っとる。

お店の店番もひとりでやらせとるです。

コイツ、こつこつ盗みを働いとったんやわ…。

末恐ろしい餓鬼です、今始末しとったほうがえぇんです!」


私「え…。」


警「ふぅ~、ちょっと落ち着いて?

少し私の話を聞いてくださいね?

まずは、いくつかお嬢ちゃんからお話を聞きたいと思います。

お父さんが娘さんにお話を聞くのは、それからにしてください。」


父「ワシはこいつの親です。

コイツを生かすも殺すも親次第、つまりワシ次第です。

事と次第によっては、この餓鬼、殺します。」


私「!」


警「ちょっと黙っててください。

捜査の邪魔になります。

なんなら、お父さんには出てってもらいますよ?」


父「ワシは出ていかん。

ここはワシの店です。

なんなら、アンタが出てってください!」


警「お父さん、ほんとうにちょっと落ち着いてください。

少し、子供さんから離れて、そっちに立っていてください。」


私「……。」


私は涙目になって、完全に怯えていました。


おまわりさんは膝をついて、私の目線まで合わせてくれました。


警「お嬢ちゃん、お名前は?」


私「しんじゅ…。」


警「兄弟の何番目ですか?」


私「三番目…。」


警「そう、驚かせてしまってごめんね?

お父さんに頼まれて、今日は調査に来ました。

協力してもらえるかな?」


私「うん…、あ、はい。」



おまわりさんは、少しほほえんで、私の頭を撫でてくれました。








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