微かに足音が聞こえて、スーっとふすまが開く音がしました。


私は構わず、窓の外を向いて、畳の上で寝っ転がっていたら、とすとすと軽い足音がして。

いきなり、私のほっぺたに冷たい感触が伝わって、驚いて跳ね起きました。



私「うわっ!!」



兄「くすす、差し入れだ。」



見ると、目の前に赤いコーラの缶が差し出されていました。



私「えっ!?これ、コーラだっ!?

くれるのっ!?」



兄「あぁ、キチンと俺の小遣いで買ったんだ。

母ちゃんにも文句は言わせない。

遠慮なく飲め。」



私「うわぁ~!!アタシ、家でコーラを飲むの、初めてかもっ!?

えぇ~!!嬉しいっ!」



私が缶の飲み口のあたりを触って、プルトップを取り外そうとしましたが、カシカシと小さな音を立てるだけで、うまくとれずに、苦戦していると、兄が手に取って、外してくれました。



私「ありがと!

いただきま~すっ!


くぅ~っ!喉がピリピリするっ!

これが、炭酸かぁ!!甘くておいしぃ~!!」



私が目を細めてコーラをごくごくと飲んでいると、兄はそのそばにしゃがんで私を眺めて微笑んでいます。



兄「あれ?全部飲まないのか?」



私「うん、半分とっておいて、後でじっくり味わって飲む。」



兄「意外と慎重派だな。ふぅん、冷たいうちに飲んだほうが美味しいと思うけれど。」



私「大丈夫だよ、今日は寒いし、常温で置いといても。」



兄「ま、確かに。1月後半だからな、全然平気か。

でも、炭酸抜けるぞ?」



私「でも、一気に飲んじゃうのがもったいないから。」



兄「クスクス、貴重品か。

なるほど、好きにしろ。(笑)」



私が黒いテーブルの上に、すらりとした赤い200ml入の缶コーラを置くと、兄がすぐそばにあぐらをかいて座りました。



私「お兄ちゃん、気分転換はできたの?」



兄「あぁ。まぁな、心配かけたな、しんじゅ。」



私「うぅん。」



兄「…しかし、お前は俺が言うのもなんだけれど。

本当に子供らしい子供だよな?

今時コーラでそこまではしゃげる子供なんて、なかなかない貴重品だぞ?」



私「私は品物じゃない。」



兄「はは。確かにな。

こんなので、ご機嫌取りができるとは、安上がりな子供だな、お前は。」



私「なによぉ。いいじゃない、別に。」



兄「確かに(笑)

こんなささやかなことで、大喜びできるというのは、逆にむしろとても幸福なことかもしれないな。」



私「そぉよぉ!いいことじゃない。」



兄「はは。

ま、でもポテチはあきらめろ。」



私「いいよぉ!コーラが飲めただけで、らっきー!」



兄「はは。かわいいもんだ。」



私「子供扱いしてぇ。」



兄「だって、子供だし?くく。」



私「あ、やっぱり、もうちょっとだけ飲んでおこ。

せっかくの炭酸が抜けちゃったら、もったいないもんね。」



兄「あぁ。」



私がコーラをちびちびと飲んでいるのを、兄はのんびりと眺めていました。



兄「お前さ、お前のこと、俺もわかってやれなくて悪かったよ。」



私「え?でも、それはお兄ちゃんのせいじゃないし。」



兄「あぁ、それはそうなんだけどな?

そうなんだけど、そうじゃないんだ。

あれ?なんか、うまく説明できないな。」



私「うふふ、お兄ちゃんも言葉に詰まることあるのね?」



兄「あぁ、ちょっと珍しいな…。

うん、いや、ちょっとな…。

やっぱり、俺にとっては、お前は一番年の近い兄妹でもあるし。

やっぱり、家族だからさ、守りたいって気持があるんだよ。

でも、俺も慣れない中学生活でいっぱいいっぱいな部分もあったから。


母ちゃんも、なにげにいつも体調が悪そうだったし、機嫌が悪いのかなって…。

お前につらくあたっているのをキチンと気づいてやれなかったんだよな…。」



私「うん。」



兄「俺からさ、母ちゃんに頼んでやるよ。

きちんと、納得のいく説明を学校に求めるように、保護者として責任を果たすようにって。


そうだよ、最初からそうしていればよかったんだよ…。

あまりに母ちゃんがしんどそうだったから、ついつい強く言いそびれてしまっていた。


うん、そうだ、それで良かったんだ。

俺もお前も、まだ義務教育中の子供なんだから、保護者に任せていればいいだけの話しだったんだよな…。


なんだ、俺、義政より気づくの遅かったな。

アイツ、やっぱりできる奴だよ。」



私「ん?ヨッちゃん?」



兄「あぁ、本当にあいつは人を見る目があるよ。

まぁ、パチプレに関してはともかく。」



私「あぁ、そう?」



兄「お前、気づいていないのか?

あいつはかなり要領よく、人の話を理解している。

お前に言っている事も、俺が言葉にしていなかった部分まで汲んでいるぞ?

できる男だ。」



私「ん…。」



兄「俺の事もよく理解している。

ふふ、さすがだ…。」



私「それ、ヨッちゃんが、お兄ちゃんのことを天才だって言ってたからじゃないの?」



兄「それだけじゃない、吉崎(アイちゃんの兄)のことを秀才だと評価しつつ、俺のことは天才だと表現していた。

努力型の秀才と生まれつきの秀才を区別している。

かなりセンスのある男だ。

しかも、なにげに、お前のことを思って援護射撃もしている。

いいやつだぞ?

将来性のある男だ。

お前つきあうなら、あぁいう中身のある男にしておけ。」



私「は?」



兄「だから、お前、男を選ぶならあぁいう奴にしておけって話だよ。」



私「やだよ。」



兄「…なんでだ?なぜいきなり否定するんだ?

お前、義政いいお友達だって、言ってじゃないか?」



私「だって、私つきあうならカッコイイ男の子がいい。」



兄「…だから、男は中身だと…。」



私「中身も大事だよ。でも外見も大事だもん。」



兄「…お前、かなり世の中の男を敵に回した発言をしたぞ?」



私「なんで?恋人だよ?頼りがいのある、優しくてかっこいい男の人がいいんだもん。」



兄「だから、義政は頼りがいがあるし、優しいじゃないか。」



私「やだよ。」



兄「なぜだ?ちょっと外見がアレなだけで、かなりの優良物件だぞ?」



私「だって、デブだもん。」



兄「…はぁ、これだから女子は…。

男は見た目だけじゃないと、言っただろうが…。」



私「だって、デブは嫌だもん。」



兄「おおめにみてやれ。基本あいつの弱点はそれぐらいだぞ?

いいじゃないか、ちょっとぐらいポッチャリでも。」



私「じゃ、お兄ちゃん。

お兄ちゃんのことをイイナって言ってきた女の子がいたとして。

そして、中身も性格も頭もいい女の子だとして。

その子がヨッちゃんと同じ体型だったら、オッケーするの?」



兄「ダイエットを要求する。」



私「同じじゃん。」



兄「いや、俺は外見はそこまで否定しない。

だが、太っているというのは、本人の努力次第で改善できる問題だ。

ならば、痩せれば問題ない。」



私「外見で区別してんじゃん。」



兄「いや、女子はな!見た目重要だし。

それに、ブスだからダメって否定しているわけじゃない。

ただ、デブは嫌だなって話で、改善してくれるなら、つきあうかもしれない。」



私「性格で判断してないじゃん。

結局見た目じゃん。」



兄「いや、そうじゃない。

そうじゃないが…。」



私「結局、私と同じことを言ってるだけじゃん。」



兄「いや、それは…。

そう、可能性の話だ!

将来に渡って、現時点でダイエットを継続中という努力する姿勢を見せてくれるならば、そこから交際をスタートさせてもいいんじゃないかって、話で…。

できればもう数ヵ月後にふたたび告白してきたならば、オッケーする可能性もあるっていうか…。」



私「つまり、見た目で弾いているじゃん。」



兄「そうじゃない。

俺が女子なら、義政はアリだって話だ。」



私「じゃ、ヨッちゃんくらいいい感じの女の子がいて。

お兄ちゃんも、彼女の性格をよく知っていて。

ヨッちゃんくらいの体型の女子で、今すぐ付き合ってと言ってきたら?」



兄「程度による。

ぽっちゃりさんぐらいなら、妥協してつきあっても…。」



私「ヨッちゃんと同じ体型!」



兄「アイツは太りすぎだろっ!

俺が一緒に通学していた時点でもポッチャリだったが、現時点ではぽっちゃりを通り越してずっしりだ。

どっしりと言ってもいい。


あんなボンレスハムみたいな太ももをさらして通学する姿は、アレは無いだろ!

もう、短パンはよせ!

むっちりと肉がはみ出して、豚かなにかか?という醜態だぞ?


アイツは小学生だっていうのに、相撲部屋にでも入門させる気か?

もう、あいつの体重は成人男性並みだと思われるぞ?

親は餌を与えすぎなんだってば!」



私「お兄ちゃん、ヨッちゃんは人間!

エサちゃう、ご飯!

ほら!アタシの気持ち、分かるでしょ!?」



兄「ぐぅぅ!」



私「お兄ちゃんも人のこと、言えないじゃん。」



兄は私の頭をポカリと叩いてきました。



私「いったぁ!なにすんのよっ!」



兄「くそ!お前が悪いんだぞ!」



私「なによ!なにが悪いって言うのよぉ!」



兄「くそ、いざという時、やっぱり女には口ではかなわないな!

だがしかし!

俺は義政を応援するっ!


そして、全国の見た目で差別される男子の味方にもなるっ!

お前みたいな女は、全国のシャイな男性の敵だっ!

内面を重視しろっ!」



私「なによぉ!見た目がいいのが好きだって話しじゃないっ!

それのどこが悪いのよぉ!

アイドルが好きな人だって、おんなじじゃないっ!

見た目万歳よっ!」



兄「お前、どの口が言うんだ!?

あぁん?お前、何様のつもりだっ!

クソムカつくっ!」


兄は私のほっぺたをぎゅうぎゅうと両手で引っ張ってきました。



私「あによぉ!おにいひゃんらんて、ほのらんおうほのぉ~!!」



私は、ムギギと兄をべしべし叩いていたのでした。



兄妹の不毛な戦いは続く。


チーン。






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