私「宝石みたい…。」



サ「えぇ、お父さんね、最初からしんじゅちゃんの事を、とても大人だと感じていたらしいの。


とてもありえない、とても想定外の行動をする子だって。

そして、大人でも真似できないことをする子だって。


自分も大勢の人と出会ってきたけれど、世の中におそらくほとんどいない。

自分が気づいていないだけかもしれないけれど、そんなことをする人を見たことがないって。

しんじゅちゃんとの出会いは、砂漠で金を拾うようなものだって言ってたわ。」



私「砂漠で金をひろう…。」



サ「しんじゅちゃんと友達になりたいってお父さんに相談していたの。

お父さんは悲しそうに、


『それは、オススメできない。

彼女と友達になるのには覚悟がいる。


まず、彼女と同じ扱いを受けることになる。

そして、今いる友達を全部捨てる覚悟だ。

サヨには向いていない。』って。」



私「私と同じ扱いになる…。」



サ「それでもいいって最初は言ってた。

お父さんは、よく考えなさいって。


私ね、学校に戻ったとき、みんなの顔が違って見えた。

友達だと思ってた子ほど、自分は悪くないって顔をしてくる。


なにこれ…って思いつつも、ひとりぽっちでいるしんじゅちゃんを見て。

あぁ、私、あっち側でなくて、よかった…って思ったのよ…。」



私「!」



サ「うぅん、もっと言うと、私があの事件を起こす前からしんじゅちゃんはいじめられていた。

先生だけじゃなくて、クラスメイトにも馬鹿にされていた。

けど、私、見て見ぬふりをしていたわ、特に仲良くしていないんだからって…。


そして、仲良くしていた子たち、特にアイちゃんは、しんじゅちゃんと同じ掃除当番だった。

後で知ったことだけど、アイちゃんは幼なじみだったのに、しんじゅちゃんのことを悪く言ってたわ。


たまたま一緒にいた時、えっ!?と思ったけど、アイちゃんに何も言えなかったの。

彼女についていって、そのままみんなと掃除をサボっちゃったわ。」



私「…でも、後で私と一緒にごみ捨てを手伝ってくれた…。

嬉しかった…。」



サ「そうだったかな…。

それは覚えていなかったけれど、それなのに、アイちゃんとは友達でいた。


アタシたちは特別だから、先生にも狙われないよねって、アイちゃんが言ってて。

そうかな?って思いつつ、不安だったから、そう信じ込んでいたの。


友達だから、無理して、多少生意気なところがあっても、かわいいよねって思ってた。

それが、あの時、友達だから助けてくれると思ったら、いくつも私の悪口を言って。


なんだったの!ってショックを受けた。

この子、最低だと思った。」



私「…あれも、自分を守るためで、本心じゃないよ、多分…。」



サ「しんじゅちゃんは、優しいのね?


でも、アイちゃんは最初から私のことを馬鹿にしていたんだわ。

私もそれに気づかないフリをしていただけ。


そして、何食わぬ顔をして、戻ってきた私に友達ヅラをしてきた。」



私「……。」



サ「でも、もっと最低なのは、それでも一緒にいる私。

だって、一人ではとてもいられない。

しんじゅちゃんが、強くて優しくて賢いと知っていても、何もしない。」



私「なぜ、自分に不利になるようなことをわざわざ言うの…?

ずっと私に声をかけなければ済む話じゃない…。」



サ「最低じゃない!?私。」



私「自分の身を守るため、一番ダメージの少ない道を選んだだけ。

賢明な選択だと思うよ。

…ただ、私には救いのない話だな。」



サ「責めないの!?」



私「このクラスは異常だ。

担任が狂っているから、誰でも自分を守るために必死になるのは当然だよ。

なぜ、リスクを犯して私に話しかけてくるんだ。

そんな泣きそうな顔して、言う話じゃないだろ。」



サ「…お礼を言いたかったの…。」



私「それは最初に聞いた。

そこで切り上げれば済むだけの話だよ。

どういう次第で私に話をし続けていたんだ?」



サ「友達にはなれないわ。」



私「今聞いて知ってる。

…友達は無理してなるもんじゃない…。

しかたないね…。」



サ「しんじゅちゃんは友達、欲しくないの?」



私「愚問だよ。欲しくてしかたないに決まってる。」



サ「…ごめんなさい。」



私「質問の答えになってない。

なぜ、わざわざ手の内を明かすような真似をしたんだ。」



サ「お父さんに厳しく言われたの。

たとえ、みじめな思いをすることになっても、お礼だけは言いなさいって。」



私「あぁ…。」



サ「そして、ヨシ君との話もお父さんに言ってたの。

お父さんは、信頼し合える友達がいる子は強い。

彼女は一人でも耐えられるかもしれないが、お前には難しいだろうって。

お前にはそこまで心を開いて付き合ってきた人間がいないからだって。」



私「あぁ、サヨちゃんは、大事に大切に育てられている。

あえて厳しい状況に身を置く必要もないだろう。


理不尽と不条理が渦巻く世界だ、繊細な子なら発狂しかねない。


でも、なぜわざわざ自分の身を切るような真似をして詳しい内情を私に話したんだ?

そこが知りたい。」



サ「私、本当はしんじゅちゃんと何も話をせずに済むなら、そうしたかったの。

家でお父さんに、泣きながら嫌だと言ったわ。


だって、だって、どうしても自分の醜い心が浮かびあがって、おじけづいてしまうんですもの。


『よく考えなさい、サヨ。

彼女はお前になんの見返りも求めずに、お前に居場所を残してくれた。

それはとても尊い行いで、誰からも賞賛されて当然の行いをした子なんだよ?


それでお前が助けてもらっても感謝の言葉も伝えない。

そんな不義理なことをする子に育てた覚えはないし、お前も必ずのちのち禍根を残すことになるだろう。


そして、今でもそんなまっすぐな心を持った子は、まわりから馬鹿にされ、蔑まれ、誰にも味方がつかず、相変わらずひとりぼっちのままなんだ。


彼女がいったい、何をしたっていうんだ?優しい子だよ。

何も悪くないのに、彼女は何も手に入れられないんだよ?


どれだけ悲しく、寂しい思いをしていることか、相手の身になって考えなさい。』って。」



私「私が誰からも賞賛されて当たり前…。

そんなこと、言われたことなかった…。」



サ「お父さん、こうも言ってた。


『お前の直感を信じなさい。

彼女を見て、お月様みたいだと思ったんだろう?

暗い夜道を照らす、安心させてくれる存在だと感じ取ったんだ。


きっと彼女はお前を責めない。

お前が友達にならないことは最初から分かっている。


そこまで分かっていて、助けてくれているんだ、彼女を馬鹿にしてはいけない。


自分の醜さと向き合うという体験をさせてくれた貴重な存在だ。

お前はこの経験で、一回り成長させてもらえたんだよ。


お礼の言葉と、自分の気持ちを伝えなさい。

醜くてもいい、自分の言葉で素直な気持ちを言いなさい。


彼女はその気持ちが尊いと言ってくれるだろう。

彼女は今回一番友達には遠い存在だが、誰よりも信頼できる愛すべき人なんだよ。』って。」



私「貴重な存在…。

私がサヨちゃんを成長させた…。」



サ「私、どうやってお話したらいいか分からないって言ったの。


そうしたら、自分とのやりとりも含めて、全て話してみなさいって。

彼女なら、全ての事情をくんでくれるだろうって。


『お前が自分の弱さに怯えながらも、自分の言葉で自分の気持ちを伝える。


それが真心を差し出すということだよ。』って。」



私「真心…。」



サ「これが、私の本当の気持ちなの。

これで全部なの!

ごめんなさい、そしてありがとう。

私があげられるのは感謝の言葉と真心だけなの!」



私「…いいよ、十分伝わったよ。

もう、遅くなるから帰っていいよ…。」



サ「うん、ごめんね。

これからしんじゅちゃんにこの学年にいる間は声をかけないと思う。

でも、心の中で応援しているからっ!さよならっ!」




そう言って、ランドセルを背負った少女は駆け出して行った。



私は、自分の席にもどって、椅子に座り、力なく机の上に乗ったランドセルに頭をあずけたのだった。


まだ陽の高い、土曜日の午後の出来事だった。











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