私「なに?」



兄「実際にその老婆に会った人物から聞いた印象がだいたい同じなんだが…。

まるで男みたいな話し方をしていたらしい。」



私「男か女かよく分からない乱暴な方言ってこと?」



兄「いや、方言というより漢字の含有率の高い、話し口調だったらしい。

『まるで軍隊みたいだ』と皆、口をそろえて言っていたんだ。」



私「はぁ。男っぽい話し方で、軍隊みたい?

よく分からないおばあさんだなぁ。」



兄「そして、ここからもかなり気になるんだが。

何人かの生徒は、その声に聞き覚えがある気がしたんだそうだ。」



私「え?どこかで会ってた?」



兄「そうらしい、だが親しくしている人物ではなさげなので、それがどこで聞いた声だったかは思い出せなかったんだそうだ。」



私「そう…。」



兄「ただ、そう証言をしてくれたのは、一年生の男子生徒ばかりだった。」



私「ん?じゃ、去年まで小学校にいたから、そこで聞き覚えがあったって事?」



兄「それは俺も考えたんだが、やはり思い当たらない。

やんちーにも尋ねたんだが、聞いたことがあるような、ないような感じだとのことだった。

麻小学校には40人以上の教師がいるし、学校給食の配達する人とか、どこの誰だったかは不明なんだそうだ。」



私「ふぅん。」



兄「そして、これはやんちーの証言なんだが。

その老婆が中年だと感じた理由の一つに筋肉質な足、というのがあるが。

もう一つは、その老婆はヒールをはいていたらしい。」



私「え?ヒールは普通じゃない?」



兄「いや、老婆だぞ?

普通、ここらへんの老婆なら、つっかけかジョリか歩きやすいスニーカーを好んではくものだ。

それが、やんちーが見た感じ、革でできた上等な感じのもので、あ、働いている婦人だ、と感じたそうだ。」



私「え?」



兄「古臭い言葉だが、『職業婦人』という言葉がぴったりなレトロな感じの人だったらしい。

なんか、妙じゃないか?」



私「ん~、軍隊みたいな男口調で、革のヒールをはいている姿勢のいい女性。

陸上自衛隊とかで昔働いていたから、足が筋肉質で、軍隊言葉が抜けなくて、男っぽい口調なんじゃない?

そんで、昔はいていたヒールをそのまま使っているとか…。」



兄「まぁ、そういうのも考えられなくはないが。

なんだか、行動がちぐはぐなんだ。


本気で自分を救ってくれた小学生を探す気がないように感じるんだ。

むしろ、東町に住む、男子中学生にカニ缶を配るのが目的のように思える。」



私「お兄ちゃんの考えすぎじゃない?

その人、特別な仕入れルートがあるってことは、親戚かなにかがカニ缶の工場で働いているとか。

ぐっとお安く手にはいるから、家にあるやつを持ち歩いているんじゃない?」



兄「そうかもしれないが。

だいたい足腰の弱い人間が、カニ缶を大量に抱えて自転車を乗り回すか?」



私「だから筋肉質な足をしていたとか。」



兄「いや、それもそうなんだが。

やはり東町に住む男子中学生にカニ缶を配るのが目的だと考えるのが正しい気がする。」



私「何のために?」



兄「それが分からないからモヤモヤしているんだ。

それに老婆が言っていた家族構成。

この麻町でも多分一桁しか存在しない。

それもひっかかるポイントなんだよ。」



私「う~ん、でも誰も困っていないし。

迷惑をこうむっていないなら、いいんじゃない?

それか、おばあさんが言っていた家族構成がどこかで間違っている可能性もあるし。」



兄「そうか、そうだよな…。」



私「そのおばあさん、しゃきっとしているように見えて、ちょっとボケが入っているんじゃない?」



兄「あぁ、そうか…それもあるな。」



私「誰も迷惑していないなら、別にいいじゃない。」



兄「なぜカニ缶なのか、というのも気になるんだ。

子供へのお礼なら、お菓子とか、おもちゃじゃないか?

ポテトチップスとかクッキーとかチョコレートとか缶詰ならジュースとか。

そのセレクトにも引っかかりを覚えるんだ。

それで、やんちーがもらったカニ缶とウチの店のカニ缶とで見比べようとしたんだが…。」



私「また盗まれちゃって、在庫ゼロなんだよね。」



兄「そう、なんとも釈然としない。」



私「子供に食べ物を配るのに、缶詰ならイタズラができないし、安心して食べられるから渡しやすいと考えたんじゃない?」



兄「まぁ、善意の解釈をすればそうなるか…。」



私「なんで、私に聞いてきたのお兄ちゃん。」



兄「なんでかな?

なんか、お前に聞けば答えが分かるような気がしたんだ。」



私「分かんなかったよ?」



兄「そうなんだが…。

なにか、ひっかかったんだ。


そう、鉛筆の話。

そこがお前を連想させたんだな、きっと。」



私「あぁ、私も思った。

私以外にも、この麻町で私と同じことを考えている小学生の女の子がいるのねって思ったの。」



兄「そうか、だからお前に聞きたいと思ったのかな…。」



私「うふふ、そうか、麻町の子供たち、みんな一緒に育つから仲良しだもんね。」



兄「あぁ…。

なんか、予感がしたんだ。


この都市伝説は、俺たち兄妹のこれからに、なにか関わってくるというような…。

そんな予感がしていたんだよ。


つきあわせて悪かったな、しんじゅ。

もういいよ。」







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