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赤木先生は自分の手を口元に当てて、ちょっと考え込んだ感じで話を続けていった。





赤木「…俺はちょっとビックリしたんだ。

自分でもしんじゅのことを犯人じゃないとは疑っていなかったから、小林先生がそんな風に即答するとは思わなかった。



…いや、今の説明だけでも、確かに誤解だというのは判断できそうなものだが、そういうんじゃない。

小林先生は、お前の、しんじゅの人柄を信頼している、それが分かったんだ。



事情を聞くまでもなく、しんじゅが他の児童をいじめるはずがない、と、頭から信じている様子だった。



俺はちょっと面くらいながらも、詳しく説明を聞かせて欲しいとお伝えした。」





私「はい…。」





赤木「小林先生は協力的だった。



俺の説明を聞くまでもなく、いきなりしんじゅのことについて話しだした。



『私はしんじゅという児童にどれだけ助けられたか分からない。』



小林先生は、最初にそうおっしゃった。」





私「はい…。」





赤木「それから、小林先生から詳しい事情を説明してもらった。

昨年、小林先生が担当していたクラスで事件が起きたことを。

その時の被害者がしんじゅ、お前だったという話を。



その時の様子を、小林先生は語っていた。



『しんじゅという児童はとても理知的で、周りの状況をよく見ている児童だ。

おそらく全体のことを考えて、公平に動くことができる。』



小林先生の説明によると、しんじゅ、お前のことをとても高く評価している様子だった。

俺は最初、半信半疑でその話を聞いていた。



『口数が少なくて、目立たない児童だがとても冷静で思いやりのある子供だ。

大人顔負けの洞察力をもっていて、どのようにしたら一番いいかを瞬時に見抜く。

それをえらぶって自慢するでもない、静かだが落ち着いた自信を持った子供だ』と。





小林先生は、俺にも思い当たることはないかとたずねてきた。

確かに、この前の上田との一件で、俺は何度かしんじゅに助けられている。



お前は自分を突き飛ばした上田のことを、目をつぶっていて、興奮していたから、突き飛ばしたつもりがないと言っているのは嘘ではないと思うと、助け舟を出している。



それでも信じがたい思いがあって、何度も小林先生にたずねた。

小林先生は、事件絡みでお前の過去のデータも持っていた。



それを俺に貸出してくれて俺はそれを見てうなってしまった。」





私「え…。」





赤木「資料に目を通す前の俺に、小林先生はお前のことを、十分に信頼に足りる人間だと言っていた。

その根拠というのが、お前の実力テストの成績について訪ねた時のエピソードを披露してくれた。」





私「はい。」





赤木「…お前、優秀だったんだな。

小学5年生の春のテストで学年14位だという話で、俺も驚いた。



しかも、塾も家庭教師もやってない、家庭内でも特に教育熱心な様子もなにも見受けられなかったという話だ。

俺も家庭訪問をさせてもらったが、同様の印象を持っていた。

ごく普通の、田舎の子供で、家の手伝いをしているおとなしい子だという印象しかなかった。」





私「はい…。」





赤木「小林先生はおどろいた。

小学4年生の時の評価の割に成績が良すぎる。

しかし、実力テストはテストで正しい評価のはずだ。



カンニングも視野にいれて、どういうことかと、本人にたずねたら、お前のセリフに小林先生は衝撃を受けたそうだ。



『よかった。それなら奨学生になれるかも。これでお母さんを安心させられる。』



お前は自分が疑われたことよりも、自分の成績をおごることよりも、兄弟が多い、そして病気がちの母親を心配して、お金の負担をかけないようにと将来の学費の心配をしていたんだった。



そして、自分をいじめてきた児童も、その家族のことも心配していたという話だった。



小林先生は驚いたそうだ。

たった10才でそこまで考えられるのかと。

小さな体からは想像もつかない器の大きい子供だと。



無口で口数の少ない、なにを考えているかよく分からない子供だと思っていたのが、自分の思い込みだと思い知らされたと。

家族思いの心優しい女の子だと気づかされたという話だ。



その後、成績が落ちたが、家庭内で、母親が病気がちだという話を聞いていたので、責めないようにしていたとの事だ。

先日、しんじゅの母親が亡くなったと聞いて、しんじゅの将来を案じて、心を痛めていた様子だった。」





私「小林先生が…。

そうだったんですか…。」





赤木「俺も衝撃を受けた。

5年生になったばかりで、高校や大学の学費の心配なんて、普通考えない。



俺なんか、なんにも考えていなかった…。

当然のように、親に学費を出してもらって大学に行くものだと思ってたくらいだった。



俺は自分を恥じたよ。

こんなに小さいのに苦労していて、家族思いで、それでも母親は亡くなってしまっていたんだ。



大の大人だって、母親が死んだらとんでもなくダメージをくらうだろう。

それが、保護者の保護がまだまだ必要な小学生で家族を失っていたんだ。



俺はどれだけ想像力が足りなかったのかと、穴があったら入りたい気分だった。」





私「そんな…。」





赤木「小林先生の説明によると、お前の人柄によって、どれだけ助けられたか分からないというのは本音のようだった。

事件が起きたが、大事にならずにすんだのは、ひとえにお前の人格によるところが大きいと。



小林先生はお前たちの事件で、色々調べてくれていて、お前の4年生の時の資料も俺に渡してくれた。

俺はそれを見て、また驚かされたよ。」












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