兄は足の低い黒いテーブルに腰掛けたまま、両手を顔に当てて、涙を流していました。


私はそれを、彼の足元にいて、見上げていたのですが、動揺してしまいました。


慌てて、兄の両手に触れて、声をかけます。



私「お兄ちゃん、おおげさだよ?しんじゅは大丈夫だよ?」



兄は、そっと両手を顔から外して、目元を縁取る、バサバサのまつげを濡らして私を見返してきました。



兄「いいや、そうじゃない。

全然、お前は大丈夫なんかじゃないんだよ…。」



私「えぇ?だって、そんな、ほら、こうして元気だし?」



兄「…いや、すまない。

お前の俺を気遣う姿すら、今の俺には痛々しく感じてしまって…。


ちょっと、外の空気を吸ってくる。」



私「あ!うん!」



私は慌てて立ち上がって、ベランダの窓をからりと開けました。



兄「いや、今のは比喩で…。

お前のそういうところが俺はちょっと危なっかしいと感じるんだが…。


すまない、ちょっと席を外させてもらうよ。」



私「あ、うん…。」



兄は顔を手のひらでこすったかと思うと、私から視線を外して、すらりとフスマをあけて、暖かい仏間から出て行ってしまいました。


フスマの向こうに廊下をはさんですぐに兄の部屋があるのですが、足音は階段の方へと向かっていったようで。


どうやら、部屋へは戻らず、兄はどこかに出かけたようでした。



窓際にいた私は、ひんやりとした冬の空気を吸って、ちょっとぼうっとしつつ。

ふたたび窓を閉じて、ぼんやりとひあたりのいい畳の上に座っていたのでした。


畳のヘリを踏んだりせずに、ちまっとおさまりよく座っています。



そこで、なんとなしに、兄との会話を反芻していたのですが、兄のいわんとしていることがイマイチつかめず。

ただ、しょざい無げに畳の上に座り、ベランダ越しの道路のお向かいのお家を眺めていただけなのでした。



兄『…お前は俺が思う以上に過酷な環境にいたんだな…。』

『…まるで女たちの呪縛だ…。』

『お前はどれだけ周りに敵を囲っているんだ…。』



私「そんなことを言われても、お兄ちゃん。

私はそれでも、なんとかやっていかなきゃならないから…。

細かいことを気にしていたら、もたないんだよ…。」



私はうららかな冬の日差しを受けた、なんてことのない風景を、ただただぼんやりと眺め続けていたのでしたのでした。








いつも最後まで読んで下さりありがとうございます。
↓応援よろしくお願いいたします↓
ポチッと押してもらえると励みになります♪
  
スポンサーサイト

七夕プレゼント企画当選者発表♪

真夏の三ツ星企画 予約受付開始します♪

comment iconコメント ( 0 )

コメントの投稿