私「うん、お兄ちゃんとやんちーは仲がいいもんね。」



兄「それだけじゃない、あいつは数少ない信頼できる友人であり、人物なんだ。」



私「それで?」



兄「やんちーの話によると、それは今にも雪が降り出しそうな天気の事だったらしい。

12月の話だ。」



私「うん。」



兄「その老婆はやんちー含む6人の男子生徒に声をかけてきた。

全員自転車に乗っていて、相手も自転車だった。」



私「うん。」



兄「そして、その老婆は毛糸の帽子をかぶっていたそうだ。」



私「うん。」



兄「そして、サングラスをかけていた。

真っ黒なレンズだったらしい。まず、そこが不審だ。」



私「それが?目の弱いお年寄りはたまにいるよ?」



兄「あぁ、そういうのは薄い茶色とかブルーのサングラスだろ?

その日は空は曇り空で、むしろ視界は暗いぐらいだったんだ。

まず、その出で立ちにやんちーは驚いた。」



私「うん。それで?」



兄「やんちーが受けた印象だと、その老婆は自分が老婆だということを強調した話しぶりだったが、40代の女性のように見えたそうだ。」



私「他の子はなんて?」



兄「他の生徒はカニ缶に目がくらんで、たいして老婆に注目していなかったらしい。

言われてみれば中年ぽかったかな?ぐらいの認識だったそうだ。」



私「なんで、やんちーは40代ぐらいだと思ったの?」



兄「その老婆はやたら姿勢がよく、背筋が伸びていた。

足首も老婆みたいに枯れ木のような細さじゃなくて、ほどよく筋肉がついて丈夫そうだったからだそうだ。」



私「はぁ…。それで?」



兄「それで、ヤンチーは老婆の話を聞いて、すぐにウチの事だと思ったらしい。」



私「そうだろうね。」



兄「それで、ヤンチーが、今から家に帰るところなので、よければ案内しますよ?と相手に伝えたらしい。」



私「やんちー親切だね。」



兄「あぁ、あいつは根が真面目で親切なんだ。

で、そうしたら相手が喜ぶかと思ったら、断ってきたんだ。」



私「え?なんで?」



兄「やんちーも驚いた。

遠くから来たから、これ以上移動したくないんだそうだ。

でもウチの家族であるという絶対の自信がなかったので、よければ、電話番号を伝えておきます、と言ったそうだ。

電話番号を書いたメモを渡してくれれば、こちらから連絡できます、と。」



私「やんちー気がきくなぁ。」



兄「そしたら、『個人情報だ!』と言って断られたらしい。」



私「は?なにそれ。」



兄「そう、それでさすがにヤンチーもおかしいと気づいた。

言ってることがちぐはぐだし、小学生の手助けを必要とするようなか弱い老婆のようにも見えない。

しかも住所でカニ缶を配る子供を選別している。


一緒にいる人間の何人かは西町の人間で、カニ缶を配るのを拒否されていたんだ。」



私「はぁ。」



兄「それで、ヤンチーは友だちに、『危ないから知らない人からモノをもらうのはヨセ!』と止めに入ったらしい。」



私「やんちー慎重派だね。」



兄「あぁ、しかし考えてみれば当然の感覚だ。

誰だって、見知らぬ人に突然高額なものをもらえると言われてついていくバカがどこにいる。」



私「まぁ、ついていくわけじゃないし、もらえるだけなら警戒もしないよね。」



兄「あぁ、この今時大勢の中学生男子を狙った誘拐でもあるまいしな。

それで、そうしたら、その老婆は態度を豹変して西町の子供にもカニ缶をあげると言い出し始めた。」



私「ほぉ。」



兄「それで、やんちーが止めるのも聞かず、周りの男子がダンボールに食らいついた。

そして、やんちーの分ももらっといたと言って、人数分のカニ缶を手に入れた男子たちを尻目に、その老婆は自転車で去っていったそうだ。」



私「はぁ…なんかナゾいな…。」



兄「その時、ダンボールの中にはまだ数十個のカニ缶が残っていたそうなんだよ。」



私「それじゃ、随分たくさんのカニ缶を持ち歩いていたんだね、そのおばあさんは。」









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